Black Hammer復活!世界は彼女に何を求めるのか?
前回第5回のTPB第5巻『Volume 5: Reborn Part One』では、新章第2部に突入。
ある出来事によりBlack Hammerを辞め、20年間夫と二人の子供と共に平凡に暮らしていたLucyの周りに不可解な事象が発生し始める。頑なにBlack Hammerに戻ることを拒むLucyだったが、突然パラゾーンより現れたColonel Wierdにより、光線銃で家族三人を消滅させられる。衝撃の結末の続き、更に謎の深まるストーリーを紹介して行きます。
作画はCaitlin YarskyからMalachi Ward, Matthew Sheeanのコンビに交代。この二人にFlatterという役割でBryce Devidsonが加わった作画工程は結構興味深いのだが、それについては後程。
またこのTPB第5巻に収録の#5-8では、各話巻末に2ページの作画Rich Tommaso(『Black Hammer Age of Doom』#6-7の作画を担当)による本編のサイドストーリー的なものも掲載されています。
Black Hammer 第6回
Volume 6: Reborn Part Two
■キャラクター
Black Hammer: Reborn Part Two
-
Lucy Weber/Black Hammer:
20年引退していたが、家族を失った怒りにBlack Hammerに復活する。 -
Skulldigger:
Spiral Cityのヴィジランテ。腕力型で、場合によっては殺人も辞さない。 -
Doc Robinson/Doc Andromeda:
第2次大戦中ヒーローチームでDoc Andromedaとして活躍した科学者。 -
Colonel Wierd:
あらゆる時空間にランダム不連続につながるパラゾーンの住人。 -
Talky-Walky:
Colonel Wierdとチームを組むロボット。性別は女性。 -
Doc Robinson/Doc Andromeda:
別次元の宇宙のもう一人のDoc Robinson。 -
Anti-God:
宇宙の破壊者。
Inspector Insector in Thee Case of The Electric Boy
-
Inspector Insector:
Limboの私立探偵。以前Colonel Wierdを助けた。 -
Joseph Weber:
Lucyの息子。 -
Golden Goose & Ham Slamwich:
Inspector Insectorの仲間。 -
Fumi-Gator:
Limboの悪漢。 -
Stretch:
Inspector Insectorの探偵の師匠。 -
Doctor Zeus:
Limboの犯罪王。
■#5
物語は、Colonel WierdがLucyの三人の家族を消滅させ、Black Hammerに変身した彼女一人を残し消え去った直後から始まる。
悲しみに暮れ、なす術もなく立ち尽くすLucy。その時、家の中の何処からか呼び出し音のような電子音が聞こえてくる。
その音を追って行くLucy。それは娘Rosaの部屋、彼女の通学用バッグの中からだった。
バッグを開け、音の元を探るLucy。「何なのこれは?」
呼び出し音の源は、侵入禁止ゾーンでRosaが助けられた際に渡された、Skulldiggerの装置だった。
20年前。LucyがDoc Andromedaを殺してしまった直後の彼の研究所。
他に選択肢はなかったのだから仕方ない、とLucyを慰めるAmanda。
装置だけを破壊すればよかったのではないか、何故Doc Andromedaがこんなことをしたのか理解できない、と思い悩み、混乱するLucy。
今はそれは重要ではない、まずこの全てを破壊しなければいけない、と言うAmanda。
「世の中がAnti-Godが復活する可能性があると知ったら、どうなると思う?パニックが起きるわ」
躊躇うLucyを説得するAmanda。
『Black Hammer Volume 6: Reborn Part Two』より 画:Malachi Ward, Matthew Sheean
念のために言っておくが、もちろんこのシーンはLucyとAmandaが増殖したわけではない。まさか間違える人いないだろうと思うけど、いろんなこと起こるマンガだからね。
見開き2ページに、こういうパノラマ的?とでもいうような形で二人の会話を見せるという表現、なんとなく作画サイドのアイデアかな、とも思ったのだけど、『Gideon Falls』でストーリーとの結びつきから、明らかに作画Andrea Sorrentinoと自身もアイデアを出して行く形で相談し、前衛的ぐらいに表現できるようなヴィジュアルの作品を造り上げたJeff Lemireゆえ、これも彼の考えなのかもとも思う。
画像左上、「Twenty-Five Years Ago」となっていて4話までのストーリーと矛盾するのだが、実はこの『Reborn Part Two』のMalachi Ward, Matthew Sheeanによる作画、多分作画にかかる時間からだろうと思われるが、Caitlin Yarskyによる『Part One』より先行して作業が開始されたらしい。
つまり最初はLemireが割と曖昧に25年前ぐらいに考えてたが、その後決定稿みたいな段階では20年前となり、前の曖昧なのも忘れてしまったみたいな事情と思われる。ストーリー的には20年前が正しくこちらは間違いということ。
やや複雑な進行となったと思われるのでこの手のことまだ出てきそうだが、必要だったらまた言及して行くと思います。
Amandaの説得により、頭ではそうするしかないと納得するLucy。これが正しいことなのかと相談できる相手がいれば…。だが現在残っているヒーローは、Skulldiggerぐらいだ。状況が違えば、その相手こそがこのDoc Andromedaだったのだ…。
「下がって」そう言ったLucyは、ハンマーを振り下ろし、雷でAndromedaの死体を燃やす。
「あなたは正しいことをしたのよ」と言うAmanda。
「いいえ。これが正しいことなのだったら、こうやって隠す必要もなかったはず」
そしてLucyは、Amandaを残しDoc Andromedaの研究所から飛び去って行く。
そのままLucyは、母親の住むアパートへと向かう。
窓からBlack Hammerの姿のまま入って来たLucyを見て、その格好のまま来るのを私が嫌いなのは知っているでしょう、となじる母親だったが、Lucyのただならぬ様子に気付く。
母親に抱きつき、泣き崩れるLucy。
現在。
Black Hammer/Lucyは、skulldiggerの装置の呼び出し音の発生源を探り、Spiral Cityの空を飛ぶ。
高いビルの屋上へとたどり着いたLucy。もう一つの逆さのSpiral Cityが迫って来る空を見上げる。
発信源はそこのようだ。
「動くな!ここは侵入禁止地域に指定されている!」
屋上に現れたT.R.I.D.E.N.Tチーム。彼女がBlack Hammerであることに気付き、驚愕する。「馬鹿な?彼女のはずが…?」
「本物よ。無駄に争っている場合じゃないわ」Lucyはそれを証明するように、ハンマーの周囲に小さくパワーを展開する。
T.R.I.D.E.N.T隊員は銃を下ろす。「あなたはこれが何だか知っているのか?止めることができるのか?」
「それはあなたたちの仕事じゃないの?」
Black Hammer/Lucyの手の中で音を出している装置に気付くT.R.I.D.E.N.T隊員。「それは何だい?」
「まだわからない」装置を見つめるLucy。
「でもこれから突き止めるわ」そう言ってハンマーを掲げ、空の逆さのSpiral Cityに向かって昇って行く。
今の私は自動操縦状態だ。自分が何をやっているのか、何故かも考えていない。シュールな夢の中にいるような感じ。
今はただ進むだけ。もし止まったら、考えなくてはならない。彼らに何が起こったかに直面しなければならない。
そして私は上昇し続け、突然それは下降に変わる。
そしてBlack Hammer/Lucyは、もうひとつのSpiral Cityの同じビルの屋上へと降り立つ。
『Black Hammer Volume 6: Reborn Part Two』より 画:Malachi Ward, Matthew Sheean
開いたドアの陰から発信音が聞こえてくる。ハンマーを掲げ、動くな!と言うLucy。
そこから現れたのはSkulldiggerだった。
「こんなに遠くまでビーコンが届くとは確信が持てなかった。あんたが本当に来るのかも。Docにはどう作ればいいかわかってたようだが」装置をオフにするSkulldigger。
「私の娘に何をした!?」
Skulldiggerに襲い掛かり、首を掴んで押さえつけるLucy。「答えろ!なぜ彼女はお前の発信装置を持ってたんだ!?」
「俺は何もしてない。俺らの方のSpiralのワープゾーンに、彼女が迷い込んでいるのを見つけて助けただけだ。俺はあんたに会わなければならなかったから…」
「黙れ!20年前これを起こしたのはDoc Robinsonで、お前は彼と一緒に行動していた!」
「だからお前らはこれが何なのか、何故私の家族が殺されたのか話さなきゃならない!さもなくばその頭を吹っ飛ばすぞ!」
「俺にも何が起こっているのかわからない、本当のところは。俺たちにはDocが必要なんだ。彼ならこれをどうすれば止められるか、わかっているはずだ」
「Docは死んでいるわ。20年前に私が殺した」
「違う。死んだのはこの世界から来たDocだ。俺たちの世界のDocはまだ生きている。そのためにあんたの助けが必要なんだ」
「一体何の話をしているの?」
「時間がない。奴らが来る前に移動しないと」
「奴ら?誰が?」
その時、屋上に衝撃が走り、異様な集団が降り立つ。
「誰がって?もちろんSherlock FrankenstienとLiberty Squadronさ!」
『Black Hammer Volume 6: Reborn Part Two』より 画:Malachi Ward, Matthew Sheean
ご覧のように、Malachi Ward, Matthew SheeanのBlack Hammer/Lucyは、Caitlin Yarsky作画のものより結構オバチャン体型となっている。これはYarsky作画を無視した彼らのこだわりとかでそうなっているわけではなく、こちらの作画が先行して開始され、両者が照らし合わされる時間がなかったゆえの事故だろう。いや、事故まで言うことないだろ。
ちなみに出てくる画像までは見せられていないのだけど、T.R.I.D.E.N.Tチームの制服については、先行するこちらの作画チームの方がデザインしたそうである。
●Inspector Insector in Thee Case of The Electric Boy Part 1
最初に書いた通り、今回の『Black Hammer Volume 6: Reborn Part Two』では各話の巻末に、Black Hammer Age of Doomの6~7話を手掛けたRich Tommasoの作画による、そちらに登場したバッタ私立探偵Inspector Insectorを主人公とする2ページのシリーズが掲載されている。
Inspector Insectorが住む世界は、Black Hammerを含む多くの物語でアイデアとしては作られたがストーリーには登場しなかったキャラクターが住む世界で、Limboと呼ばれている。Age of Doom6~7話ではColonel Wierdがリブートにより本編から弾き出され、こちらに送られるがInspector Insectorらの協力により復帰する。
Limboの奇妙な住人たちが集まるバーで飲んでいるInspector Insector。バーの常連Tentaclawが「一杯奢ってくれない?」と寄って来るが断り、バーを出る。
様々な忘れられたキャラクターが空を飛び交う帰路を歩くInspector Insector。そこに突然の轟音が響き、強い光が周囲を照らす。
その場へ走ったInspector Insectorは、そこに身体から煙を上げ、蹲る人影を発見する。こんな風に現れるストーリーは見たことがない。
近寄ってみると、その人影は少年だった。「安心しろ、危害を加えるつもりはない。君の名前は?」
「僕はJoseph Weber…。僕は…、てっきり死んだと思ってた…」
「Weberだって?」
トラブルを嗅ぎ付けるのは問題ない、だがこいつはミステリーの匂いがする。Inspector Insectorは思う。
『Black Hammer Volume 6: Reborn Part Two』より 画:Rich Tommaso
■#6
20年前。
路地裏で二人の男が後ろ手に縛られ、背中合わせに座らされている。
口々に俺たちは何も知らない、解放しろ、と抗議する。
一人の男の顔面に、鎖の先に付けられた鋼鉄のドクロが叩きつけられる。
路地の先に立つ人影が問いかける。「何か思い出したか?」
その人影は、Skulldiggerだった。
顔を潰された男はもう息がない。目の前でドクロのついた鎖を振り回し威嚇するSkulldiggerに観念し、男は水曜に計画されている強盗について白状する。
その時、路地に轟音が鳴り響く。
振り返ったSkulldiggerは、路地の先のビルの屋上に何かが落下したのを見止める。その隙に尋問されていた男は腕を縛られたまま逃げ出す。
ビルの屋上を飛び移り、現場のビルの屋上に向かうSkulldigger。
そこに倒れていたのはDoc Andromedaだった。
駆け寄るSkulldiggerに、Andromedaは虫の息で言う。「来る…。奴が来るぞ…」
「誰が?誰があんたにこんなことしたんだ?」
「私だ…」そう言いながら、上空を指さすDoc Andromeda。
見上げた先には空中に浮かぶ人影。その人物はSkulldiggerに向かって話す。「おや、君は誰かを思い出させるな。正確なコピーではないが、興味深い」
「だが深く調べる時間はないな、恐縮だが」人影は言いながら両掌からビームを放ち、Skulldiggerは弾き飛ばされる。
人影は屋上に降り立ち、倒れているDoc Andromedaに近寄る。
「では最後のチャンスだ。二つの頭は全てにおいて一つより優れていると思わないかね」
Andromedaは虫の息で答える。「そんなことはやめろ…。我々はもっとましな人間だろう…」
「確かにそうだ。それこそが要点なのだよ」そう言う屋上に降り立った者は、Doc Andromedaと同じ姿をしていた。
もうひとりのDoc AndromedaにSkulldiggerのドクロが襲い掛かる。
だが彼は腕に取り付けた強化グローブでそれを難なく受け止める。「そんなものが見えないとでも思ったのかね?」
「いいや、だがそれはお前の足元にミニスカルボムを放るための牽制だ」
Skulldigegerの言葉に足元を見る、もうひとりのAndromeda。そこに落ちていた小さなドクロが爆発し、下の非常階段まで飛ばされる。
Skulldiggerは元のDoc Andromedaを肩に担ぎあげ、その場を去る。
『Black Hammer Volume 6: Reborn Part Two』より 画:Malachi Ward, Matthew Sheean
画で見れば混乱するようなことのないものだが、二人のDoc Andromedaが現れる状況を文章でうまく書けてなくて混乱したならごめん。
原文「little skull bombs」をこっちの方がわかりやすいかと思ってミニスカルボムとしてみたが、…ミニスカるボム………。まあオラが駄目人間なんだろうな…。
Doc Andromedaは、Skulldiggerの本拠で意識を取り戻す。壁はブロックがむき出しの窓もない地下らしい小さな部屋。
部屋を出て、廊下を歩きSkulldiggerを探す。彼は同じような飾り気のないモニターが壁面に並ぶ部屋にいた。
助けてくれた礼を言うAndromeda。Skulldiggerはあれは何だったんだ、と尋ねる。
少し複雑な話なのだが…。そう言ってAndromedaは話し始める。
近年の宇宙探検で私はある計り知れないほどの発見をした。それは私たちは単独ではないということだ。
私は自身のパワーを、パラゾーンと呼ばれるところから引き出して使っている。私はそこがあらゆる時空間を包含していると思っていた。だがそれは違っていた。
私が見ていたパラゾーンはただの一面に過ぎなかった。無限の面により無限のパターンが作られる無限宇宙の中の。それぞれが我々のものと似通っているが少し異なっている。
私はそれをパラヴァースと呼ぶのが相当かと考えている。だが、それが私が発見したすべてではない。
無限の宇宙はそれぞれが閉じられた形で連結されている。そしてそれらの宇宙の中心にあるものが捕らえられていた。
Anti-Godだ。
「Anti-Godは死んだんだろう」
「我々はそう思い、そう願っていた。だが、私は見た」
「奴が眠っているのを」
「Black HammerがAnti-Godを打ち倒したとき、実は奴は元居た場所に戻されただけだったのだろうと思う」
「そして、私のドッペルゲンガーは、今奴を引き出そうとしている」
「今なのか?」
「それは私にもわからない。だが彼は我々の世界の何かを必要としている。もう一人の私の宇宙は我々のものと近くにあり、それが移動を容易にしているのだ」
「我々はそれぞれ同時にパラヴァースを発見した。彼は私を見て、私も彼を見た。私は躊躇ったが、彼はすぐに攻撃してきた」
そこまで聞いて、Skulldiggerは立ち上がる。
「あんたの幸運を祈ってるよ。必要ならしばらくここで休んでもらっていい」そして自身のヴィジランテ活動に出かけようとする。
だが…、危険な私のドッペルゲンガーが野放しになっていることはどうするんだ、とDoc Andromeda。
「なあDoc、俺はストリートに必要な人間だ。宇宙やマルチワールドは俺のテリトリーじゃないんだよ」
もう他には誰も残っていないんだ、頼む、と懇願するAndromeda。だがSkulldiggerは頑として聞き入れない。
歩き去るSkulldiggerを追って彼のトレーニングルームに入るAndromeda。
言葉に詰まり、周囲を見回し、壁にサイズの小さいSkulldiggerと同じデザインのコスチュームが掛けられているのに気付く。
「あれは誰のなんだ?」
「もう誰のものでもない」
そちらに顔を向けて言うSkulldigger。Andromedaは、そこで事情を察する。
「私にも息子がいた。そして同じように私も彼を失った」
「それが私が宇宙に出た理由だった。私には何も残っていないと思った。自身を疎外するのは容易い。君自身の小さな聖戦に没頭するのも」
「だが我々はもっと高次の使命を与えられたんだ、Skulldigger。この世界が、全ての世界が我々を必要としている」
「宇宙はパターンによって作られている。あの屋上に落下したのも、君が私を見つけたのも理由がある」
「君がストリートでの戦いのために居ると考えているのは分かる。だが君のこれまでの犯罪との闘いはこのための準備だったのではないか」
『Black Hammer Volume 6: Reborn Part Two』より 画:Malachi Ward, Matthew Sheean
しばらく考え込み、そしてSkulldiggerは言う。
「あんたを助けるとしても、夜の狩りは続ける。昼間はもう一人のあんたを追うが、夜は俺のもののままだ」
そして握手する二人。だが君はいつ寝るんだ?と言うAndromedaにSkulldiggerは「正義は眠らない」と答える。
現在。LucyとSkulldiggerは、自分たちの物とは別のSpiral Cityのビルの屋上で、そちらの世界のSherlock FrankenstienとLiberty Squadronと対峙していた。
そこでSkulldiggerはLucyに小さな声で言う。「奴らに負けるんだ」
「何ですって?」Lucyが言われた言葉に戸惑っているうちに、Skulldiggerは彼らに向かって行き、ほとんど闘わないまま捕縛される。
リーダーであるSherlock Frankenstienが彼らのチームメンバーに言う。「奴らは別のSpiral Cityから来た者たちだ。そして明らかにこの異常に関わっている。奴らを捕まえろ。我々には早急に解答が求められている」
Lucyは彼女を捕まえようとするLiberty Squadronたちと闘う。Black Hammerの力は圧倒的だ。
「素晴らしい。彼女は我々のBlack Hammerの複製だ。パワーレベルにおいても」
「あなたたちのBlack Hammerですって?」Frankenstienの言葉に驚愕するLucy。
「しかしながら、幸運なことに私は長い経験から君への対処法は熟知している」そしてFrankenstienは手に持った装置をLucyに向けスイッチを押す。
Lucyのハンマーが正体不明のパワーの網に捕らえられて手から離され、彼女のBlack Hammerへの変身も解かれる。
『Black Hammer Volume 6: Reborn Part Two』より 画:Malachi Ward, Matthew Sheean
無力化され、巨大ロボットのボディの中にSkulldiggerと共に閉じ込められるLucy。
「あんた最初から負けるつもりだったのね?」Skulldiggerに言うLucy。
「そうだ、俺が奴らに自分を捕まえさせる前に、あんたにここに来てもらう必要があった」
「そりゃあ素敵ね。で、それがこの事態を止めるのにどう役立つっていうの?」
「それはこれから俺たちが奴らのSpiral Asylumに収容され、そしてそこにこそ彼がいるからだ」
あんたには本物のDoctor Andromedaの脱獄を手伝ってもらう。
『Black Hammer Volume 6: Reborn Part Two』より 画:Malachi Ward, Matthew Sheean
●Inspector Insector in Thee Case of The Electric Boy Part 2
突如Limboに現れたJoseph Weberの謎を解くべく、Inspector Insectorはまず彼を連れ、自分の事務所へと向かう。
「僕は父さんと姉さんと一緒にColonel Wierdに光線銃で撃たれて死んだんだよ!それって大変なことじゃないの!?」事態の深刻さを認識する様子もなく、平然と前を歩くInspectorに不満をもらすJoseph。
「おい、俺は真面目に受け止めてるぜ、それから君は死んでない、「想像外」になっただけだ」
JosephにはInspectorの言っている意味がさっぱり分からない。
事務所に着いたInspectorは奥の部屋に呼びかける。「おい、起きろ!お客だぞ」
奥から出てきたのは、以前Colonel Wierdの脱出にともに力を貸したGolden GooseとHam Slamwich。「新しい事件だ」
Inspectorは事件の謎の要点をまとめる。「その1:彼の他の家族は何処へ行ったのか?その2:何故Wierdは彼をこのLimboに送り込んだのか?」
「そしてその3:これはこの世界には俺が理解している以上のものがあるのではないかという、以前からの俺の勘とどうつながるのか?」
そこまで話したところで、事務所の中に外から煙が入り込んでくる。
「これは殺虫剤だ!」途端に苦しみだすInspector。
Inspectorを助けようとJosephと二匹が慌てているところに、ガスマスクを被った二足歩行のワニが現れる。
「俺はFumi-Gatorだ。お前に話がある」
■#7
パラゾーン、Colonel Wierdの宇宙船内。
[私が…眠ってからどのくらいの時間が経ったのか?…夢を見てから?…]
Colonel Wierdは、自室で自分が今まで眠っていたかのように、横になってベッドの上に浮かんでいるのに気付く。自身が眠っていたのかももはや定かではない。
[最後に眠った…のがいつかも思い出せない…。そう望んだとしても…それが可能なのだろうか…?]
Wierdは横の壁の鏡を見て、髭を剃るべきか?と考える。
だがしばらく見ているうちに、鏡の中の自分はこちらに背を向け、立ち去って行く。
それほど驚きもせず、「妙だな」と呟く。そのときWierdに、急な頭痛が走る。
痛みが治まり、再び鏡を見ると、こちらと同じ部屋が映っている中に自分の姿だけがない。
『Black Hammer Volume 6: Reborn Part Two』より 画:Malachi Ward, Matthew Sheean
同宇宙船内で操縦コンソールの前に座る、ロボットTalky-Walky。
Talky-Walkyログ 345552-347. Colonelと私は、パラゾーン中心部における偉大なる仕事を続行中である。パラゾーンには時間の概念はない。つまるところパラゾーンには全ての時間がある。
そうは言ったが、もし地球のカレンダーに合わせるなら、我々がマッピングを始めてから7か月が経過している。
パラゾーンのマッピングは、ほぼ不可能な任務だ。果たしてどうやってこれまでそうであった総てと、これまでそうなるはずだった総てから地図を作り出せるというのか?
なんにしても、私は何者でもない。Randallでも。私は宇宙で最も強力なコンピュータを造り上げた。私はそれを”アーカイブ”と呼んでいる。
彼は…私自身の子供であるように美しい。私は”アーカイブ”により無限のカタログ化の骨組みの作成を成功裏に進めている。
そしてTalky-Walkyは、透明のドームに覆われた脳髄の形をしたコンピュータ”アーカイブ”を見つめる。
そこへColonel Wierdがやって来る。「おや、こちらにいたとは気付きませんでした。問題ありませんか?」
「問題ないどころでは…ない…。奇妙な感覚に…、頭痛…、それらが悪化し続けている…」
「それは心配ですね、Randall。あなたがフィジカルな痛みを感じるというのは、普通ではない」
「何かが…起ころうとしている…」
「Talky…、私が…、前にいつ寝たか…憶えているか…?」Wierdは自身に問うように呟く。
「どういう意味ですか?」戸惑うTalky-Walky。
その時、船内に”アーカイブ”からの警告音が鳴り響く。頭痛に頭を抱えるWierd。
「異常事態です。”アーカイブ”がパラゾーン内の一部を解析していますが、それはあたかもパラゾーン外部であるようです。そんなはずはない!」”アーカイブ”により作成されたパラゾーンの3Dマップを見ながらTalky-Walkyが言う。
「私は…知らなければならない…」
Talky-Walkyの制止を聞かず、Wierdはヘルメットを装着し、船外へ出て行く。
「これは…私を呼んでいるようだ…。私は…」
Wierdの前に様々な事象への窓が整然と並ぶ。「この声…。私は…この声を知っている…」
窓の一つの奥に、屋根の上に座るGailとBarbalienが見える。かつて農場であったシーン。
「これがなぜここに?なぜこれが…移動した?」Wierdのヘルメットの中に、困惑したTalky-Walkyからの通信が響く。
「我々は彼を戻すことができる!わからないのか?我々は共に彼を見つけることができるのだ!」
「何だ…?誰だ…?」声に振り向くWierd。
そこでは二人のDoc Andromedaが争っていた。
「我々は共にそれをこじ開けることができる。我々は共にこのパラヴァースを探索し、そして我々の息子を見つけることができる。我々は彼を取り戻すことができるのだ!」別宇宙のDoc Andromedaが叫ぶ。
「Charlieは私たちのせいで死んだのだろう。だがまだ他のヴァージョンの彼がいるはずだ」と別宇宙のAndromeda。
「それは、間違っている!我々はパラヴァースを開いてはならない!我々はそれを危険にさらすことはできない!お前はそれにどんな代償が生じるのか知るべきだ!」抗うAndromeda。
「だがもしそれも制御出来たらどうだ?それが成しえたときの自由を考えてみろ!パワーを考えてみろ!」狂的な笑みを浮かべて話す別宇宙のAndromeda。
そこにColonel Wierdがパラゾーンの入り口から入って来る。
「Doctor… Andromeda?何が起こっているんだ…?これは何なんだ…?」
「こんなところで何をしてるんだ!お前、別人みたいだぞ」Wierdに向かって言う別宇宙のAndromeda。
「別人…?私が…?」戸惑うWierd。
AndromedaがWierdに近づいて来る。「君が来てくれてよかった、Colonel。あの偽物を止めなければ!あいつはおかしくなっている」
「なぜ…私はこれを憶えていないんだ…?なぜ…これは…パターンの一つではないのだ…?」混乱するWierd。
「手を組むつまりがないなら私一人でやるまでだ!」Andromedaに向かって腕からビームを放つ別宇宙のAndromeda。
「何だ…?パラヴァースとは…何だ…?」頭を抱えるWierd。
「お前にはわからないのか?お前には見えないのか?」嘲笑う別宇宙のAndromedaのいくつもの顔が、谺のように空間を満たす。
そしてWierdの頭に無数のパラヴァースの情報・様態が一度に流れ込んでくる。
[パラゾーンは遥かに広大なパターンの、ただの一面に過ぎない。]
[お前が知っているこのパラゾーンの全ては、無限のパラゾーンのただの一つに過ぎないのだ。]
『Black Hammer Volume 6: Reborn Part Two』より 画:Malachi Ward, Matthew Sheean
[そしてお前は、その中心に何が横たわっているかを知る。お前は世界の間の空虚に、誰が眠り続けているかを見るのだ。]
Wierdは無数の宇宙が浮かぶその中心に、Anti-Godが眠っているのを目にする。
[そしてお前は、彼が目覚めた時何が起きるかを見る。]
Wierdの背後に、パラゾーンの新たな事象への窓が開く。
[お前は第2の大変動を見る。]
Anti-Godが目覚め、再び現れた世界。
街を破壊するAnti-Godを阻止しようと、多くのヒーローたちが闘っている。だがそれらはWierdが知っている者たちと、似てはいるが違っている。
Gorilla Gailと呼ばれたGolden Gailと同じコスチュームを纏ったゴリラが、傍観しているWierdを見つけ、声を掛けてくる。「何やってるの!助けてよ!」
「助ける…?いいや…、私は…、私が何をしなければならないかを…、知ったと思う…」
そしてWierdは、Weber家でLucyの家族たちに光線銃を向けている。
「そして…彼らは消える…」
銃が発射され、Elliotと子供たちは灰になる。
「これが…現実のこととは…感じられない…」Wierdは呟く。
「この全てが…悪い夢の…ようだ…」
パラゾーン、Colonel Wierdの宇宙船内。
[私が…眠ってからどのくらいの時間が経ったのか?…夢を見てから?…]
Colonel Wierdは、自室で自分が今まで眠っていたかのように、横になってベッドの上に浮かんでいるのに気付く。自身が眠っていたのかももはや定かではない。
[最後に眠った…のがいつかも思い出せない…。そう望んだとしても…それが可能なのだろうか…?]
Wierdは横の壁の鏡を見て、髭を剃るべきか?と考える。
そしてWierdは気付く。
[待て…、今起こっていること…、これは既に起きたことだ…]
『Black Hammer Volume 6: Reborn Part Two』より 画:Malachi Ward, Matthew Sheean
●Inspector Insector in Thee Case of The Electric Boy Part 3
Inspector Insectorが殺虫剤の影響から目を覚ました時、探偵事務所にはJoseph Weberの姿はなかった。
Golden GooseとHam Slamwichの話によると、Josephは突然現れたFumi-Gatorに連れ去られたが、行方は分からないとのこと。
探偵捜査の常道に従い、InspectorはGolden Goose、Ham Slamwichと共に情報を集めるべく、バーへ向かう。
Golden Goose、Ham Slamwichをバーカウンターに残し、Inspectorは奥へ向かう。
そこには身体をゴムのように伸び縮みさせる能力を持つ老人Stretchが一人で座っていた。StretchはInspectorの探偵稼業の師匠で、引退した今も多くの事情に通じている。
Fumi-Gatorについて何か噂を聞いてないか?と尋ねるInspector。
Gatorについては特に目新しい情報はないが、Limboに異常が起こっている気がする、と言うStretch。様々なものが不安定に変化するLimboだが、それらがより早く変化しやすくなっているようだ。
自分も同じ感じがしていた、とInspector。
昨夜現れた少年とGatorのこともそれに関係があるのではないか?昨夜はLimboが次々と消され、無に帰される悪夢を見た、と言うStretch。
何処から始めればいい?と問うInspectorに、StretchはGatorを探すなら下水道だ、と答える。
カウンターからGolden Goose、Ham Slamwichを拾い、外に出るInspector。
路上のマンホールを開け、下水道に潜り込み、進んで行く三者。
■#8
パラゾーン、Colonel Wierdの宇宙船内。
[私が…眠ってからどのくらいの時間が経ったのか?…夢を見てから?…]
Colonel Wierdは、自室で自分が今まで眠っていたかのように、横になってベッドの上に浮かんでいるのに気付く。自身が眠っていたのかももはや定かではない。
[最後に眠った…のがいつかも思い出せない…。そう望んだとしても…それが可能なのだろうか…?]
[待て…、今起こっていること…、これは既に起きたことだ…]
Wierdは横の壁の鏡を見て、髭を剃るべきか?と考える。
そこに映っていたのは自分と同じ格好をした、何かの動物なような姿の人物だった。
Wierdが見ているうちに、その人物は鏡に背を向け歩き去る。
不意に襲う頭痛に頭を抱えるWierd。
『Black Hammer Volume 6: Reborn Part Two』より 画:Malachi Ward, Matthew Sheean
同宇宙船内で操縦コンソールの前に座る、ロボットTalky-Walky。
Talky-Walkyログ 345552-347. Colonelと私は、パラゾーン中心部における偉大なる仕事を続行中である。パラゾーンには時間の概念はない。つまるところパラゾーンには全ての時間がある。
そうは言ったが、もし地球のカレンダーに合わせるなら、我々がマッピングを始めてから7か月が経過している。
そこへColonel Wierdがやって来る。「おや、こちらにいたとは気付きませんでした。問題ありませんか?」
「問題ないどころでは…ない…。奇妙な感覚に…、頭痛…、それらが悪化し続けている…」
「それは心配ですね、Randall。あなたがフィジカルな痛みを感じるというのは、普通ではない」
「何かが…起ころうとしている…」
そしてヘルメットを被り、船外へ向かうWierd。「何処へ行かれるのですか?」と尋ねるTalky-Walky。
「外だ…。警告音が鳴るぞ…異常事態の…」
「異常事態?一体どういった…」戸惑うTalky-Walkyの後ろで、”アーカイブ”からの異常事態を告げる警告音が鳴り始める。
「これは何なのですか、Colonel?」「大変動だ…。第2の大変動…」
「第2の大変動?Colonel…、そんなものはありません。ただ一度起こっただけです。Anti-Godは破壊されました」
「違う…、Talky…。奴は…眠っているだけだ…」
別の世界のAnti-God襲撃を見るWierd。見たことのないヒーローたちが闘っている。
「…眠っているだけだ…」と呟くWierd。
激しい頭痛に頭を抱えるWierd。「Colonel?大丈夫ですか?」Talky-Walkyからの通信が響く。
パラゾーン、Colonel Wierdの宇宙船内。
[私が…眠ってからどのくらいの時間が経ったのか?…夢を見てから?…]
Colonel Wierdは、自室で自分が今まで眠っていたかのように、横になってベッドの上に浮かんでいるのに気付く。自身が眠っていたのかももはや定かではない。
[最後に眠った…のがいつかも思い出せない…。そう望んだとしても…それが可能なのだろうか…?]
[待て…、今起こっていること…、これは既に起きたことだ…]
Wierdは横の壁の鏡を見て、髭を剃るべきか?と考える。
そこに映っていたのは自分と同じ格好をした、黒人だった。
「待ってくれ…。行かないで…くれ…」呼びかけるが届くこともなく、相手は鏡に背を向け、歩み去って行く。
同宇宙船内で操縦コンソールの前に座る、ロボットTalky-Walky。
Talky-Walkyログ 345552-347.
そこへColonel Wierdがやって来る。「おや、こちらにいたとは気付きませんでした。問題ありませんか?」
「問題ないどころでは…ない…。奇妙な感覚に…、頭痛…、それらが悪化し続けている…」
「何かが…起ころうとしている…異常事態だ…」
「異常事態?一体どんな…?」”アーカイブ”からの異常事態を告げる警告音が鳴り始める。
「私が…眠ってからどのくらいの時間が経ったのか…?」
Wierdは多くの事象への窓が整然と並ぶパラゾーンの中にいる。
「一体何を話しているのですか、Colonel?」「眠りだ…Talky…」
WierdはAnti-Godが眠る多くの世界の間の空虚にいる。
「奴は…眠っているだけだ…。破壊されてはいない…、我々が思っていたようには…。だがそれは…時間の問題でしか…ないのだ…」
WierdはAnti-Godの巨大な顔の上にいる。その目は瞑られている。
「奴が…目を覚ます…までの…」
そして、その目が開かれる。
そして目覚めたAnti-Godは、Wierdに向かって手を伸ばす。
巨大な手は徐々にWierdに迫って来る。
そして、Wierdはまた激しい頭痛に襲われる。
『Black Hammer Volume 6: Reborn Part Two』より 画:Malachi Ward, Matthew Sheean
パラゾーン、Colonel Wierdの宇宙船内。
Colonel Wierdは、自室で自分が今まで眠っていたかのように、横になってベッドの上に浮かんでいるのに気付く。
Wierdは横の壁の鏡を見る。そこには自分と同じ格好をした年配の女性が映っていた。
「君は…誰だ…?」鏡に向かって問うWierd。
「誰だと思う?…私は…Colonel Wierdよ…」鏡の中の女性は答える。
「Colonel Wierd…?」
「そうよ…、私は…Colonel Rhonda Wierd…」
そして彼女も同様に鏡に背を向け、歩み去って行く。
「私は…、私はこれを…止めたいんだ…」頭痛に襲われながらも、追いすがるように鏡に手を伸ばすWierd。
すると、その指が鏡の表面を突き抜け、まるでそれが水面であるかのように中に入り込んで行く。
唖然とするWierd。
その時、Talky-Walkyからの通信。「Colonel、緊急事態です。私たちは異常事態に直面しています」通信の背後に響く警告音。
「Colonel、そこにいますか?」応答のないWierdに、再びTalky-Walky。
「私は…ここだ…。だが…私は恐ろしいものを…見た…」鏡にもう一度手を入れてみるWierd。
「私は…知らなければならん…。理解しなければ…。私は…入ってみる…」そしてWierdは、鏡の中に頭から潜り込んで行く。
「入る?どこへ行くんですか?Colonel?」誰もいなくなった部屋に、Talky-Walkyからの通信のみが響く。
Wierdが入ったのは真っ白な何もない空間。広さも奥行きも、全く把握できない。
その空間の中にただ一つ、宇宙ステーションのようなものが浮かんでいる。
「Talky-Walky…、聞こえているかは…わからないが…、私は何かを…発見した…」言いながらそれに近付いて行くWierd。
「そして…これは何か…重要なものだと思う…」ハッチを開け、中に入るWierd。
その中には、様々な世界の種族・性別も違う多くのColonel Wierdがいた。
「やあ、Randall…ようこそ…」
「ようこそ…、Wierd議会へ…」
『Black Hammer Volume 6: Reborn Part Two』より 画:Malachi Ward, Matthew Sheean
「これは…何だ…?君たちは…?」驚き、戸惑うWierd。彼の周りに別世界のColonel Wierd達が集まって来る。
「我々はこの時に向かって…漂い続けて…来たのだよ…」
「私たちは…あなたよ…。怖れないで…」
「君はもう…孤独ではない…」
「私が見たもの…。複数の別の地球の…第2の大変動は…真実なのか?…」
「なぜ私は…それらを以前に…見ていなかったのだ?…私は…すべてのパターンを…見たと…思っていたのに…」
困惑するWierdに、別の宇宙のWierd達が答える。
「君が見たものは…真実だ…。君が長年にわたり…航行してきたパラゾーンは…多くの中の一つに過ぎない…」
「君が知っているパターンは…多くの中の一つだったのだ」
「そして今…それらのパターンは…崩壊に向かい…書き換えられようとしている…。」
「我々は…行動しなければならない…。君は…行動しなければならない…Randall…」
「でも…そこには犠牲が…必要となる…。そして問題は…」
「あなたは…それを実行する気構えが…できている?…」
そしてWierdは答える。「私は…どうすればよい?…どこから…始める?…」
現在。別の宇宙のSpiral Asylumに監禁されているLucy。
彼女の房の前に、Colonel Wierdが現れる。
Wierdに憎悪の目を向けるLucy。「なぜ?なぜ私から家族を奪ったの?!」
「Lucy…。私は…何が起こるかを見た…。本当に…悪いと思っている…。これは…必然だったのだ…。彼らは…そうならざるを得なかった…犠牲だった…」
「あんたは頭がおかしい。あんたはずっと狂ってた!ここを出たら、必ずあんたを殺してやる。この人でなし!」
「わかっている…」そしてWierdはLucyの房のシールドを解除する。
「それもまた…犠牲なのだ…」Wierdは空間に開いた入り口から、パラゾーンに戻る。
「戻ってこい!」虚しく叫ぶLucy。
彼女を呼びかける声に気付くと、隣の房にはSkulldiggerが監禁されていた。
「私にはもう何が起こっているのかわからない。何をすればいいのかも」
「俺にはわかってる。まず俺をここから出してくれ。それから本物のDoc Robinsonを解放する」Skulldiggerは言う。
「そしてそれから…Colonel Wierdを殺しに行こう」
『Black Hammer Volume 6: Reborn Part Two』より 画:Malachi Ward, Matthew Sheean
●Inspector Insector in Thee Case of The Electric Boy Part 4
Joseph Weberを誘拐したFumi-Gatorは、下水道のマンホールを開け、神殿跡のような場所に現れる。
そこにいたのは彼がボスと呼ぶ、鎧姿の兵士に護られたフードマントに仮面の男。
Josephは彼の前に立たされ、意識を取り戻す。「ここは何処なの?」
「我は、世に現れることのなかった、偉大なる犯罪王Doctor Zeusだ!ようこそ我の痛みの神殿へ!」
そしてDoctor Zeusの背後には空間の歪みのようなものが口を開けている。「何なの、それは?」
「この扉はこのLimboにお前が現れると同時に開いた。だがここに送り込んだ我の下僕は、いずれもここを通ることが敵わず消滅した」
部下が引き継ぎ、続ける。「だが貴様のエネルギーはこれに同調している!我等のマシンが特定したのだ!」
「我等はこの扉が、この神に見捨てられた地からの出口であると確信しておる。そしてお前がその鍵なのだ」
そこに下水道からFumi-Gatorの足取りを辿ったInspector Insectorが、Golden Goose、Ham Slamwichと共に現れる。
「その坊やから離れろ、Zeus!」拳銃を向け、叫ぶInspector。
InspectorたちとZeuaの兵士たちとの間で乱戦が始まる。その間にZeusはJosephを扉へ向かって引き摺って行く。
「来い!扉の向こうに何があるのか見る時が来た」
「開け!お前が力を持っているのは分かっているぞ!開くのだ!」josephを扉に押し付けるZeus。
そしてJosephの身体は扉を通り抜けて行く。「Joseph!」
-Black Hammer Reborn #9へ続く
『Black Hammer Volume 6: Reborn Part Two』より 画:Rich Tommaso
Black Hammer Reborn Part2は、主にLucy以外のキャラクター達の、これまでの謎の行動の背景について描かれる。主人公Lucy Weber/Black Hammerの現在時制での行動については、上空から迫るもう一つのSpiral Cityへ渡り、そちらのヒーロー達と闘いSpiral Asylumに収容されるぐらい。
Doc AndromedaとSkulldiggerは何故共闘していたのか、Lucyが殺してしまったDoc Andromedaは、何者だったのか、などの真相が明かされる。Colonel Wierdの行動の謎については、まだ謎の部分が多いのだけど、その辺はPart3で明らかに。それにしてもColonel Wierdパートについては、なるべく頑張ってみたけど、やっぱこれ実際の画見てもらわんとわからんだろうな、という部分が多いんだが…。できる人はなるべく現物見て下さい。そもそもそのためにやってるんだよな。
また、「Inspector Insector in Thee Case of The Electric Boy」については、ただのおまけ面白マンガではなく、本編と深く連動するもの。Part3では本編に繋がったりするのだが、その辺についてはその時に。
次回Part3では、「Black Hammer Reborn」が完結します。
作者について
■作画方法について
今回の『Black Hammer Volume 6: Reborn Part Two』の作画は、Malachi Ward、Matthew Sheeanの二人にFlatterとしてBryce Davidsonが加わるという形で作成されている。
まだ新しい人たちで、それほど多くは情報が見つからなかったのだけど、三者ともにそれぞれに作品を発表しているアーティストでもあったりする。
本当は巻末の特典的なところまで画像を出しちゃうのはさすがに、と思うのだけど、かなり興味深い作画工程なので見開き2ページ分だけ紹介させてもらい、まずはそちらから説明して行きます。
『Black Hammer Volume 6: Reborn Part Two』より 画:Malachi Ward, Matthew Sheean
役割から言うと、まず全体的な作画を統括するのがMalachi Wardで、全部なのかは不明なのだけど、キャラクターを中心とした部分を担当しているのがMatthew Sheeanということらしい。
画像ページの更に前のページになってしまうのだけど、最初にラフ、ネームが作成される。一番最初に人物の顔が丸に十字ぐらいのざっとしたレイアウトをMalachi Wardが作成し、その後Matthew Sheeanが人物のプロポーション、表情などが判別できるラフを作成するという手順。
ちなみに同ページにJeff Lemireのスクリプトも掲載されているのだが、それによるとLemireのイメージでは見開き2ページを各二分割し、鏡に映したような形で左ページで上昇、右ページで下降というものだったようだ。それがWardの考えで上昇が下降に切り替わるポイントである中央に位置するコマが追加され全体で5分割となり、更にSheeanのラフを経て、左から右にLucyが放物線を描いて移動するイメージとなったように見える。
そして実際の作画がこちらの画像。まずMatthew Sheeanがキャラクターのみを描く。そしてMalachi Wardが背景を入れて行く段階で、人物の配置が調整される。
そして右上がBryce DavidsonのFlatterという作業。実際には左下の線画と重ねて作成されたものだが、カラーのレイヤーのみを表示している。Flatterというのが何かといえば、ベースとなるカラーを置いて行くような作業で、その後それを元にMalachi Wardがカラーリングを仕上げて行く。
クレジットとしては、Flatter:Bryce Davidson、Colorist:Malachi Wardとなっている。
この作品のFlatterはMalachi Ward、Matthew SheeanがBryce Davidsonのカラーリングが好きで参加を依頼したということのようで、Flatterというのがアメリカのコミックで実際にある職種なのかは不明。初めて聞いたし。
最初に見た時は、アメコミ伝統のペンシラー/インカーシステムのデジタル的発展で、ペンシラーが背景を含めた形で画を完成させてからインカーに渡すという非効率としか思えない方法から、日本のマンガ的な手法にやっと移行したのかと思ったが、チームとしてコミックを制作している彼ら独自の手法らしい。
彼らの共同作業体制が必ずしもこの形とは限らないようだが、この作品の作画ではキャラクターを描く方ではなく構図を決めたり背景を担当する方が全体を統括するという独特のもの。考えてみるとある種合理的でもあるとも思う。
カラーのセンスがいい人に、全面的なカラーリングではなくベースの色を担当させるFlatterというのもデジタル時代ならではの新しい発想。うまくできれば結構効率化にもつながるんだろうな。
Malachi WardとMatthew Sheeanはこれ以前から共同で作品を制作している。Brandon Graham『Prophet』34話、ストーリーも二人の共作による『Ancestor』(2016年)(以上Image Comics)、作品集『Expansion』(2017年)(AdHouse Books)など。「Black Hammer Reborn」に続く「Black Hammer The End」ではMalachi Wardが単独で作画を担当している。
Matthew Sheean & Malachi Ward
■Malachi Ward
L. A.を拠点にイラストレーター、コミック作家として活動。Netflixのアニメーション『Centaur World』などで背景美術を担当。コミックではMatthew Sheeanとの共作の他、『Black Hammer The End』では単独で作画を担当。その他に作品集『From Now On』を2016年Alternative Comicsより出版。
Malachi Wardホームページ
■Matthew Sheean
カリフォルニア在住で、Malachi Wardとの共作以外はあまり情報が見つからない。以前個人での作品で『FUGUE』を手掛けていたそうなのだが、現在情報なし。共作以外に個人でもカバー画など手掛けているよう。
■Bryce Davidson
2013年Massachusetts College of Art And Designを卒業とあるので、そちらの方が地元だろうか?グラフィックノベル作品としてGun-Metal Affair (Strangers Publishing, 2022)、Swan Song (Wing Club Press, 2016)、Oro (Wing Club Press, 2017)、Ill Humor (Minutemen Press, 2019)といったところがあるそうなのだが、残念ながらアマゾン経由で簡単に手に入るものはない様子。画の方はホームページの方でいくらか見られます。
Bryce Davidsonホームページ
Black Hammer
■Black Hammer
■Black Hammer: Streets of Spiral
■Black Hammer/Justice League: Hammer of Justice!
■The Last Days of Black Hammer
■The World of Black Hammer
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