二年続きました。
『Dungeon Quest: Book One』より 画:Joe Daly
二周年のご報告です。とりあえず二年続きました。見てくれる人も少しずつ増えているようで本当に有り難いことっす。有難うございます。まあ前回書いたように、遅れに遅れていた『The Invisibles』の第2回を、三年目に向けて何とか完成させておきたいで、やや遅れてしまったのだけど…。あ、去年の一周年見返してみたら、4月4日から始めたことに決めてたんだ…。まあ仕方ないか、来年まで続いたら何とか守るようにします…。
一周年に続き、画像はまたしてもJoe Daly『Dungeon Quest』のMillennium Boy君がSteveを罵倒しているシーンです。大変好きなシーンではあるけど、まあ今年もこんな心情ということか。もちろんSteveの方で。
というところで、まず二年目を振り返って、というところからですが、うーーーーーーーん………。思いつくのは反省点ばかり…。あれもやれなかった、これもやれなかったとか…。
どういう感じでやって行くのがいいかという形みたいなもんはできて来たと思うけど、その一方で結局自分のキャパもこんくらいで、この程度までしかできないなというのもわかって来たとか…。とりあえず、なるべく多くの作品を紹介したいという部分については諦めてはいないので、なんか今後も方法考えて頑張って行こうぐらいかな…。なんかすんません。
ここで、これからどうしたいとか言う前に、自分から見える海外のコミック状況みたいなもんから始めるのがいいかと思う。
まず、最初に考えておくべきなのは、ある程度の世界規模ぐらいのところで見ても、デジタル以降のシーンでは日本のマンガが独り勝ちです。
それは日本のこれまでの考え方、世界の見方で言えば、例えばこれまでのように大谷翔平のような突出した人が一人そういう舞台で活躍しているということではなく、日本のプロ野球の試合が海外で人気コンテンツとして放送されているようなもの。
コミック全体の中でMangaは単なる目新しいだけのものでなく、有力な一つのジャンルとして定着した。
まあこんなのは少し古い情報で、ここから今どうなってるかということ。
アメリカでは一旦かなり落ち込んだように見えたビッグ2、マーベルDCだが、それなりには持ち直してきたところなんだろうと思う。もうちょっと最近のそこらへんもよく見なければと常々思っているのだが…。あんまり把握してないけど、映画やらTVシリーズってところは、どうしても現行ではなくしばらく前の盛り上がってた時期のを元にしたものだしね。
その他のコミックのパブリッシャーについては、そちらより少し遅れてという感じで、近年はかなり落ち込んでいる模様。
Image Comicsについては、かなり路線自体を変更し、まあ同じく不振のIDWから権利を買った『GI Joe』や『Transformer』あたりを前に押し出してる感じだし。Imageと言えば、近年ジェフ・ジョーンズらが中心となって立ち上げたGhost Machineが注目のところなのだろうが、ヒーローものではないということだが、やっぱり昔ながらのアメコミ型にしか見えないが、どうなんだろ?
そしてDark Horse Comics。ベンディスに続き、James Tynion IV、マーク・ミラーらが次々と自身のレーベルを立ち上げ、不振のImageに代わりそういう部分を引っ張ってくのかなあ、と思っていたのだけど、今年に入りアプリ、デジタルショップでの自社販売が終了。こちらも結構苦しくなってきているのか?
この辺の不振からややオリジナル作品の発表の場が減った作家の受け皿となってる感があるのがBoom! Studioなのかなと思う。Tom KingやMatt Kindtらの作品がある他、最近ではJeff Lemireの作品もあったり。どうも会社の規模からかやや動きが小さく、どうしても見逃しがちになってしまうのだけど…。
その他、IDW、Dynamiteというあたりはやはり不振の印象が強い。Oni Pressも勢いがあるとは言えないんだけど、Boom同様もう少しちゃんと見るべきか?
だが、アメリカのコミックは終わってしまったわけではない。新興の方ではまずDSTLRY。旧Comixologyの設立者たちが立ち上げた、現在最注目のコミックのパブリッシャー。と言ってみて気付いたんだけど、なんかもうそろそろ昔のComixologyわからなくなってる人も多いのか?
つい先週だったと思うけど、DSTLRYがニューヨークのビッグ5の一つであるPenguin Random Houseと提携したというニュースがあった。こういうのあんまりわかんないのかな?まあ言ってみればニューヨークのビッグ5と言えば、世界の出版業界のトップ5というようなところで、本店の方でのクライム関係の作家やインディペンデントのパブリッシャーなどが、ここになんとか届かんと苦戦・焦燥してる様子を見てるもんからすると、これはかなりでかいことだと思うけど。
これが何を意味するかというと、アメリカの出版業界というようなところが、従来のアメコミとは違う大人向けというようなジャンルのコミックを、将来性のある商品だとかなり強く見てるということだろう。
DSTLRYに先行し、やや規模は小さいようだが、同様にファウンダーに作家が名を連ねるAWA Studiosも同様の方向でオリジナルのコミックの出版を行っている。
そしてComixology Originals。ちょっと雑に見ててややまだ調査不足なんだが、あちこちで立ち上げられ続けている小パブリッシャーや、場合によっては制作プロダクションぐらいのところで作られる作品を、そのブランドで同様の方向で出版している。
で、最初に戻るんだが、日本のMangaが世界で一つのスタンダードとなっている状況。これがこの状況と今後どう関わって行くのか?
アメリカのコミックが歴史的にもヒーローもの中心に、というかほぼそれだけで続いて来たなんてことは説明するまでもないだろう。少し前まではマーベルDC以外というところのオリジナル作品も、例えばマーク・ミラーの『キック・アス』のようなヒーローものをベースにした作品が多かった。だが近年になり、そういった作品は減少傾向というよりは、ほとんど見られなくなってきている。もしかすると、しばらく一所懸命にやって来た『Black Hammer』あたりがとりあえずこの時期の最後のものぐらいになるかも。
アメリカのオリジナル作品の傾向の変化は、『ウォーキング・デッド』のヒットや、『Scalped』、『100 Bullets』といったヒーローものではない優れた作品の登場、更にそれに続くImage Comicsなどからの様々な作品の登場によるところが大きいだろう。そして今後それを下支えするのはMangaということになるのかもしれない。
非常に単純な統計的な見方をすれば、日本ではマンガを読む大人は多いが、アメリカでコミックを読み続ける大人は少ない。それはいくら大人も読みうるストーリーを作っても、ヒーロー作品では大人を引き留められないということ。そして日本のモデルを作り上げられれば、アメリカでも大人向けコミックの市場を拡大できるということ。そしてMangaがその方向のための子供向けのステッピングストーンとして使えるというのが、そのあたりの出版業界、作家たちの考えなのではないか?
日本のマンガがいくら大人でも読みうるストーリーで描かれていると言ってみても、海外に出ていて人気のジャンプ作品などは、マーベルDCが同様であるような子供向けジャンルの作品ということになってしまうだろう。
日本の漫画家には、こういった動きに対応できるような大人向けManga/コミック作品を創り上げる力は十分すぎるほどある。だが一方で日本は大人向けエンタテインメントという部分では圧倒的に弱い。もはや日本の感覚・基準・これが売れるに合わせていたらこの動きにはおいて行かれるだけなんだろうな。
「欧米の考え方に対する日本の考え方」、「アメリカ人はこういうのが好きだから」みたいなローカル発想による方法論での売り方みたいなもんはとうに時代遅れなんだろう。そもそもこの辺の出版大手も含む動きなんて、ヨーロッパでアメコミがMangaに負けたというのを踏まえての世界視野の戦略なんだし。
もちろんこういったアメリカの作家や出版業界の思惑がその通りに進むとは限らない。でもこういうところぐらいは考えておかないと、せっかく実力もあり同じリーグで戦えてたものが、結局アーチーコミックぐらいのポジションになってしまい、また次の大谷翔平を待つぐらいの旧来からの日本型になっちゃうのかもしれないよ。
…なんやろ。なんか現在のコミック状況~みたいなことちょっと書いて、この辺注目していきたいですね~、みたいなこと書こうとしてたのに何でこうなった?なんか業界観測みたいな部分ホント興味なくて、そんなことに頭使うのも好きじゃないのに…。
まあ日本のマンガ業界の皆さんは、このくらいのことちゃんと考えてると思い込んで、こういうことに時間やらなんか色々の力使うのは避けて、勝手にやって行きたいもんです。ただ、何が儲かる儲からない以前に、商売するならそっちでどんなもんが描かれてるか、出ているかぐらいはもう少し把握しておくべきなんじゃないかと思いますけどね。海外のコミックから学ぶべきは画のみ、なんて思い込んでる人、さすがにもういないよね。
あと一つこれは盲点になっていると思うところ。昨年やったPeter Richardsonの『Zombie Makeout Club』。これってとりあえずのところは、色々欠点も多いし珍しい面白作品ぐらいにしか見えんだろうが、一つ重要なところがある。80年代か90年代ぐらいからぼちぼち始まってた海外産のMangaだけど、結構長い間、アメコミやカートゥーンの土台に日本風のマンガ・アニメのタッチを乗せたというものが主だった。だがこの『Zombie Makeout Club』については、ほぼ日本作品の素材だけで作られている。何が言いたいかというと、海外だってスパイダーマン、バットマンより、『アキラ』や『攻殻機動隊』の方が面白いと思って、そういうのを作りたいと思う子供もいくらでも出てくるし、今はお手本になるものも手軽に大量に手に入る。もっと本当に(いや、Peterさんなんかスマン…)ヤバいと思うような海外産のMangaが近い将来ぐらいで出てくる可能性もいくらでもある。そういう時代になってもくれぐれもMangaを乗っ取られないようにね。
さっさと挨拶ぐらいに書いて、早く『The Invisibles』の第3回に取り掛かりたいというところだったのだけど、ちょっと先延ばしにしていた色々な用事、病院行って市役所行って病院病院市役所みたいなことを一日おきぐらいに繰り返し、その間モタモタとあれこれ考えながらやってるうちになんか変な方向行ったり、思いのほか長くなってしまったよ。
結局、二周年を迎えての抱負などと言ってみても、何とか頑張ってみてはいるものの思うようにはさっぱり進まず、Steveみたいにパンツ一丁でぐったりして頭の中のMillennium Boy君に罵倒され続けてる気分というところなのだろう。ブツブツ言うてても何も進まん。とにかくやり続けねば。
なんか考えてることとか山ほどあるけど、そんなこと長々と書いてるより一つでも多く作品紹介進めないとなあ、というばかりですよ。
今後、3年目のとりあえずの方針としては、まず『The Invisibles』と、やや長いもの(主に少し前ぐらいの日本に紹介されてない重要作)と、短く書けるもの(主に新しいもの、omixology Originalsなど)を並行して、あまり間が空き過ぎないようどんどんやって行ければと思います。とにかく『The Invisibles』を頑張って行かなければ。あれ?なんでこんなに『The Invisibles』頑張らなければと思ってるんだろ?…もしかして知らないうちにUFOにアブダクトされて、頭に何か…????
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