Breaklands / Justin Jordan + Tyasseta

文明が滅亡した世界の荒野を疾走するSFアクション!

今回はJustin Jordan/Tyassetaによる『Breaklands』。2019年よりComixology Originalsから全15話で出版され、各5話のSeason One~Threeの3冊の単行本としてまとめられています。
Comixology Originalsブランドからの出版だが、出版者名はJustin Jordanの個人出版という形。

Image Comicsからの『The Strange Talent of Luther Strode』、『Spread』、DC『Green Lantern: New Guardians』などで知られるJustin Jordanと、インドネシア出身の新進気鋭のアーティストTyassetaによるSFアクション。
マッドマックス ミーツ アキラ、というようなコピーもあり、そんなストーリーなのだけど、カートゥーン風の画風でちょっと印象は違うかも。
デビュー長編(経歴がはっきりしないのだけど、多分そうだと思う)『The Strange Talent of Luther Strode』(2011)から、なにか画が良く見えてストーリーを書いている作家という印象もあり、注目してきたJustin Jordanで、最初は『Luther Strode』の方を紹介しようと思っていたのだが、Comixology Originalsからこの『Breaklands』が出てるのに気付き、まずこっちからかということになった。
Justin Jordan風といった感じのアクションを独特のテイストで描くTyassetaの作画。パステル調の組み合わせで色鮮やかに何処か柔らかく、未来の荒野を表現する、アーティストとしても知られるSarah Sternのカラーなど、見どころも多い作品です。

Breaklands Season One

■キャラクター

  • Kasa Fain:
    荒野の辺境の洞窟で弟Adamと暮らしていた少女。弓矢の名手。特別な能力を持っていない。

  • Adam Fain:
    Kasaの弟。強力な力の持ち主。

  • Gargarin:
    他者の能力を感知できる能力、加速能力を持つ老戦士。

  • Toy:
    パイロキネシスで大型の車を操縦する女性。

  • Ruth:
    不死身の戦士。

  • Eddie:
    Rumblersのリーダー。指先から念動弾を撃つ能力を持つ。

  • Shttersword:
    Raskの腹心の女騎士。離集自在の大剣を操る能力を持つ。

  • Rask:
    終わりなき目の王国の王。

■Story

“崩壊”から147年後。

壁の全てが大量の本を収めた書棚。その間に液体の中に保存された脳を収めた容器を支える柱が並ぶ円形の広大な部屋。
その中央に灰色の肌の、脊椎に沿っていくつものプレートをはめ込んだ巨漢、Raskが立っている。
小さな唸り声と共に、念動力らしき力を働かせた男。その身体は周囲から集まるように引き寄せられた、重く強靭な鎧によって包まれて行く。
全身に奇怪な鎧を纏い、Raskは部屋から外へと出て行く。

そこは王宮らしき巨大な建物の上階のテラス。
見下ろす先には王宮へと続く道に同じようにフードを被った多くの群衆が集まり、Raskを見上げている。
そして、その群衆の先頭には、長い白髪をなびかせた褐色の肌に白い鎧を着込んだ女騎士が、その手に身の丈よりも巨大な赤い剣を持ち、後ろ手に縛られた二人の男女を引っ立てている。
一人は白い肌の赤い髪をモヒカン刈りにした女性。もう一人は上半身裸の褐色の肌に水色の髪の体格のいい男。
鎧の王Raskは拳を突き出し、それに応えるように群衆は狂喜する。

「あたしたち明らかに死ぬことになりそうね」「うーん、そうだな。そう思う」「何か策的なものはないの?」「うーむ、死なないようにするのがやっとかな」
ややあきらめ顔で会話する男女。横に立つ白い鎧の女騎士が、首に剣を突きつけ黙らせる。
「よくやった」Raskが言う。
「汝らは”百年の王”により称えられる。汝らは終わりなき目に栄光をもたらした。よくやった」
「だが、任務は依然達成されていない」言いながらテラスより飛び降りる”百年の王”Rask。

「わが手により完遂させる」王宮前に荒々しく着地するRask。
「我は終結にして総てなり。そして今日ここに一つの終結があるだろう」群衆に向かって歩み寄って行く王Rask。
「どうか私に」「私に」「Raskの栄光を!」群衆は口々に求め、前に押しかける。

Raskは一人の男の頭を掴み、それを握り潰す。
そして、恐るべき力により男の身体を引き裂き、頭蓋骨、腰骨と繋がった脊椎を引き摺り出す。
Raskは男の骨を掲げて告げる。「真実が明らかとなるだろう。汝らの一人がそれを得るべくやって来る。汝らの一人が、我の物である物を手にするだろう」
「汝」
「Kasa Fain」
群衆の中の一人が戸惑ったように問い返す。「私が?」

『Breaklands Season One』より 画:Tyasseta

ちょっとわかりにくいんだが、このプロローグ的シーンは、実はこの巻では出てこないぐらい先の話。だが、この『Season One』だけでも読んで行けば人物関係などは、大体把握できる。とりあえずここでは時系列的なところを混乱しないようにという注意。
物語はこの状況に至る少し前、人里離れて暮らすKasaとAdamの姉弟から始まる。

*  *  *

少し前。

朝。KasaとAdamの姉弟は、彼女たちが住んでいる普通では誰も登って来られないような断崖絶壁の中の洞窟で目覚める。
弟Adamは此処での暮らしに退屈しているが、姉Kasaは不在の母からここを絶対に離れないように言われていることを言い聞かせる。そしてなるべく力を使わないことを。
この世界の人間は、生まれつき何らかの”恩恵”、独自の能力を有している。Adamの”恩恵”は、念動力といったもので、手を使わずにものを持ち上げ、姉や自分の身体を簡単に持ち上げることができる。
それに対しKasaは何の力も持たずに生まれた人間。Adamは、それゆえに姉が自分に力を使わないように言うのだと考え、常に不満に思っている。

『Breaklands Season One』より 画:Tyasseta

特別な能力は持たないが、身体能力、弓の腕に優れたKasaは、Adamに勝手に出かけないように言い置いて、食料調達のため狩りに出かける。
森の中でウサギのような小動物を見つけ、矢を撃とうとするKasa。そこに熊のような大型獣が現れ、Kasaに襲い掛かって来る。

一方、Adamは姉の言いつけを守らず、能力を使って飛行し、近くの散歩に出かける。
大きな音を聞きつけたAdamは、そちらに向かい、様々な車両やバイクに乗った一団が道を進んでくるのを見つける。

一団の中、象のような姿の男が何かを嗅ぎ付け、車列を停止させる。
その男、Smiffは、何かの臭いのように力をかぎ分ける能力を持っている。
「いい匂いを見つけたぜ。どこからか急に現れた。強いぞ。おそらくシェイパー級だ」
リーゼントのリーダーの男、Nitro EddieがSniffに近寄る。「そうか、いいぞ、Shinersが高く買ってくれそうだ。どこだ?」
Sniffは、Adamが隠れて様子を窺っていた道の近くの樹を指さす。
Eddieは指を銃のように構え、そこに能力を発射する。「BANG」
爆発が起こり、Adamは彼らの足元に落下する。

すぐに逃げようと走るAdam。だがメンバーの一人の特殊能力により足を縛られ、その場に転倒する。
体格のいいメンバーに担ぎ上げられ運ばれるAdam。
姉Kasaに向かって、能力を込めた助けを求める叫び声をあげる。

大熊と死闘を続ける中、KasaはAdamの助けを求める声を聞きつける。
大熊を巨木に激突させ倒し、KasaはAdamの許へと走る。

「全員車に戻れ。計画はそのまま進行中だ。俺たちはサルベージを続け、Little Bansheeに売れる奴らを見つけ出す」
Eddieの号令で、車列は再び荒野を進み始める。
先頭を走る車の男が何かに気付く。次の瞬間、男はKasaの放った矢に首を貫かれる。
樹々を渡って車列に迫って来たKasaは、Adamが乗せられたEddieの車に飛びつく。

「どうやらお前が姉ちゃんらしいな」
「弟を返せ!」Kasaは叫ぶ。
Kasaが飛びついたことで車はバランスを崩し、断崖絶壁の縁へとカーブして行く。
「お前が降りて俺に運転させなきゃクラッシュだぜ」

Eddieは銃の形に指を構える。
「BANG BANG、バイバーイ」
Kasaは掴まっていた車から弾かれ、崖下へと落下して行く…。

『Breaklands Season One』より 画:Tyasseta

ちょっとカバー画を入れて区切りを付ける形になっていないのでわかりにくいのだが、ここまでが第1話。わかりにくい云々とケチをつけるようなことを言うより先に、切れ目なく滑らかに続いて行くところを評価すべきだが。
ちょっと出だしプロローグだけわかりにくいのだが、その後は大変分かりやすい感じのアクション中心に進んで行くのがちゃんと伝わればと思う。こんな感じで『Season One』、とりあえず最後まで紹介して行く。

*  *  *

絶壁から落下したKasa。だが途中の岩に弓を掛けて止まり、そこから壁面に矢を差し、勢いを殺しながら崖下の平らな地面に降りる。
「これはなかなかの見ものだったな」そこに立っていた剣を背負った戦士風の装いの、老いた体格のいい男が言う。
「助けが必要かな?」座り込んだKasaに手を差し出す男。
「いいえ」Kasaは立ち上がると、そのまま男を蹴り倒し、弓を引き矢を男の顔面に突きつける。
「崖から落ちて、あんたの足元に着地し、助けが必要か?ですって?私はそんなに運が良くない。何が目的なの?」

「あんたのことは気に入ってるんだがな」「知ったことか!」容赦なく矢を撃つKasa。
だが、男は目の前の距離で撃たれた矢を、高速で首をひねり躱す。「分かったよ」
「あんたのやり方でやろうじゃないか」男は高速でKasaから離れ、そして剣を抜き、高速で彼女に迫る。
「俺は老いぼれだが」Kasaの首に剣を構える男。「そこまで老いぼれじゃない。何にしろ、あんたが話し、それでチャラにしようじゃないか」
「話すのはあんたよ」Kasaはその間に、男の腹に矢を突きつけていた。「そしてチャラにするつもりはない」

「引き分けってことか?」手を上げ、Kasaから離れた直後、男は力を使った反動で、その場に膝をつく。
「年を取り過ぎたな。こんなことをするにゃあ年を取り過ぎた」
老いて高速化する能力を使う反動も日々大きくなって行くばかりだ、と落胆しながら言う男に、Kasaも気を削がれ、矢を収める。

男は他に、他人の能力を感知する能力を持っていると話す。Kasaからは能力を感知できないが?
「私は能力を持ってないわ」「誰でも一つは持っているだろう。この世界はそうなってるはずだ」Kasaは肩をすくめる。
「俺は大きな能力を感知した。それがここに来た理由なんだが、あんたもそれに関係あるんじゃないのか?」
「私の弟よ。母から自分が戻るまで弟を安全に守るようにと言われてたのに」

自分が感知したところ、彼を連れ去ったのはRumblersという連中だ、と男は話す。奴らのスピードには、あんたの足では追いつけないぞ。
「あんたにはできるの?」「俺ならできる」
自分はシェイパー級の大きな力が、Rumblerが売るような連中の手に落ちることを望まない、もっと悪ければ終わりなき目の王国の手に、男は言う。
「とりあえず、当座あんたが手に入れられる最良の申し出だと思うが」「そうね」
こうしてKasaは男の協力を受け入れる。男はGargarinと名乗る。

*  *  *

荒野を疾走するRumblers。
こんな景色を見られるのも最後になるから楽しんどけよ、と鎖で縛り付けたAdamに言うEddie。
「姉さんが僕を見つけてくれる。そしてお前らにこの償いをさせるぞ」Adamは言う。
「弓矢のお姉ちゃんかい?彼女なら死んだぜ」嘲るように言うEddie。

姐さんは死んでない!」叫ぶAdam。
彼の能力が発動され、車が大きく揺さぶられる。
慌てて指を構え、Adamを撃って気絶させるEddie。
「こりゃあ大儲けできそうだぜ」悪辣な笑みを浮かべるEddie。

*  *  *

Gargarinに連れられ町へ行くKasa。
大きな建物が建ち並び、多くの人々が行き交う様子に、これまで人里離れて暮らしてきたKasaは驚く。
“崩壊”以前には世界はもっと栄えていたと話すGargarin。
「世界はシェイパーたちによりすべて破壊された。奴らがお互いに争いを始める前に。だが、人々は生き延び、自分たちの能力を活用し建て直した。違う世界を」
「ここよりも優れたところをな」「Shining Cityみたいな?」「それを知ってるのか?」
「母さんが話してくれた。それって本当にあるの?こんなところなの?」「いや…」
「もうこんなところではない」

『Breaklands Season One』より 画:Tyasseta

町をしばらく行くと、Gargarinに遺恨を持っていた一団が現れ、襲い掛かって来る。
町中で戦闘が始まり、Kasaも巻き込まれて行く。
なんとか逃れ、路地裏を走る二人。
「どこに行くの?これが私が弟を見つける助けになるの?」「俺たちには移動手段が必要なんだ。Rumblersを捕まえるための」
路地を抜けた先には、装甲車を思わせる大型の車両が駐まっていた。

「Toy、いるんだろう?」Gargarinがボディを叩いて呼びかける。
「どっちがより後悔するんだろうねえ。あんたを撃つのと、ハッチを開けたのと?」言いながらピンクのモヒカン刈りの女性、Toyがハッチから出てくる。
GargarinはKasaに、Toyをボイラーと紹介する。
「あんたその意味わかってないよ。あたしはパイロキネティックだ。思うことで火を作れる。それはあたしが強く思うことでこのでかい車を動かせるってことなんだよ。まあ、実際には蒸気機関なんだけどね」

そして二人はRumblersに攫われたKasaの弟を救うために力を貸して欲しいと話す。
「彼は強い力を持っている。おそらくはシェイパー級だ」Gargarinは言う。
「私は弟を守らなきゃならなかったのに」消沈して言うKasaに、Toyは力を貸すことを承諾する。
「第1に、あたしはRumblersには一つ遺恨がある。第2に、あたしはGargarinに借りがある。第3に、あたしはやな気分を解消したい」
そして三人はToyの車に乗り込み、出発する。

*  *  *

荒野。手枷を付けた大勢の奴隷を、列を組んで進ませる奴隷商人の一団。
その列の前に、布をテントのように被った人物が佇み、進行を妨げている。
車の中で話す二人の男。「どうした?」「心配なんだよ」「お前いつも心配してるよな」「あいつ俺たちのほとんど半分を殺したんだぜ」「手下になるやつはいくらでもいるさ」「考えないのか?」「奴らは俺が考えるために金を払ってるわけじゃない」
そこで進行が妨げられている様子に気付き、一人が車から降りる。

「この女が跪いたまま動かないんで」取り囲んでいる手下の一人が言う。
その時、女が突きつけられていた槍を掴み、被っていた布をはねのける。
現れたのは褐色の肌に白髪、白い鎧を纏った女騎士Shatterswordだった。
Shatterswordは、能力により自在に形を変える巨大な剣を振り、奴隷商人の一団をたちどころに殲滅する。
「お前たちは見つけられた。お前たちは解放された」奴隷たちの手枷を次々と切りながらShatterswordは言う。
「お前たちはすべて百年王国の民だ」

Shatterswordは不意に立ち止まり、その場で固まる。
百年王国、終わりなき目の王国の王、Raskから女騎士Shatterswordへ、強力なテレパシーで指令が送られてくる。
「汝の力が必要だ。我がShatterswordよ。力が現れた」
「王よ」圧倒的な力の受信に鼻血を流しながら、恍惚の表情を浮かべるShattersword。
「彼を見つけるのだ」鎖で縛られたAdamのイメージが送られてくる。
「承りました」Shatterswordは笑みを浮かべる。

*  *  *

荒野。奴隷商人の会話に出て来た戦闘の跡。多くの破壊された死体が散らばる中央に、白骨化した死体が転がっている。
白骨の周りに身体が再生し始める。筋肉。表皮。
そして褐色の肌に水色の髪の巨漢が、生命を取り戻す。
その場に胡坐をかき、死体の散らばる周囲を見回し呟く。「ついてねえなあ」
そして男は、裸のままそこから歩き去って行く。

*  *  *

Kasa達を乗せ荒野を走るToyの車。
「この道で合ってるの?」Toyが尋ねる。
「俺はAdamを感じることができる。ほとんど見えるようだ。シェイパー級のポテンシャル。他のものが感じられないほどだ。太陽を直接見ているような感じだ」Gargarinは言う。
だがそれは、それを感じられるのが俺だけではないということだ、とGargarinは続ける。
「Rumblersのようなハイエナばかりじゃない。終わりなき目の王国も気付いているだろうし、Shining Cityもな」

車は、死体が積み重なる奴隷商人達の戦闘跡に差し掛かる。
「奴隷商人ね。死体から見て、Carlの一味らしいわね」Toyは言う。
「何があったのかしら?Carlの一味の死体はあるけど、奴隷が見当たらない」「Raskだ」
こいつはおそらくRaskの部下のShatterswordと呼ばれてる奴の仕事だ、とGargarinは言う。
「いいニュースがあるわよ」何かを見つけたToyが言う。

「幸運をつかんだみたいね」そう言うToyの視線の先では、水色の髪の男が全裸のまま荒野を闊歩している。
ToyはKasaにハンドルを任せ、外に出て男に呼びかける。「ねえ、Ruth!どうしたのよ?」
「ツイてない日だった」「そんなもんじゃなさそうだけど。あんたキャラバンの護衛をしてたんでしょう?」「そうだ。失敗した」「そうみたいね。そういうときもあるわよ。どう、乗ってかない?」
考えるRuth。「あたしたちRumblersハンティングに行くところなんだけど」
Toyの言葉に笑顔を浮かべるRuth。

*  *  *

荒野を走るRumblers。
その前に突如、Shatterswordが立ちはだかる。「あいつ何処から現れたんだ?」
「少年を迎えに来た。必要とあらば貴様らの首をもらう」周囲に能力による剣を展開させながら、Shatterswordは言う。
「そうかい、お断りだ」Eddieは指を構え、Shatterswordを撃つ。
だが、その場にはもう彼女はいない。
戸惑うEddie。その上空からShatterswordが襲い掛かる。

『Breaklands Season One』より 画:Tyasseta

Shatterswordは剣でEddieの車を斬り付ける。
車は破壊され、停止。Adamは地面に放り出される。
意識を取り戻したが、状況が把握できないAdam。
その傍らにShatterswordが立ち、言う。「少し待ちなさい。私はあの愚か者たちを始末しなければならない」
EddieはShatterswordの剣を潜り抜けるように走り、Adamを掴む。

そちらに気を取られた隙に、Rumblersの大型の車両がのしかかるようにShatterswordに迫る。
危うくかわすShattersword。
その間に、EddieはAdamを引き摺り、メンバーの一人のバイクに積み、自分も乗り込む。
「少年を渡せば、貴様の手足は残しておいてやるぞ」Shatterswordが迫る。
「逃げろ!」バイクの男に叫ぶEddie。

2台の車両がShatterswordを挟むように移動する。
「安易な試みが成功したためしはないぞ」
「試してみるかい?」運転する象の姿の男、Sniffが言う。
「よかろう」

猛スピードで迫る2台の車。そして正面から激突!
だが、Shatterswordは、遥か高空へとジャンプし、その激突を避ける。
「貴様らは印象深いほどの愚か者だな」
仲間たちが戦っているのに、その場から逃げるのを躊躇うバイクのライダー。Eddieは指を突きつけて命令する。「黙って行け」

大型車両の銃座からマシンガンで射撃する、Rumblersの残りのメンバー。
Shatterswordは変形させた剣で、弾丸をいなし、彼らに襲い掛かる。
そこに到着したToyのさらに大きな車が激突し、その場の全員を吹っ飛ばす。
「ドカーン!くたばれRumblers」快哉を上げるToy。
「彼女いかれてるわ」「あの髪型見りゃわかるだろ」

着地しながらToyの車に斬り付けるShattersword。
Eddieは指を構える。「俺がなんとかする。行け」
その時、Toyの車のカバーが開かれ、巨大な機関砲が現れる。
「ありゃ無理だ」
逃げるバイクを追って周囲の荒野に砲弾が降り注ぐ。「駄目だ。もっとスピード上げろ」「これが最高速だよ」

「Adamに当たっちゃうわよ!」心配するKasa。だが不意に砲撃が止まる。
「なんで撃つのをやめたんだ?」「彼女が止めたわけじゃない」水色の髪の男、Ruthが答える。
車の外ではShatterswordが砲に繋がる機関を破壊していた。

ハッチを開けて外に出るRuth。「お前は有名だな。Yinzのところに居たな」
「貴様は奴隷商人どもを止められなかった。私を止められると思ってるのか?」Shatterswordは言う。
「いずれ分かる」構えるRuth。
剣を振るShatteraword。だが、Ruthはそれをかいくぐり、彼女の胴に拳を放つ。
強烈な一撃に飛ばされながら、何とか踏みとどまるShattersword。
「なるほど、気に入った」

Eddieは砲撃が止んだすきに、強烈な波動を放つべく集中する。
その頭を車外に出たKasaの放った矢がかすめる。「姉ちゃんか」
RuthとShatterswordの闘争は続く。「我々は敵対する必要はないのではないかね」「俺じゃない。その剣だ」「なるほど」
「BANG」Eddieが撃つ。
「つかまって!」Toyが叫ぶ。
Toyの大型車両の前面をへこます大きな波動が襲い、車はストップする。
「あばよ」手を振りながら去って行くEddie。

『Breaklands Season One』より 画:Tyasseta

車上から勢いよく放り出されるRuthとShatterswod。
Shatterswordは受け身を取り、立ち上がるが、Ruthはそのまま地面を転がって行く。
「本当か?」Shatterswordの目が驚愕に見開かれる。

「ああそうさ」地面に座って答えるRuthの首は、生きているはずがない後ろ向きになっている。
「よかろう」Shatterswordは能力により剣を生成し始める。
「いや、こいつはまずいな」不死身のRuthは骨の砕ける音を立てながら、筋力で首を回す。
「よし、この方がいい」首を前向きに戻すRuth。
「一瞬の後には何も考えることも無くなるだろう」Shatterswordの手に剣が形作られて行く。

猛スピードで突進したRuthがShatterswordに頭突きをくらわす。
「そうだ、一瞬だ」Ruthが拳を振り、Shatterswordは顔面を押さえながら、辛うじて躱す。
「お前はその剣を呼び出すのにその一拍が必要なのだろう。俺はそれを与えるつもりはない」
続けて繰り出された蹴りに、地面に倒れるShattersword。
組んで固めた両拳をハンマーのように振り下ろそうとするRuth。
「これが必要でなければと望むが、剣を持ったお前はあまりにも危険すぎる」
「貴様は」Shatterswordが言う。「知るべきだろう」

「それがなくとも私が相当に危険であることを」
Shatterswordは手に掴んだ土を、Ruthの顔面に投げつける。
一瞬視界を阻まれるが、すぐに立て直すRuth。
だが、その時にはShatterswordは消えていて、周囲に広がる荒野の地平線を見晴るかしても、その姿はどこにもない。

Eddieには逃げられ、Shatterswordも見失った四人。
Toyは途方に暮れ、何とか車は動くからもう帰ろうと話す。
弟を見捨てて帰ることはできないと告げるKasa。
「あんたの弟は、俺のような人間にとっては信号灯のようなものだ」Gargarinは言う。
「俺は彼がどこに向かっているか、正確にわかるぞ」

*  *  *

強固な擁壁と門番に護られた商取引の街、Tradetown。Eddie達の乗ったバイクはそのゲートの前で停車している。
「何で停まるんだ?」「俺じゃない。停められてるんだ」門の前では立ち並ぶ門衛兵たちが彼らの前を塞いでいる。
「何で停めるんだ?俺たちは平和的な意図を持って商取引に来ただけだぞ」門衛兵に話すEddie。
「お前は平和的な意図で来た。だがそちらの者はそうではない」門衛兵は言う。
「マジかよ?」Eddieはバイクのライダーを振り返る。

ライダーは能力を解放し、口から蛇を出しながらEddieに迫る。
「お前は奴らを見捨てた。俺たちは家族のはずだった。俺たちはお互いを助け合うはずだった。お前はそうしなかった」
「お前の言うとおりだ」Eddieはライダーをなだめるように手を上げる。
「すまねえと思ってる。でもお前も見ただろう。俺たちが生き残るだけで精一杯だったんだ」
「あの剣の女とボイラー、その他。全部奴らのせいさ。奴らには必ず落とし前を付けさせる。それでいいだろう?とにかく今は中に入って商売をするんだ」
「分かったよ」そういうライダーの背後で指を構えるEddie。
そしてライダーの頭が吹っ飛ぶ。

「これでいいだろう?」Eddieは門衛兵たちに言う。
ゲートが開き、EddieはAdamを積んだバイクを押しながら、Tradetownへ入って行く。

*  *  *

Eddieを追うKasa達。Ruthがハンドルを握り、Toyはあちこちを修理しながら進んでいる。
Eddieの向かった先をTradetownと見定めるGargarin。外の世界を知らないKasaにそこについて説明する。
「Tradetownはその名の通りの町だ。なんでも売り買いできる。なんでも。人間でさえな」
だがTradetownは、厳重なセキュリティで護られている。不死身の戦士であるRuthでも押し入るのを躊躇うほどの…。
だが、Gargarinは、そこに入る計画はあると言う。

Tradetownに到着し、門衛たちにゲートの前で停められる。
だが、Kasa達を見た門衛兵は何事も無くゲートを開け、彼女たちの車を通す。
何があったのかと戸惑う一同に、Gargarinは後で説明すると言う。

ゲートを通過し、町の中に入るToyの車。だが、そのシャーシの下には姿を消したと思っていたShatterswordが潜んでいた。
町に入ったことを見定めると、彼女は着地し、高速で移動して町の中に消えて行く。
何かを見たと思った門衛兵だったが、確信は持てず気のせいだと考える。

町に入ったkasa達。Gargarinは何故彼らが町にすんなり入れたかを話す。
Gargarinは、どれほど手荒に扱ってもびくともしないKasaの持つ弓を、Shining Cityの技術によるものと見ていて、相当な高値で取引されるものと見て、門衛たちも彼らを通したのだと説明する。
呆れ顔で言うToy。「あたしたちを殺さないでよね」「彼女はそんなことはせんよ」「あんたがよ」

四人は車から降りる。ゲートの厳重な警備にもかかわらず、周囲に警備の姿が無いことを不審に思うKasa。
「あれを見ろ」Gargarinは空を指さす。
そこには警備の兵装らしきものを身に着けた人物が、ボウル型の装置に乗り高空に浮かんでいた。
「探知者兼用心棒だ。奴らの中のある者は思考と感情を読むことができる。そしてその他は念動力者だ」
「あれを見てみろ」その先では大男が金を持った商人を脅している。
「奴らは常に暴力的な意図をスキャンしているんだ」
大男の姿は次の瞬間その場から見えない力で急速に持ち上げられる。
そしてそのまま、町の外の高空に放り出される。

『Breaklands Season One』より 画:Tyasseta

「私たちはEddieからAdamを取り戻せないわ」「戦うやり方ではね。死にたくなければ」「俺は死なんぞ」
「俺には考えがある」Gargarinが言う。

*  *  *

奴隷売買が行われている界隈に来たEddieは、Adamを前に声を上げる。
「興味のあるバイヤーは集まれ。かなりスペシャルな単独オークションを始めるぜ」
近くにいた商人が、次のオークションは明日だ、それまで他の子供と一緒に小屋に入れとけと言う。
「そういう奴らとは違うんだよ。こいつの力を探ってみりゃあお前も欲しくなるぜ」「お前俺がそれをやるまでそこに立ってるつもりかよ」
「シェイパー級か」Adamの力を見た商人が呟く。
「その通り、それじゃあ…」そう言いかけたEddieの背後にRuthが歩み寄る。

「それじゃあ、お前は俺たちにその子を家へ連れ帰らせろ」Ruthは言う。
「お前知ってるぜ。ってことはお前のオトモダチもここらにいるってことだな」Eddieは言う。
そして、ToyとGargarinも現れ、Eddieを取り囲み、Adamを返すように迫る。

笑い飛ばすEddie。
「俺の勝ちだ。こいつが欲しいなら、金を払え。それがお前らがこいつを手に入れる唯一の方法だ」
「お前がここから飛んで帰りたいんじゃなきゃな」上空で見張るTradetownのガードたち。
「ここはTradetownだ。奴らのルールに従う以外何もできねえ。俺を痛めつけることはおろか、それを考えることさえな」

「お前は半分は正しいな」
Gargarinがそういった時、Eddieの腕に矢が突き刺さる。
建物の上で、次の矢の狙いを付けるKasa。
「そんなバカな!」驚愕するEddie。

「そんなはずはねえ…」逃げ惑うEddieの上に降り注ぐKasaの矢。
そんなはずはねえ!
卓越した運動能力で建物を飛び移り、近づいて来るKasa。「Adam、今行くよ」
「すごい、本当にそうなった。なんで?」Kasaを見上げながら言うToy。
「彼女の能力さ。Adamをいただいて逃げる準備をしろよ」とGargarin。
「あたしたち放り出されない?」
「実際のところな、Toy」Gargarinは言う。「ガード連中はそれどころじゃないはずだ」

走るKasaの前に、ガードたちが取り囲むように集まって来る。
戸惑いながら話すガード達。「なんであの女に気付かなかったんだ、Edgar」「あいつのことを全く感知できなかったんだ。次に何をする気なのかもわからない」「次のあいつの行動はただ一つだ」
「飛ぶ、か?」念動力のガードがKasaに向かって能力を使う。
だが、彼女を動かすことはできない。
「そんなはずはない」「明らかにそうだ。俺は確信するぞ」
「こいつは大問題だ」走りながらガード達に矢を放つKasa。
コントロールを失ったガード達は次々と落下して行く。

矢の届かない台の下に隠れ、次の策を練るEddie。
その前でRuthがAdamを抱き上げる。「Adamを手に入れたぞ。出発しよう」
「こいつは俺んだ」慌てて指を構えるEddie。
その腕をGargarinが踏みつける。「彼は俺たちが連れて行く」
「行け、ここは俺で大丈夫だ」Ruthに言うGargarin。「Kasaは?」
「彼女は自分の面倒は見られるさ」

ガード達を躱し、建物を飛び移って行くKasa。
Gargarinがそちらに気を取られている隙に、Eddieは腕に刺さった矢を抜き、能力を押さえ込んでいるgargarinの足に刺す。
自由になった手で、Ruthを撃つEddie。
混乱の中に放り出されて戸惑うAdam。Kasaが叫ぶ。「とにかく走るのよ!私が見つけるから!」

「お前の勝ちはもうないぞ」Eddieを止めようと組み付くGargarin。
「お前らだってそうさ。Shining Cityがあいつを欲しがる。奴らが払ってくれるさ」
Eddieが無差別に放った波動弾が建物を破壊し、混乱に拍車をかける。
「あの子を殺す気か、馬鹿者!」Eddieに強烈な頭突きをぶつけるGargarin。

混乱の中逃げ惑うAdamを捕まえる手。
「ヘイヘイ、大丈夫だって。あたしはお姉ちゃんの友達よ。ここから逃げるよ」Adamの肩に手を置き、Toyが言う。
「行って!私は大丈夫よ!」走るKasa。
「状況は把握した。俺はお前に直接力を使うことはできない」一人のガードがKasaの背後に迫る。

「だがそれは間接的に使えないといういうことではない」
ガードは周囲の地面ごとKasaを持ち上げ、町の外へと放り出そうとする。
なす術も無く高空に持ち上げられて行くKasa。

その時、混乱に乗じ現れたShatterswordが、Kasaに能力を使っていたガードを切り伏せる。「言及の必要はあるか?」
落下し始めたkasaを安全に着地させようと力を使うAdam。
庇うようにAdamの前に立つToy。Kasaは無事に地面へ降り立つ。

AdamとToyの前に近付くShattersword。「そうか、殺し屋の類いではないのだな?」
「好都合だ」剣を振るShattersword。
Toyはその衝撃波で倒される。
「おとなしくしたまえ」Adamに歩み寄るShattersword。
「お前…、お前なんか嫌いだ!」Adamの目が怒りに燃え上がる。

Adamの力が最大に発動され、Shatterswordを攻撃する。
「頼…む…」身動きできず身体を捩じり上げられるShattersword。
Adamの力は彼を中心に周囲の人、建物を無差別に捩じり上げ広がって行く。
その中で唯一、Kasaだけがその影響を受けず、Adamに歩み寄って行く。「Adam、だめよ」

「僕は家に帰りたいだけなんだ」泣きながら叫ぶAdam。
「Adam、お願い…」Adamに歩み寄って行くKasa。
「あなたは皆を傷付けているのよ」
Adamの力の中で、Toy、Gargarin、そして不死身のRuthも身体を捩じられ苦しんでいる。
「これを止めて」「僕は怖いんだ」「分かってるわ」

『Breaklands Season One』より 画:Tyasseta

「でも、私がここにいるわ」Adamを抱きしめるKasa。
「あなたは止めることができる」そして周囲はAdamの力から解放されて行く。
「誰にもあなたを傷付けさせないわ」Adamの肩を抱くKasa。

その前に立ち塞がるShattersword。「私は…、貴様に彼を渡すことはできない」
「彼はお前たちのものじゃない。彼は所有物なんかじゃない。人間なのよ」Kasaは叫ぶ。
「彼はシェイパーだ。そして彼は野放しにするには危険すぎるのだ。その価値により…」Shatterswordは剣を振り上げる。
「許せ」そしてKasaに剣を振り下ろす。

だが、その剣はKasaには届かず、その前で粉々に砕け散る。
「理解できん」驚愕するShattersword。
「私もよ」Kasaは言う。

「非常に価値のある能力を持っていたのだな、貴様」Kasaの能力に気付くShattersword。
「私が追っていたのは一つの標的ではなかった」歓喜に高く飛翔するShattersword。
そしてKasaの眼前に降り立つ。
「二つだったのだ」

『Breaklands Season One』より 画:Tyasseta

そこでRuthがShatterswordにタックルする。「周囲に気が回ってないぞ」
Shatterswordを押さえつけ、RuthはKasa達に言う。「早く行け。こいつは強すぎるぞ」
「貴様にはうんざりし始めて来たぞ」「他人に気に入られるようにできてないもんでな」
分断した多数の刃を叩きつけるShatterswordに、Ruthも劣勢になる。
そこで車に辿り着いたToyが、Shattersworに車載のマシンガンの弾丸を放つ。
剣を盾に変え、防御するShattersword。
その間に、RuthとGargarinは車へと走る。

「乗ったぞ!行け!」ボディを叩きながら叫ぶGragarin。
車に向かい、剣を放つShattersword。
運転席に座ったToyは、車に呼びかける。「あたしはアンタが持ちこたえてくれると信じてるよ」
そして車は擁壁へと突進し、それを突破してTradetownの外へと逃れる。

*  *  *

荒野を進んで行く車。
「何だったのかわからないわ」Kasaは言う。「なんでガードは私に念動力を使えなかったの?あの女の剣は?」
Gargarinは説明する。「それがお前の能力なんだ。Adamが存在していることに誰も気付かなかったのも同じ理由だ。お前が彼から離れすぎるまではな。お前はゼロ、無効なんだ」
「…聞いたこともない、なんなのそれは?」
「誰も知らん。それは純粋に理論上のものだ。いや、だったと言うべきか。それは他者の能力を無効化する能力だ」
「それは以前は、ほとんど不活性な状態で、お前と弟を隠していた。だが、あの馬鹿者Eddieがお前に念動力を使った時、活性化されたんだ」
「私は秘密でいることができる。私たちは安全でいられるわ」Adamを抱き寄せながら言うKasa。
「いや、残念だがそうはいかんだろう。多くの者が知り、そして話すだろう。シェイパーは貴重だ。だがそれを止められる者は?何者をも止められる。お前の価値は計り知れない」

「Shatterswordは知った」
Tradetownで多くのガードに取り囲まれ、投降するShattersword。
「それはRaskも知ったということだ。そして奴は決して止まらない」
終わりなき目の王国、王宮に座るRask。
「Shining Cityも既に捜索者を送り出しただろう。おそらくはお前たちの家も見つけている」
Kasa達が住んでいた断崖絶壁の周囲をボードに乗り飛行する謎の探索者。
「そして奴もおそらくはTradetownで生き残っただろう。あの阿呆のRumblerは、9つの大陸中の食いつめ者共にお前のことを振れ回るだろう」
「連中の能力では我々を追うことはできないだろう。だがそれは奴らが我々を見つけられないということではない」
怪我を負いながら、一人バイクで荒野を走るEddie。
「俺たちは動き続けねばならん」

『Breaklands Season One』より 画:Tyasseta

以上、『Breaklands Season One』全編。最初、少し分かりにくいかもしれんが、話が軌道に乗ってくれば、「アキラ」ミーツ「マッドマックス」という感じのストーリーが、誰にも楽しめる作品だと思う。まああと宮崎駿か。Kasaって明らかにナウシカ、もののけ姫系だものね。
とにかくキャラも立っていて、キャラクターそれぞれのセリフを日本語にすればどうなるかがすぐにイメージできた。というか出来過ぎたかも…?
Shatterswordカッコイイ。イチ推し。Shatterswordのセリフはひいきで多めに訳してしまったと思う。

かなり分かりにくい最初のシーンだが、ここまで読めば、Raskの王国にShatterswordに捕まったToyとRuthが引っ立てられて来て、Raskにより「汝らの一人が、我の物である物を手にするだろう」として、変装して紛れ込んでいたKasaが、その正体を看破されるという状況であるのは分かったと思う。これが出てくるのはかなり先なんだが…。
その他にも、断片的に言及されるが、現時点では正体不明の数々の謎。100年以上前のシェイパーたちによるこの世界の破壊とはどういうものだったのか?シェイパーたちというのは何だったのか?この世界で大きな力を持っているらしい、まだ姿を現さないShining Cityとは?不在のKasaとAdamの母親はどこに行ったのか?終わりなき目の王Raskの目的とは?
AdamとKasaの姉弟をめぐり、物語は更に大きく展開して行く。続きも読んでね。

作者について

■Justin Jordan

1978年生まれ、詳しくは分からないんだがペンシルバニア出身らしい。いまいち情報がない。アートの関連オンラインコミュニティDeviantArtで出会ったTradd Mooreと共に2011年にImage Comicsから『The Strange Talent of Luther Strode』でデビュー。
『The Strange Talent of Luther Strode』は、ある町に住むひ弱なオタクの少年Luther Strodeが、ある日突然送られて来た差出人不明のビルドアップの本に従い、身体を鍛え超人的なパワーを手に入れ、近隣の犯罪に対して正体を隠してヴィジランテ活動を始める。だが、その本はある才能を有する人間を探し当て、自身の配下とすべく企む男から送られてきたものだった。彼に接触し、配下となるように求める残虐な男と、それを拒むLutherとの間に、家族友人をも巻き込む死闘が始まって行く。


『The Strange Talent of Luther Strode』より 画:Tradd Moore

ご覧のようにかなり激しいアクションとバイオレンスが展開される作品。今回の『Breaklands』でも見られる、動きを中心としたストーリー展開は、おそらく自身でも習作的なものにせよ作品を作った経験があるのではと思われるのだけど、その辺の経歴については不明。とにかくこのデビュー作時点から、コミックとしての動きというようなものがきちんと見えている作家だと感じさせる。
その後、メジャーなところではDCで『Green Lantern: New Guardians』を22話手掛けるなど。その他、『Superboy』などそこそこの量なのだが、どうもそちらでスター作家までは至れなかったようにも見える。ただここのところは少し難しくて、DCマーベルといったところがその後弱って行く時期でもあったりするわけで。Tom King、James Tynion IV、Chip Zdarskyというあたりが、現在の状況ではビッグ2からスター作家となれた最後のあたりかとも思ったりするが。
他にオリジナル作品以外では、Valiantの『Shadowman』、Dyanmiteの80~90年代あたりのホラー系レーベルから取得したライセンス物の一つ『Evil Ernie』なども手掛けている。Dynamiteのこの辺についてもいくらかでもまとめたいとは思ってるのだけど、なかなか届かず…。

オリジナル作品については、Image Comics、Boom! Studios、Vertigo、Avatar、AfterShock Comicsなどから多数出版されている。その中でも全5巻で出版され、代表作とも言えるのがImageからの『Spread』(2015-2018)。まあ、最初のカバーから血みどろSFなんだが。こちらについてもいつか書ければと思っている。
最新作はOni Pressからの『Mine is a Long, Lonesome Grave』。たぶんクライム作品。とりあえず、オリジナル作品については、現在入手可能なものをできる限り下に並べておいたので、そちらを参照のこと。
それなりに評価もキャリアもあるのだけど、いまいち前に出れない感じのある実力派、Justin Jordanは個人的にもかなり推したかった作家。これを機会にJustin Jordan作品を読む人が少しでも増えるようにと願います。

■Tyasseta (Albertus Tyasseta)

インドネシア、ジャカルタ出身。詳細な経歴などは分からず。本国での作品などは不明だが、とりあえずアメリカではこれがデビュー作となる。Justin Jordan的というようなアクション描写もうまく描けているし、未来の荒野や街の建物なども独特のセンスで素晴らしい。この作品から活動の場が広がるといいっすね。
tyasseta.artstation.com

■Sarah Stern

ニューヨーク出身で、現在はデンバー在住のコミックアーティスト、イラストレーター。詳細な経歴などは分からないが、2010年代中頃からOni Press、BOOM! Studios、IDW、Dark Horse、Marvel、DCなど各社で多く活動している。作品などは自身のホームページで多数紹介しているので、そちらを見た方が早いかと思う。オリジナル短編作品の掲載もあり。カラーリストとしての経験も多いようで、他にもラベルなどの商業デザインもやっている様子。
この作品の作画についてはTyassetaとSarah Stern双方のセンスが大変うまく組み合わさって完成している印象。
Sarah Sternホームページ

Comixology Originals作品についてもやっとまた一つ紹介できたか、という感じだが、まだまだ注目すべき作家作品は多い。というか、そもそもはComixology Originalsのスコット・スナイダー作品をすべて読むぞ、という考えでKindle Unlimitedも始めたんだが、色々と新しいものが次々見つかり、そっちがさっぱり進まん…。スナイダー先生ごめん…。ただ、どうしてもそっちで頑張ってるCurt Piresをもう少し紹介してから、とかなってしまうのだよな…。
本店の方では書いたのだけど、何かこっち的には何とか『The Invisibles』第2回を完成させて、3年目に入りあっちこっち新たに立ち上げたみたいなタイミングで、虫垂炎で倒れてしまい、かなり中断が長くなってしまいました。この『Breaklands』ももう少し短く書く予定だったけど、やっぱりこれ第1巻ぐらい全部きっちりやった方がいいよなあ、という感じで長くなってしまったり。まああんまり早くとはいかんのだろうけど、なるべく多くの作品を紹介して行けるようできるだけ頑張りますです。

Breaklands

その他のJustin Jordan作品については、そちらの方がわかりやすいかと考え、出版社別に出版年順で並べた。BOOM! Studios、旧版『Deep State』Vol.1、2と、Vertigo『Savage Things』はKindle Unlimited。なんかこれ作る過程で色々見てたら、Valiant作品のかなりがKindle Unlimitedなのに気付いた。そのうちValiantもまとめてみるか、と思うけどまたヴァンピレラの時みたいに大変になるかも…。

Justin Jordan
■Image Comics
●The Strange Talent of Luther Strode

■BOOM! Studios
●Deep State

●BOOM! Studiosその他

■Vertigo

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