人類史を始まりから終わりまでぶっとばす!ガース・エニスのSFスラップスティック!
今回はGarth Ennis/Goran Sudzukaの『Marjorie Finnegan, Temporal Criminal』。2022年にAWA Studiosから全8話で出版され、TPB全1巻にまとめられています。
さて、ガース・エニスだ。ガース・エニスだし、AWA Studio作品どんどん紹介しなければ、というのもあり早くやんなきゃと思ってたんだが、こっちがもたもたしてるということだけでなく、いざ読み終わってやろうと思うと、少し悩んでやや後回しにしてさらに遅れてしまった…。
それが何かというと、ガース・エニス作品全般ぐらいについて言えることなんだが、この人の作品やや読みにくく、普通のやり方だと説明しにくい。
まず、セリフとかテキスト部分の読みにくさというのがあるんだが、これはエニスがアイルランド出身で、アイルランド-スコットランドあたりの口語的な言い回しや、スラングなどを結構多用するというところから来るのだと思う。
そういうところについてはこちらで頑張って、なるべく意味と本来の感じを壊さないように伝えるしかないんだが、その他にもう一つエニス作品を読みにくくしている、これは作家のスタンスみたいなものがある。
それは作品の最初に設定や世界観などを説明することなく始め、とにかく面白くなるところから進めて行って、そんなの読んでるうちにわかるだろ、わかれよ、というようなやり方。
別に悪いやり方だとは思わないけど、先に言ったテキスト的な読みにくさと合わさることで、出だしのとっつきにくさをもたらしているように思う。
そんなわけで、この『Marjorie Finnegan, Temporal Criminal』という作品も、いきなり頭から第1話紹介するというようなやり方ではうまく行かないと思われるので、まず省略されている設定説明や、キャラクターというあたりを少し詳しく説明してから本編に移る。
■設定とキャラクター
まず設定。未来。どっかの未来。過去から未来まで、どの時代でも無制限に時間旅行が可能になっている。
大体この手の話だと、第1話か少なくとも2話の頭ぐらいのところまでのどこかで、見開き2ページとかで、なんかどのような技術開発がどこで行われて、時間旅行がどう可能になったか、その世界で人々はどう暮らしているのか、みたいな読者がななめ読みして、作者もそのくらいのつもりで書いてる説明ページが出てくるものなのだが、この作品ではそれがない。キャラクター達がどんどん動き、その中で大体察しろよ、という形。
主要キャラクター達が具体的に西暦○○○○年を活動基盤としているというような説明もほぼ出てこない。なぜなら時間旅行がそういう形で可能になってしまえば、どの時代に住んでるとかあんまり意味なくなるから。
そしてそうやって時間旅行が可能となると、過去に戻って歴史を改変しようとか、過去の財宝を盗もうと企む「時間犯罪者」が現れる。そしてそれを取り締まるための時間警察も登場する。
時間犯罪者らの行動によるマイナーな改変については、それを修正する装置も存在する。例えば未来から来た人間がその時代にない技術で人を殺すと、その時代にあった矛盾のない死亡原因へと修正されるというような。これについては作中でやや雑に説明されるけど。
そしてキャラクター。主人公はMarjorie Finnegan。時間犯罪者。特に大きな目的もなく、過去の重大な出来事の中で暴れたり、効果に売れるものや、気に入った宝石類などを盗んでくる、まあ今は使用が不適切になった言葉で言えば愉快犯というやつ。
そしてカバーにも出ているMarjorieにぶら下げられて情けない顔をしている生首。これが彼女の相棒(?)のTim。ある種の生体コンピューターといったところで、Marjorieの時間移動の操作などを行う。ここまで身も蓋もない生体コンピューターを無造作に出してくるのもそうないと思うが…。元は人間で、こうなった経緯も結構先で語られるが、それほどのドラマでもなかったり。
片目の女性時間警察捜査官Harri。実はMarjorieの妹。子供のころから姉の過剰なオフザケの犠牲にされ、片目もそれで失い、深く恨みを抱くMarjorieの宿敵。
つまりMarjorie Finneganがルパン、妹である時間警察捜査官Harriが銭形という構図。生首の相棒Timが次元大介なのか…?
そして、これ最初に書くべきだったんだろうけど、やや読みにくい感のあるエニス作品を読む心構え的なところから始めてしまったので後回しになってしまったが、この『Marjorie Finnegan, Temporal Criminal』がどんな作品かというと、エニスがおそらくは若い頃に大変親しんだであろうイギリスのテレビの『モンティパイソン』や『宇宙船レッドドワーフ号』あたりのテイストをふんだんに盛り込んだ作品。こう言ってしまうと、そっちを全然知らない人からすると余計にわかりにくくなるかもなあ、とは思うんだが、なんか風刺みたいな真面目な解釈を蹴飛ばすような歴史的事件の悪ふざけとか『モンティパイソン』的って感じだし、生首を生体コンピューターで持ち歩き、そいつと会話するとか、辻褄合ってるようでデタラメなSF設定とか、もろに『宇宙船レッドドワーフ号』なんだよな。
その辺、今簡単に観られるのかちょっとわからないけど、観られるようなら未見の人は絶対見ておくべきっすよ。そういうリソースがあって、こういうタガの外れた話が作れるようになるというものでもあるのだから。
なんとかスムーズに入れるようにと考えて、結果前置きが長くなり過ぎた感じではあるんだが、大体このくらいで事前説明・注意事項も出来たと思うんで、ここから『Marjorie Finnegan, Temporal Criminal』行きます。
Marjorie Finnegan, Temporal Criminal
■キャラクター
-
Marjorie Finnegan:
時間犯罪者。高価な歴史的遺物を盗み出すという実益と、度が過ぎた悪ふざけという趣味のため、過去から未来へ時間を奔走する。 -
Harri:
時間警察保安官補。Marjorieの妹。幼少時散々な目に遭わされた姉への怨恨も加えてMarj逮捕に執念を燃やす。 -
Tim:
Marjorieの”相棒”の頭部だけの生体コンピューター。 -
Lord Of Evil:
悪の帝王。 -
Stan Zanzibar:
ロード・オブ・イービルのある計画の協力者。悪魔の類いではない。Marjorieの元夫。
■Story
#1: Let All The Children Boogie
古代エジプト。紀元前1213年。ピラミッド内でラムセス2世の葬儀が行われている。
「偉大なるラムセス、全てのエジプトの王、ナイルの主、ファラオ。我等は貴方を死のヴェールの向こうへの最後の旅へと送り出します」
荘厳な墓室で、豪壮な棺の前で司祭が王を送り出す式辞を語り続ける中、数々の財宝が次々と運び込まれてくる。
壁際に整列し、王の死の国への旅立ちの随行を待つ男女四人ずつの奴隷。
前列の女性奴隷の一人が前に置かれた財宝に目を見開く。
みんなはあたしに言う;Marj、あんたのユーモアのセンスはイカレてる。
やり過ぎだ、不公正だ、子供じみてる…。
残酷だ…。
あたしに言わせれば…。なんか文句ある、あんた?
「…ここに、貴方の現生の名残は古代よりの伝統に従いミイラとされ、ここなる民衆の喉は耳から耳へと切られることとなります」
やり過ぎ?残酷?ねえ、あんたどなたの偉大なるアガサ叔母さんよ?
司祭の儀式の辞が続く中、一人の奴隷女が列から出て割って入る。
「そしてその者たちの命の血が流れ去った後、それらの魂は貴方に永遠の忠誠を持って従うでしょう」「あのう、悪いんだけど」
「その者たちの石棺の下に散らばった骨が、貴方の地上における姿を支え、そしてその魂は…」「ちょっと戻ってくれる?さっきのとこなんだけど」
不公正だって?あらら、お利口さんねえ!
「何だ帝国の女奴隷よ?」儀式の中断に怒りを見せる司祭。
「ええ、その耳から耳へってとこなんだけど。うーん…。あたしそこの彼と一緒にただ閉じ込められて、ゆっくり窒息死するんだと思ってたんだけど?」
子供じみてるってことだけど、でもね、そう言い切る連中が、本当にゲーテの『親和力』に沿って生きてるわけでもないでしょ。あたしの言う意味わかる?
「冒涜なり!この雌犬が話すということ自体、まして彼女の永遠の主人に言及するなど!」女奴隷に怒る司祭。
「このお宝全部運び出すには数時間必要なんだけど、わかる -グエエエ- そんじゃうまく行かないのよ」女奴隷は喉を切るジェスチャーをしながら言う。
「兵士たちよ、使命を果たせ!この女を殺すのだ!」司祭は命じる。
あたしは一度ゲーテに会ったことあるわ。18世紀を突っ走ってる途中で。ううん、実際会ったというのでもないけど。
後ろから近づいた兵士が奴隷女の首に向かって剣を振る。
女は咄嗟にしゃがみ込み、兵士の剣は彼女が被っていた黒髪のかつらだけをすくい取る。
下から現れたのはウェーブのかかった金髪。
愉快な奴だったわ。ピルスナーを知ったことかって感じで飲み干せる。
剣がすくったかつらにあっけにとられる兵士。
「チクショー、アホタレが!」腰巻の中を探る女。
それでみんなからはある理由でビッグ・ヨハンって呼ばれてた。あんたが考えてる場合の念のためだけど。
「これがあたしらのやり方だよ、どうだい、フフン?」
女は取り出したショットガンで兵士の胴体を吹っ飛ばす。
面白いのはね、彼の本名はGossなんだけど…

『Marjorie Finnegan, Temporal Criminal』より 画:Goran Sudzuka
結局のところ、アイツ舌足らずだったのよ。
知らないよねえ?
「ドクターに挨拶しなよ!」
奴隷女に扮していた女 -Marjorie Finneganは周囲に向かってショットガンをぶっ放す。
※ここでMarjがドクターと呼んでるのは、Doctor-Shotgun/L3 3 70B-Magnum-v4-SEというののことだと思うんだが、確証はない。画像も見つからないし。とにかくこのあたりでMarjがドクターと呼んでるのはショットガンのことだと理解してください。
* * *
9世紀、イングランド。海辺の村落。
「バイキングだ!」村人の一人が海を指さして叫ぶ。水平線の向こうから帆を拡げたバイキング船が村を目指して近づいて来る。
「奴らだ!バイキングだ!」「俺たちはお終いだ!」パニックを起こし逃げ惑う村民たち。
「そうだ。奴らだ」村の一軒の小屋の中から声がする。
屋根、壁が取り払われ、中からこの時代の物ではないカノン砲が現れる。
「大丈夫だ、私が見せた通りにやればいい。狙いをつけて…」村人に混ざる現代の軍服の男が言う。
砲が発射され、バイキングの船が吹っ飛ぶ。「この通りだ」
「問題は解決されたな。私が宣伝したとおりに。私を雇って良かったろう」軍服姿の男は言う。
狂喜する村人たちは、すぐに次の砲弾の準備を始める。「おいおい、実際のところそれが必要とは思わないんだが…」
続いて発射された砲弾により、船の残骸と難破者たちが吹っ飛ぶ。「わかっておいてくれたまえ。なかなかやめられない楽しみではあるだろう?」
「ただ、さらに多くのならず者共が存在することは忘れないことだ。だから君たちはブロンドとシルバーの襲来に備えなければならん。そして確かなこととして言っておきたいのは…」
そこで片足を失ったバイキングの生き残りが、海からナイフを構えてやって来る。「オーディンよ…!」
村人たちが撃ち込んだ砲弾で、バイキングの胴体が吹っ飛ぶ。「おいおい、さすがにそれはやり過ぎだぞ…」
「それは確かね。同様に一連の危険度の高い侵犯行為。ビッグブルーワンの時間法、9条、13条、及び修正108条において」
「反論はあるかしら、Otto?」
いつの間にかその場に現れ、そう告げる人物に驚き、返答に窮するOttoと呼ばれた軍服の男。「なんてこった。Harri」
「まさにそうね。小物のドイツ兵犯罪者さん。あんたは時間法により逮捕されたんだからね」立ちはだかる時間警察捜査官Harriが言う。

『Marjorie Finnegan, Temporal Criminal』より 画:Goran Sudzuka
* * *
それで、あたしがどこにいるかって?
ユーモアを感じて、泣き言をいうのはやめて、楽しんで時間の車線を下って行く。
古代エジプト、ラムセス2世のピラミッドの中。司祭が叫ぶ。「冒涜だ!その女を取り押さえて殺せ!」
棺の上に飛び乗り、ショットガンを撃ちまくるMarj。「捕まえてみなよ、へなちょこ野郎ども!」
ここまでくれば、要点もわかったと思うんだけど…。
名前はMarj。
時間犯罪はお遊び。
冒険が目的。
ジャンプで兵士の振るった剣を避けるMarj。その剣は奴隷の首を薙いで行く。
財宝が盛られたトレイの上に倒れ込むMarj。
加えて告白すれば、可愛いピカピカの輝くキラキラに弱いのよ。
「あ~ら、ベイビー、ママのところにいらっしゃい…!」
掴んだ大きな宝石の嵌まった装飾品を見てうっとりするMarj。
「お前が喰らう番だ、馬鹿め!」背後から叫び声。
「その魔術使いの女悪魔にとどめを刺せ!」司祭が叫ぶ。
「やれるもんならやってみな、クソ野郎!」振り向き兵士の顔をショットガンで撃つMarj。
そいつはあんたがショットガンをぶっ放す時に言うお決まりのセリフ…。
兵士が振り下ろす剣を足を開いて避けるMarj。
「トレド剣様かい!」
グッドドクターに関しての。そして彼とあたしは一緒に多くの仕事をこなしてきた。
そして、あたしたちがおそらく常に望むような連中の不正利益を守るために、世代を越えるような長きにわたってマヌケどもが怒ってきたこと…
「このみみっちいチンカス野郎が!」兵士に向かってショットガンを撃つMarj。
あんたおそらく昔からお馴染みのタイムトラベルについての疑問を問いかけるんじゃない?
そうねえ、例えばあたしがここで殺しちゃったうちの一人が、あたしの曾曾(エトセトラ)祖父だったらとか?
あるいは、あたしがマーティン・ルーサー・キングのひいおじいちゃんを殺しちゃったら、家系が無くなっちゃうとか?
あるいはあたしが踏んずけた白亜紀のネズミが、実は進化の重要なリンクだったとか?
転がって避けた兵士の剣が、Marjの腰巻を取り去る。
もう思い悩む必要はないわよ、ご友人。K-2001 Re-alignerがあなたの全ての時間的問題を解決します!
露わになった太ももに装着されていたスマホサイズのデバイス。
ある連中はこれをラプチャー・レイ、他のやつらはデウス・エクサーとか呼んでる。あたしはごく少数派なのだけど、シンプルにアンファッカー(下品過ぎなきゃいいんだけど、おばあちゃん)。
これがどう時間を修正するかというと…
襲ってきた兵士の剣をショットガンで受けるMarj。
新しい現実に即座にうまく嵌まり込む。
あんたの犠牲者が歴史それ自体の中で置き換えられる。
かくして、新しいマーティンのお爺ちゃん。新しい恐竜の害獣。そしてここが本当にお利口なところ。
ショットガンのグリップで、兵士の喉を突くMarj。
対象者:Thotep The Lazy
変更サレタ運命:無花果ヲ喉ニ詰マラセ死亡。
屋台で食べた無花果で喉を詰まらせる同兵士。
死人は別のセッティングへシフトされる。その時代に完全にあったなんらかの形に。
一人の兵士が口に散弾銃を突っ込まれ殺される。
対象者:Big Ojoser
変更サレタ運命:二輪馬車ニ轢カレ死亡。
別の兵士が顔面を掌底で潰され殺される。
対象者:Kaaper The Ugly
変更サレタ運命:鰐ニ食ワレ死亡。
あんたが関わっていない何らかの形に。
変則も無し。時間のねじれも無し。あたしたちみんながクジラに進化なんて馬鹿話も無し。
「私はここで独り言でも言っていたのか?こんな冒涜はもう沢山だ!」司祭が言う。「この無知蒙昧の雌犬を屠殺しろ!」
墓室の入り口には槍を構えた兵士の集団が到着する。
「ウーワオ!」
でも、自分の幸運を過信しないこと。アンファッカーが無しにできることにも限りがある。
「どうやらあんただけみたいね、カワイ子ちゃん」Marjは手に持った大きな宝石の嵌まった装飾品に言う。
少々のアホな原始人ってとこね。
「ジャンプよ」Marjは言う。
でも、『エイリアン4』のセットに核攻撃ってのはやりすぎじゃないかしら?
それほどのもんじゃないでしょう。
兵士たちの槍が一斉にMarjに迫る。
「ジャンプ!ジャンプ!ジャンプだってばあ!」慌てながら繰り返すMarj。
激しい白光がフラッシュし、Marjの姿はその場から消え去る。

『Marjorie Finnegan, Temporal Criminal』より 画:Goran Sudzuka
* * *
9世紀、イングランド。
「なあ、Harri、私はここで善行をしているんだ!別の見方をしてみろよ、あんたなら喜んで仲間に入れるよ」OttoはHarriに向かって言う。
「時間警察保安官補への贈収賄の試み」「なあ、私がこれまでやって来たことから考えてくれよ。私は実質的に改心したんだよ」「同警官を騙そうとする試み」
「あんたはスターリングラードに留まって、そこでの機会を得るべきだったのよ、Otto。輝く緑の浮遊物なんて放っておけばよかった」Harriは言う。
「おとなしく捕まるか、それともあたしの次の警察の過剰暴力への苦情になる仕事をさせる?」
「なんであんたはいつもそうなんだ、Harri?なんでやって来ては、全てを台無しにしなきゃならないんだ?」Ottoは言う。
「今私が連れて行かれたら、ここの人たちは完全に無防備状態になってしまうんだ。バイキングはいずれ戻って来て、彼らを切り刻んで犬の餌にしてしまうんだ」
Ottoの背後にいた村人たちも事態を察し始め、Harriに敵意を向け始める。
村人の中のひときわ大きな男が、大型の木槌を手に前に歩み出る。
「スカイゴッドと驚異の武器は渡さんぞ、片目の売女!さあ!お前の邪魔への対価を教えてやる!」
「スカイゴッドですって…?」「そうさ、スカイゴッドなのだよ!Harii」Ottoは胸を張る。
「驚異の武器が好きなら、ハゲ君、これも試してみなよ」
Harriは持っていた銃を、超高速で連射する。
「え?」木槌の巨漢の全身が、頭と木槌を持った手を残し、穴だらけになる。
対象者:Ognor Magnesson
変更サレタ運命:自慰中ノ事故ニヨリ死亡。
何処かの小屋の中で下半身裸で、オレンジを口に咥え、梁から首を吊る木槌の巨漢。
巨漢の死体を見て唖然とする村人たち。
「さて、Otto…。Otto?」周囲を見回すHarri。いつの間にかOttoの姿は消えていた。

『Marjorie Finnegan, Temporal Criminal』より 画:Goran Sudzuka
その場から必死に走って逃げて行くOtto。
「あー、救いようもないドイツ騎士団のクズが…」その後ろ姿を見つけて言うHarri。
「ど、ど、どんな種類の女悪魔なんだ、あんた?」怯えながら訊ねる村人。
「昔より優しくなった種類よ」左手に装着したグローブのメカニズムを操作しながら言うHarri。
「あんな間抜けは大昔に撃ち殺しとくべきだったのよ」
グローブから発射された電撃波が、Ottoを捕らえる。悲鳴を上げるOtto。
倒れ、股間を押さえてもがくOtto。
「調子はどう、Otto?」言いながら歩み寄って行くHarri。
「知ったことか…。俺は尿道に1万ボルトの電流を流し込まれたところなんだ…。ビッチめ…」身動きも取れず辛うじて声を出すOtto。
「ハイハイ。そういうことは可愛いミスお気遣いさんに言ってね」Harriは言う。「ジャンプ」
あとには呆然とする村人たちが残される。
* * *
薄暗い部屋のデスクの上で、様々な機器に繋がれ置かれ、顔をしかめている生きた生首、Marjの相棒Tim。デヴィッド・ボウイの「スターマン」を歌うMarjの声。
Marjの隠れ家。部屋には様々な時代から盗んできた宝が雑多に置かれ、壁にはデヴィッド・ボウイやタンクガールのポスター。そこでシャワーを浴びて来たMarjが身体にタオルを巻いただけで、「スターマン」を歌いながら、ご機嫌で踊っている。
Marjの腰がデスクに当たり、機材と共に揺すられたTimが抗議の声を上げる。「おい!」
Timはお家で留守番して、技術的なアレコレをやってくれるやつ。彼はいつもはとても魅力的なのよ、ホントのところ。
でもねえ…、まあ。
「今日のジャンプアウト、ちょっと遅かったんじゃない、Timmyボーイ?」デヴィッド・ボウイのポスターに投げキッスを送りながら言うMarj。
「なあ、毎マイクロ秒20億の変数を追跡することを考えてくれよ」Timは言う。
「進入のためにタイムラインを観測し、目標物の取捨選択を維持し、そして5秒もじっとしていられないどこかのイカレたヴァルキリーの時間的出現を管理する苦労を考えてくれ」
「そしてそれを時代遅れのガラクタを使ってやらなきゃならんこともな、まったく…!」Timは自分の周囲の機器を眺めながら言う。
「イカレたヴァルキリーっていうのいいわねえ」ピザを食べながら言うMarj。
首だけになっちゃったのは、実際のところ、あたしのせいとも言える。それがあたしが彼と一緒にいる理由の一つ。
それと、彼は仕事についてはホントに有能っていうところ。
あたしは彼にどっかのところで新しい身体を用意してあげると約束してる。でもね、その手のことをお膳立てするのは超ー難しいのよ。いろんな理由で。
そういうわけで、ええと、あたしは本当のところはそれを優先事項とはしてない。言ってる意味わかってもらえるといいんだけど。
「ところで、今日はどうだったんだ?またやや成功ってところか?」Timは言う。
「ええ、キラキラ一個だけ」
「とってもいいやつ、そうねえ、ムム、これはとっとくのでいいかもね」ピラミッドから持ち帰った宝飾品を見ながら言うMarj。
「Marj、なあ、俺たちは新しいことを考えなきゃならん…!」Timが言う。
「大きなアップグレードなしにこの場所を隠れ家として使い続けられると思わないでくれ!時間の流れそのものの中の物質的な位置に固定するという作業を、一から始めるというのがどれだけ危険かわかって欲しいということなんだよ」
「何か冷たくなったピザよりいいものないかしら?」丸窓から外を見ながら言うMarj。
「Marj!安定装置はいずれ劣化するんだ!俺たちは時間破綻することになるんだぞ!」
外から見た隠れ家。外周に螺旋状のステップを取り付けた円柱状の塔が、底部の鎖で時間の流れの中に繋ぎ止められている。時間の流れの渦のような空間を飛ぶ、頭がボクシンググローブの鳥の群れ。
「ごめん、なんて言ったの?」塔の中からMarjがとぼける声。

『Marjorie Finnegan, Temporal Criminal』より 画:Goran Sudzuka
「忘れてくれ…」諦め顔で言うTim。
「もう一枚でそれが最後か。Marjを押し込み強盗で終わらせたくないでしょう」ピザのパッケージを開けながら言うMarj。
「ああ、そういうことになるからだよ。君は絶対にそんなちゃんと服を着てない格好でのし歩かなきゃならんのか?」困り果てた顔で言うTim。
「あら、可哀そうなTim坊や。あたしがシャワーで色々こすり落としちゃったことも話すの悪いタイミングかしら?」ピザを食べながら言うMarj。
「戦闘後の緊張からの緩和、その手のあれこれ…」
「ああ、自分にまだアレがあればと願うよ…」Timが言う。
「馬鹿なこと言わないで、アレどこ行っちゃったの?」「君は俺の言ってる意味がわかってるだろう!」
絶望的な表情で空(天井)を見上げるTim。
Marjは再び「スターマン」を歌いながら踊り始める。
それがあたしが彼と一緒にいるもう一つの理由。
悪い子のMarj。
* * *
隠れ家の中のそんなMarjの様子が、天井近くに仕掛けられたと思われる隠しカメラにより、何処かへ映像が送られている。
モニターを見ながら話す二人の男の声。ここでは仮に、男A、B。
A:「クソ航空マイルさ。お前のは常にそれを使うところで、ホームレスの孤児で足が無くて目が見えなくなりかかってるってことになるアプリがあるのかい?俺のはそうなってるからな」
B:「おい、それはあくど過ぎるぞ…!」
A:「ああ?それがどうした?」
B:「わかったよ、私はあんたがそういう人間であるのは分かってるさ。でもそいつはマジでひどすぎる!」
A:「何でもいいさ。おいおい、彼女すげえじゃねえか」
モニターの中では、Marjが踊り続けている。
A:「旧石器時代から18世紀の神聖ローマ帝国にやって来て、そいつを考え直してくれと泣きついた奴がいるの知ってるか?」
B:「本当か」
A:「いや待てよ、お前と彼女は…。そういうことだよな…」
B:「ああ、だけどあいつはそれほどすごいってわけじゃないよ、そういうことだ」
A:「くだらねえ!」
B:「何がだよ?」
A:「お前マジで彼女がベッドでクズだって言おうとしてんのか?冷凍マグロとか?」
踊り続けるMarjのタオルがずり落ちかける。
B:「いやその…、つまりだな…」
A:「どうも信じられねえな。もうちょっとましな嘘つけよ」
モニターの中ではMarjが床に落ちたタオルを拾っている。
A:「ちょっと待て、俺たちなんか見逃したんじゃねえか?」
B:「あっ」
A:「えい、クソ…!」
モニターの中ではMarjがタオルを巻き直している。
A:「こいつはお前の責任だぞ。お前がくだらねえ話を延々と続けたせいで」
B:「でも…」
A:「ふざけんな!メジャーリーグでプレイすんなら、ボールから目を離しちゃいけねんだよ!たとえ一瞬でもな!」
B:「悪かったよ…」
A:「ふう、何にしろだ、カメラバグを彼女のセキュリティを抜かせて送り込んだのは一つの成果だが、お楽しみ盗撮映像が手に入る程度のことでしかねえ」
A:「俺たちのやることはだ、他の誰かを見つけてすべてのリスクをおっ被せることだが…」
B:「ああ、誰かを密告するのは楽しいことじゃなかったがね。それが元妻だったとしても」
A:「いざって時に躊躇わなかっただろうな?」
B:「ああ、でも…、つまり、規範ていうものがあるだろう。世間の仁義みたいな…。なあ」
A:「そんなもんはねえよ。見て学べだ」
モニターの中ではMarjが踊り続けている。
* * *
Marjの隠れ家。
「侵入!侵入!Marj、侵入者だ!」Timが叫ぶ。寝室で着替えたMarjが駆け付ける。
「何者かが侵入した!どうやったのかはわからん。どうして網をくぐったのかわからんが、侵入してきた!」
右手にショットガン、左手にTimに接続されたケーブルを掴み走り出すMarj。
「準備して、Tim坊や!すぐに秒読みよ!」
ドアを開けて外の塔を取り巻くステップに出たMarj。
「ジャンプで脱出するのか?」「その通りよ!やる気満々でこんな近くまで来た奴に構うべきじゃないわ!脱出-検討-計画」
「あたしたちが相手にしてるのが誰かわかったら」ステップを走り上りながら言うMarj。
「戻って来て…」その時、Marjは前に立つ侵入者が何者か気付く。
「ああ、あんただったの」
そこに立っていたのはMarjの妹、時間警察保安官補のHarriだった。

『Marjorie Finnegan, Temporal Criminal』より 画:Goran Sudzuka
ここまでが第1話。ストーリーの方向がある程度わかる第3話までやろうと思っているのだけど、ちょっと長くなりすぎるのであとは少し端折ってという感じになる。コメディ作品ゆえ、会話/モノローグ部分をちゃんとやらないといまいち面白さが伝わりにくかったりするのだけど。
#2: Hey Little Sister, What Have You Done?
そしてHarriはMarjがやった時間犯罪の数々を挙げて糾弾して行く。
ゴルゴダの丘、磔にされたキリストの足元での悪ふざけ、暗殺後のケネディ大統領を乗せた車で暴走、などなど。
それらを修正するのは簡単ではなく、多大な人員と時間が必要になっている、と糾弾するHarri。
「ちょっと待って、それはあたしじゃない。あたしはトランプ大統領の頭の上にウンコ乗せてないよ。気持ち悪すぎる」「じゃあ、誰がやったっていうのよ」
「それはあたしじゃないって!他の全ては認めてるのに、なんで今更嘘つく必要があるのよ?」
その後ろでTimが小声で言う。「Marj、俺は完全に未接続状態だ!装置が無けりゃジャンプのための計算に5分以上はかかるぞ!」
「こんなところのあたしをどうやって見つけたの、ちなみに?」
「話をそらさないで。Marjorie Finnegan、合計17182件の違反行為、コード紫を通り越して赤、12の法令と300の修正事項により…」
「あんたを逮捕するわ」
「ついに来たね!あんたが死刑宣告をしに来ることになると思ってたよ」Marjは言う。
「あたしがバッドガールで、あんたがグッドガール。あたしを止めに来たってわけだね!」
「終わりよ」Harriの左手のグローブが起動される。

『Marjorie Finnegan, Temporal Criminal』より 画:Goran Sudzuka
* * *
噴火中の火山に囲まれ、噴煙で太陽の光もほとんど届かない地に聳え立つ不気味な城。隠しカメラの映像を見ていた二人の男の声が聞こえてくる。
A:「ところでお前、どうやってこんなところ見つけたんだ?」
B:「ああ、ここ安かったんだぜ」
城の中。ここで二人の姿が明らかになる。
Tシャツの上に皮ジャケット、小太りで無精ひげの見た目がパッとしない男が、A。
裸の赤い肌に頭には角、赤いマントを羽織るいかにも悪魔的な見かけの男が、B。
彼らの素性はおいおい明らかになるが、とりあえず現段階では、A、Bで。
「私はここの景観が気に入ってるんだ。そこのバルコニーに立って、拳を振り上げたりして高笑いしてみろよ。もう一本飲むかい?」冷蔵庫を開け、ビールを取り出しながら言うB。
「うむ、お前自分の部下を彼女のところの調査に送りたいってことだったよな。それで?」ソファの上でモニターから目を離さず言うA。
「おかしいな、奴ら電話に出ないぞ…」「想像はつくな」「え?」「少々保留にしておけば、連中、ホットな金髪の乱闘が拝める、ってことなんじゃねえのか?」
「聞いてくれ、私の部下はプロフェッショナルなんだぞ…!」「それがカメラアングルがこの数分変らない理由なんだろ」
「プロフェッショナルが聞いてあきれるぜ。ここで危機に陥ってるのは、ほとんど人類創生からの存在の再編成ってことなんだぜ。だが、ちょっとしたガールオンガールに妨げられてるってことは…」
Marjの隠れ家の塔から少し離れたところで待機しているBの配下の三人の男。飛行するボート様の乗り物の三人の男はいずれも透明に偽装されている。
カメラを対峙するMarjとHarriに向けたまま、その場に停止している。
* * *
隠れ家の外のステップのMarjとHarri。
Timを背後に隠し、話を続けて時間を稼ごうとしているMarj。Timは必死にジャンプのための計算を続ける。
Harriはグローブから放った電磁波でMarjのショットガンを取り上げる。
続いてTimに電磁波を浴びせ、機能を停止させる。
「あんたが逃げ出そうと考えてるときのためにね」Harriは言う。
「なんてことするのよ、Harri。正々堂々とやってよ」Marjが持つTimの頭は、「リブート リブート」と繰り返し続ける。
「ええ、そのつもりよ。長い間、この時を楽しみにしてたのよ」左手のグローブを外しながら言うHarri。
* * *
「中に入れ、すぐに、すぐにだ。言ってるだろうが。おい、何のためにお前たちに金を払ってると思ってるんだ?」悪魔的な見かけの男Bが携帯に叫ぶ。
「駄目だ、それをポルノサイトにアップロードしてる時間なんてない。とにかく仕事しろ!」
「俺は、あいつらがお前の言うこと全てに震えあがってると思ってたんだがな…」煙草を点けながら言うA。
「何に?なんでだ?」「だからさ、奴らはお前をアレだと思ってんだろ…」「誰だって?」「ほら、悪魔?」「なんで連中がそう思うんだ?」
「つまり…」「そうか、私の名前のことだな?」
「そうなんだよ、学生時代にはよく言われたもんさ。私の名前はStanなんだが、私が”a”をひとつ書き忘れてると思ってたんだよ」
「久しぶりに聞いたよ。とにかく連中は中に入ったぞ」
楽しげに言うStanを、少し呆れ顔で見返すB。
そして3人の透明人間たちが、Marjの隠れ家の中に入って行く。慌てて外に飛び出したため、警報装置は解除されたままになっている。
「連中あらゆるところを探すってわかってるんだろうな?あの場所をバラバラにするぐらいに」Aは言う。
透明人間たちは、手当たり次第に部屋の中を探り始めるが、3人の無能ぶりにAのいら立ちはつのり始める。
「あいつらこの10秒ぐらい近くに寄った気配もねえ。探すべき物を知ってるようにも見えないぞ」
「わかった、わかった、メールを送ってるから!」焦って携帯を操作するStan。
「このささやかな協同作戦について後悔させんなよ、Stan。俺は悪の帝王、ロード・オブ・イービルで、辛抱と温和な理解の帝王じゃねえからな」Aは言う。
「やってるって!」焦るStan。
ここでこの二人について確認。
Aの小太り無精ひげの方が悪の帝王、ロード・オブ・イービル。以下はそっちの方が良さげな気がするのでロード・オブ・イービル。
Bのレッドデビル的見かけの方がStan。
ロード・オブ・イービル>Stanという関係で、ロード・オブ・イービルが自身のある計画のために、金とコネのあるStanを仲間に引き入れている。
途中でロード・オブ・イービルが、透明人間たちのことを「Shamacamo」と一度だけ呼ぶのだけどこの語句については調べてもわからなかった。「camo」から見て迷彩のことだと思うんだが、「Shama」については、ステルスとか、アーミーとかの方向で推測できそうだけど、そこに数時間とかかけてもなんなんで、ここは申し訳ないが分かりませんということで。
* * *
塔のステップで戦うMarjとHarri。
Timは一旦再起動が完了するが、戦いに巻き込まれ、再度機能不全に陥る。
この辺二人の会話で、Marjの時間犯罪関連の面白なども出てくるのだけど、長くなりすぎるので省略。

『Marjorie Finnegan, Temporal Criminal』より 画:Goran Sudzuka
* * *
「彼女のイカレっぷりに規則性なんてものはありゃしねえ。バカな学者ですらねえ。すべては馬鹿げた事故だったってことだ…」
「彼女のやることはいつの時代だろうとひたすら走り回り、見た目が気に入ったものをひっつかんで逃げるだけ。そして今回彼女は、たまたま俺が求めるものを掴んだのさ…」
ロード・オブ・イービルは話す。
「どうしてそれが彼女のとこにあるってわかったんだい?ああ、連中はまだ見つけてないが…」ビールを手渡しながら言うStan。
「ああ、お前のプロフェッショナル達がな。俺がやらなきゃならんことは34世紀のアレクサンドリアナまで昇ってって、図書館を探すことだと思ってた。あらゆる時間の尺の中で、その場所が存在を確認されてるところだからだ」
それで俺はそこらを尋ね回った。で、なんでかみんなただ親切にしてくれねえで、まあわかるよな。それでわかったのは、それが到着したその日に誰かが盗み出し、直ちにそれはそこに存在したことが無いものになっていた。
それで、俺たちが監視カメラ記録の中で見た、あっという間に現れてブツを掴んで消えた、笑う形のいいケツが誰だったと思う…?
未来的な図書館の通路で、大量の護衛兵士を惨殺し、係員を締め上げるロード・オブ・イービル。
「そいうことか…。それでなんていう物だったっけ、アポクリファか?」Stanが尋ねる。
「ハイポクリファだ。アポクリファみたいなもんだが、本物だ」ロード・オブ・イービルが答える。
「基本的にはそいつは切り離されたもんだ。そのせいで見た感じは…」そこでモニターを見ていたロード・オブ・イービルが目を見張る。
画面の中ではポルノ雑誌を眺めていた透明人間が、もう一方の手で束ねられた古い書類を持っていた。
「そいつだ」
「よし、これで修正できるぞ。遂に解決だ」ロード・オブ・イービルは喜んで言う。
「よし、仕事は完了だ。片付ける必要はない。直ちにそこから出ろ」Stanは携帯から指示する。「修正って、正確には何を…?」
「そりゃあ、完全に総てのことさ、もちろん。お前なんも見てなかったのか?」ロード・オブ・イービルは言う。

『Marjorie Finnegan, Temporal Criminal』より 画:Goran Sudzuka
* * *
塔のステップでのMarjとHarriの闘争は続く。そこでTimがジャンプの用意が出来たと告げる。
「言っておくが、俺は100パーセントの状態じゃないぞ!通常のスムースな移動は約束できない!」「とにかくやって、Tim!」「準備完了!秒読み開始!」
「メガハッタン、エーディー3090年。ジャンプ ジャンプ」
MarjとTimがタイムジャンプのフラッシュに包まれる。「間に合った!ジーザス!ホントにどんなお礼すればいい?」「なあ、失敗してタイムクラッシュなんてことになれば、君の足はティラノサウルスのチンコになってるかもしれんぞ!」
だが、フラッシュが収まったとき、Marjの姿のみが消えていて、Timはその場に残される。「Marj?」
一方、Marjはただ一人、未来のニューヨークの遥か高空に投げ出されていた。
「Tim?」
#3: The Marj Who Fell To Earth
高空から落下し始めるMarj。
塔ではジャンプし損ねたTimを、Harriが拾い上げる。「31世紀じゃさぞ面白いことになってるんでしょうねえ」
Marjは31世紀の超高層ビル群へ向けて落下を続ける。
「俺を降ろせ!俺は人間だ。人間としての権利がある!」逆さに吊り下げられ、Harriに言うTim。
「あんたは10パーセントだけ人間。だから10パーセントの権利は持ってるわね。直ちに彼女にロックオンするか、さもなきゃあんた100パーセントのフットボールになるわよ」
未来ニューヨークのメガハッタンの高層ビル群へ落下するMarj。
「ボールをそっちのコートへ~」Timの頭を放り投げ、足を引くHarri。
更に落下するMarj。
Harriがキックした瞬間、Timの頭はジャンプする。
次の瞬間、TimはMarjのもとへと送られ、地面すれすれ危ういところでMarjの落下は止まる。

『Marjorie Finnegan, Temporal Criminal』より 画:Goran Sudzuka
「怖くてアソコが破裂しちゃいそうだったわよ。あら、こんにちわみんな。ニューヨーク訪問楽しんでる?」
立ち上がったMarjは、周囲であっけにとられている社会見学の小学生たちに挨拶する。
* * *
Stanの城。
「遂に来たか!よこせ!」ロード・オブ・イービルが言う。
「遂に…、ハイポクリファだ、遂に…」テーブルの上にハイポクリファを広げ、見入るロード・オブ・イービル。
その後ろで、透明人間たちがStanと話している。「それで、金の方は今払ってもらえるんすか?」
「ん?」とロード・オブ・イービルが生返事を返し、Stanが何でもないと遮る。
「いい加減にしろ、彼にあんな口の利き方をするんじゃない!」Stanは透明人間たちに言う。
「でも…」「彼はロード・オブ・イービルなんだぞ、時間チンピラめ!お前らチンポの皮を頭蓋骨まで引き延ばされて人生終りたいのか?」
「それで、いつ払ってもらえるんで?」「私が払うときだ!文句や世迷言を並べやがって、あの男が俺たちに何をもたらしてくれるかわからんのか?」
「私たちは慎重なる時間的回収という中に完全に新たな未来を見出しているのだ!これは一つの試験であり、我々がこれに合格すれば…。彼は我々にあらゆる種類の仕事を依頼してくることになるだろう!想像してみろ!」Stanは熱く語る。
「我々は彼の最も頼れる取引先となるんだ。可能性は無限大だ…!」
「ええ、そりゃスゴイです、その通りになれば…」「他にどうなるというんだ?」「彼はロード・オブ・イービルなんでしょ?その通りの意味で?」「それが?」
「それで、もし彼がなんかの世界の終わり、ハルマゲドンへのカウントダウンみたいのを企んでるとしたら?」「一連のこれがそれに関わるものだったとしたら?」「おい、くだらないことを考えてるんじゃ…」
「Stan?」そこでロード・オブ・イービルが声を掛けてくる。
「お前が言ってたバルコニーってどこだ?お前が悪の勝利が達成された時に高笑いするってやつ?」「え?ああ、すぐそこだ。そのドアから出て少しの螺旋階段を上ったところだ」「よさげだな」
ロード・オブ・イービルの高笑いが鳴り響く。
「つまりな、そういうことだ…!」Stanは3人の透明人間に言う。
* * *
31世紀へ飛んだMarjとTimは、とりあえず行きつけのバーに落ち着く。
カウンターに座り、なぜHarriが自分たちの隠れ家を見つけたのか話し合う。追跡できるような足跡を残したはずはない。時間警察がそんな捜査ができる技術を有しているはずがないことは、少し先の未来を度々チェックして確認している。
「あたしここが好きなのよ。流れから離れて落ち着くのにカンペキなところだわ」「そうかい?」「ねえ、あたしたちってここで会ったんじゃない?」
「そうだったと思うが…」Timは何故か少し苦い顔で口を濁す。
すっかり落ち着いたMarjは、店の常連にも声を掛け始める。
カウンターの隣に来た客がギネス3000を注文。注がれるそれを見て、これが好きなやつを知ってると話すMarj。
それはその当人、Harriだった。
「それで、あたしたちどこにいるの?」
走って逃げだすMarj。
人をかき分けジャンプする。
悠々とビールを飲んでから、それを追い始めるHarri。

『Marjorie Finnegan, Temporal Criminal』より 画:Goran Sudzuka
BC29年。淫靡な乱交が行われているローマの酒宴の中を走り抜けるMarjとそれを追うHarri。
1863年。米南北戦争。南軍兵士をかき分けて走るMarj。
1066年。ルマンディー公ウィリアムによるイングランド征服。血みどろのヘースティングズの戦いを横目で見ながら逃走を続けるMarj。
7000万年前。白亜紀。ティラノサウルスとトリケラトプスが戦っているところへ飛び込むMarjとHarri。
そこで一旦Harriを引き離したMarjとTimが、次にジャンプした場所はStanの城の中だった。
「ちょっと待って、何…?」柱の陰から先を窺うMarj。その先にはStanとロード・オブ・イービルが通廊の中で立って話をしていた。
「ブランクにして、Tim。あたしたちをブランクにして、すぐに」
「俺たちはブランクになった。彼らの2時間先に位置されている。何があったんだ?」Timが尋ねる。
「ロード・オブ・イービルとStan Zanzibar?あたしの元亭主が?」「え?」「あの二人が一緒で何をしてるのよ?」
ブランク化により姿を認識されなくなっているMarjとTimは、二人の話が聞こえるように近寄って行く。
「あのデブが君の元夫なのか?」「違う、もう一人の方」「角がある方か?」「あいつはただのアホ。ロード・オブ・イービルはマジヤバイ」
「そんな特別なようには見えないが…」Timは訝る。
「ええ、でもあいつはそう。例えば子犬の頭を引っこ抜いたり、宇宙帝国全体をろくでなしに変えたり、エイズグレネードを群衆の中に放り込んだりみたいな…。クソマジでヤバイ奴なのよ、Tim。全く洒落にならないぐらいに」
「わかったよ、何にしろ…、Harriは数秒のうちに追いつくぞ。俺たちはもう少し飛んでおいた方が…」
「あのチンポの先ども何を話してるのかしら?」Marjは更に二人に近付く。
「ちょっと、あれあたしのよ…」Marjはロード・オブ・イービルが持っているハイポクリファに気付く。
「何だって?」「あれよ、あの…」MarjとTimは、既に二人の横に立っているが、ブランク化により彼女たちの姿は向こうからは見えていない。
「言ったように、こいつはハイポクリファと呼ばれている」ロード・オブ・イービルは話す。
「あたしはあれが結構値の張るものだって聞いたのよ。それでアレクサンドリアナまで行っていただいて来た。でも知り合いの故買屋達は誰もどう扱えばいいか知らなかった。それでそのまま持ってることも忘れてたんだけど…」Marjは言う。
「こいつは真実なんだ。あるいは元々真実として書かれた。何にしろ」ロード・オブ・イービルはStanに向かって話す。
「だが、様々な呪術まじないの類いが形を成して行くにつれ、こいつは世に出回るには適さないとみなされるようになった。あるいは政治的不適切とか。俺好みの言い方をすれば、頭蓋骨の中の宇宙のクソ創始者ってところか」
「こいつは編集され、隠され、検閲された」「つまり…?」
「すべてのことだ。豚の丸焼きを喰らう例の偉大なるユダヤ人ども。預言者は実はしょっちゅう一杯ひっかけに行ってたとかな」
「レビ記の天使は本当は男を漁って町をうろついてたとか、仏陀がブチ切れてどっかの用心棒の歯をへし折った夜の話とか…」
「基本的には、連中全てがどれほどのクズだったかっていう断片の寄せ集めだ」
Stanは言う。「なんてことだ!すべての神の話は本物の真実だって言うつもりか?」「違う」
「私がやってきたことにより…。私はすべてはすべては戯言だと思ってたんだ。なんであろうと自分の望むことができると思ってた!私は山のような負債を負わされることになり、決して…」
「違うと言っただろう、Stan」「あんたそれは真実だって」
「俺が言ってるのは、これが真実として書かれたってことだ。これが現実やら事実に何か影響するなんてことは言ってねえ」ロード・オブ・イービルは言う。
「俺がここで話してるのは信仰についてのことだ」
「ブランクを維持して、次のジャンプを用意することはできないぞ。こんなところでHarriに捕まったら…」Timが困り果てて言う。
「黙って、聞いてるんだから」「Marj…!」「シッ!」
「信仰っていうもんが全てに関わるものだからだ。信仰が裸の猿を目覚めさせたんだよ」ロード・オブ・イービルは言う。
「お前はそれが死ぬだろうと思い続けて来た。だが、世紀を渡り連中はずっとそれを維持し続けて来た…」
「ずっとって?どうやって?」Stanは疑問を呈する。
奴らは世にも恐ろしいクソをやり続け、それを神の言葉と言い続けて来た。
子供たちを前に満面の笑みを浮かべるカソリックの神父。
大勢の人の目の前で焼身自殺する仏教僧。
群衆の中で自爆スイッチを押すムスリム。
「待ってくれ、あんたのこのでかい計画って…。あんた過去に戻って、この全てを書きなおそうっていうのか?」Stanは驚愕して言う。
「あんたはそんなデカいことを改変できやしない、誰もがそれに気付き、あらゆる警報を鳴らすことになるぞ!」
「お前が常に思い込んでいたことが、いかに違う方向だって気付いたのか?」ロード・オブ・イービルは言う。
もちろんそれは警報を鳴らす。それに関わる連中は常にぞっとするほど明敏だ。
十戒を掲げるモーゼ。
それが終わるのにどれぐらいかかるかって話さ。もっと御立派なやつでさえイカサマ。真実として書かれたもんじゃないってことだ…。
「それで俺は過去に戻る」ロード・オブ・イービルは言う。
「そして、このちょいと気の利いたやつを連中が排除したところに置きなおす」
「そしてこいつがオリジナルの馬鹿話に完璧に合致してるがゆえに、誰一人として気付くことはねえ」
「そして直ちに、過去、現在、未来を通じたすべての時間で…」
「それはそこにずっと在ったことになる…」Marjが驚愕の顔で呟く。

『Marjorie Finnegan, Temporal Criminal』より 画:Goran Sudzuka
「Marj。進入を感知した。あのイカレた妹以外には考えられないぞ!」Timが言う。
「でも…。駄目よ、Harriはこれを見るべきだわ。あの子はこれについて知る必要がある…」
「勘弁してくれ。俺がこんなかわいい顔で刑務所に入れられたらどんな目に遭うかわかるだろう?転移準備完了だ!」
「それで…、それによって何が起こるんだ?」Stanが困惑しながら言う。
「人類創生からの生命は途方もないクソになるだろうな、俺の想像するところ」ロード・オブ・イービルは答える。
その横で言い争うMarjとTim。「何考えてるのよ?」「隠れろ、Marj!2秒後にブランクが解除されるぞ!」
「現在様々な聖典は、平和、愛、許しと静穏を教えている。そして人間存在は、大体が進行中の屠殺場になってるんだ」ロード・オブ・イービルは言う。
「俺がそこら中でその二面顔の偽善を切り替えたら、連中どうすると思う…?」
柱の陰に走り込むMarj。
「そして時間軸の中にそれら全ての種が蒔かれたら、俺はフェイズ2へと移行する…」
柱の陰で、続くロード・オブ・イービルの話を聞くMarj。横でTimが小声で言う。「ジャンプ!」
次の瞬間、MarjとHarriは同時に太古の石槍を持った原始人の前に現れる。
「このねじ曲がったクソ女、あのクソTレックスあたしを丸吞みにしたのよ!」恐竜の唾液と血で汚れた怒りの形相で叫ぶHarri。
「あら、あんたならなんとかできると思ったから!聞いてよ…」「クソくらえよ!あたしはあいつの喉からTジャンプしなきゃならなかったのよ!」
問答無用で襲い掛かるHarri。草原で乱闘する二人。横で眺めている原始人は…。
「畜生、Harri、聞けって!」Harriを蹴飛ばすMarj。
MarjはHarriにのしかかり押さえつけて話す。
「どうやってあたしを見つけたの?」「離せ!」「Harri!あたしがどこにいるかどうしてわかったの?」
「密告、そうでしょ?匿名の密告。誰かがあたしを指した!」「なんであんたが…?」「ハメられたからよ!奴らあたしの隠れ家を調べなきゃならなかった。奴らあんたを使ってあたしを死ぬほど怖がらせたのよ!」「戯言を!」
「あれはStan Zanzibarとロード・オブ…うげっ!」HarriはMarjの腹を膝で蹴り上げる。
「Harri…、チャンスを頂戴…、ちゃんと説明する…」「チャンスですって?」
「あたしがクリスマスの朝起きた時に頭をスキンヘッドにされてた時にチャンスをもらえたの?あたしのスポーツブラがヒアリでいっぱいになってた時に?Joan叔母さんのアナルビーズがあたしの枕の下に押し込まれてた時に?」Harriは怒りの声を上げる。
「あれだけのことをやって来て、あんた今チャンスが欲しいっていうの?!」
そしてHarriはmarjに襲い掛かり押さえつける。
「正直に…、神に誓って…、全部仕組まれたことなのよ…!」Harriの下で辛うじて言うMarj。
「可愛いミスお気遣いさんに言うことね、Marj」
「可愛いミスお気遣いさんって誰?」
「知ったことか!」渾身のパンチを放つHarri。
「Marjorie Finnegan、あんたは完全に、徹底的に、確実に、疑う余地なく、時間犯罪でクソ逮捕されたわ」
手錠を取り出しながら、Harriは告げる。
かくして、Marjは逮捕され、刑務所へと送られる。
一方で、歴史の陰に埋もれていたすべての聖典の原典であるハイポクリファを書き換え、すべての信仰を改変するという、ロード・オブ・イービルの壮大な悪の企みは進んで行く。
唯一この計画を知るMarjは、ロード・オブ・イービルを阻止することができるのか?
1巻物で全部説明するつもりもなかったので、短く書けると思ってたのだけど、結局また長くなり相当時間もかかってしまった。
そういえば、一か所すぐにわかんなくて時間かけて調べるのも嫌になって飛ばしたとこあった。ごめん。2話の最初のあたり、中世頃のなんか偉い人の後ろをMarjがデカいディルドー着けて追っかけてるところ。多分欧米人なら一目瞭然なのだろうけど。例えば燃える本能寺で消火器振り回してれば、日本人ならすぐにわかるけど、外の国ではというようなもんだろう、とか言い訳しとこう。まあ自分が歴史的知識が無さ過ぎて、この人歴史の教科書で顔に落書きされる定番ぐらいに有名な人なのかもしれないけど。
とにかくギャグとかコメディというのは、どうやっても人によって伝わりにくいというところも多く、なんか『モンティパイソン』や『宇宙船レッドドワーフ号』とかを引き合いに出すので限界かと思ってしまう。
単純にこのギャグが通じないのは頭の固い馬鹿、とかいうつもりはなく、実は笑い全般みたいなところで、このギャグに反応するしないは人によってかなり細かく違い、もしかしたら人それぞれの脳の動きレベルぐらいのもんじゃないかと思ったりもするので、多くデータを取って調べると学問とかになるもんなのかもと思ったりする。どっかでやってるのか聞いたことないけど。
もう少し後で出てくるロード・オブ・イービルの生い立ち、彼がなぜそうなったか、なんてところもかなりそう来たかと思わせるものなんだけど、わからない人にはわからないのかも。
なんとかガース・エニス作品をやっと1作、AWA Studios作品を2作というところで、両方共に数多く紹介できるように頑張らなければと思うところです。
作者について
■Garth Ennis
1970年、北アイルランド出身。1987年にJohn McCreaと友人が開いたベルファスト最初のコミックブック専門店で、その後多くの作品を共作することになるMcCreaと出会う。1989年『2000AD』の姉妹誌である『Crisis』にて、作画John McCreaによる『Troubled Souls』でデビュー。このデビュー作のキャラクター達は、その後Avatar Pressからの『Dicks』で同じくMcCreaの作画で復活している。
1990年には『2000AD』での作品の発表も始まり、John Wagnerから引き継ぐ形で、『Judge Dredd』のメインライターとなる。その後、1991年からは米VertigoでJohn Ridgwayから引き継ぐ形で、2番目のライターとして『Hellblazer』を手掛ける。1993~1995年にはDCで、日本でも翻訳された『Hitman』を作画John McCreaで。1995~2000年には『Hellblazer』の後半の作画を担当した英国出身の鬼才 Steve Dillonと共に、代表作となる『Preacher』をVertigoから。マーベルでは1995年の有名な『Punisher Kills the Marvel Universe』が最初の作品となるが、作者の了承なしにセリフが書き換えられたことに怒り、一旦は関係を断つ。その後、和解し『The Punisher』シリーズを始めとする多くの作品を手掛ける。2006年、DC系列Wildstormで開始されたが6話で出版が中断された『The Boys』をDynamite Entertainmentが引き継ぎ、全72話で完結し、Amazonでテレビシリーズ化された。
いや、ホントに略歴で申し訳ないんだが、今回はこのくらいで。ガース・エニスについてはその全貌ぐらいのところをやりたいという意志は常に持っているのだけど、とにかくこのくらいはやらなければというものと、Kindle Unlimitedで読める新しい作品を紹介したいというのの間で後回しにされているところ。本当はエニスによる『Judge Dredd』や、『Hellblazer』、『The Punisher』の全体像ぐらいまでやりたいところなんだが、とりあえず代表作『Preacher』を一日も早くやれるよう頑張りますです。
■Goran Sudžuka
1969年、クロアチア出身。クロアチアでアニメーションから仕事を始め、1990年にクロアチアの著名なコミック作家Darko Macanのシナリオによるホラーショートストーリシリーズ『Albert the Butler』でデビュー。同作品はクロアチアの他、ドイツでも出版された。1999年からはアメリカでDC、マーベルを中心に多くの作画を手掛けている。バンドデシネ作品もいくつかあり。
知らないアーティストだったんだが、結構なベテラン。『Y: The Last Man』とかも部分的にやってるのになあ。まだ全部読めてないから。ごめん…。なんかガース・エニス好みの少々暑苦しめの画がいい味出してると思った。
Marjorie Finnegan, Temporal Criminal
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