Beneath / Steven DeKnight + Michael Gaydos

地下に潜む恐怖!テキサス-メキシコ国境を舞台としたホラーアクション!

今回はSteven DeKnight/Michael Gaydosによる『Beneath』。2024年にDeknightのDeKnight IndustriesからComixology Originalsでグラフィックノベルとして出版されました。

結構それぞれに大物によるチームなんだが、畑違いなんかもあるんで、やや説明必要か。
まずストーリーのスティーヴン・S・デナイトについては、日本語のWikiもあるんでこの表記でいいか。脚本家・テレビディレクター・プロデューサー・映画監督としてはかなり有名な人で、代表作としては『スパルタカス』、『バフィー・ザ・ヴァンパイア・スレイヤー』、『デアデビル』など。コミック作品としては、この作品以前には2022年のマーベルの『Wastelanders』で2話を手掛けている。
Michael Gaydosは、あのブライアン・マイケル・ベンディスと『Jessica Jones: Alias』や『Pearl』を描いた人。『Pearl』についてはベンディス作品として紹介の予定なんだが、やっぱこれ『Jessica Jones: Alias』まで一旦遡って書かなければ、とかあったり、他に色々モタモタしてたりで遅れてる。本当はそっちやってからの方がわかりやすいんだが、というところなんだが…。
まあとにかく、テレビ業界の大物デナイトがコミック業界への本格的な進出を目指し、リアルタッチの作画で知られるMichael Gaydosと組んで、自身のDeKnight Industriesから出版した作品ということです。

Beneath

■キャラクター

  • Jess:
    メキシコとの国境に近い町の保安官補。

  • Curtis:
    メキシコとの国境に近い町の保安官。

  • Mirella:
    メキシコからの不法入国者の娘。怪物に襲撃された唯一人の生き残り。

  • Pritcher:
    地元の自警民兵組織のリーダー。

  • Tanner:
    Pritcherの弟。民兵組織の一員。

  • Andy:
    民間経営の不法移民拘留施設CoreCivilの閉鎖を求める市民団体のリーダー。

  • Frank:
    民間経営の不法移民拘留施設CoreCivilの所長。

  • Izzy:
    CoreCivilの診療所に勤める女医。

  • Mike:
    CoreCivilの職員。

  • Miguel:
    CoreCivilに収容されていたメキシコからの不法入国者の青年。

■Story

テキサス-メキシコ国境。

夜。高い国境のフェンスの前の荒れ地。アルマジロが地面を嗅ぎまわっている。
何かを察知し、頭を持ち上げるアルマジロ。
様子を窺い、そして急ぎ走り去って行く。

フェンス前の地面の蓋が開けられ、中からその縁に手が掛けられる。
大人が一人やっと通れるような方形の穴から、一人の男が這い出して来る。
男は穴に向かって、スペイン語で呼びかける。
そして、続いて出てくる男。
男は穴の中にいる自分の娘である少女に向かって手を伸ばし、穴からの脱出を手助けする。

穴から次々と現れる不法入国のメキシコ人たち。
「身を低くして、静かにしてろ」最初に出て来た案内役の男が、出て来た男女に命ずる。
「あいつの言うとおりにしろよ」二番目に出てきた男が娘に話す。「ええ、父さん」

最後にもう一人の案内役の体格のいい男が、やっとで穴を抜け出し、最初の男と並ぶ。
「よく聞けよ。俺たちが動いたら動け」「俺たちが伏せろと言ったら、地面にキスして、俺たちが言うまで動くな…」

そこに闇の中からライトを強く照らした数台のピックアップトラックが現れる。国境付近で不法入国者を捕まえる武装した自警団組織。
不法入国者たちを見捨てて、慌てて逃げ出す案内役の男たち。
だがトラックに回り込まれ、銃を突きつけられて逃走を阻止される。

「お前らは合衆国の土地に不法侵入している」自動小銃を手にしたリーダーの男が、捕らえた不法入国者たちに告げる。「これは市民逮捕だ」
「こいつらをジップタイで拘束しろ」リーダーの男が命じる。
娘を乱暴に拘束しようとした男に抗議する父親が、銃床で手荒く殴られる。

「Bobby、トラックの通信機を使え。国境警備隊に俺たちがこそこそ入り込もうとした新しいクカラチャ(ゴキブリ)の群れを捕まえたと伝えろ」リーダーの男が指示する。
突然自警団の一人の男の足が地面へと潜り込み、男が叫び声を上げる。
男の声に緊張し、銃を構え直し身構える男たち。
「銃を降ろせ!銃を降ろせ!」リーダーの男が男たちに言う。「マヌケがホリネズミの穴を踏み抜いただけだ」
「畜生、Tanner。手を貸してくれ。ブーツが何かに嵌まっちまってる」
リーダーの男、Tannerは男が足を引き抜くのを助ける。「よし、スリーで行くぞ。ワン…、ツー…、スリー!」

勢いよく引き抜いた男の足は、膝から下が引きちぎられていた。絶叫する男。
「足が!俺の足が!」
パニックに陥り、銃を乱射する近くにいた男。
「何かが地中にいるぞ!地面の下だ!」Tannerは言う。

地面に向かって銃を乱射する自警団たち。
自警団もメキシコ人も無差別に地面に半身を引き込まれ、殺され始める。
「走れ!」逃げ出す不法入国者たち。父親は娘を抱きかかえ走る。

「あいつら逃げちまうぞ!」「放っとけ、Tanner!トラックに乗るんだ!」
Tannerは必死に走り、トラックに乗り込みエンジンをかける。「クソクソクソクソッ」
だが、トラックは前に進まず、後部から地中に引き摺り込まれて行く。
「クソッタレ!俺にこんなことさせるもんか!」叫ぶTanner。
「俺はアメリカ人だぞ!」

地面に引き摺り込まれて悲鳴を上げる男を見ながら、必死に娘を抱きかかえて走る父親。
その足が地中に引き込まれ、父親は娘を放り出し倒れる。
「父さん!」「逃げろ、Mirella!逃げろ!」地面に引き摺り込まれながら叫ぶ父親。
娘Mirellaは砂地の中につきだした大きな岩の上に昇る。
「父さん?」だが、振り返ったその先にはもう父の姿はない。
叫び声を上げるMirella。

『Beneath』より 画:Michael Gaydos

*  *  *

翌日昼間、既に多くの警察車両や救急搬送車などが集まり、捜査が行われている同現場に、保安官補のJessがやって来る。
前夜、謎の襲撃から唯一人生き残り、岩の上に逃げていた少女Mirellaが、そのまま日中の陽に焼かれ、危険な状態となっているのが通りがかりの運転手から発見される。通報によりやって来た警察官により付近に散乱する遺体の残骸が発見され大きな事件として捜査が始まっているという状況。
「クソッ。Maynard、何を見つけた?」袋を手にした鑑識医に声を掛ける保安官。
「Bobby Calahanだと思う」鑑識医は袋の中身を見せる。
そこには頭部のみとなった、前夜地中に引き摺り込まれた男。「あるいは彼の残骸だ」
彼の残りはどこにある?と尋ねる保安官。
鑑識医はそこら中にバラバラになって埋まっていると答える。

「コヨーテの仕業だと思うな。スリーパーセンターズが国境を越えて来た不法入国者を捕まえ、そこで失敗した」保安官は言う。
「スリーパーセンターズは武装したバカどもだし、まとまって動くわ。コヨーテの群れに負けるとは思えない」Jessは言う。「それにもしコヨーテの仕業なら、なんでバラバラにして行き当たりばったりに埋めてまわるのよ?」
「わからんよ、ドラッグをキメていかれてたとかじゃないのか」そして保安官はJessに唯一の生存者である少女に話を聞くように指示する。

※スリーパーセンターズ(Three Percenters)は、2008~09年頃にオバマ大統領の当選に呼応する形で起こり始めた、アメリカ極右民兵組織運動。全国的に統合された組織ではなく、各地で個別に発生したムーヴメント。アメリカ独立戦争時にイギリス軍と戦ったのは、植民地のわずか3パーセントだったという主張に由来する。

そこに一台のピックアップトラックが、激しくクラクションを鳴らしながら駆けつけてくる。
「クソッ、来たか」保安官が呟く。
車から降りてきた男、民兵組織のリーダーであるPritcherは保安官に向かって言う。「あいつはどこだ?」
「落ち着けよ、Pritcher。まずは…」「ふざけるな!俺の弟はどこなんだ?Tannerは!」
ずっと弟の携帯にかけているが、応答がない、と怒りながら話すRritcher。

「あなたの弟に関係するものは、まだ何も見つかってないわ」「だが、見たところ彼に同行していた全員が、バラバラにされすぐに埋められているようだ」
コヨーテの仕業か、と言うPritcherに、それを否定してJessは言う。「カルテルかもしれない、今や奴らは別の牙を持ったケダモノよ」
「その考えも間違いじゃないな。もしあんたの弟と仲間たちがぶつかったのが、ドラッグの運び屋だったとしたら…」保安官は言う。
「どんなメキシコのクズ野郎がやったかは問題じゃない。ここで起こってるすべては違法行為なんだぞ」怒りの表情で言うPritcher。
「それでお前ら二人はただそこにつっ立ってヘラヘラしながら、それが起こるのを見過ごしてるんだ」

救命車両の前にいる少女に気付くPritcher。
唯一の生存者だが、まだ何も話さないと説明するJess。
苛立つPritcherは、自分が話させるといきり立ち、Jessと言い争いになる。
そこで、スコップを手に近くを調べていた保安官補の一人が、保安官に声を掛ける。
彼が見つけたのは、地中に埋まった車のナンバープレートだった。

現場に待機していたレッカー車により、車は地中から引き出される。
それは前夜、Pritcherの弟Tannerが乗っていたピックアップトラックだった。

ピックアップトラックの惨状にその場に座り込むPritcher。その様子を見て、保安官とJessは相談する。
「こいつは厄介な事になるな」「そのようね」「子供をここから連れ出そう。Pritchの注意がまたあの子に向かうのは好ましくない」
「署に連れて行くの?」「あんな小さな子のための用意はない。CoreCivilには診療所があったな?」「閉鎖になるんじゃなかった?」
「まだいくらかのはぐれ者が拘留されてる。最後の政府施設への移送は明朝のはずだ」
「あの子は一晩は安全に過ごせるはずだ」

保安官とJessの乗った保安官事務所の車は、後部席に少女を乗せ、市民団体の抗議行動により閉鎖に追い込まれた民間経営の不法移民拘留施設CoreCivilに到着する。
施設の前には閉鎖が決まったにもかかわらず、市民団体がプラカードを掲げて陣取っている。
車内にJessの姿を見止め、市民団体のリーダーであるAndyが近寄って来る。
「まだこんなところで何してるの?あなたたちは勝ったんでしょう」Jessは言う。「ここは明朝には店じまいになるのよ」
「俺たちはファシストの最後の一人が門から出て行くまで、動くつもりはないさ」
「この場所から退去して、50ヤード下がり、交通の妨害をしないように」言葉とは裏腹に、親し気に持ってきたスラーピーを手渡すJess。
「市民の権利を侵害しないでくれ」「努力するわ」「こっちもだ」
Andyは手渡されたスラーピーを飲む。

施設内に入る保安官と、少女を抱きかかえたJess。
「君が俺にスラーピーを買ってくれたことなんてなかったことは言わせてくれよ」「やめてよ、こんにちわ、Mike」
「保安官補、何かあったのかい?」声を掛けられた施設の出入りを監視している職員、Mikeが応える。
簡単に事情を話すJess。「Izzyにこの子を診察してもらいたい。食事もさせてもらえればと思うんだ」保安官が言う。
もうここは閉鎖になるのだし、受け入れはできない。所長であるFrankと相談してくれ、とMikeは言う。

所長のFrankは、この施設が閉鎖されることへの不満を延々と述べつつも、とりあえず少女を診察し、一晩預かることを許可する。
診察室の女医Izzyが少女を診察する。炎天下に長時間さらされていた影響はあるが、問題はないと告げる。
少女がショックにより何も話せなくなっているというのは、現場の医師と同意見だ。
明朝引き取りに来るという条件で、Izzyは少女を預かることを承諾する。

収容施設から出発する保安官とJess。外はもうすっかり暗くなっている。
何か食べて行く?と尋ねるJessに、一晩中かかるほどの書類仕事が待っていると答える保安官。
「どうしたんだ?」外の様子に疑問の声を上げる保安官。
施設の前に陣取っていた市民団体の姿はなく、プラカードがそこら中に投げ捨てられたまま散らばっている。
「誰か見える?」「いいや、連中が残したヒッピーの戯言が地面に落ちてるだけだ。連中は母なる大地やらなんやらに、もっと敬意を払ってると思ってたがな」
「みんなどこ行ったのかしら?」Jessと保安官は車から降り、周囲を見回す。

懐中電灯で照らしながら、周囲を見回す二人。
先にJessがAndyに渡したスラーピーを拾い上げる保安官。その身体がいきなり地面に引き込まれ、胴から血が噴き出す。
「何かが俺を掴んでる、Jess。俺に噛みついてるぞ!」地面に引き込まれながら叫び手を伸ばす保安官。
その手を掴むJess。

だが、その腕のみが千切れ、その場に尻もちをつくJess。
その腕を放り出し、慌ててパトカーに戻りエンジンをかける。

『Beneath』より 画:Michael Gaydos

やみくもに走らせたパトカーはフェンスを突き破り、収容施設の敷地に突進して行く。
そして施設内のライトのポールに激突し、停車する。
「なんてこった!頭がいかれちまったのか?」言いながら番小屋から出てくる門衛。
だが、その男も叫び声を上げ、血をまき散らしながら地中に引き込まれて行く。

車から降り、底から異様な音が響く地面を走り、施設入り口に向かうJess。
「開けて!Mike!早くドアを開けて!」激しくドアを叩きながら叫ぶJess。
その剣幕に戸惑いながら、ボタンを押して解錠するMike。
頭から転がり込み、倒れ込んで足でドアを蹴って閉めるJess。
その場で荒い息をつくJess。制服のシャツは保安官の血にまみれている。
「なんてこった」Jessに駆け寄るMike。「何があったんだ?」

フロントゲートをどうしたんだ、と怒りながらやって来る所長Frank。
MikeはJessから聞いた話を説明するが、所長はそんな突飛な話を信じようとしない。
門衛のHankもやられたという話を聞き所長は言う。「Mike、Hankを呼び出せ」「もうやってますが、応答がありません」
「じゃあ番小屋まで行って、奴のチンポを踏ん付けて来い、まったく」
所長の命を受け、銃を装備した職員の一人が出て行く。

「何か見つけたか、Wyatt?」通信機に話すFrank。「何もありません。保安官補のお陰でライトは散々なことになってる」
「彼に戻るように言って、Frank」Jessは心配げに言う。
「あんたにはこの施設での権限はないよ、保安官補」Frankは言う。「Wyatt、応答しろ。Hankの様子は…」
「何だこりゃ?地面が!地面が動いてる!こいつは…」通信機からの叫び声。そして銃声が続く。
「Wyatt!Wyatt、ふざけてる場合じゃないぞ!…Wyatt?」通信機を見つめ、困惑するFrank。
「彼、死んだわ。このバカ」落胆して言うJess。

保安官事務所に連絡して応援を呼ぶようにMikeに指示するJess。だが、既に電話線は切断され、応答がない。
「携帯を使って」Jessは言うが、職員はここは圏外で使えないと答える。
「通信も駄目だ。100ヤードそこそこの範囲でしか使えないんだ」Mikeが言う。

そこで施設の照明がすべて消える。
彼らを襲った謎の怪物が、地中のケーブルを切断したのだ。
バックアップの発電機が作動し、施設内は暗い赤い照明に再び照らされる。
続いて天井から、Jessが地中に聞いたのと同じ異音が響いて来る。怪物の鳴き声?
「屋根だ!奴は屋根にいるぞ!」天井に向かって次々とショットガンが発射される。

天井が破れ、何かが落下して来る。
ショットガンを向ける職員たち。「待って!」Jessが彼らを制止する。
天井から落下してきたのは、市民団体のリーダーAndyだった。
呆然として床に座り込むAndyに、Jessが問いかける。「何なの?Andy?外に何がいるの?」
「死だ」Andyは目を見開いたまま呟く。

『Beneath』より 画:Michael Gaydos

*  *  *

Andyの話によると、陽が落ちて夜になったところで地下からの攻撃が始まったということ。あまりに素早い攻撃で、自分以外は全員やられ、フェンスが破られたのを見て施設内に入り、唯一の逃げ道と思われた屋根に上ったと話す。
Andy唯一人が生き残った理由は、彼が持っていたライト。地下の怪物は光が苦手で、それを向けることで逃走の時間が稼げたということ。

非常用電源はどのくらい保つのかとFrankに尋ねるJess。
5~6時間だろうとの答え。日の出まで2時間ほどは施設は闇に包まれることになる。
施設内に残っていた銃器・弾薬、そして懐中電灯が集められる。懐中電灯は収容中の不法入国者にも渡される。
施設の床の厚みは6から薄いところでは4インチ。地下の怪物がそこを破れないという保証はない。
Jessは駐車場の車を使い、応援要請に向かうことを決意する。

駐車場に出て車に向かうJess。だがその足音を聞きつけて、地面から怪物の鳴き声が聞こえ、近寄り始める。
そこで初めて地下の怪物たちの姿が明らかになる。それは鋭い爪と牙を持った人型のもの。地中から多数現れたそれらがどれほどの数がいるのかはわからない。
絶体絶命の危機に陥ったJessを救ったのは、弟の死の真相を探るべく強力な火器を携え施設に乗り込んできたPritcherだった。

『Beneath』より 画:Michael Gaydos

施設内に逃げ込んだJessとPritcher。だが、結果Pritcherもその施設内で足止めされることとなる。
その一方で、施設内の不法入国者の収容房では、薄い床を突き破り、怪物たちが襲撃を始める。
何とか撃退したものの、多くが犠牲となり、生き残った数名は房から出される。

複雑に、敵対・反目し合う人間関係の中、施設内に閉じ込められた人々。
彼らは怪物たちの襲撃から逃れ、朝を迎えられるのか?そして彼らを襲う怪物たちの正体は?

大体読んでわかると思うんだが、この作品はややこしいいつ敵に回るかもわからない人間関係で、時間制限というものも乗った形で閉鎖空間に閉じ込められ、外部からの脅威に襲われるという、ホラー映画などのパターンを踏襲している。
紹介した部分はそのシチュエーションに至る経緯というところなんだが、やっぱりすべての画像を持ってくるわけにもいかんので、その辺の人間関係を説明するシーンをきちんと説明できていないのではないかという気分も強い。そこでこういう作品でよくある人物関係相関図というのを作ってみました。これでいくらか飲み込みやすくなるといいんだが。

こういうパーターンを踏襲しつつ、人間関係、状況を作り上げて行くスティーヴン・S・デナイトのストーリーテリングは、さすがという感じで、ストーリーとしては大変面白い。
そしてMichael Gaydosのリアリスティックな作画も大変素晴らしい。
ただこの作品、それらを組み合わせて作品として完成させて行く、マンガ=コミック的演出というものがやや乏しい…。
どうなんかな、最近それほどないようで、あんまりピンと来ない人もいるのかもしれないが、アニメの画像をマンガの形に構成したアニメコミック?というようなのがある、あるいはあったじゃない。何かそういったもののような印象を与える所も多かったりする。

こういう場合、多くは作画担当Michael Gaydosの責任という方向に行ってしまいがちなんだが、この作品に関しては少し違うのではないかと思う。
これはそもそもがストーリーのスティーヴン・S・デナイトによる、映画など映像作品のようなコミックを作りたいという意図によるものと考えるべきではないかと思う。つまり、デナイトがこれはこういう作品にしてくれ、とGaydosに伝えこういう形の作品となったということ。ある種の見せ場や大きな動き以外は、映画やテレビモニターのような均質なサイズで表現するとか。
割と最近、コミックのセリフの流れとしての量やリズムというようなことにちょくちょく言及しているのだが、そういう観点から見てデナイトのセリフ/テキスト部分全般というのはそれほど悪くない。こういう形で外から入ってきた作家がよくやらかすのが、実際に話されるセリフの感覚的な量と、コミックの中で文字として書かれる量が上手く一致せず、文字だらけになってしまうというパターンがあるんだが、そういうところから見てもデナイトはコミックというものがよくわかっている作家と言えるだろう。実際のところ、そこがちゃんとできているからアニメコミック的というような印象が出てきてしまうので、そこが駄目ならそれ以前の絵物語というようなものになってしまったかもしれない。

実は当初、この作品は見るべきところは多いんだが、ちょっと残念なところがあるぐらいのスタンスで紹介するつもりだったんだが、それも違うかなと思い直した。というのは、なんか色々バンドデシネとかも読んでて、そもそもこれちょっと読みにくいやつだぐらいの認識で読んでいたりするものもあるのだが、実はものすごく大雑把に分ければこの作品と同じ方向の表現なのではないかと気付いたりしている。つまり一般的なコミックの表現方法や文体から少しずれているんだが、そういうやり方の中でこの作品は読みやすいというような傾向のものなのかもとか?
なんか自分で書いていてもいまいち考えがまとまっていない感じがして、上手く伝わってる気がしないんだが、とにかくこの作品の微妙な違和感を、一概に失敗と見るべきではないのかもしれんということ。まあこの作品についてはデナイトの意図みたいなもんが結構わかりやすいので、そこで結論付けてしまいがちになってしまうんだが、やはりもっと広い視点で考えなければという反省点。
これは大変難しいところなのだが、コミックの変遷・進化というものを考えながら作品を読んで行くとき、そこに一つの正しい方法などというものを考えるべきではないと思いつつも、読みやすく伝わりやすい方法というようなものを一つの基準のように考えてしまう。そこがどう変わってきたのかというような考えで。例えば前述のセリフの書かれ方なんかもその一つなんだが。そういう基準というような考えを常に一方に持ちつつ、作家・アーティストの独自の表現については柔軟に、幅広い視点で考えて行かなければと思う。やっているつもりだったんだがワシもまだまだやね。反省。

自費出版により制作され、Comixology Originalsからこの作品を出版したスティーヴン・S・デナイトは、コミック業界への参入について強い意思を持っているのだろう。なんかこのぐらいの人となると、しばらく前のアメコミイケイケ期だったなら結構鳴り物入りぐらいで、マーベルDCの年間恒例だったコミックイベントの軸ぐらいのところを任されたところじゃないかなと思うんだが。
電子書籍版はComixology Originalsブランドで出ているこの『Beneath』だが、プリント版については後にMad Cave Studiosから出ているのに気付いた。以前に紹介したJustin Jordanの『Breaklands』もMad Caveからプリント版が出てたり。やっぱり現在新しい作家というところでは勢いがあるMad Cave、Vault辺りはもっとちゃんと見て行かなければと思うよ。
業界が上向きの時と、沈滞している時ではそれなりの状況に合わせた見方があるだろう。この時期スティーヴン・S・デナイトが出したこの『Beneath』は色々な意味でひとつ押さえておくべき作品だろう。時々思うんだが、アメコミってところがあんなに上向きの時じゃなければ、私イチ押しの怪人ジョナサン・ヒックマンがこれほどの大物作家になることはなかったのではなかろうか。いや、それは良かったんだけどな。

作者について

■Steven S. DeKnight

1965年生まれ。なんか日本のWiki見ると1964年生まれになってるんだが、少し前間違って伝わってた時期があったのかもしれない。脚本家、テレビディレクター、テレビプロデューサー、映画監督としての代表作については先に書いた通り。まあ英語の方のWiki見てもその手の情報しかないんだが。あ、日本版タイトルについては、なんかな、って感じのが多かったんでこっちでは元のやつで書きました。こういう微妙な邦題ってある程度時間経つとオリジナル題と照らし合わせることすらひと手間ぐらいになるんだよなあ。なんか最近そういうのホント嫌になって来てて…。
コミック作品としては、結構昔2011年に『スパルタカス』のコミカライズらしい『Spartacus – Blood & Sand』というのがDevil’s Dueから出ている。…んだが、本人のAmazonページには載ってない。まあ色々悪評も高いDevil’s Dueだし、作品的にも不満だったのかも?その後『バフィー・ザ・ヴァンパイア・スレイヤー』のDark Horse Comicsからのコミカライズも手掛けているらしいんだが、なんかDark Horseも版権なくなったんだか販売してないんでよくわからない…。そして2021-22年のマーベル『Wastelanders』があって、2024年のこの『Beneath』となる。
コミック作品としての続く最新作は、2025年に『Hard Bargain』がHumanoidsから出ている。1940年代のクラシックなハードボイルド探偵を主人公としたヴァンパイアものらしくて結構気になるんだが、現在のところプリント版のみでKindle版は未発売。Humanoidsの出版方法いまいちよくわかってないんだが、プリント版ある程度売ってから電子を出すんか?それともこれは出ないやつなのか?Humanoidsのサイト見に行ってみると電子書籍版も販売してるんだが?まあHumanoidsなので、Kindle版出たらKindle Unlimitedで手軽に読めるようになるかもしれないんで、その際にはなるべく早くお伝えします。これも以前『Eden』のところで書いたHumanoidsの米市場を考えたグラフィックノベル戦略の一つなんだろう。
コミック作家としてのスティーヴン・S・デナイトの今後の活躍にも注目せよ。

■Michael Gaydos

生年・出身地等は公開されていない。ちょっとキャリアなどもよくわからない。2000ADで結構有名なシリーズである『Devlin Waugh』を2話ほど手掛けてるようなんで、イギリス出身なのかと思ったけど、出身地アメリカとなってる。よくわからないんで2001年のベンディスとの『Alias』から始める。多分それ以前にも何かやってるはずだと思うんだが…。
『Alias』(2001-04)は、その後『The Pulse』(2004-06)、『Jessica Jones』(2016-)と続き、その後2015-19年に3シーズンでテレビシリーズも制作された、元スーパーヒーローの女性私立探偵Jessica Jonesを主人公とした最初のシリーズ。Gaydosは『Alias』と『The Pulse』の最後の#11-14と、『Jessica Jones』のベンディスがストーリーを担当した2016-18年の作画を担当している。
2001年といえば、ベンディスもまだマーベルで仕事を始めた初期ぐらいの頃で、デビューからしばらくの自身が作画も担当していた時期からのコミック表現にこだわった、ある種前衛的というような手法がこの『Alias』でも多く試行されている。ベンディスにとって長期にわたってコンビを組んでいるMichael Gaydosというのは、自分の考えた表現を形にしてくれるMichael Avon Oemingと並ぶような相棒といった存在なのだろう。そしてそれがその後の『Pearl』へと繋がって行くこととなる。
本当にこの辺書かなきゃならないこと多いんだが、もうすぐやる予定の『Pearl』の時にもう少し詳しく。なんか結局去年そこまで届かなくて、来年こそはやると思い続けてて、もうその来年なっちゃったじゃん…。
その他の仕事としては、ジョナサン・ケラーマンのベストラーシリーズ小児臨床心理医アレックス・デラウェアシリーズのコミカライズなんてのもあったり。なんかもはや日本ではアレックス・デラウェアって本店の方で言っても?ぐらいになっちゃってるのかもしれないけど…。この辺も今回の『Beneath』同様リアルタッチというところを買われてかもしれないなと思うんだが、なんとなく全体の仕事を俯瞰すると、このMichael Gaydosという人、むしろ個性派アーティストというポジションなのかもしれない。まあ2000AD『Devlin Waugh』とか、そうそう外国の只者アーティストが起用されるところじゃないしな。ちょっと今回スティーヴン・S・デナイトメインという方向になってしまったが、『Pearl』の時には、Michael Gaydosもっと突っ込んでやって行きますので。

なんか1月も末ぐらいのところで今年最初となってしまいました。年末大掃除で少々体調を崩してほとんど寝て年越しする羽目になったり、まあその他諸般の事情というようなところなのだけど。昨年冬体調崩し連鎖みたいなの起こして、ちょっと寒い時期慎重になってるというのもあるかと思うけど。まだ寒い時期が続いてやや慎重に動くというところになるかもしれんけど、やらねばならないことは山積みなんで、出来る限り頑張って行きたいと思います。

Beneath / Steven DeKnight + Michael Gaydos

■Beneath

■Hard Bargain

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