Black Hammer 第5回 / Jeff Lemire + Caitlin Yarsky

Black Hammer Reborn!Black Hammer第2部!

前回第4回のTPB第4巻『Vol.4 Age of Doom Part Two』にて、農場に閉じ込められたヒーローチームの謎、そしてその行く末は解決し、ここから始まる第2部『Black Hammer Reborn』。物語はその20年後から始まります。

作画はDean OrmstonからCaitlin Yarskyに交代。TPB全3巻となる『Black Hammer Reborn』。今回はその第1回として『Black Hammer Volume 5: Reborn Part One』のストーリーを紹介して行きます。
まあ色々と予定が狂い、大幅に遅れた言い訳はもういいか…。とにかくここからBlack Hammer再開です。

Black Hammer 第5回

Volume 5: Reborn Part One

■キャラクター

  • Lucy Weber:
    かつて父から受け継ぎBlack Hammerとなったが、現在は引退している。

  • Elliot:
    Lucyの夫。

  • Rosa:
    Lucyの娘。

  • Joseph:
    Lucyの息子。

  • Amanda Reyes:
    私立探偵。かつては刑事でLucyと共に事件解決に活躍していた。

  • Lucy Weber (20年前):
    20年前、Black HammerだったLucy。

  • Amanda Reyes (20年前):
    20年前、刑事だったAmanda。

  • Skulldigger (20年前):
    Spiral Cityのヴィジランテ。腕力型で、場合によっては殺人も辞さない。

  • Doc Robinson (20年前):
    第2次大戦中ヒーローチームでDoc Andromedaとして活躍した科学者。

  • Lightning Rod (20年前):
    Spiral Cityの小物の悪党。

  • Colonel Wierd:
    あらゆる時空間にランダム不連続につながるパラゾーンの住人。

■#1

20年後。Lucy Weberは二人の子供を持つ家庭の主婦となっていた。
ありふれた家庭の、少し慌ただしい朝の日常風景。
タブレットで動画を観ながら、モタモタと朝食を食べる小学生の息子Josephを急かす。
言うことを聞かなくなってきている15歳の娘、Rosaは家の中でサングラスを掛け、昼食代をせびって来る。
夫Elliotは、スラックスが見つからず、半分だけ出勤の用意を整えた姿で家の中をうろつく。
娘と夫を送り出し、Lucyは息子Josephを学校に送るため、車に乗り込む。
そして、そんな中でふと、かつて自分が父から引き継いだ最強のヒーローBlack Hammmerだった頃を思い出す。

『Black Hammer Volume 5: Reborn Part One』より 画:Caitlin Yarsky

1996年。
Spiral Cityの街中では、怪人Black Holeが暴れていた。胸に空いたブラックホールに周囲の人や物を次々と吸い込みながら、Spiral Asylumに収容されているすべての囚人の解放を要求する。
そこに空を飛んで現れたLucy=Black Hammmer。
LucyはハンマーをBlack Holeの胸のブラックホールに吸い込ませ、中から破壊することで彼を制圧する。
人々の称賛を浴びながら、去って行くBlack Hammer…。

そして現在。
かつては新聞記者だったLucyだが、異次元の農場へのしばらくの失踪、印刷業界の不振などを経てキャリアを失い、現在は中堅広告会社のコピーエディターとして働いている。
業務中に、現在Spiral cityで活躍している民間の特殊犯罪対策チームT.R.I.D.E.N.Tの記事を見ているところを、嫌味な上司から咎められうんざりする。
そこへ、友人Amanda Reyesからのランチの誘いのメールが届き、顔をほころばせるLucy。

Amanda Reyesは、かつてLucyがBlack Hammmerだった頃、ともに多くの事件を解決した友人。当時は刑事だったが、現在は退職し私立探偵をやっている。
待ち合わせた店にやって来たLucy。ランチとは言ったが先に着いていたAmandaは、既に飲んでいくらか酔っているようだ。
店内のTVで報道されているT.R.I.D.E.N.Tのニュースに鼻を鳴らすAmanda。私たちがやっていたことはもっと違っていたはずだ。
そのことについてはもう考えないようにしている、と言うLucy。AmandaはLucyの前に、封筒を置く。それを見て顔を歪めるLucy。
その時、轟音が鳴り響き、窓ガラスが割れ、店内のものは引っくり返り、散乱する。

慌てて外に飛び出すLucyとAmanda。
逃げてくる人々と逆方向に、騒ぎの元へと走り、そこへたどり着く。
かつてのヒーローたちを称える銅像の横に、次元の裂け目と思われるものが開いていた。
巨大な目玉。捻じれ歪んだ建物。千切れ白骨化した死体。かつて見たパラゾーンにも似ている?

直ちに駆けつけるT.R.I.D.E.N.Tチーム。
現場は封鎖され、LucyとAmandaは追い払われる。

『Black Hammer Volume 5: Reborn Part One』より 画:Caitlin Yarsky

T.R.I.D.E.N.Tチームに食い下がろうとするAmandaを止めるLucy。
あれを放っておいて去ろうというのか、と怒るAmanda。
私たちに何ができるというの?もうあれは私たちの仕事じゃない、と背を向けるLucy。
「あなたにはわかっているんでしょう、Lucy?あなたにはあれが何なのかわかっているんでしょう?」

帰宅するLucy。家では帰宅した夫Elliotと息子Josephが先ほどの謎の事件を報道するTVのニュースを見ている。
TVを消して、と言うLucy。そしてまだRosaが帰っていないことに苛立つ。
ふとJosephを見ると、目の周りにあざを作っている。どうしたの?と訊くが、何も言わず部屋に戻ってしまう。
学校で喧嘩したらしいと要領を得ない説明をする夫。「そのことよりも、あの攻撃、あれが見た通りのものなら、君には何とかする責任があるんじゃないか?」と詰め寄るElliot。
あれはT.R.I.D.E.N.Tの仕事よ、もう私には関係ない。「責任と言うならこれはどうなの?」
Lucyはそう言い、Amandaから受け取った封筒を、Elliotに突きつける。
そこにはElliotの浮気現場を隠し撮りした写真が入っていた。
説明、あるいは言い訳をしようとするElliotに背を向け、荷物をまとめてこの家から出て行って頂戴、と言い出て行くLucy。

Lucyは、庭の納屋へ向かう。鍵を開け中に入る。
奥の床に設置された、円形の金属の枠に囲まれた窓状部分に手を置くと、それは反応し床が開く。
そこに収められていたのはハンマーだった。

Black Hammerは私が受け継いだ遺産だった。
そして私はそれを失った。私自身の過ちで。私自身の選択で…。
そして何が起ころうと、どんなにそれが私を呼ぼうと…。

回想される過去の一場面。
腹を潰された男の死体。
その奥で血まみれのハンマーを手に座り込むBlack Hammer=Lucy。

私が再びBlack Hammerになることは決してない…。

『Black Hammer Volume 5: Reborn Part One』より 画:Caitlin Yarsky

■#2

同じ頃、Lucyの娘Rosaは、友人と共にT.R.I.D.E.N.Tにより封鎖されたゾーンに沿った路地裏を歩いていた。
躊躇う友人を従えるように、設置されたフェンスの穴から中に入り込む。
様々に歪んだ周囲の様子を面白がりながら散策するRosa。その時、空中を泳ぐ変形したサメ型のモンスターが彼女たちに迫って来る。

『Black Hammer Volume 5: Reborn Part One』より 画:Caitlin Yarsky

20年前-
AmandaとLucyはspiral Cityの路地裏を走っている。
「アイツはあそこにいるわ。ついに見つけた」建物の屋上を見上げながら言うAmanda。
LucyはBlack Hammerに変身する。
屋上ではスケルトンマスクの巨漢ヴィジランテSkulldiggerが、小物の悪党Lightning Rodを痛めつけていた。
屋上に飛んで現れ、Skulldiggerを止めるBlack Hammer。
自分たちは同じ側だろうと言うSkulldiggerだったが、Black Hammerは目的のためなら殺人をも辞さない彼を認めず、必要なら実力行使すると告げる。

『Black Hammer Volume 5: Reborn Part One』より 画:Caitlin Yarsky

Skulldiggerは後ろ手に手のひらの中に隠した小さな装置のスイッチを入れる。
そしてBlack Hammerに殴りかかる。即座に反撃するBlack Hammer。鍛えた強靭な身体を持つSkulldiggerでも、その力の差は歴然だ。
だがその時、Black Hammerの背後にSkulldiggerが呼び出した彼の気球が現れる。下の口部分が開きSkulldiggerに向かって二つの四角いケースを射出する。
そのケースに両手を差し込むSkulldigger。ケースが開くとSkulldiggerの両上腕部は金属製のグローブで覆われていた。
驚くBlack Hammer。そしてそのグローブでSkulldiggerが繰り出すパンチに吹き飛ばされる。

Skulldiggerが持ってる装置は、後々重要になるので一応画像を出しときました。
ホント極端な話、全部の画を見せなきゃ話にならんだろぐらいのもんなのだが、そんなわけにもいかないし、という実状で最低限と思う画像をセレクトするのも悩ましいところ。

現在。立ち入り禁止ゾーンの中のRosaと友人。
サメモンスターから必死に逃げる二人。そこにT.R.I.D.E.N.Tの隊員が現れる。
「T.R.I.D.E.N.Tの管理下にある侵入禁止ゾーンへの不法侵入で逮捕する!」と二人に向かって言いながらサメモンスターと戦うが、あっという間に上半身を食いちぎられる。
その時二人の足元に四角い空間が開き、二人はゾーン内の別の地点に落下する。
束の間の余裕に、Rosaは母Lucyに助けを求め、泣きながら電話を掛ける。
Rosaからのやっとの連絡に、まず怒りを向けるLucyだったが、接続の悪い中から聞こえてくるRosaの様子からただならぬ事態を察知する。

追いついて来たサメモンスターに袋小路に追いつめられる二人。その時、横手からサメモンスターにチェーンが叩きつけられる。
チェーンは、20年前Lucyと戦っていたSkulldiggerの投げたものだった。Skulldiggerはサメモンスターにチェーンを巻き付けて跨り、モンスターを退治する。
「ここは危険だ。俺と一緒に来い」と二人に手を差し出すSkulldigger。

20年前。Black HammerとSkulldiggerの屋上での戦いは続く。
Skulldiggerの新たな武器に劣勢の状況に、Amandaが銃を手に駆け付ける。
「あんたらは間違った側にいるんだ。俺が殺すのは死ぬ必要のある人間がいるからだ。それは馬鹿げた正義や復讐なんて理由じゃない。彼らが死ぬ必要があるのは、もしそうでないと…」
そこにできた隙に、Skulldiggerにハンマーを振るBlack Hammer。
Skulldiggerを追い詰めたかと思った彼女らの横に、突如四角く切り取られた亜空間への入り口が開く。
そこに立っていたのは、かつてLucyがパラゾーンにある農場に向かうのを助けたDoc Robinsonだった。
※Doc RobinsonについてはBlack Hammer 第3回 Vol.3 Age of Doom Part One #5を参照。

『Black Hammer Volume 5: Reborn Part One』より 画:Caitlin Yarsky

謎の空間の中に立つDoc Robinsonは、Lucyに向かって言う。
「この事態については大変遺憾に思う。だが、私はパターンを見てしまった。次に何が起こるかを」
Robinsonの話が理解できず、戸惑うLucy。
「すまない」そう告げるとRobinsonは巨大な拳を繰り出し、lucyとAmandaを屋上に倒す。
「俺は言ったぞ、間違った側だと」そう言い残し、Skulldiggerは開いた空間に入って行く。
「君にはかつてそうだった私を憶えていて欲しい、Lucy。これからそうなる私ではなく…」
Robinsonはまたも謎の言葉を残し、亜空間は閉じられる。
全く理解できないまま屋上に取り残されるLucyとAmanda。

現在。Lucyは侵入禁止ゾーンへ駆けつける。Rosaと友人は助け出され、フェンスの外にいた。
T.R.I.D.E.N.T隊員から二人を受け取り、ひとまず友人を送り届けてから、家に向かう。
車中、泣いて謝るRosaに対し、怒りの収まらないLucyだったが、父の後を追いBlack Hammerとなった自分と同じ血が流れているが故の行動だとも気付き、やりきれない思いに沈む。

帰宅したLucyとRosa。息子Josephは、大層なことをしでかした姉がもうそれほど怒られていないのに不満気だが、それをなだめるLucy。
自室に戻ったRosa。ポケットに入っていたものを取り出す。
それはSkulldiggerが使用していたのと同じ装置だった。

『Black Hammer Volume 5: Reborn Part One』より 画:Caitlin Yarsky

■#3

20年前。SkulldiggerとRobinsonが去った直後の屋上。
LucyとAmandaは、今起こった不可解な事態について思いを巡らせている。
どう考えても接点があると思えないSkulldiggerとRobinsonが、何故一緒に行動しているのか?
その時、Amandaが思い出し、声を上げる。「Lightning Rod!あいつを忘れてたわ」
Lucyが来た時にSkulldiggerが痛めつけていた、小物の悪党。
Lucyは屋上から飛び立ち、Lightning Rodを捜しに行く。

現在。LucyとElliotは精神分析医のセラピーを受けている。
こんなことは時間の無駄だというLucy。Elliotは、Lucyが子供たちのためにそれまでの人生を捨て、変わってしまったことに今現在の原因があると言う。
精神分析医は、それについて考えるには、まずあなたの過去について話してもらわなければならない、とLucyに言う。
それはいかに医師の守秘義務があろうと不可能だ、とLucyは突っぱね、部屋から出て行く。
「待ってくれ!」と後を追うElliot。

『Black Hammer Volume 5: Reborn Part One』より 画:Caitlin Yarsky

20年前。「待ちなさい!」Spiral Cityの路地裏、Lucyは逃げるLightning Rodの後を追う。
「来るな!」と電撃を放つLightning Rodだったが、弱々しいそれは全く効果がない…。
LucyはLightning Rodを捕まえ、何故Skulldiggerがあんなにいきり立ってあんたを痛めつけていたのか白状しなさい、と問い詰める。
「俺がやってたのはコインランドリーからのかっぱらいだけなんだ。誰も痛めつけたりしてない。だのにあいつ俺を殺そうとしたんだ」
「コインランドリー?誰がコインランドリーから泥棒なんてするのよ?」
「俺もバカだと思ってるよ。でもあの機械にはコインが詰まってるだろ?簡単に金を手に入れられると思ったんだ。もう2か月も家賃の支払いが遅れててさ…。」

自分は本当はヒーローとして活動するつもりでコスチュームも作った。でもここのところついてないことが重なり出来心で…。盗んだ金も返すから見逃してくれ。
情けないLightning Rodの様子に半ば呆れ、Lucyは警察に記録がなければ忘れてあげる、と言う。
それにその程度の能力なら、ヒーローもあきらめた方がいい、とも付け加える。
ところであなたの本当の名前は?と訊くLucy。「Elliot。僕はElliotだ」
これがLucyと夫Elliotとの出会いだった。

現在。外の駐車場にLucyを追ってくるElliot。
なんとか関係の修復を望むElliotだったが、二人の会話は平行線をたどる。
その時、空から轟音!駐車してあった車のウィンドがすべて割れる。

空を見上げる二人。そこにはまたも次元の裂け目が開き始めていた。
Elliotに子供達を安全に家にとどめるよう言い置き、Lucyは車に乗る。
LucyがSpiral Cityの市街地に近付くにつれ、裂け目は大きく開き、そこからは逆さになった鏡に映したような同じSpiral Cityが見え始めていた。
Lucyは、これは自分には関係ないことだ、自分が関わることではないと思いながら、逃げる人々とは逆方向に足を進める。

『Black Hammer Volume 5: Reborn Part One』より 画:Caitlin Yarsky

Lucyが向かったのは、かつて父Josephが作り、彼女に残したBlack Hammerの秘密拠点。(※「Black Hammer 第2回」#12参照)
彼女のみが入ることを許された扉を開け、中に入るLucy。
データベースを検索し、大型スクリーンにDoc Robinson、かつてのDoc Andromedaの姿が映し出される。
Lucyは、20年前に彼が去り際に残した、謎の言葉を思い出す。
「君にはかつてそうだった私を憶えていて欲しい、Lucy。これからそうなる私ではなく…」

20年前。Lucyは、SkulldiggerとRobinsonとの遭遇の翌日、Spiral Asylumで看守をしている老人Wingを訪ねる。
Wingは、第2次大戦時のヒーローチームLiberty Squadronで、Doc Andromedaとともに闘ったチームメイトだった。
Doc Andromedaについて尋ねるLucyに、Wingは彼は何年も前に引退しただろうと答える。
彼は息子をがんで亡くし、家族に構ってこなかったことを深く後悔していた。その後立ち直りを見せ、新たに宇宙へ旅立った。それが自分が知っている最後だ、と言うWing。
SkulldiggerとDoc Andromedaがチームを組むというのは考えられない、とも意見を言う。

Spiral Asylumの屋上で二人が話していると、突如眼下の街中で爆炎が上がる。
急行するLucy。そこには謎の異次元の裂け目が口を開いていた。そしてそこにはRobinson=Doc Andromedaの姿があった。
「やあ、Lucy。君が私を捜していると聞いたものでね」

『Black Hammer Volume 5: Reborn Part One』より 画:Caitlin Yarsky

現在。帰宅したLucy。家では新たな事態を報じるテレビニュースを、ElliotとJosephが見ていた。
Josephの無事な姿に安堵するLucy。今度はRosaも無事に帰宅している。
去ろうとするElliotを、今はみんな一緒にいた方がいいわ、と止めるLucy。
夕飯はどうしましょうか。「Pizza!」と声を上げるJoseph。こんな世界の終わりにピザの配達なんて来ないわよ、とRosa。
世界は終わらないよ、弟を怖がらせちゃだめだ、とたしなめるElliot。
「怖がってないさ」とJoseph。「それに本当に大変なことになったら、ママが僕たちを守ってくれるさ」
「…いや、Joseph…。彼女にそれはできない…」
突然、誰もいないはずのソファの方向から聞こえてきた声に驚く家族。

「君のお母さんは…君を守れない…。彼女は…誰も守れない…。」
「世界は…終わるところだ…。私は…それを見た…。それは…物事の在り方なのだ…」
ソファに座っていたのは、あのColonel Weirdだった。

『Black Hammer Volume 5: Reborn Part One』より 画:Caitlin Yarsky

■#4

突然家の中に現れたColonel Weirdに怒るLucyだったが、相変わらず別次元の考えで行動している彼とのやり取りは嚙み合わないものとなる。
「我々は…すぐに行かなければならない…。私から…すべてを…説明はできない…。それは…この時点で起こることではない…。今は…君が備える時だ…」
これは次元の裂け目が現れたことと関係があるのか?と問うElliot。
もちろんだ、それによって君らは動く。そう答えるWeird。「だがまず…、君にはこれが必要だ…」
そして、Lucyの前にハンマーが現れる。

「あなたにこんなことをする権利はない!今すぐ出て行って!」とWeirdに詰め寄るLucy。
「もちろん…。我々は…ともにここから去る…。そして…ここに…戻って来る…」
そして、Lucyの足元に、異次元への入り口が四角く開き、彼女はそこに落ちて行く。
ハンマーを持った方がいい、それは君が裏返るのを防ぐはずだ、とWeird。
ハンマーを掴み、子供達をお願い、とElliotに言い置き、そこに消えて行くLucy。
「ではまた…」と残った家族に手を上げ、Weirdもそこに入って行く。

Lucyが落下した先は、パラゾーンの異次元空間だった。あちこちに様々な時空・事象への入り口が開いている。
「何なの?何が始まるの?」Lucyは意味も解らないまま、Weirdについて行く。
「こちらだ…。ここから…始まる…。憶えているだろう…?」Weirdはある入り口にLucyを導いて行く。
「君の失墜だ…」
そこから見えるのは、20年前Doc Andromedaが次元の裂け目と共に現れた場面だった。

『Black Hammer Volume 5: Reborn Part One』より 画:Caitlin Yarsky

20年前。突如Spiral Cityの街中に、パラゾーンに向かって開く次元の裂け目と共に現れたDoc Andromeda。
空間の異常で、周囲の車や信号機が空中に浮かび上がる中、事情も分からないLucyは、まずAndromedaを説得しようと試みる。
「君はまだ何も理解できていない、Lucy、そうだろう?」
「君は繋がったことはないだろう?パラゾーン、私の力。彼もそこから来たのだということも、理解していないだろう?」
「そしてある理由により、この場所は最も薄い…。最も彼に近い場所なのだ」話しながら戸惑うLucyに向かって電撃を放つDoc Andromeda。
「私は近づいている。だがこの実験は救いがたい失敗だ。今は完成のために何が必要か把握できた」そう告げながら去って行くAndromeda。
意味も解らないまま座り込むLucyの周囲に、空間の異常から解放された車が落下して来る。

現在。パラゾーンの中から20年前の出来事を見るLucyとWeird。
意味が分からないLucyは、なぜこんなものを見せるのか、と問う。
「何故なら…、これは再び…Spiral Cityに起こったからだ…。ワープゾーンが…戻って来た…」
「でも彼の仕業じゃない。あなたもそれは知ってるでしょう?」
「私は…今では多くを知っている…。パターン…、パラゾーン…。それは…私が思っているようなものでは…なかった…。何一つとして…」
全く意味が分からず戸惑うLucyに構わず、Weirdは続ける。「言葉にするのは…難しい…。これは…ただの一つ…。多くの中の…単なる一つ…」
「だが、まず…」新たな入口を示すWeird。そこには産婦人科のベッドで産まれたばかりのJosephを抱くLucyと、それを見つめるElliotの姿があった。

9年前。産婦人科の病室で、Josephの誕生を喜ぶLucyとElliot。
そこにLucyの母親に連れられRosaもやって来る。
新しい家族の誕生を喜ぶ、家族の最も幸せだった場面。

現在。Weirdの意図が分からず戸惑うLucy。
「なぜなら…、君は憶えておく必要があるからだ…。全てを…」
そして、WeirdはLucyの前にさらに多くの入り口を並べる。

友人たちとのパーティーで、ドラッグに溺れるRosa。
庭で子猫と遊んでいるうちに、猫に電撃を放ち、苦しむ猫を見て楽しむJoseph。
浮気相手とベッドインするElliot。
Lucyが知らず、見たくはなかった家族の負の姿が、次々と映し出される。

やめて!と叫ぶLucy。「なぜ?なぜこんなものを?」
「何故なら…彼らは完璧ではない…。それでも…君の家族だからだ…」
こちらだ、もう終わりに近い、と言いながらWeirdは新たな入口へとLucyを導く。
そこには、20年前の車中のLucyとAmandaの姿があった。

20年前。LucyとAmandaは、人里離れた山中にあるDoc Andromedaの研究所へと車で向かっていた。
以前のDoc AndromedaとSkulldiggerとの衝突から考えて、バックアップが必要だったのではないか、と問うAmanda。
私たちだけで大丈夫だ、と答え、Black Hammerに変身するLucy。
目的地に到着し、二人は車を降り研究所へと向かう。

『Black Hammer Volume 5: Reborn Part One』より 画:Caitlin Yarsky

研究所内に踏み込むLucyとAmanda。
内部には巨大な円形のスクリーン状の機構を持つ装置が何らかの稼働をしており、Doc Andromedaが壁際に設置された制御盤を操作していた。
Amandaは銃を向け、そこから離れるように命じる。Lucyも彼女の言う通りにしなければ、今度は容赦しないとハンマーを掲げる。
君にそんな度胸はないだろう、と不敵に笑うDoc Andromeda。「このヴァージョンの君にはな」と意味の分からないことを付け加える。
これ以上一言も喋るな、と告げるAmandaだったが、Lucyは様々な謎についてAndromedaに問いかける。
「前の攻撃に、この間の狂ったワープゾーン。これらはパラエネルギーと関係している。それがあなたの力の源なのね?」

「如何にも。1945年、私は空間と時間の境界を突破し、ある異次元宇宙へと到達した。現在我々がパラゾーンと呼んでいる場所だ」
「そしてその膨大なエネルギーの一部を利用することでDoctor Andromedaとなった。後に1956年、私はNASAと協力し、一人のアメリカの宇宙飛行士を実際にパラゾーンへ入るために送り出した」
「Colonel Weirdね」
「そうだ。君も知るように、彼はパラゾーンに入ったことでもはや以前とは同じ人間ではなくなった」
「だが続く部分、最も極秘とされている部分だが、その力がパラゾーンと結びついているのは、私とColonel Weirdだけではない、ということだ」
「一体何を…?」
「君は答えを知っているだろう、Lucy?1996年の大破壊」
「Anti-God!」
「大当たりだ」

「このキチガイはAnti-Godを呼び戻そうとしてるの?」Amandaが叫び、銃を向ける。
「その通りだ、刑事さん。見学をご希望かな?」Doc Andromedaは空間から取り出した強化グローブを手に装着し、銃弾を跳ね返す。
強化グローブにより拡張された力でAmandaを締め上げるDoc Andromeda。彼女を下ろしなさい!と叫ぶLucy。
「静かに。彼女には何の意味もない。ここで重要なのは私だけだ」
「ここへやって来た時、私はやっとそれが如何にして可能になるのか理解した。装置単体ではなされない。私だ。私こそが鍵だったのだ」
Anti-Godへの鍵!パラゾーンへの鍵!
Doc Andromedaが前にする装置の円形スクリーンの向こうから、Anti-Godがこの世界に向かって進んでくる。

「装置を切って!」LucyはDoc Andromedaに叫ぶ。
「彼は再生する。そして私がその出口なのだ!」嗤うAndromeda。その背後では既に、Anti-Godがこの世界に手を伸ばし始めている。
「私にやらせないで」顔を歪めるLucy。
私にやらせないで!
LucyはDoc Andromedaにハンマーを叩きつける。

『Black Hammer Volume 5: Reborn Part One』より 画:Caitlin Yarsky

Anti-Godの再生は阻止された。
「君はヒーローじゃないな…。ヒーローは殺さない…」Doc Andromedaは最後にそう呟き、息絶える。

これがLucyがBlack Hammerであることを辞めた経緯だった。

現在。
パラゾーンから過去を見たLucyは、沈痛な顔で「家に帰して」とWeirdに言う。
「もちろんだ…。それが…今なされることだ…」
次の瞬間、Lucyはパラゾーンから自宅の居間へと戻される。
安堵した子供たちがLucyに駆け寄る。だが、Elliotは奇妙な表情で、別方向を指さす。
そこには彼らに向かって光線銃を構えるColonel Weirdがいた。

「Colonel?何のつもりなの?」
「すまない…。私は…君が好きだ…。だが…これが今私が…やることなのだ…」
その銃を下ろしなさい、とWeirdに詰め寄るLucy。
「何故だ…?君は見ただろう…。彼らが…どういう人間かを…」
「だからどうなの?確かに彼らは完璧じゃない。でも私の大切な家族なのよ!」
「そうだ…」
「そして…彼らは今消える…」
Weirdは、Elliot、Rosa、Josephに向けて光線銃を発射する。
三人は一瞬にして塵となる。

『Black Hammer Volume 5: Reborn Part One』より 画:Caitlin Yarsky

「なぜ?…なぜなの…?」呆然と家族であった床の塵を見つめるLucy。
No!」怒りにハンマーを振り上げたLucyは、Black Hammerへと変身する。
「そして…君は帰って来た…、Black Hammer…。真に…帰って来た…」涙を流しながら言うColonel Weird。
殺してやる!」ハンマーを振るLucy。
だがそれより早くWeirdはパラゾーンへと消え去る。「いや…、まだだ…」
「その前に…君には…やるべきことがある…」

『Black Hammer Volume 5: Reborn Part One』より 画:Caitlin Yarsky

1996年、かつてのヒーロー達が去った後、Spiral Cityで一人スーパーヒーローとして活動を続けていたLucy=Black Hammer。
その前に深い恩義もある過去のヒーローDoc Andromedaが現れ、謎の行動をとり始める。Spiral Cityに害を及ぼす可能性があると判断したLucyは、ともに活動する刑事Amandaと共にDoc Andromedaの研究所へと向かう。
そこでAndromedaの目的がAnti-Godの復活であると知ったLucyは、それを阻止するためやむなくAndromedaを殺してしまう。
そして彼女はBlack Hammerであることを辞める。
20年後、夫と二人の子供と共に平凡に暮らすLucyの前に、かつてAndromedaが作り出したものと同様の異次元の裂け目、ワープゾーンが出現し始める。
もう自分には関係ない、と目を背け続けるLucy。
そして遂にはSpiral Cityの上空に巨大なワープゾーンが開き、そこから逆さの全く同じに見えるSpiral Cityが徐々に降下し始める。
なおも部外者の立場を取り続けるLucyの自宅に、パラゾーンからColonel Weirdが突如現れる。
彼にしかわからない謎の行動の果てに、WeirdはLucyの夫と子供達を光線銃で消滅させる。
怒りにハンマーを振り上げたLucyは、Black Hammerとして蘇るが…。

えーと、本来のコミックという形であれば全く分かりにくい話ではないのですが、少ない画像と文章だけでは、この過去現在が交錯する物語をうまく伝えられたか、いまいち自信がないんで、もう一度全体のストーリーをまとめておきました。
なんだかもう不条理レベルに、現時点では意味不明の謎また謎が積み重ねられて行く『Black Hammer: Reborn Part One』。
だがPart Two、Threeと進むうち、これらの謎は全て解き明かされて行く。現時点ではヒントとして、この第2部も第1部同様、アメリカのヒーローコミックシリーズの中の世界を現実として生きる人々の物語である、というところだけ伝えておこう。
なかなかうまく行かず遅れがちな「月刊Jeff Lemire」ですが、先月『Descender 第1回』に続き、3月中にできたというあたりで何とか勘弁してください。次回『Black Hammer 第6回』も4月中にはお届けできるよう頑張るものです。

作者について

■Caitlin Yarsky

出身地、及び生年等については情報なし。ホームページ (トップにもののけ姫のイラストあり) の経歴には、「BFA in Illustration at RTI, Minor in Japanese」とあり、学習障害によりRTI(response to intervention)モデルによる教育で、イラストレーションの美術学士号を得た、ということなんだと思う。後半のMinor in Japaneseは日本に住んでいた子供時代、ということでいいのかな?色々間違ってたらごめんなさい。もののけ姫についてはコンセプトアートの項目に入っていたんだけど、どういう経緯で描かれたものかについては説明なし。
2008年頃からゲームデザイン関連の仕事をして、コミックに関しては2016年からということで、Image ComicsのSean Lewisとの『Coyotes』が最初期ぐらいのまとまった作品ということになるのだと思う。多方面で活動があり、コミックの作品数はまだ多くないが、今後アメリカのコミックシーンで重要な位置を示して行くと思われる実力派の女性アーティストだろう。Dark Horseではこれが最初の作品なので、Lemireのコネクションによる抜擢なのかも。
今作品のカラーはシリーズ以前からの引継ぎでDave Stewartが担当しているが、他作品を見ると普通にカラーもできる人と思われる。TPB版巻末には、ラフ段階(デジタル)と思われる作画も紹介されている。
Caitlin Yarskyは『Black Hammer: Reborn』ではPart OneとThreeの作画を担当。Part Twoでは、またなかなかに魅力的なアーティストが登場するのでお楽しみに。

Black Hammer

■Black Hammer: Streets of Spiral

■Black Hammer/Justice League: Hammer of Justice!

‘Cat Eat Cat’はamazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました