一周年:改めてこのサイトは何なのかということ

とりあえず一周年ということで。

『Dungeon Quest: Book One』より 画:Joe Daly

なんだかんだ、あーでもないこーでもないと考え、なんか倒れたり、色々やり直さなきゃならなくなったりを経て、このサイトも一周年を迎えました。試行錯誤ばかりでなかなか思い通りに進まない中、時々でも見に来てくれた方々には本当に感謝しております。有難うございます。

ああそうだ、まず一周年ということをちゃんとやっとかなければならないのだけど、昨年これを始めるとき、4月から始めるという方向でやっていたのだけど、周囲の色々な事情によりずれ込み、ちょっと何月何日に始めましたが自分の中でも曖昧になってしまったので、ここで改めてそこのところを決めときたいと思います。で、4月からなんだから4月1日にすればいいんじゃないか、というのも考えですが、なーんか4月1日って割といまだにという感じでWeb的にわちゃわちゃお祭り気分のところもある様な日だったりもするので、ちょっとずらして4月4日ということにしました。
というわけで改めて、このサイトも本日4月4日をもって一周年を迎えました、ということで。

昨年4月、色々な考えがあり元々やっていて今年の2月に10周年にもなった「君のせいで猫もなくした」というブログから、コミック関連を独立してこの「Cat Eat Cat」という海外コミック紹介専門サイトを立ち上げたわけですが、その際その時の色々な状況や、精神状態が混乱し、本来の考えをうまく伝えられないまま強引に始めてしまったということもあり、その後最初の「こいつはなんでこんなことを始めたのか」というところを何度か書き直したりもしたのですが、ここはこうではない的な修正はどうもうまく行かず、まあ一年続いたらそこで仕切り直すか、ぐらいに考えて放置。そんなところで今年一月アマゾンアフィリエイトの仕様変更により、サイト全体に渡り修正しなければならない事態となり、もうこんなのそもそも見たくもないし修正も面倒だからいいや、で捨ててしまってからの今回の一周年の仕切り直しとなりました。
というわけで、ここで改めて自分はなんでこんなことを始めたか、これから何をやりたいかについて、改めてきちんと整理して書いておこうと思います。とかく自分は文章を書いているうちに色々と脱線したり、考えを重ねているうちに袋小路に入り込み、もういいやでぶん投げたりしがちなんですが、ここは一旦きちんと整理し、無駄な枝道は避けてちゃんと伝わるように書いていこうと思います。なんか本当は、最近の事故的な中断の後「Descender 第1回」の最後でちょこっと書いた感じで、長いものを同時進行的に進めながらやっており、あっちもこっちもやらなければで、もうわざわざこんなことやらずに記事だけ書いて行けば、という気持ちもあるのですが、多分後々どっかで後悔することにもなりそうに思えるので、ここは一旦きっちりやって、もうあと一生ぐらい見返したりすることなく放置できるように書いておきたいと思います。

なぜこれを始めたかということについて

そもそもなんでこんなことをやろうと考えたかというと、最も単純に言えば世界には読まれるべき魅力的なコミックが山のようにあり、それがその規模に比して言えば全くぐらいに日本に紹介されておらず、それらをできる限り多く紹介する場を作りたかったということです。
元々自分がやっていた、というか現在も並行してやっている「君のせいで猫もなくした」の方では、主にハードボイルド小説と海外のコミックに関する紹介記事を書いて、長年ぐらいに続けてきたのですが、その中で特に近年になってぐらいかとは思うけど、紹介しなければと思うコミック自体の量があまりにも多く、両者のバランスを取って行くのが難しいという思いが強くなって来ました。
そうは言っても、自分は度し難いほどのハードボイルド馬鹿であり、たとえ微力であってもこのハードボイルドが絶望的になっている国にそれをぶつけ続けたいという思いが…、まあそれ言い始めると長くなるからいいか、その辺については本店10周年とか見てください…。そんなわけで、いかにコミックの情報が多く必要だと思ってもその中でコミックの記事を増やして行くということは困難で、もうこのくらいしかできないならやめた方がいいんじゃないかぐらいに思いつつも、最初に書いたような思いが捨てられず、本当に微量ぐらいにしか思えないものを時々ぐらいで続けてきたわけです。
そんな時、自分にある転機が訪れ…、まああんまりいい転機ではないのだけどね…、ここで別にコミック専門のサイトを立ち上げ、そっちでできる限りのことをやってみようと思い立ったというわけです。

まあその転機というやつですが、色々な混乱の要因ともなっているので後々も出てくることにはなると思うけど、ここでまず簡単に書けば、まあ自分はWeb関連の仕事をしてきたのですが、結局自分には向いてなかったということなんだろうけど、その業界の体質みたいなものに対する嫌悪感みたいなものが次第に強まり、その他いろいろあって一旦仕事を辞めた後、期間限定的に再就職してみたものの、そこでもうこの業界では働きたくはないという気持ちになったわけです。
そこでこれからどうしようか、と考えた時、とりあえずこれからどうするかは置いといて、この海外のコミックに対する考えについて、しばらく思い切りやってみるのもいいんじゃないか、と思いついたということです。

そういう事情で始めたもので、まあやっぱり仕事をすることを考えるのをやめる、というのはそれなりに大変なものなので最初は誤解を招くような混乱も結構あったんだろうと思います。
ここではっきりしときたいのは、自分は海外のコミック紹介で飯が食えるかも、と思ってこれを始めたのではないということ。例えば「海外コミックライター」とか、「海外コミック研究家」みたいなもんになりたくて、そのプロモーション的にこれを始めたのではないということ。
結局そんなの自分の思い込みみたいなもので、読んでくれてる人にはどうでもいいことなんだろうけどねえ。なんかそういうところ曲げられないっていうのが自分の欠点なのだろうけどね。
まあこのサイトの目的は、あまり日本に紹介される機会がない海外のコミックをできる限り多く紹介したいということのみです、ということ。

売れる/売れない、ということについて

常にこの、売れる/売れない、ということが出てきてしまうのだけど、どうもこれ始めると色々とややこしい方向に行きがちなんだが、やっぱりこれやらないと始められんということもあるので、なるべく整理してやって行かなければ。

まず、海外のコミックは日本では売れない、ということ。
なんだかもうそういうことについてはどうでもいい。結局そうなるシステムやらなんかについて考え、どっかを攻撃したりするよりは、一つでも多くの紹介記事を書いて、たとえ少ない人しか見てくれなくてもそちらの方がはるかに意味があるものですから。
実際のところ、自分がこれをやる目的は、日本で海外のコミックを「売る」ことではない。もっと具体的に言えば、海外のコミックを紹介してそれが翻訳される、というようなことは全く目指していないということ。
とかく自分は極端に走ってしまうところがあるので、話を積み重ねて行くうちに、コミックの翻訳などやってもしょうがないから、みたいなとこまで行ってしまうのだけど、やはりそれは一つの入り口として重要で意味のあることなので、必ずしも否定するものではないし、まして批判するような意図もないということはきちんと言っておかなければ。

日本で例えばそれが遠い未来だったとしても、海外のコミックが「売れる」ようになるには、その前提条件としてそれが翻訳というような形になる以前に読んでいるような層が、ある程度の量を持って存在する必要がある。
それが存在するためには、その前提としてそれに対するある程度の量を持った情報が供給されることが必要だ。
そしてそういった情報をある程度の量を持って供給するためには、それに専従する場所・人間が必要になり、それを維持するためにはそこから収益を得る必要があること。つまり、その情報の対象、海外のコミックが「売れる」ということが必要条件となる。
まあ、結局そういう堂々巡りになるわけですね。

つまり、少なくとも今の日本では、「売れない」ものはこの連鎖により永遠にぐらい「売れない」わけです。
この連鎖を断ち切る、とまでは行かなくても少しは改善するための方法としては、この中のどっかが「売れない」を被ればよいというものが考えられる。
そこで立ち上がったのが、このちょっと頭のおかしい奴というわけです。

とは言っても、残念ながらこちとらどっかの大富豪の御曹司みたいな恵まれた環境にいるわけでもないんで、自分ではそういうことは難しいかな、と思っていた状況は最初に説明した通りなわけで、そこに、まあ自分からの考えは色々あっても失業というような状態となり、次どうするかと考えた時、その先考えるともうそういうことも始める力無くなっちゃうかもしれなくなる前にやっておくのもいいんじゃないか、ぐらいの感じで始めてみたというわけです。

先に書いたように、自分は大体ここ十数年ぐらいの間Web業界、広く言えばIt業界というようなところに居たわけですが、結局そういったところでの考えというのは、いかに物なり何なりの広い意味での「売れる」を実現するかということ。技術的なことも含め、その方法論的な部分を尖鋭化して行くこと。
いかに効率よく売って行くかという方法論の前に、物事は「売れる」と「売れない」に二分化され、「売れない」は排除される。
今の世の中、全てその考えで動いていると言えばそれまでだし、その業界もその縮図というものだろうけど。
ただ、そこを突き詰めて行くとWeb業界という奴は「売る方法」そのものを売るようになってくる。まー例えば、インフルエンサーのSNSを使って口コミという形をとった宣伝で、人気を高めた商品を売るとか。もはや「売る」ばかりが独り歩きし、「欲しい」を捏造し、中身はどうでもよくなってくる。
別にそんな批判始めてどうしようとかいうつもりもない。売れるもの売って経済が回ってみんな幸せシステムなんでしょ。ただもうそういうとこにいたくないだけで、皆さんそうやって暮らして下さいと言うだけで。
まあ自分は本店ハードボイルドの方でも、小手先の方法論による「売れる」「売れない」により、日本においてハードボイルドが殺されたような、「多数決による暴力」が少数の「暴力」を排除してくる状況に全方位に怒りをまき散らしているような人間ですので、やっぱこんな業界には向いてなかったとしか言いようがない。

まあ自分の職業的不適正や、おそらくは社会的不適正みたいなもんはどうでもいいのですが、結局そういう地点から来てしまったためにこれを始める際色々やらかしてしまった混乱については、多少言い訳しておきたいと思います。
まずそういう業界にいたために、これを始める際、どうすればここに人が呼べるかみたいな方法論的なものが見えてしまい、勝手に自分内格闘を始めてしまい、混乱したこと。
具体的に言えば、海外のコミックを紹介するサイトを作りたいんです、みたいに自称コンサルタント的なとこに話せば、まず最初に人気のあるもの、世の中で注目度の高いもの、例えばメディアミックス作品とか、マーベルの人気キャラクターの物とかを取り上げ、そこでサイトを見てくれる人を増やしたうえで、自分の本当にやりたいような「マニアック」なものを混ぜて行くのがいいですね、みたいな。
だからそういうんじゃないんだよ、そんな悠長にやってる余裕ないんだよ、書かなきゃならないこと山ほどあんだから。大体あんた根本的にわかってねえだろ。日本のマンガでいえば一方に「少年ジャンプ」があって、もう一方に「ねじ式」があるくらいの認識で、オレが「ねじ式」やろうとしてる厄介なやつだと思ってるだろ。その間にマンガなんていくらでもあり、自分はそこを紹介したいって言ってんだから!以上、自分内格闘を一部再現。
まあ、これから失業という状態で、こんな自分内格闘を続けながらとにかく立ち上げなきゃで書いてたもので、かなり混乱してしまったというわけでご勘弁ください。
まあ、その辺の言い訳このくらいでいいか。細かく考えても長くなるばかりだし。自分のバカな部分は自分で受け止めて恥晒してくしかないもんですからね。

自分がこれをどのくらいできるかもわからんけどやって行くことで、海外のコミックが「売れる」というような状況が作れるとは全く思いません。
ただ、こうやって一石ぐらいのものを投じれば、いつかそういうことが起こるかもしれない、ぐらいのかすかな期待。まあ自分がこれをやってる間どころか、生きてる間にゃ無理なんだろうな、と思っています。それでも自分が必要だと思うんだからやってみればいいだろ、ぐらいのものです。
元々「売れない」ものを扱ってるんだから、見てくれる人が少ないのも仕方ないし、それでやめるつもりもありません。これを書けば見てくれる人が増えるもあんまり考えないし、先に書いたような自分の性格からすると、むしろ避けてるかも。それも良くないと思うのだけど。自分がやりたいのは、海外のマンガでこういう作品も書かれているのか、と広く伝えたいということだから。

自分が常に考えているのは、なんとか日本でマンガを読んでいる人、マンガ好き、スキマ時間の暇つぶしなんかじゃなくて常に見たことのない作品に出会いたいと思っている人に、これを伝えること。
日本は誰が何と言おうと、「マンガの国」であり、マンガを読むための高いスキルを持った人口が育てられている国だと思っています。最終的にはそこに広げる道を作るのがこれをやる目的です。
そのために、なんかSNSみたいなの使って広めてみようかみたいな方法も考えたのですが、結局やればやったでそこに時間を取られ過ぎたり、場合によっては余計な面倒を増やすことにもなりかねんので諦めました。とにかく一つでも多く記事を書くための時間、読むための時間が惜しいんで。
結局、あっちに水の溢れるような大河があって、そこからうまく行けば水が引けそうなところに田んぼを作って、何とか水が流れ込んでこないかと待ってるようなもんかも。いや、水路を作るための助言とか果てしなくいらないから。とにかくいい田んぼを一所懸命作って、水の方が流れてくる気になるまで気長に頑張ろうとかな。
あっ、「いい最終回だった」みたいになってしまったけど、まだ続きますので。

この一年について

これを始めた当初、まず週4回更新を目指す、というようなことを掲げたわけですが、それは直ちに破綻しました…。
何故そんな無茶なことを言いだしたかと言えば、最初の方に書いた通り、まずわざわざ別サイトを立ち上げてまでやろうと思った理由として、海外コミックの情報を広めるために必要なものが、数ぐらいに単純化してもいいぐらいの量というものだという思いが強くあったからということ。
具体的に言えば、1回を3000字あたりを目途として、長いものは何回かに分けて行けば、ということを考えていたわけですが、やっぱ自分の物の書き方として、それは無理だったな、ということになってしまいました。
その一方で、後に少しまとめて書くつもりですが、色々な考えからこれについて書かなければ、みたいなことが多くあり、それに振り回され過ぎてしまったかも、というのも反省点です。
結局のところは、常に自分のキャパ以上のことをやろうとして、色々そのとっかかりぐらいのところを並べたぐらいで一年過ぎてしまったというところで、少し長い目で考えながらそこを広げて行くしかないということかも知れないけど。
そんなこんなのうちに、長年ぐらいにこれをやらなければ、と思っていた『The Invisibles』に遂に取り掛かり、結果一か月以上サイト的には中断してしまうという事態に至ったわけです。
これについては、終わった当初は、あー結局これも1か月かそれ以上更新が空いちゃうサイトになっちまうのかな、と諦め気分になったいたわけですが、そこに来たのが前に書いたウィルス性胃腸炎とそこに続くアマゾンアフィリエイト仕様変更による修正のための中断。
倒れてなんもできない状態ぐらいのとき、『The Invisibles』ぐらい長いものを入れてどういう順番でやってくかみたいなことを考えていて、そこでやっとぐらいに一番最初に破綻してしまった、このサイトを作ったそもそもの目的について思い出したというわけです。

そこで色々と考え直して、遅れてた『Descender』を何とかアップした後ぐらいから取り組んでいるのが、時間のかかるものと早く書けるものを並行してやって行くという方法。
具体的に言えば、長くなるだけでなく色々と時間や手間のかかるもの、まあ『The Invisibles』ですが、を少しずつ進めつつ、やや長いもの、1万5千~2万字超ぐらいになりそうなものを少しずつ進め、月刊ペースでやって行きたいJeff Lemire作品を少しずつ進め、その間に数日単位ぐらいでできる短いものを書くというやり方。
2か月弱ぐらいやってみたところで、あんまりうまく行ってるのかよくわからないぐらいのところはありますが、これで月4回更新を目標にやって行ければ、というのが現在の考えです。う~ん、結局ここのところ月2回になっちゃってるが…。
現在の目標としては、じっくり説明し長く書かなければというものを一方に置きつつ、当初の目的であるなるべく数多くの作品を紹介することを頑張って行きたいというところでしょうか。

もう少し具体的にここでやりたいこと

最後に自分がこのサイトでどんなものをどういった考えで紹介して行きたいかということについて、少し具体的に書いて行きます。
色々あるけど、まず最初に考えたいのは作家、アーティストといった部分を中心に紹介して行きたいということ。

まずこの一年で一番ぐらいにプッシュしてきたのがJeff Lemireという作家なんだが、これもう当たり前ぐらいのこと。
Jeff Lemireと言えば、もう書いた作品に片っ端から映像化のオファーが来るぐらいのクラスの作家で、そこそこ多作でもあるにもかかわらず、日本ではその核となるオリジナル作品が全く紹介もされず、当面その見込みもないぐらいの状況。
そうなれば多少強引やり方でもこの作家のすごさを伝えねばならない、とやっているのが『Black Hammer』に始まっている月刊Jeff Lemireで、これは今後もできる限り続けて行く予定。

そして、ブライアン・マイケル・ベンディス、スコット・スナイダー、リック・リメンダーというあたりの、現在のアメリカン・コミックシーンでエンタテインメント方向でのオリジナル作品という動きを先導している作家。
このへんどうも表現難しいんだけど、非常に大雑把に言うとアメリカのコミックって長らくメインストリームビッグ2とその他、ぐらいに分かれていて、その「その他」の中もメインストリームの方と大雑把に言えば同じ方法をとる出版社群と、オルタナティブ、アンダーグラウンドといったところに分かれていたというようなもんだと思う。
メインストリームとその周辺というのは、シリーズやキャラクターの版権を出版社が所持するという形で、アメリカのコミックというものは基本的にその形で、それ以外のオリジナル作品はオルタナティブ、アンダーグラウンドぐらいの感じの時代が長く続いていた。
それが変わってきたのは1980~90年代ぐらいで、まあ版権の話となるとやや長くなるのだけど、その辺から作家が作品の版権を持つ「クリエイター・オウンド」という形の作品が多く作られる傾向が出てくる。ちなみに、実際アメリカその他ではこういう作品は「クリエイター・オウンド」と呼ばれることが主なのだけど、日本的にはちょっとわかりにくいんで当方としては一括してオリジナル作品と称しております。
そして多くの小出版社が立ち上げられそういった作品が出版され始めるのだが、その時期のものは主にヒーローもののコミックで、作家が版権を持っている以外は従来のメインストリーム周辺のその他、と分類した辺りとそれほど変わらないものだったと思う。
それを変えたのが2003年から始まる『Walking Dead』のヒット。ここからヒーローものジャンルではないオリジナル作品という市場が形成され始め、2010年代ぐらいからは各動画配信サービスが台頭し始め、そういったコンテンツの原作の需要拡大にも押され、そういった作品の市場が確立された、というのが現在の状況というとこだろうと思う。
その一方で、ヨーロッパその他の市場でのアメリカン・コミックの日本のマンガへの敗北。これについては、デジタルによる流通の拡大での、量、価格というのも要因の一つだろうけど、結局のところ長く続いててどこから読み始めたらわからないDCマーベル作品群のわかりにくさという、新しい読者の獲得のしにくさというのも大きな原因だろう。
これはアメリカ国内的に従来の「アメコミ」が衰退し無くなるというものではないだろう。だが多くの作家や出版社(従来のアメリカン・コミックの範疇内でのものにとどまらない、ニューヨークのビッグ5といわれる辺りをも含む)などは、そういったエンタテインメント方向でのオリジナル作品が、今後世界市場に打って出るものとなる、という考えで動いているだろうことは確実だと思われるし、それを先導して行くのがこれらの作家なのだろうと思う、というわけ。

こういった大枠での流れとしても注目して行かなければ、というところも大きいのだが、個別の作家としてここで大きく言っときたいのはブライアン・マイケル・ベンディス。
ベンディスなめてた、というわけではないのだが、とにかくマーベル作品で多くベンディス読んでるという理由で、何気にオリジナル作品後回しにし続けてたところがあるのだが、ちゃんと読み始めてみると初期の作画も自分でやってた頃から、テクニカルなところも含めてコミックで何が表現できるかということを考え続けてきた人だと実感し、改めてもっときちんとそっちの方で追って行かなければと思ってる。自身の実感としてはそれこそベンディスなめてた、ぐらいのものなのだが。

やはりこの方向に属する作家としては、エド・ブルベイカーとショーン・フィリップス。もう大物コンビ作家ぐらいの認識で考えるべきだろう。
いや、ブルベイカー-フィリップスについては、あまりに好きすぎて生来の美味しいおかずを後にとっとくレベルの貧乏性で、なかなか早く読まなかったりするので、こうやってこういうところで大きく言うことで自分にブーストかけようというぐらいのことだけど。

そして個人的に特筆しておきたい作家として、ジョナサン・ヒックマン。
この人って明らかにある種の天才の類いだと思うが、何か変。普通の人間とはかなり違う方法で世の中を見て思考してる、というような部分があり、かなり深く探って行くべき作家だと思っている。

こうやって作家名を挙げてくと本当にきりがないのだが、例えばMatt Kinditや、Brandon Graham、そして最初に名前を出したJeff Lemireも含めた現代のアメリカン・コミックの作家たちを、大枠でこういった考えを持ちながら数多く取り上げて行きたいということ。ホント幾らでも名前出てくるんだが、一旦まとめないと話が進まん。あっTom King忘れてた!Brian Azzarelloも!Jason Aaronも!ほら、ホントきりないんだって…。

あと、アメリカのコミックのメインストリーム、ビッグ2というあたりについては、これを始めるとき上に書いたような自分内ごたごたがあって、それによって人を集めるというような意味で、やらないぐらいのことを言ってしまったけど、まあ今はその限りでもないなとは思っています。
また一方で、現在の日本には主にマーベルのキャラクター中心に「アメコミファン」という人は多数いるだろうけど、実際にコミック本体を読んでいる人はどんどん減って行ってるんだろうな、という状況がある。多分その辺のキャラクターについても、ミッキーマウスとかと同様に、まあ映画は観てるだろうけど、そのくらい止まりのキャラクター的なものに日本ではなって行ってしまうんだろうな、とも思う。
そういう状況ならやっぱりやっておく必要があるのでは、とも思うんだけど、なんかどうしても真剣にぐらいに取り組むのはあまりにも大変すぎる。結局それメインでやらなきゃならないような。やっぱりそっち好きな人の方が多いんだから、そっちで何とかしてください、としか言いようがない。
まあそんな感じなので、自分がやれる範囲としては作家という視点で取り上げるものとか、あとMarvel MAX作品とか、あんまりそちらのファンにはアピールできるもんではないぐらいになってしまうけど、その辺で勘弁してください。

アメリカのコミックというところでは、以上に挙げた大枠と別にこだわっているところがあり、それがまずVampirellaか。
日本的には、長らくほぼ現物がないぐらいの状態でイメージのみが独り歩きして、ホセ・ゴンザレスがすごいとか言ってれば知ってるような顔できてたものが、デジタルによりさすがに全部ではないけど、かなりの部分が読める状態となってることは既にお伝えした。
Vampirellaが実際にどういうマンガであったのかも大変興味深いのだけど、それをオリジナルのWarren版から現在のDynamite版まで並べてみると、メインストリームの物とはまた違うアメリカのコミック史的なものも見えて来たり。
過去から現在に至るVampirella本編をさらに詳細に見て行くというのもやって行くが、やっぱりそういうところから派生したような部分もあるのだろうバッドガールものであったりというようなアメリカの「悪いマンガ」を追って行きたい。
過去のChaos! Comicsやら、Devil’s Due Publishingとかな。Avatar Pressというのもそういうところに属するものだろうし、更に近年のZenescopeとか。

そしてオルタナティブ、アンダーグラウンド系。
こういったものって必ずしもアメリカのものではなかったりもするが、アメリカFantagraphicsや、カナダのDrawn & Quarterlyといったところから出版されていることが多いので。
こちらとしては、「悪いマンガ」や「意味の分からないマンガ」などと言う区別は一切せず、広く海外のコミックを紹介して行きたいというのが趣旨なので。

アメリカ、という区分を離れて当方で強く紹介して行きたいのが、あまりにも日本的に知られていない英国のコミック。
アラン・ムーア、グラント・モリソン、ガース・エニスという作家らを産み出したルーツ的な意味ばかりではなく、本当にこれが全く知られていないのは惜しいという作品が多数。
作家、アーティストを語る上で中核となる『Judge Dredd』と、英国コミックのゴッドファーザーとしてリスペクトされる巨匠パット・ミルズ作品の二本柱をまず!と思っているのだが、なかなか進まん…。あーあれもこれも書かなきゃならんのに…。
この一年で何とかやったJohn Smith/Simon Harrisonの『Revere』とか、もしこんなの日本で日本の漫画家により描かれてたら、マニアの間で延々語り継がれ何度も新版が出版されるカルト作だろう、ぐらいのことは言っとく。

そしてバンド・デシネ。
やっぱりまだあまりわからないんだが、とにかくこれについては目に付いたもの片っ端から読んで、片っ端から書いてくことでなんか形が見えてくるように頑張るしかない。
まあ何にしても常にその価値はある。

以上、自分がこのサイトで伝えたいと思うものの柱的になるところを並べてみました。まだまだ色々あるけど、きりがなくいつまでも並べていても仕方ない。まあ、こんくらいのことをやりたいと思っているので、最初に週4回更新したいなどと頭おかしいこと言いだしたところもご理解ください。
この一年を見てもさっぱり進んでないし、こんなこと個人の力で何とか出来るもんでもないというのが本当だろうが、何もやらなきゃ永久に何も進まない。
何とかいつかこれが日本で海外のコミックが広く読まれるための礎の一部ぐらいになることを願いながら、一つでも多くの記事を書いて行くしかない。
この間10周年になった本店の方で書いてて気づいたけど、結局自分はなんか色々な状況に対して、一矢報いてやるーみたいな思いでやってるんだろうなと思う。
それでも多分なんか意味はあるんだろう。
なんかそういう奴がやってるそういうサイトです、ぐらいでまとめていいかな?

あと、表記的なことはとりあえずまとめて書いといた方がいいかな。
まず作家・アーティスト名等については、日本である程度知名度のある人以外は、原則元のアルファベット表記のままです。読み方よくわからないのもあるし、そんなとこまで責任持てませんということで。
その中でJeff Lemireについては一応翻訳あるけど一つぐらいで、またこれから変わる可能性もあるんでそっちは使っていません。あとまだ元のままのところもあるかもしれないけど、パット・ミルズに関しては多分他の読み方ないし、とにかく広めたいというところがあるんで日本で知名度低くてもパット・ミルズで行きます。
あー、あとコミックについてはComics=コミックスだろ、ってツッコミ入れてる英語カタカナ表記厳密主義者の人もいるのかもしれないけど、日本では単行本のことコミックスという昭和の風習が残ってる層も多々いると思われるので、日本語的にわかりやす気なコミックで行きますので。さすがに「エンタメ」なんていうようなテレビ喃語使うほど世の中みたいなもんに媚びる気はないけど、直感的なわかりやすさは考えるべきだろうというぐらい。
多分このくらいで忘れ物はないかな。

なーんかこれで仕切り直しとなったのかどうか、自分でもよくわからない…。
ただ色々とあまりにグダグダで始めてしまったので、どっかで一回ちゃんと書いとかなければ、というのはどうしてもあったので。
まあ、後はあんまり余計なこと考えず、黙々とひたすら記事を書いて行ければいいかな。ということで。
わざわざ最後まで読んででくれた人いたなら有難うございました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました