God Is Dead / Jonathan Hickman, Mike Costa + Di Amorim

ジョナサン・ヒックマン流 神VS.人間!

今回はJonathan Hickman, Mike Costa/Di Amorimによる『God Is Dead』。Avatar Pressより2013-16年に全48+2話で発行され、TPB8冊にまとめられています。ジョナサン・ヒックマンがストーリーライターとして関わるのはTPB1巻にあたる最初の6話で、後は最初からの共作者、Mike Costaによるストーリーとなり、ヒックマンはカバーイラストのみ担当しています。

2013年頃というと、マーベルの『The Avengers』、『The New Avengers』、Imageの『The Manhattan Projects』や『East of West』も始まっていたかというヒックマンが最も忙しかった時期で、この作品についてはヒックマンが原案とプロットぐらいで、実際のシナリオはMike Costaが書いていたという形の共作だと思われる。最初は6話で完結の予定だったが、シリーズが好評だったためMike Costaが単独という形で続行されていったのだろう。
今回は、このヒックマンが関わった6話、第1部についてと、その後の展開について少々とシリーズ全体こんな感じらしいというあたりについてやって行きます。とりあえず第1部に関しては全面的にネタバレとなるのでご注意ください。

ジョナサン・ヒックマンについては結構前に本店の方で『The Manhattan Projects』について書いたのだけど、その時も思ったのだけどこいつなんかある種理解不能なタイプの天才なんだろうと思う。例えばアヴェンジャーズやればその時点で使えるマーベル資産全部ぶっこんできたり、『The Manhattan Projects』ではあのマンハッタン・プロジェクトを頭脳アヴェンジャーズぐらいに見立てたり。今回の作品について言えば、世界で一番簡単に神を殺せるやつが考えた神殺しコミックというところでしょうか。
また神VS.人間と言えば、日本ではアレ。いや、別に悪口言うつもりでもないんだから普通に『終末のワルキューレ』って言っていいんだが。日本のマンガでやるとこうなって、アメリカのコミックだとこうなるというのは、双方のマンガ文化の違いみたいなものも見えて面白かったり。
そして、Avatar Press。残念ながら現在は活動停止状態となっているが、自分はこれをアメリカのコミックの『漫画ゴラク』的徒桜として残存作品に大変注目している。『漫画ゴラク』はいかにして発生するのか、というのも考察のしどころ。ってこれ思いのほかまた長くなるんじゃね?まあそうなったらなったで仕方ないか…。

God Is Dead

■キャラクター

この物語、相当沢山の神も出てくるのだが、とりあえずそっちは省略し、人間側。”Collective”を名乗る、人間の生き残りの頭脳集団。ヒックマンの好きな頭脳アヴェンジャーです。ちょっと見直してみたんだが、専門分野いまいち分からず…。

  • Sebastian Reed:
    MITの教授。

  • Gaby:
    Collectiveのボディーガードを務める女性。

  • Airic Johsson:
    神学者。宗教研究的立場で考える。

  • Henry Rhodes:
    学者。車椅子で会話も不自由で、PC経由で会話する。多分モデルあの人なんだろうな。

  • Thomas Mims:
    学者。モデルは明らかにあの人。

  • Duke:
    Gabyの父。小型旅客機の操縦ができるほか、筋肉系一般担当。

■Story

2015年、世界各地で神達が帰ってくる。
ギリシャ、エジプト、ユカタン半島チチェン・イッツァ、インド、そしてヴァチカン。
神達は問答無用で、圧倒的な超自然的力でそれらの地を破壊し、自分たちが元居た神殿に造り直す。世界中で大災害となり、数えきれないほどの人類が抹殺される。
そして2か月後、世界は神々の支配するところとなり、それぞれの地はそこを支配する神への崇拝を強制されることとなった…。

『God Is Dead』#1より 画:Di Amorim

旧ワシントンD.C.スミソニアン博物館近く。”Collective”に招聘されたSebastian Reedは、その地で異教徒と抗争を繰り広げる狂信者の一団に追われていた。
絶体絶命のところで、短髪赤毛の女性が現れ、教信者たちを射殺しSebastianを救う。彼女はGabyと名乗り、”Collective”への案内のために来たと告げる。
だが、SebastianがGabyに案内されてきたのは、見捨てられた地下鉄のホーム。3人の著名な学者がドラム缶の焚火を囲み、現在の状況について話し合っていた。
それが、現在世界に残された頭脳、”Collective”の全てだった。

『God Is Dead』#1より 画:Di Amorim

一方、異世界にあるヴァルハラ神殿では、北欧神オーディンの呼びかけにより世界中の神々が集まり、世界統治に関する会議が開催される。

レイヴンロックマウンテンの地下核バンカーには、合衆国大統領を始めとする軍の高官が避難していた。
だが、大統領はこの絶望的状況に耐え切れず、自らの頭を拳銃で撃ち、自殺する。
その事態を受け、地下核バンカーの指揮権は将軍へと移り、ユカタン半島へ向け、核ミサイルが発射される。
だが、アステカ神ケツァルコアトルには何らダメージを与えることもできず、新たな地に王国が建設される。

神々の会議ではこの事態が討議され、彼らのものである世界で反抗する子供達には罰を与えるという意見で一致するが、多くの神々は自身の統治する地以外にはあまり関心がない。
合衆国の地下核バンカーは、アステカ神に帰依する軍人たちにより制圧され、将軍は生贄となり、合衆国政府は壊滅する。

見捨てられた地下鉄駅で事態を見守っていた”Collective”の間では、核ミサイルに対抗できる神はいかにして殺せるのか、その方法はあるのかと議論が交わされる。
その中でHenry Rhodesが言う。神に肉体があるならそれは物質で、ならば限界があり破壊できるはずだ。我々に必要なのはそれを実験により知ること。そのために必要なのは、神を捕らえることだ。

インドの地に新たに建立されたヒンドゥー教の神殿前には、神々を崇拝する多くの信者が詰めかけていた。
そこに、突如北欧神オーディンが、ソー、ロキを従え現れ、ヒンドゥー神を攻撃し、殺戮する。
こうして神々の戦争が始まる。

『God Is Dead』#2より 画:Di Amorim

アステカ神のガレー船団が航行する前方の空に、突如エジプト神のピラミッドが出現する。
直ちに戦闘になり、激しい戦いの後、エジプト神がアステカ神を下す。

“Collective”はGabyの父Dukeの操縦するプライベートジェットでインドへと向かう。DukeとGabyは、親子でセキュリティーサービス会社を経営しているが故の備え。
途中ドラゴンに遭遇し、何とかインドへ到着した彼らは、ヒンドゥー教の神殿跡へ行き、北欧神に殺害されたヒンドゥー神の死体を見つける。持参した道具で遺体を解体し、サンプルを手に入れる。

“Collective”はインド、アジャンター石窟群の地下にあるWHOの施設を利用し、持ち込んだサンプルを研究して「人造の神」を培養する。
遂に完成し、培養器に走り寄って行ったAiricは、出てきたものにズタズタに引き裂かれる。
そこには巨大な幼体の悪魔にしか見えないモンスターがいた。

『God Is Dead』#4より 画:Di Amorim

北欧神とエジプト神の闘いは、北欧神が勝利する。ロキからの、次はどうする?の問いかけに、オーディンは答える。
「オリンポス」

“Collective”の研究施設。モンスターはライフルで射殺された。
Airicを失った残りのメンバーは次の方法について議論する。そしてGabyがシンプルな結論を出す。
「後は人間で試すしかないわね。」
そして話し合いの後、一番のエキスパートであるHenry Rhodesを除く、Thomas Mims、Sebastian Reed、そしてGabyが「人造の神」の素となる液体を注射する。

北欧神達は世界の蛇Jörmungandrを召喚し、オリンポスを蹂躙して行く。
ギリシャ神の残りはゼウスただ一人となる。だが、怒りのゼウスはロキ、ソーを打ち倒し、遂にはオーディンとの一騎打ちへ。
そしてゼウスが勝利し、世界で唯一の神となる。

“Collective”の研究施設。
7時間が経過したが特に変化は見られず、効果はなかったのかと諦めかけていたとき、突然変化は現れる。
まず、Thomasの頭部から角が伸び第3の目が現れ、身体が巨大化して行く。Gabyの身体からは新たに2本の腕が生え、Sebastianの全身は白く変わり、指が裂けるように本数を増やし、鋭利な爪が伸びて行く。
そして3人は伝承や想像上の悪魔のような姿の、「人造の神」へと変貌する。

『God Is Dead』#5より 画:Di Amorim

3人はDukeの操縦するヘリで、オリンポスへ向かう。肉体の変化に伴い、意識や思考までも変貌してしまった3人だったが、神を敵として戦う意志は引き継がれている。
廃墟と化した神殿を進み、奥の玉座に座る影を見つける。
だが、近寄ってみたそれは、オーディンの死体だった。

ゼウスはそれと行き違いになるように、”Collective”の研究施設で起きた変化を察知し、Rhodesただ一人が残るその場に着く。
他の者の行き先を教えれば、その全能の力で障害のある身体を治してやると持ち掛けられ、Rhodesは「オリンポス」と答える。
泣きながら願いを乞うRhodes。だがゼウスはその身体を無残に踏み潰す。

無人の神殿を諦め、他の場所を探しに行こうと話す「人造の神」たち。だが、その時、不意を突いて現れたゼウスが雷撃で元Thomasを倒す。
ゼウスに向かって銃を撃つDuke。弾丸はゼウスに届く前に止まり、雷撃でDukeも殺される。
ゼウスの圧倒的な力に慄く元Sebastianと元Gaby。しかし、二人の力を合わせることにより、より強力な雷撃をゼウスに放つ。
跡形もなく消し飛んだ様子に、遂に神を滅ぼしたと安心する二人。だがその時、ゼウスが再び現れ、背後から元Sebastianの胸を貫き心臓を掴みだす。

『God Is Dead』#6より 画:Di Amorim

怒りに燃え、ゼウスの身体を真っ二つに切り裂く元Gaby。
元Sebastianに駆け寄る元Gabyを見て、瀕死のゼウスが嗤う。
「お前は神になるということがまったくわかっておらん。神になれば地上のありとあらゆるものが自由になるのだぞ。」
「私が唯一望むものはお前の死だ!」
そしてゼウスにとどめを刺す。

そしてGabyは、その後Gaiaとして世界を「愛」で統治する神となる。

『God Is Dead』#6より 画:Di Amorim

■God Is Deadについて

以上、『God Is Dead』第1部の全編。
実は後半、SebastianとGabyの愛、という要素が入ってくるのだが、あまりに強引で結構文章で膨らますぐらいしないと説明できないので割愛しました。いや、そんないきなり強引に見開き使ってキスシーン描かれても、って感じで…。

ヒックマンによる原案と最初に書いたが、もしかすると最初にImageあたりに持ってって、「いや、さすがにこれはちょっと…。」と断られたのを、編集が一切介入しない、という方針で作家を集めていたAvatarに持っていったのかもな、と途中で思った。
しかし神を原料にして作ったものが悪魔になるとかいうところに、ヒックマンのニヒリズムっちゅーか、闇の深さを感じる。普通、神を素にして作ったらゴッドマンとか言ってもっと違う方向のものになると思わない?そういう部分が私がヒックマン要注目!と一番思ったりするところなのだが。

全く同じとは言わないが、かなり似た出発点から始めて、日本の『終末のワルキューレ』では神対人間の異種格闘技戦になり、アメリカの『God Is Dead』では超人=「人造の神」を作って戦うという展開になるという違いは、作者ヒックマンの異色性というところを除いても、日米のマンガ文化の違いをよく表しているように思う。
まあこじつけと言われればそれまでだけど、自分はアメリカのマンガがヒーローものを中心に発展してきたのに対し、日本のそれはスポーツものなのではないかと思っていて、それがそれぞれこういう形となって表れたのではないかと考える。実際、マーベルDCというメインのものがあって、それに対して他の会社とかで新しいヒーロー・シリーズを作るときの考え方やスタンス、方法論が、日本で例えば梶原一騎であるとか、水島新司というメインのがあって、新しい野球漫画を作ろうというときのものと結構似ているように見える。例えばImage90年代ごろの『Spawn』その他や、カークマンの『Invincible』や、Boomの『Irredeemable』とか。
ただこれは、それぞれの国のマンガがたまたまそういう方向で発展してきた結果という意味の範囲のことで、例えばアメリカ人がヒーローと感じるものが、日本ではスポーツ選手だとか、それぞれの国民性がどうこうなどというところまで広げて言ってるつもりも、考えるつもりは全くないので。そういうこじつけは、なんか念願のJKのフィールドリサーチを公にやるためのワンステップとしてアニメサブカル語る大学の先生や、中高生の夏休みの自由研究でやればいいんじゃないの?ホラ、アメリカ人はファンタジーや空想を理想とするけど、日本人は堅実で現実的とかいう、聞いてて恥ずかしくなる自分らにツゴーいいやつとか。

■その後

第2部、7話以降についてはまだ少ししか読んでないのだが、それから60年ぐらいの後、世界は唯一神であるGaiaによって治められている。もう人が住んでいないぐらいに思われていたオーストラリアに、信者代表が送り込まれて行くと、そこには過去の神戦争の時代から別の神の庇護の下隠れて暮らしていた人々がおり…。また一方で人間とかけ離れてしまったGaiaによる統治にもひずみが現れ始め…。という展開となって行く。
第2部は18話までで、以降は第3部が始まる。wikiを見ると、第2部以降キリストも出てくるようで、その後は日本の神も出て来たりするようだが、それがどのへんなのかは不明。
第3部が開始されるところで、特別号的アンソロジー『God is Dead Book of Acts: Alpha』及び『God is Dead Book of Acts: Omega』の2冊が刊行され、こちらにはアラン・ムーアによる短編も収録されている。この世界観に基づいて描かれた作品集ではあるのだろうけど、特に本編に直接つながるようなものではないのだろうと思われる。各40ページぐらいだが、こちらはTPBには収録されていない様子。またTPBに関しては、プリント版のみで電子書籍版はなく、ほぼ絶版状態となっている。まあAvatarぐらいの規模のパブリッシャーではこのくらいで仕方ないのだけど。

作者について

■Jonathan Hickman

1972年生まれ、サウスカロライナ州出身。Web、CD-Rom開発、広告業などで働いた後、2006年に作画も自身で担当した『The Nightly News』でImage Comicsよりデビュー。その後もImageでは継続してオリジナル作品を発表する一方、2007年頃よりマーベルにて多数の作品のストーリーを手掛ける。代表的なところは『Fantastic Four』、『FF』、2013年からの『The Avengers』というところか。Image Comicsでのオリジナル作品で代表的なものは、『The Manhattan Projects』、『East of West』、『The Black Monday Murders』など。2021年からは、ストーリーライターTini Howard、アーティストMike del Mundo、Mike HuddlestonなどとともにWeb Comcs 3 Worlds / 3 Moonsを制作中。
またヒックマンは初期作品の作画や、このシリーズ全作のカバーを担当するなどアーティストとしての側面もある。かなり幾何学的、図形的なパターンが好きで、なんかこの人の思考方法にもつながる感じがして興味深い、というか若干怖い。マーベル『The Avengers』の関係説明図なんかもこの人やったんだろうね。
端々で書いたように、私このジョナサン・ヒックマンという人には作品コンプリートせねばぐらいにかなり注目しているので、初期作品なども含めこれからまた書いて行きますので。

■Mike Costa

1967年生まれ、出身地資料見つからず。2008年にWildstormの『The Secret History of the Authority: Hawksmoor』にてデビュー。IDW Publishingの『GI Joe』、『Transformers』などが代表作。DC作品からのTVシリーズ『Lucifer』の脚本を担当し、Netflixに移った第4シーズンからはプロデューサーも担当。現在の仕事はそっち中心となっている様子。

■Di Amorim

生年等の資料見つからず。ブラジル出身のアーティスト。この『God is Dead』の他にはAvatar Pressの『Lady Death』などバッドガールコミックものや、同社そっち部門Boundless Comics作品などの作画を担当。その他、アダルト系DarkBrain Comicsにも参加。こちらインターネットコミュニティDeviantArtのDi Amorimのページからのリンクで知ったばかりでまだあまりよくわからないのだが、アダルト系なのでとりあえず自己責任で見てください。なんか調べて面白いもの出てきたら書くこともあるかも。

■Avatar Pressについて

Avatar Pressは1996年William A. Christensenにより設立される。バッドガールコミックのパブリッシャーとして知られるようになるが、さらにそこからの拡大を図り、ストーリーに関し編集サイドからの制限をかけないという条件で、アラン・ムーア、ガース・エニス、ウォーレン・エリスらの大物作家にオファーし、それぞれの作家の他では見られない過激なオリジナル作品を出版する。その他「Night of the Living Dead」などの版権を取得し、オリジナルシリーズを出版する。
というAvatar Pressだったが、その後他のパブリッシャーでもオリジナル作品の発表の機会も増え、表現の幅も広がったというようなこともあるのだろう。2010年代後半ぐらいからは徐々に失速し、現在も作品の販売は続いているがパブリッシャーとしては活動停止状態にある。

Avatar Pressについては、以前からこだわっていて本店の方でもいくつかの作品を紹介してきたのだが、作品を読むたびに強まってくるのが先にも書いたAvatar作品の『漫画ゴラク』臭。いや、何もAvatarが『漫画ゴラク』を真似たというような類の言いがかりをつけているわけではなく、これは様々な条件が合わさった結果そういう方向になったということだろう。ではいかなる条件により『漫画ゴラク』は発生するのか?
歴史的に見ると、アメリカの過去の大人向けコミックジャンルというと、EC Comicsやその後のヴァンピレラ、『Creepy』などのWarren作品などが考えられるだろう。基本的に長くて6ページ前後のコマも小さめで今見るコミックとは少し違う文法で描かれた作品。

日本でもそのくらいの昔、60年代ぐらいだかの大人向け作品は同様だったような時代もあるようだ。アメリカの事情は知らんが、日本では記事メインの雑誌の添え物的ポジションから始まったみたいな事情からかと思われる。今ぐらいに見られるものとしては手塚治虫の『人間ども集まれ!』あたりがそれに近い感じか。あと、昔買ったのだけどどこ行っちゃったのかわからなくなってる『セクシー怪獣大暴れ』っていうのがあって、タイトルすら忘れてちょっと苦労してやっと判明したらKindle版も出てた。そうそうこんな感じ。
どのくらいで今の感じに変わったのかはよく知らないのだけど、『ゴルゴ13』やら佐藤まさあきの『影男』とか60年代末ぐらいか?もう少し先?日本では劇画の登場というので段階的に変わって行ったんだろうけど、アメリカではそういうの無かったようで、70年代ロバート・クラムなんかのアンダーグラウンドや、「Heavy Metal」や『Love & Rockets』とかやや強引に並べてみても、やっぱ短いページのアンソロジータイプ。結局、従来の1号25ページぐらいのやつの読者の年齢層が上に上がったことでこういうのが作れる素地みたいなものができたという形なのだろう。日本では歴史的段階を経て出来たものだが、アメリカでは条件がそろったところでの突然変異的なものなのだろう。
まず、年齢制限的なことを排除し、「大人の」という考えで売れるものを作ろうとして単純に出てくるのはポルノだろう。だが日本では一方にポルノジャンルはあり、別にそれに近い手法を使うのは構わないが、それとは一線を画し、大人の男性向けに物語を中心に読ませるマンガとして作られているのが『漫画ゴラク』。
そして一方、バッドガールコミックを出版してきたAvatarが、そこからの拡大として目指したのは、ポルノ方向ではないがそういう表現もありの大人向けのコミック。その時期アメリカのコミックにどのくらいの女性読者がいたのか知らないが、声を掛けた面々を見れば、やっぱ男性向けしか出てこないだろう作家陣。さらに言えば、そもそもがバッドガール物のパブリッシャーだし、それほど最先端のアーティスト雇うところまでは予算なかっただろうというところから、やや暑苦しめの画のアーティストが並び、という感じで『漫画ゴラク』条件がそろってしまったのがAvatar Pressだったのだろう。
どうよ、この分析!まあ世界でもこんなくだらんことここまで真剣に考える奴は希少だろうな…。
結局のところ、短命に終わったAvatar Press。そして現代の社会情勢とかから見て、将来的に男性向けに特化したコミックが作られるような環境ができる可能性も低いというところから、アメコミに再び『漫画ゴラク』的なものが出現する可能性は低いかもしれない。しかし、世界は広い。もしかすると、『漫画ゴラク』が国民性ぐらいに暑苦しい国もあって、そこのコミックはいずれも『漫画ゴラク』的という場合もあるかもしれないよ。

結局また長くなってしまったな。主に『漫画ゴラク』話で…。
先に書いたように、このシリーズ単行本はプリント版のみで、電子書籍版は単話販売のみとなっています。

God Is Dead / Jonathan Hickman, Mike Costa + Di Amorim

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