The Nightly News / Jonathan Hickman

ジョナサン・ヒックマン、衝撃のデビュー作!

今回はジョナサン・ヒックマンの『The Nightly News』。2006-07年に全6話でImage Comicsより出版され、TPB1巻にまとめられています。
ストーリー、作画共にヒックマン。手書きの文字はないのだけど、とりあえずレタラーもヒックマンの、オールジョナサン・ヒックマンによる彼のデビュー作です。

さてジョナサン・ヒックマンだ。
ジョナサン・ヒックマンについては、とにかくAvatar Press作品やんなきゃ、というところから割と原案ぐらいのポジションだったと思われる『God Is Dead』を先にやりましたが、ここから本格的に取り組むという形になります。
ジョナサン・ヒックマンというのは、世界に数多ある無数の種類の情報の中から必要と思うものを取捨選択し、それを組み合わせ組み立てることにより物語を作るというような能力において、ある種の天才であると評価されうる作家だと思います。
だがこいつどっかおかしい。
例えば先に紹介した『God Is Dead』では、神の遺伝子的なものを人間に注入すると、どう見ても悪魔みたいなものになるというのを、なんか当たり前のように書いた見せたり。
代表作の一つである『The Manhattan Projects』では、あのマンハッタン計画の科学者たちが頭脳アヴェンジャーズとして異世界からの侵略者と奇怪な戦いを繰り広げたり。
マーベルのメイン中のメインライター的なポジションで、『The Avengers』、『The New Avengers』を手掛ければ、これまでのマーベルの物語資産ぐらいのものを全部使う勢いで話を作って行ったり。ここで言ってるマーベルの物語資産を全部使うは、なるべく多くのキャラクターを登場させるみたいなのとは、全く違うんで。

デビュー作にその作家の総てがある、というような言い草は日本の私小説至上主義的偏向が強すぎて、どうにも同意しかねるものだが、やっぱデビュー作というものの中のはその作家の核と言えるようなものが、結構見えやすい感じで存在するものかもしれない。
みたいなことをベンディスの『Fire』をやってみて思ったのだけど、この『The Nightly News』という作品も、どっかおかしい天才ジョナサン・ヒックマンのそんな部分を垣間見せてくれる作品なのかもしれない。
今回については、『The Nightly News』の第1話を少し詳細に紹介した後、その後の展開をざっと書き、何かヒックマンの考え方みたいなものも垣間見える気がするその結末も書くという形で進めて行きます。最後を書く前にここからネタバレします宣言ぐらいはするので、そこまではとりあえず安心してお付き合いください。
また今作は作画もヒックマン自身で、『The Avengers』などでも見られた、なんとなく彼の物の考え方にも深く関わる様な、図形、パターン的なデザインが多用される画像についても少し多めぐらいに紹介して行きます。

The Nightly News

■キャラクター

  • John Guyton:
    The First Church of the Brotherhood of the VOICEでVOICEのHANDとして動く。元フィナンシャルマネージャーだったが、過剰な事件報道によりすべてを失う。

  • Alexander Jones:
    The First Church of the Brotherhood of the VOICEのJohn Guyton以前のHAND。

  • Warner Rogers:
    タイムズの記者。Brotherhood of the VOICEについての記事を書く。

  • M. Jay Rector:
    合衆国上院議員。FCC(連邦通信委員会)監査委員会の議長を務める。

  • James Andrews:
    The First Church of the Brotherhood of the VOICEのメンバー。元ジャーナリスト。

  • David Cox:
    The First Church of the Brotherhood of the VOICEのメンバー。Guytonに次ぐナンバー2。

■Story

#1

ニューヨーク・シティ。
世界のニュースの首都。
NBC、CBS、ABC、そしてFoxニュースのニュース部門の本部。CNNの企業主タイム・ワーナーの所在地でもある。

ここは21世紀の情報生命体の中枢神経。

衝動の送信。
コミュニケーション。
プロパガンダ。

最も重要な役割…コントロール

the VOICE says: 嘘をつかれ続けるのにうんざりしていないか?

ニューヨークのビル群を背景に、こんなナレーションから物語は始まる。
この作品では、ナレーション、モノローグ、会話文などの表示がヴィジュアル的にも重要だったりするので、混乱のない感じでやって行かないと。

ウォール・ストリート。金融街。

WTO、IMF、世界銀行はここで半期ごとの第三世界輪姦の最中にある。
これはもちろん、彼らの登場へとつながる。

わかるだろう;争い好きな反対者たち、抗議者たち、活動家たち。

俺は彼らが好きだ。彼らの情熱が好きだ
彼らの座り込み、スローガン、プロテストソングが好きだ。
彼らの世界を変え得るという信念が好きだ。

俺は彼らの弱さが嫌いだ。

これを理解すること;今日彼らはここで行動する。
だが彼らには欠如している。気骨が。意志が。それについて何をするかが。

彼らは変革を求めている。だがその結果については何一つ示していない。

重要性は何一つとして無い。
記憶されることは何一つとして無い。

実際の変革を起こせるものは何一つとして無い。

the VOICE says: 君たちは何がしたいんだ?

『The Nightly News』より 画:Jonathan Hickman

ここで実際のヒックマンによる作画。人物に関しては、基本的には写真をトレースする形で描かれているように見えるのだが、もしかするとそう見える感じに描いているのかもしれない。そこから多分Illustratorにより図形、パターン的な方法を駆使し、テキスト部分も含め全体的にデザインして行く形。基本的に見開き2ページ単位でデザインされている。
左下の「修正された集団意識:グローバリゼーション」というようなグラフを使用したレポート的なものは、全話ではないのだけど、各話の冒頭そのテーマに沿ったものが提示される。

世界を変えられると思っている、絶滅寸前の人類の種がいる。
連中は自分達を革命家だと思っている。

その代わりに連中は、
  社畜、
  政治的空論家、
  離婚した両親、へと成長する。

重要な点は、それが組織化されていることだ。
それらはプログラム化されている。

the VOICE says: 効率的で(そして成功の見込みが高い)思想改造の鍵は、群れに彼らが誘導され、操作されていることを気付かせないことだ。

窓ガラスの一枚割れた穴から外を見下ろす男。
その手には照準器付きのライフルが握られている。

「”この鉄と石の乾いた荒野で、私は君が聞くことになるかもしれない声を上げる。”」
「”祝福されるは強者、彼らが大地を所有するであろうことにより。呪われるは弱者、彼らがその軛を受け継ぐであろうことにより”」

こちらは19世紀末~20世紀のニュージーランド出身の政治活動家、詩人として知られるArthur DesmondがRagnar Redbeardの偽名で出版した『Might Is Right or The Survival of the Fittest(力こそ正義)』からの引用。(ジャック・ロンドンの偽名説もあるらしい)
不道徳、結果主義、心理的快楽主義を提唱する結構ヤバい著作らしい。日本のアマゾンからも復刻されたKindle版が手に入るのだが、歴史的意義により意図的にそのままにされている当時の印刷ミスかなんかで、これホントに読めるのか?という感じ。とりあえずサンプルを参照のこと。
「力こそ正義」という日本題も出てきたので、過去に翻訳されたことがあるのかもしれないが、現在は情報なし。「力こそ正義」を検索してみると、なんかゲームとか方面のことしか出てこないけど…。まあ、日本は平和なんだろ。多分その方がいいよ。

男は照準器を覗きながら銃弾を手にする。
そして、ライフルを構える。

過去を作り変えられると思っている、新しい人類の種がいる。
連中は型通りに作られていることに気付いていない。
連中は嘲笑されていることに気付いていない。

笑わせる。

要点。
あんたは注目を求める;あんたはハイパワーライフルを得るといい。
あんたは信頼性を求める;あんたは死者数を得るといい。

システムの改変を求めるなら、それは一人の無辜の傍観者を必要とする。
真に信念を持つ者は、実行するだろう。

息を吸う。息を吐く。
俺はあんたの人生を何らかの意味があるものにしよう。

息を吸う。息を吐く。
止める。引き金を引く。

the VOICE says: 活動家を殺すときは、頭を撃ってはいけない。常に心臓を狙え。

男は銃を撃つ。
そしてプラカードを持ったデモ参加者の一人が、胸を撃ち抜かれる。

『The Nightly News』より 画:Jonathan Hickman

イントロ部分から本編に入ったところだが、この作品では、多くのページがこういったコマを割らない形で描かれている。
右下、若干デザインに紛れそうになってしまうのだが、マークのように描かれたプラカードを持った人物が撃たれている。印象を弱めるような描かれ方だが、こういう形で描かれた意味は後に明らかになって来る。

高い交通量/高い可視性を有するこのような都会的環境に於ける、平均的な最初の警察官の到着時間は5分を下回る。

死体を検分した警察官は、これがスナイパーによる狙撃であることを推定し、周囲を囲む12の高層ビル、1197の窓を見上げ、自分たちの不安定な立場を認識し、応援を呼びそして彼らの到着を待つ。
それは追加の30分弱となるだろうことが推定される。

数分は、それぞれが自分の最期となりうる時には、数時間に感じられる。

推定される到着時間

警察:0:04:24
報道:0:12:13
S.W.A.T:0:36:05

警察と彼らのバックアップが到着する間に、真の標的が現れる…。

わかるだろう;特派員、報道員、レポーター。

そして長い時間を経て、ここで初めて、俺は本当の楽しみを得る。

そして、TV画面に現れ話し出したレポーターの女性の頭頂部が、男の放った銃弾により吹っ飛ぶ。

なぜ彼女を選んだかは、はっきりとは言うことはできない。

それは彼女が死体をちらりとだけ見て、その後レポートを始める前に、5分に渡り自分のメイクを直していたからかもしれない

それは全ての善良なフェミニストたちが言うように、全ての男は強姦者であり、俺は内なる暴力性を露わにする必要性に駆られていたのかもしれない。

それは俺がセックスを禁じられていたからかもしれない。

本当のところは全くわからない。

ここまでグレーの文字で表示してきたものは、この男によるモノローグで、ベージュ地の上に白文字で表示されていた。ここで同じ男のモノローグが黒地に白文字へと変わる。黒文字で表示している部分がそれ。
だが、ここで完全に切り替わるわけではなく、続くページでは両者が並んでいたりもする。とりあえずは前者が自身を含めた状況を俯瞰しているような思考で、後者が実際の目的に沿って行動し始めた現在の思考、というような区別だと思うのだが。

俺は連中が散らばる様子を観察する。そんなことに意味はない。なぜなら俺の銃から発射される銃弾は、秒速884mで飛んで行くからだ。それは時速3180km – 音速の2倍だ。

役立つ助言;逃げても助からない。

軍隊、警察双方の広報担当者は、「狙撃者」という用語を、その性質により正確には承認していない。我等情報通/PRフレンドリー世代にはネガティブな含意。連中は用語を選ぶ。

プレシジョン・マークスマン、
カウンター・スナイパー、
または、シャープシューター。

これらは都市環境内に於ける単独狙撃者による抹殺のための3つの一般的なテクニックだ。

だが、俺はその説明であんたらを煩わすつもりはない。

むしろ俺は、警察を全体的には尊敬しているということは付け加えておきたい。彼らのやっていることは、今日、この時代においては報われない仕事だ。それは称賛に値する。

だが今日、彼らは完全にどうしようもない状況に追い込まれている。

何故かって?それは俺たち3人がいたからだ。

次々と現れ、カメラに向かって話し出すテレビのレポーターたち。
そして次々と男の銃弾に頭を撃ち抜かれて行く。

あんたらが映画で観るのとは違い、第2次大戦の退役兵への調査では、ライフルマンのうち戦闘中に銃を撃ったのはわずか20パーセントだった。 – 敵兵からの銃火のさなかでさえ。

その後、米国軍は、他者を殺すための訓練の適切な方法として、疑似戦闘状態において相手を非人格化するよう指導することとなる。

朝鮮戦争では、それが55パーセントまで上昇する。
ベトナム戦争においては、一気に95パーセントに昇り詰める。

非人格化。
非共感化。

これはオペラント条件付けと呼ばれる。「私たちはそれをやりません」。

なあ、俺はあんたらに知らしめたい。
俺はあんたらに知らしめなければならない。
The Voiceは、あんたらに知らしめることを要求している。

俺たちは反射的な暴力を求めてはいない。
何故なら、これは何処までも個人的なことだからだ。

『The Nightly News』より 画:Jonathan Hickman

上に書いた2種類のモノローグが切り替わる状態はこんな感じ。
右ページ背景の2人の人物は、字が小さすぎてまず見えないと思うが、それぞれ左上がブラザーHassan Nidai、右下がブラザーMichael Metavoyと書かれている。男が途中で言う「3人」はこの二人と自分。

これは個人的なことであり、そしてその対価は高い。
だが、俺たちはこの人生のために生きているんじゃない。俺たちは次のために生きている。

ブラザーHassan Nidai
生年:1966年

彼の妻と子は隣人たちの彼の家への放火で死亡した。
– FOXニュースが彼の住居をテロリスト容疑者のそれと特定した結果により。
Hassanの不運は、報道された人物がそこに居住していたのは3年以上前だったことだった。

一切の謝罪はなかった。
一切の訂正はなかった。

ブラザーHassan Nidaiはその場で力尽きた。
彼は俺の兄弟だ。

ブラザーMichael Metavoy
生年:1969年

19歳のアフリカ系アメリカ人への発砲により、定職の後、解雇された。
彼の14年のキャリアは、タイムズ及びポスト紙の一面で人種差別主義者の烙印を捺されたことで終結した。
一年後、審議会により彼の行動には問題がなかったことが証明されたことは、全く重要ではなかった。
– 彼の同僚、彼の知人は、彼と目を合わせることはなかった。

それでもブラザーMichael Metavoyは、同僚たちを傷付けるより、窓から飛び降りることを選んだ。
彼は俺の兄弟だ。

ここにおいて、前置きが長くなってしまったことを謝罪したい。
だが、あんたたちに一つのことを理解してもらうために必要なことだったと感じている。

これは犯罪についての話ではなく、復讐についての話だということだ。

俺はブラザーJohn Guyton。
そして俺は、VOICEHANDだ。

THE HAND

報復のための道具

ブラザーJohn Guyton
生年:1971年
信用失墜したフィナンシャルマネージャー
カラー:コールド

事実 1 HANDには二人の子供がいる
事実 2 彼はクリームを入れた砂糖なしのコーヒーを好む
事実 3 HANDは決してVOICEと会うことはない

男-John Guytonは銃を置き、ジャケットを羽織り脱出の準備を始める。

昔々…、俺のような人間はこういった考え方をすることはできなかった。

the VOICE says: 個人の自律性と個人の独自性は、一般的に信じられているより遥かに脆弱だ。

『The Nightly News』より 画:Jonathan Hickman

ここに出てくるHassan NidaiとMichael Metavoyについては、実在の人物、事件ではないかと思ったのだが、情報が見つからなかった。ちょっと検索が甘かったかもとは思うのだけど。

まだ第1話の半ばというところなのだが、とにかくこの作品のヒックマンによる少し特殊なデザインも含めた語り方について、なるべく詳しく説明せねばというところで、12ページ中8ページの画像を使い、テキスト部分の大半を書くという事態になってしまった。何とかいくらかは伝わったかと思うので、以降はもう少し簡単にやって行きます。
長くなって分かりにくくなってるかもしれんので、一旦ここまでの話を要約しておく。
ニューヨークの路上での抗議デモの参加者の一人が、近くのビルの窓から突然狙撃される。事件現場に警察が到着し、続いて報道陣も駆けつける。だがそこで狙撃が再開され、レポーターたちが次々と射殺されて行く。犯人の真の標的は彼らだった。狙撃者の正体は報道被害者の報復を目的とするカルト組織(The First Church of the Brotherhood of the VOICE)の一員、実行役であるHANDのJohn Guytonという男だった。というところまで。

2年前

John Guytonは全てを失いホームレスとなり、路上に座り込んでいた。
前に置いた犬のエサ入れのような皿に入れられた金は、わずか55セント。通行人が言う。仕事を探せよ。
「俺には仕事があったんだ、立派な仕事が…」

そこに一人の男が歩み寄って来る。
「立ち上がれよ、John Guyton。今日からあんたの人生を変えるんだ」
「誰だ…?あんた…?」
「俺はブラザーAlexander Jones。俺はVOICEのHANDだ」

近くのダイナーでコーヒーを前に向かい合うGuytonとJones。
「あんたの妻は他の男と暮らし、あんたの息子はそいつをお父さんと呼んでいる。全てはテレビの完璧なヘアスタイルと腐った口のやつらが話した嘘の結果だ」
「あんたの怒りは何処へ行った?」
「俺は…、そのことは考えないようにしている…。俺は現実を受け入れたんだ」
「で、現実っていうのは何だい?」
「世界の在り方さ」
「そいつは嘘だ」

「それはあんたが信じようと選択した嘘さ。最悪のことが起こったがゆえに」
「口から耳へ、また戻って奴らは嘘をつく。奴らは本当と嘘の見分けがつかなくなるまで繰り返し嘘をつき続ける」
「あんたの人生。-奴らにとってはただの娯楽だ」
「それがメディアのやることだ。奴らはぶち壊し、罰も受けない」

「一週間くれ。あんたに奴らが何をして、どう動くのかを見せてやる。あんたは止められなければならないその動きを見るはずだ。」
「俺はあんたに、お互いに分かってる、あんたが本当に欲してるものをやる」
「なるほど…、こいつは俺がの今までで最高のコーヒーになりそうだな」
「ブラザー、そいつはあんたにとって最低限のものさ」

『The Nightly News』より 画:Jonathan Hickman

こちらはコマを割った形のデザイン。セリフはページの水平垂直軸に沿った長方形のフキダシの中に、きわめて無機的な表現で書かれる。また、これまでの現在時制のシーンがオレンジ~海老茶のベースカラーだったのに対し、過去となるこちらのシーンではライトブルーをベースとしている。

現在 タイムズ社屋

立ったままノートパソコンに記事を打ち込む記者Warner Rogers。
そこに新人記者が、議員の汚職摘発につながりそうな調査を持ってやって来る。
そんなものに誰が興味を持つんだ、と一蹴するRogers。
そこでテレビの報道で、レポーターたちが次々と射殺されている様子に気付く。

危険なのは分かっているが、誰か取材に向かってくれ、という編集長。
Rogersが手を上げる。
「俺が行きます、ボス」

15か月前

John GuytonはAlexander Jonesに連れられ、著名なジャーナリストDavid Allen Kiteへのインタビューの公開収録現場にやって来る。
早く実際の行動を起こしたいGuytonは、理由もわからずここに連れてこられたことにうんざりし始めている。
そんなGuytonにJonesは、これが最後のレッスンだ、と告げる。
「このスピーチが終わったら、Q&Aセッションになる。お前はそれを注意深く見ているんだ」

「今夜が俺たちが顔を突き合わせる最後の夜になる」
「俺はお前宛てのメッセージを預かってる – VOICEからのメッセージだ」
そしてJonesはGuytonにカセットテープを手渡す。
「これらの言葉は贖いだ。もし充分でなければ、お前が探すべき復讐もある」
「ブラザーJohn、この日から先、お前がVOICEのHANDだ」

David Allen Kiteへの質問に立つJones。
あんたが政府に使われていながら、政府について報道するのは非倫理的じゃないのか?あんたはいつからCIAに使われてるんだ?と問い詰めるJones。
困惑し、怒るDavid Allen Kite。私はキューバのミサイル危機を、人類が初めて月に建つ瞬間を報道した!私は戦争を終わらせたんだ!
「よかろう、新しいのについて始める時が来たようだ」
Jonesは立ち上がり、隠し持っていた銃をKiteに向かい全弾発射する。
そしてJonesはそのままそこに立ち尽くす。「準備はできてるぜ。誰か俺を逮捕しろよ」

『The Nightly News』より 画:Jonathan Hickman

現在

FCC(連邦通信委員会)監査委員会の議長を務める上院議員M. Jay Rectorのオフィス。
Rectorは大手テレビネットワークのCEOと予定された面談を行っている。
現在起きている事態による相手の社に属する者たちの死にお悔やみを述べた後、Rectorは本題に入る。
君のネットワークで明日予定されている、私の友人である有力ロビイストに対するよからぬ報道を、直ちに中止してもらいたい。
それがなされない場合は、君の社が予定しているある企業との取引が承認されないこととなる。
君は、他のニュースネットワークから将来的に有望なビジネスパートナーとなり得る企業を調査されるより更に、君の社がその対象となることを望まないだろう?
この世界に傍観者などいないんだよ。君はグローバル・ステージのプレイヤーで居続けたいだろう?

タイムズ紙の記者Warner Rogersが現場に到着したとき、既に銃撃は終わり、犯人は逃亡した後だった。
Rogersは現場の知り合いの警官から状況を聞く。
2体の死体と、それぞれの名前が書かれたカードにニュース記事が添えられていた。その一人、Michael Metavoyについては警官の中に知っている者がいた。
カードの裏にはこう書かれていた。「撤回はもはや必要ない」。気をつけろよ、これはお前らの方に向かってるぞ。

この記者と警官のシーン、アメリカの映画等じゃお馴染みの、あいさつ代わりのお互いを罵倒するジョークから入るんだが、なんかこれが下手。本気で殴り合いになるかと思った。何というかこいつら喧嘩するのか?と思わせてワッハッハみたいなリズムができてない感じ。他の作品など改めて思い返してみると、ヒックマンギャグだけは下手の可能性あるかも?

The First Church of the Brotherhood of the VOICEの隠れ家。John Guytonは組織に属する数人の男女の前に立つ。
「聞け。牽制は奴らの初等戦術だ」
「ニュースは生き物となっている」
「混乱と錯乱の具現化だ」
「俺たちの知性を食い荒らし、感情を引き込む。俺たちは焦点を見失ってはならない」

「過去の人生で俺は奴らの法に隷属し、彼らのルールで生きて来た」
「今日に至るまで、俺は善人だった – 正直な人間だった – 奴隷だった。そして今、俺は別の何かに成り変わった」
「今日に至るまで、俺は決して人を殺さなかった。そして今の俺の手、それは血塗られている。それは赤、そして正義だ。今日俺は自由になった。」

「一年前、VOICEは俺に話し、そして君らの名前を伝えた。それは贈り物だった。そして今俺は新たなものを受け取った」
「今日だ。今日言葉が来た。VOICEからのメッセージだ。彼のHANDである俺のみに宛てたものではなく、俺たち全員にだ。なぜなら俺たちは彼の使徒だからだ」

「彼は俺たちに、聖なる命令を下した」
「俺たちは奴ら人生の破壊者たちを破壊する。 – 俺たちは奴らの唇から流れ続ける嘘を止める」
「俺たちは聖なる使命を行う」
「聞け、彼の言葉を」
そしてGuytonは、送られてきたパッケージを開ける。

『The Nightly News』より 画:Jonathan Hickman

Guytonは中から取り出したカセットテープを掲げる。
「ブラザー」
「シスター」
「君たちにVOICEを授ける」
集まったメンバーたちは、口々に「VOICE」の名を呟く。

the VOICE says: ここにはもはや重要人物などいない。私が望み、必要とするのは、思い通りに型造り得る人間だ。

『The Nightly News』より 画:Jonathan Hickman

ここで『The Nightly News』第1話終わり。これを読んでみたいんでどういう作品か知りたいという向きには、ここまでで十分と思うので、ここで読むのをやめるか、必要だったら最後の作者についてまですっ飛ばすなりするのをお勧めします。ただ、当方としてはジョナサン・ヒックマンという作家を考えるにはどうしても必要と思われるため、このまま結末まで進むものであります。

#2

The First Church of the Brotherhood of the VOICEの隠れ家。
メンバーたちは、カセットテープから流れるVOICEの声を聴く。これまではGuytonのみにメッセージが送られており、彼らがVOICEの声を直接聞くのは初めてとなる。
メディアの嘘について語り、彼らを攻撃せよと檄を飛ばすVOICEの声。

13か月前

David Allen Kite殺害の裁判で、法廷に立つAlexander Jones。
全く反省、悔恨の様子もなく、不敵な態度でVOICEの主張を繰り返すJonesは、精神異常とみなされ、施設への収容が裁定される。

現在

最初にWarner RogersによるThe First Church of the Brotherhood of the VOICEへの調査を報道するテレビ画面が断片的に挟まれた後、ワシントンDCでの政治資金集めパーティーの様子が描かれる。
別室で会談する上院議員M. Jay Rectorと大手メディアCEOの代表者たち。
代表者たちは上院議員Rectorに、度重なるメディアへのテロ行為に対策を取って欲しいと訴える。

2か月前

John Guytonは、記事の誤りを過剰に攻撃され、メディア業界から追い出された元ジャーナリストJames AndrewsをBrotherhood of the VOICEへ勧誘する。
このシーンは過去のAlexander JonesがJohn Guytonを勧誘するシーンと、全く同じ背景構図で人物だけ変えて描かれる。

現在

John GuytonはBrotherhood of the VOICEのメンバー、David Cox、Julian Popeと共にジャーナリスト、レポーターが集まるバーへやって来る。
Warner Rogersの姿を見つけ、あんたの記事を読んだよ、と声を掛けるGuyton。ジャーナリズムについて語るRogersの話を聞くGuyton。
バーに座るPopeは、女性から声を掛けられるが追い払う。ボス、時間だぜ、とCoxがGuytonに言う。
包みは持っているか、とPopeに問いかけるGuyton。Popeは小さく、ああ、と答える。
「準備はできているか?ブラザーJulian」「ああ」「…では、2分だ」
外に出たGuytonとCoxの後ろで、バーが爆発する。

#3

現在

建物の中からドアを開け、外に出てきたWarner Rogers。携帯を取り出し、取材関連の連絡をするRogers。
その背後からJohn Guytonが忍び寄る…。

9か月前

精神科収容施設のAlexander Jones。
薬物とセラピーによる治療で、強固だったJonesの洗脳も解けかけているように見える。

15時間前

上院議員M. Jay Rectorのオフィスに、以前会談していた大手メディア企業CEOから電話がかかる。
「やあ、Jacob。どうだ?状況は少し落ち着いて来たかね?」「何を言ってるんですか!すぐにテレビをつけてください!」
テレビのニュースでは、Brotherhood of the VOICEによる自爆テロ事件が大きく報道されていた。
驚愕する上院議員。CEOは対策を更に強く迫る。

現在

John Guytonは、既にBrotherhood of the VOICEの一員となっている元ジャーナリストJames Andrewsを、倉庫のようなところへ連れてくる。
そこには縛られ、頭に袋をかぶせられた男が床に座らせられていた。
Guytonがその袋を取ると、それはWarner Rogersだった。
Andrewsはかつては親友だったRogersにより破滅させられたのだった。

Andrewsに銃を持たせ、こいつを殺せと命じるGuyton。
躊躇うAndrewsに、Guytonは銃を突きつけ、更に強く命じる。
遂にRogersを射殺するAndrews。

殺害現場の始末を他のメンバーに任せ、ショックを受けているAndrewsを外に連れ出すGuyton。
これは必要なことだった、とAndrewsを説得するGuyton。
だが、Guytonが後ろを向いた隙に、Andrewsは手に持った棍棒様の物で、彼の後頭部を殴りつける。
「黙れ…。お前の指導も、説教ももう充分だ。今度はお前が少々のことを学ぶ番だ…」

#4

現在

意識を取り戻したとき、John Guytonは精神科医Michael Thalerの診療所にいた。
俺があんたをここに連れて来た、と言うJames Andrews。ここに連れてくるか、殺すかしかなかった。
洗脳からの解放が専門分野である精神科医Michael Thalerは、Guytonにセラピーによる治療を試みる。

10か月前

Warner Rogersと話すJamed Andrews。
Alexander JonesによるDavid Allen Kite殺害事件を取材していたAndrewsは、これが単独の犯行ではなく、Jonesが裁判で主張していた、背後に何らかの組織があるというのは真実ではないかと考える。
Andrewsはその組織への潜入取材を試みたいと、Rogersに協力を求める。

現在

Brotherhood of the VOICEの隠れ家。
メンバーが集まり、Guytonが行方不明のため、ナンバー2であるDavid Coxの許へ送られてきたVOICEからのメッセージ・テープに耳を傾ける。
裏切り者により息子が奪われた。奴らに恐怖を与えよ。攻撃せよ、と檄を飛ばすVOICE。

現在

ニューヨーク某所で、大手メディア各社のCEOが集まり、会議が開かれる。
議題は、昨今のニュースメディアに対するテロ攻撃への対応として、上院議員M. Jay Rectorから出された新法案「Fairness in Madia Act」の是非について。
この法案は彼らの現在の問題解決に有効なものだが、同時に政府による報道への規制・介入をもたらしかねない諸刃の刃だ。
安全と安定した収益を求める彼らは、この法案の是認という方針で一致する。

現在

精神科医Michael Thalerの診療所に連れて来られて5日後、John Guytonは完全に洗脳から解放される。
Thaler医師に礼を言い、GuytonはJames Andrewsと共に出て行く。

3か月前

精神科の治療により回復したとみなされたAlexander Jonesは、テレビのニュースショーにゲストとして出演する。
MCの女性からの質問に、にこやかに答えるJones。
だが、これであなたのミッションは変更されたわけですか?の質問に対し、「No」と返答し、これはただの始まりだ、と告げMCに飛び掛かり、スタッフ二人掛かりでスタジオから引き出される。
「俺たちはコントロールも、順応もされはしない!3か月後を見ていろ!」

現在

ニュースメディアに対するテロ攻撃への対応として出された新法案「Fairness in Madia Act」に関する上院議員M. Jay Rectorへのインタビューが短く挟まれる。
「アメリカの発言者の自由な発言に対する攻撃は、我々総てへの攻撃と同等です。これは議会にとって容認できない事実、そしてそれに対して我々が行動を準備しているものです」

すっかり洗脳が解けたJohn GuytonはJames Andrewsに、罪を償うため警察へ出頭すると話す。
君にも一緒に来て欲しい、君には一切罪が被らないようにする、と言われAndrewsも同意する。
最後の自由をかみしめるため、少し一人で歩かせてくれ、と言うGuyton。では警察署で会おうと告げ、別れるAndrews。

まともな人間に戻ったという思いを抱きながら、一人散策するGuyton。
路上に駐車された車の横に立つ男が声を掛けてくる。「John Guytonさんですね?あなたと話したいという人がいます」
誰が?と訝りながら車に近付くGuyton。
「車に乗り給え、John」
それは何度もテープで聞いた、VOICEと同じ声だった。

#5

現在

車の中に入ったJohn Guyton。VOICEの声はスピーカーから流れてくるもので、本人の姿はなかった。
Guytonを懐柔し、Brotherhood of the VOICEへ戻そうとするVOICEだったが、もうGuytonの意志が崩れることはなかった。
「私は君が帰って来るだろうときを待っている。その二つのスーツケースを持って行き給え」
Guytonが座る座席の前には、二つのスーツケースがあった。

現在

James Andrewsは、John Guytonが姿を現さないまま、一人で警察に出頭する。
だが、取調室で彼に向かい合う刑事は、彼の話を全く信用しない。
そのうちに、刑事の携帯が鳴る。応答し、相手の話を聞く刑事。そしてAndrewsに言う。
「お前の住居を令状を取って捜索したところ、Warner Rogersの死体と小部隊に十分なほどの武器と爆発物が見つかった。お前を逮捕する、James Andrews、またの名をHAND、またの名をブラザーJames、またの名をThe First Church of the Brotherhood of the VOICEのビショップ、またの名をVOICE」

現在

上院議員M. Jay Rectorのオフィス。
大手メディアCEOの代表者が「Fairness in Madia Act」への同意を上院議員に伝える。
最後の抵抗のように現在の状況を嘆くCEOの一人。

現在

ニューヨークのレストランに集まり、久しぶりに会食する往年の名ジャーナリストたち。
昨今の状況を嘆く引退した老人たち。金が全てを堕落させた。今の連中は広告企業と政治家の奴隷だ。
そこへウェイターがディナーを運んでくる。
ウェイターはBrotherhood of the VOICEの一員で、ディナーの中身は爆弾だった。

2週間前

精神科施設で厳重に拘束され、監禁されたAlexander Jones。
それほどはかからない。もうすぐ始まる、と呟き続ける。

現在

ニューヨーク、ジャーナリストElias Leeのアパート。
帰宅し、テレビのニュースを観る。ニュースではJames Andrewsの逮捕により特定されたBrotherhood of the VOICEのメンバーの指名手配について報じられている。
「テレビを消せ」誰もいないはずの部屋からいきなり声が掛けられ、驚愕するLee。

Elias Lee

John Cuytonについての報道を始めたニューヨークポストのレポーター。
16本のコラムを書き、22回のインタビューを受ける。更にいくつものケーブルニュースのトークショーにレギュラーとして出演する。
彼の著作はNYTベストセラーの4位に登場した。

彼は過去2か月をカリブ諸島バルバドスで、バカンスと次作の執筆で過ごしていた。
そのタイトルは:A History of Bulldog Jornalism – Bite Down, Lock On, and don’t let go until they Play Dead.

暗い部屋の隅のソファに座る人物が話し始める。
「お前は知るべきだ。俺は善人として生きるつもりだったんだよ、Elias。子供を育て、妻を愛し…、善人として。そして俺はこうなった。お前のために…」
「俺を憶えてるだろう?」横のスタンドのライトを点ける男。それはJohn Guytonだった。

「そんな!…君か!」「お前は俺の人生を破壊した…。なぜそんなことをやった?」「わ、私は自分の仕事をしただけだ。個人的な理由などない」「…」「聞いてくれ、君は明らかに良くない状態にある。君にはなんらかの助けが必要だ。わ、私が力になれると…」「いいや、そんなものは必要ない。俺は、俺がやった恐ろしいこと全てについて自覚している。実際のところ、俺は警察に自首しに向かっていたんだ…」「では、何故…?」
「俺が、お前の新しい住所、アパートの鍵、アラーム・コード…、お前の帰国のフライト・スケジュールが入ったスーツケースを受け取るまではな」
「ああ、そしてこの銃もだ」

そしてGuytonは続ける「俺はお前に危害を加えるつもりはない…。だがお前は俺に説明しなければならん。何故お前はあんなことをやったんだ?」
「何故俺に?何故俺の家族に?その他多くの犯罪がただのニュースだったときに、なぜ俺の悪事が大きなストーリーとして取り上げられたんだ?何故だ!?」

Guytonの勢いに押され、話し始めるElias。「わ、私は…」「話せ。何故だ!?」
「それが我々のやっていることだからだ」「何だと?」
「それが我々のやっていることだ。我々は報復や訴訟の恐れもなく人々を破滅させている。それが我々のやっていることだ」「何だと?」
「な、なあ、君は言ったよな…。私に危害は加えないと…。」
「君が望むものなら何でも…、何でも君にやる」
「もう一度言ってくれ」
「何でも君にやるから」
「俺が欲しいものは、自分の人生をを取り戻すことだ、人間の屑野郎」
そしてGuytonは、Eliasを射殺する。

#6

ここで最終話となります。多分そこまで知りたくない人は2話の注意した時点でやめてると思うんだが、一応礼儀として書いておきます。ここから結末ネタバレします。

現在

Brotherhood of the VOICEの隠れ家に踏み込むSWATチーム。だが、すでにそこには何者もおらず、多くの写真が貼られた壁の前で、テープが延々とメンバーたちの名前を読み上げていた。
「これは葬式だ」SWATチームの一人が呟く。

現在

ワシントン。上院議員M. Jay Rectorは、政治報道番組Washinton Insiderに出演しキャスターBill Stratonと対談している。
John Guytonはセットの中に隠れ、生放送中の様子を窺っている。彼の手にはハイパワーライフル。

2番目のスーツケースには、手順指示、一発だけ銃弾の込められたハイパワーライフル、そしてVOICEからの覚書があった。
そこにはこうあった:常にそうであるように、息子よ、私はお前が正しい選択をすることを信頼している。
選択に直面したときは、慎重にすべての事実を秤にかけた上で決定しろ、という者もいる。直感で進め、という者もいる。
知性か、本能か。

目の前の二つの標的、上院議員M. Jay Rectorと、キャスターBill Stratonは「Fairness in Madia Act」について話し続ける。

俺はメディア企業に買われ、金を受け取っている政治屋である男を撃つべきなのか?

俺はイブニングニュースで、連中の顔と、マウスピースになってる男を撃つべきなのか?

これはどういうことになるんだい、John?
あんたのの頭か?それともあんたの心か?

「周波数はなんだ、ケネス?」

そしてキャスターBill Stratonの頭が吹き飛ぶ。

スタジオは大混乱になる。
上だ!上から撃たれたはずだ!誰か警察を呼べ!
「そりゃそうだろう」呟きながら拳銃の残弾数を確認するGuyton。

Guytonが呟く「周波数はなんだ、ケネス?」はR.E.M.の1995年の「What’s The Frequency, Kenneth?」という曲。意味がわからない、というような意味らしい。

現在

同じ頃…。
タイムズスクエアでは、メンバーの二人が焼身自殺を遂げる。
ニューヨーク最大の世論調査会社にメンバーの二人の兄妹が突入し、銃を乱射する。警察到着時、二人はお互いの銃により死亡する。
NBCビルの前では、二人のメディア大手CEOがメンバーの一人により射殺される。彼自身もその場で射殺される。

その上階の一室では、上院議員との連絡担当でもあるCEOの二人がミーティングを行っていた。
そこに頭にモニターを取り付け、体中に爆薬を装着したロボットが入って来る。モニターに映し出されるのはナンバー2であったDavid Cox。
「俺は殺しはOKなんだが、さすがに自爆までは御免なんで、こんな方法を取らせてもらった。本当は俺はあんたらの被害者でもなく、恨みもないんだけどさ。実際のところ、あんたらは本当の事言ってると思うよ。ただ、だからと言って下種であっていいってことじゃない。ってことでくたばりやがれ、。ドカーン」
Coxがモニターの中でスイッチを押すと、ロボットは爆発する。

現在

ワシントンのスタジオ内に残るJohn Guyton。
警察からの警告が聞こえる。もはや逃げ道はないぞ。お前は包囲されている。15秒以内に出て来い、さもなくば突入する。
残弾数を確認するGuyton。残り2発。

俺は自問する。これに価値はあったのか?
俺がやった全ての悪行 – 全ての死 – 全ての殺し。
これに。価値は。あった。のか?
俺にはわからん。

だが俺はこれだけは知っている。
俺は他の誰よりもやった。
俺はあんたよりもやった。
そして、それで十分なんだろうな。

実際のところ、これが俺にとってこう終って行ったことを、あんたどう思うんだい?

最後の2発の弾丸を撃ちながら、飛び出して行くJohn Guyton。

現在

テレビ報道。
その朝、「Fairness in Madia Act」が議会により制定されたことが伝えられる。
一連のマスコミに対するテロ事件が、カルト組織のリーダーJames Andrewsの逮捕により解決したことが伝えられる。
上院議員M. Jay Rectorがインタビューに応え、この新法によりアメリカの自由な発言が守られることになったことを強調する。

それらを観ながら「よし」と呟く、正体不明のVOICE。

2か月後

もはや有罪が宣告されるのは確定の裁定を明日に待つJames Andrewsの前に、ある人物が面会に現れる。
まず、私はこんな話は信用していないがね、と話し出す相手に、やっと救いが現れたと思うAndrews。
「聞いてくれ!俺は何もしていないんだ…」
「何も?そうだな、我々はお互いにもっとよく分かっているだろう」
その人物は上院議員M. Jay Rectorだった。

上院議員Rectorは、まずは「Fairness in Madia Act」が上手く計画通りに運ばないことをぼやく。
多くの訴訟が起こされて、メディア企業達は大損害だ。わかるかね、ほとんどのことは計画通りに進まない、いくらかはうまく行くが、多くは失敗する。
「そしてずっと頭に引っかかっていたんだが、私は今回の事件の総てを、君が裏から操っていたとは思えないんだよ」
「そうなんだ、俺ははめられたんだ…、だが誰もそのことを信じてくれなくて…」
「待ちたまえ。言っているように、私はどうもこの話は怪しいと思い、警察の友人を通じ、君の証拠品を洗い直してもらったんだ。それで出てきたのがこれだ」
Rectorは一本のカセットテープを示す。「このテープに何が入ってるか、君も聞きたいだろう?」

テーブル上のプレイヤーでカセットテープを再生するJames Andrews。
だが、そこから聞こえてきたのはVOICEの声ではなく、ビートルズの「ヘルター・スケルター」だった。
「多分、君ははめられたのだろう」
「多分、この舞台を演出していた人物は、君が本当は何者か知っていたのだろう」
「そんな…」愕然とするAndrews。

「多分、彼は君がチンケな屑レポーターだと知っていたんだろう」
「そして多分、君はそのふさわしいところに落ちたということだろうな」
「そんな…あんたなのか?」
「そうだ、私だ」
「どうして…どうしてこんなことをやったんだ?」

そして、RectorはVOICEの声で話し始める。
私はコツを知っていたからね
「何故、何故あんたはこんなことができたんだ?」
若い君に、アドバイスしてあげよう。君がいわゆる中年の危機というやつの興奮を過ぎた時、君は引退の不適切さに直面する
老齢の凡庸、無意味を克服する鍵は、君を幸福にするもの、楽しみをもたらすものを見つけることさ。そしてこの世界で残された少々の時間をそれに費やす
「何の話をしてるんだ?」

君はなぜ私がこんなことをやったのかと訊いたのだから、教えてあげよう
歳を取るにつれ、幸福や満足を見出せなくなる人々がいる。彼らはこの世界を良いものではなく、不平等、不正、悪として見ている
そういった人々は、自らの才能、知性、あるいは達成に注意を払うことなく、周囲を拒絶し孤独死、あるいはもっと俗っぽくはあるが劇的に、銃を口に入れて引き金を引く。
私もそんな人間の一人だったよ
だが、そこで私は思い出したんだ。私は狼だ。羊じゃない。
私は気付いたんだ、もし法、あるいは社会のルールを無視し、自分が間違っていると考えるものの根絶に集中すれば、満足のようなものを得られるのではないか、とね
ある朝、君を目覚めさせる何か。
信じ込ませる何か
私は弱者を軽蔑する。それで私を不快にさせるもの…この場合はメディアだったわけだが、を殺すために、彼らを操り、使った。

「俺はどうなるんだ?」とAndrews。
君かい?君はこれからどうなるかを決めることになるな。私がお膳立てできる。判事が精神病棟送りを宣告し、君はそこで長く、やや瞑想的でもある人生を送る。あるいは、君がおそらくは一日保たないだろう刑務所送りになる
「俺は話すぞ…。全て話すからな」
何を彼らに話すつもりだい?確実な証拠を無視して?ただの私じゃない、合衆国上院議員なんだぞ
「あんたは怪物だ。監禁されるべきなのはあんただ」
私は世界をより良いものにしたんだぞ
君は自分自身を救うために親友を殺したんだ
私は君はまさしく君に必要なところに来たと思うがね
それでどうするんだ?監獄か、アタマ屋か?

6か月後

Alexander Jonesが収容された精神科施設。彼は順調に回復したとみなされ、退院が許可される。
病室のドアが開く。中にAlexander Jones。「なんでこんなにかかったんだよ?」
「連中俺にアルプラゾラム使おうとしたんだぜ。あんなもん使われるとどうなるか知ってるか?」

「すまんな、Alex。だが私は寛大な人間でな。迷子を見つけていた」
Jonesを迎えに来たのは上院議員M. Jay Rectorだった。そしてその後ろに、元Brotherhood of the VOICEのナンバー2で、最後に自爆テロをごまかし生き延びたDavid Coxがいた。
「そうか、あんたか。あんたいい仕事してたぜ」とJonesに挨拶するCox。
「それで?」とRectorに問うJones。
「成功だ。我々は全てを変えたぞ」

「そりゃそうだろうが。俺が言いたいのは、次は何かって話さ。俺はいい加減退屈しきってるんだぜ」とJones。
「奴はいいとこ突いて来てるぜ、ボス。優秀な人材がベンチで待機してるからなあ」とCox。
「次は何かだって?」そしてRectorは続ける。
「誰だと思う?忌々しい弁護士共さ」

というところで『The Nightly News』全編終了。
これ自分が初めて読み終わった時の感想は、こんなんありか?とあっけにとられたというものだったんだが、頑張ってはみたもののうまく伝わったかとやや心配。

何にそんなに驚かされたかと、蛇足かもしれないが順に説明すると、まずこの話、ほとんど最後に至るまで、人生を破壊された男が謎のカルトに操られながら破滅に向かい絶望的な復讐を挑んで行くというストーリーが繰り広げられる。
そこには読者が感情移入しやすく、善悪の基準線を見誤らないような、報道の正義を信じる熱血漢や、みんなが笑顔になるニュースを届けたいと願う新米女子記者や、報道被害に遭った先輩刑事を失った過去を持ちながら正義のために戦う刑事といったキャラクターも用意されていない。
終盤近くには、ジブリなんかでもお馴染みな、老人チート・エクスキューズ役の、古き良き時代のアナログ記者たちもまとめてあっさり殺される徹底ぶり。
そこにデータやグラフといった無機質だが真実味を感じさせる手法・記述を駆使し、社会の不平等や情報の偏りなどを訴え、物語の方向性を補強して行く。

そこにこの結末。
これは結局巨悪の手のひらで踊らされていただけ、みたいな、長い物には巻かれろ、出る杭は打たれるが信条の駄目な大人納得の教訓話などではない。
「巨悪」なんてものはいつだってわかりやすい金権力地位などの目的欲求の元に存在しているものであり、それを背景にするがゆえにより大きく、奥深い闇としてとらえられる。
だがこの「悪役」は恐ろしいほど空虚で、ここで行き止まりだ。ただの老後の娯楽だと言ってのけ、その理路整然とした悪の理屈は、ある意味痛快と感じられるほどだ。
そして最後には、感情を見せないサングラス黒服軍団などではなく、作中に登場した結局愉快犯レベルだったサイコな二人を部下として従え去って行く。

この全体95%と結末5%の温度差って、弱い生き物なら死んじゃうレベルだぞ。結末には絶対に辿り着かなきゃならんので、絶対死ぬ。
こんな話作れるジョナサン・ヒックマンとは何者だ?何考えてるんだ?
実はこの本、あとがきがある。その他、結構な量の注釈もあり、そっちはほとんど読めてないのだけど…。
で、あとがきなんだけど、やっぱまあこういう頭いい奴になるとそうそう尻尾を掴ませないよな、という印象。政治的だったりメッセージ的だったりという意図はない、とやや強調気味に書いてるが、まあそんな底の浅いもんじゃないだろ、とは思ってる。でも一回りぐらいしてそういう部分も、やや愉快犯的に潜り込ませているんじゃないの、とも疑うが。
この作品TPB版裏カバーにいくつか並んでいる評の中に「『ネットワーク』ミーツ『ファイトクラブ』」というのがあって、なるほどと思ったんだが、後で中の注釈のところ見たら、最初のところに自分で「『ネットワーク』ミーツ『レザボア・ドッグス』」と表現してて、改めてなるほどと思った。ややコイツ性格悪いとも思ったけど。
フツーに読むと『ファイトクラブ』なのだが、実は『レザボア・ドッグス』だったのか。その考えで行くと、この終わり方の温度差もいくらか狭まる気もする。あと『レザボア・ドッグス』と聞いてこの作品実は、低予算映画というのに対応する意味での低予算コミックという側面もあるのだよな、と気付いたり。このニュアンス少し伝わりにくいかな?

ジョナサン・ヒックマンは、システマチックというような考え方でストーリーを組み立てて行く作家ではないかと思っている。多くの情報をパーツとしてストーリーに取り入れ、いかに整理し組み立てて行くかというような。そういう考え方では、この作品のかなり違和感ぐらいのものもある結末も、無理のないパーツとして組み込まれているものなのかもしれない。
結局マーベルのAvengers/New Avengersで、マーベルの全物語資産を使うというようなことも、そのような考え方があってできたことなのではないかと思う。ヒックマンのこれらは、ポストベンディス的なマーベルを整理統合し、一つの方向を示したもので、その後その手腕、というか作家的特性により、そこに組み入れられなかったX-Menの再起動的なところに起用された、というようなことではないのかと思うけど、あんまり熱心なマーベルウォッチャーじゃないので間違ってたらごめん。
ただビッグ2を中心とした「アメコミ」には、アメリカ的な正義というようなものをベースにしてヒーローというものを正統化するような考え方で読む人も多く、そういう層にはヒックマンのシステマチックな話の作り方はあまり受けが良くないのかもしれないなと思うけど。
この『The Nightly News』はそういったヒックマンのシステマチックというような考え方が、作画デザインといった部分でも見られるデビュー作なのだと思う。

ただ、ジョナサン・ヒックマンという作家には、前にも書いた人間に神の遺伝子的なものを注入したら悪魔になるみたいな、ある種「奇想」とでもいうような部分があり、その辺の正体については依然不明という気がする。
おそらくはそういった部分が彼をコミックというフィールドに導いたものなのではないかと思うのだけど。
この辺については今後また探って行く課題なのだが、この作品の怪人上院議員M. Jay Rectorなどはそのヒントなのかもとも思う。

今後のジョナサン・ヒックマンについては、現在のところ代表作である大作『East of West』について、また1巻ごとに詳しく紹介しながら、並行して初期からの短いものもやって来たいと思うのだけど、『East of West』、下手すると『The Invisibles』ぐらい大変かも…。ホントは『The Manhattan Projects』についてもちゃんとやり直すべきなんだけどね。

作者について

1972年生まれ、サウスカロライナ州出身。高校卒業後は、一時期建築方面を目指していたらしい。2006年にコミック作家としてデビューする以前は、Web、CD-Rom制作、広告などの職に就いていた。
マーベルへのデビューは2009年で、2006年のデビューから考えると結構早かった気がする。拡大時期で新しい作家の起用に積極的だったのかとも思う。マーベル初期の代表作は『Fantastic Four』で、これによってメジャー部分での認知度が高まる。
その後はマーベルとImage Comicsでのオリジナル作品を並行して作品を発表して行く。マーベルでは2013-2015年の『The Avengers』、『The New Avengers』の後、2019-20021年にはX-Men関連の再起動の中心としてコンセプトを作る。
Image Comicsでの代表作は『The Manhattan Projects』(2012-2014)、『East of West』(2013-2019)など。
経歴書いてて気づいたけど、ヒックマンってDC作品が一つもないんだね。このクラスの作家って少しぐらいはあるものだけど。初期からマーベルと独占契約的なのを結んでいたとかかもしれないけど、ヒックマンのスタイルってジェフ・ジョーンズDCとは結構水と油ぐらいだったかもとも思う。
この辺の作家については、オリジナル作品抜き出した著作リストぐらいまとめねば、と思っているのだけど、今回余裕がないので次回ヒックマン以降に…。できたらコピペして遡って貼り付けます。

「ほとんどのことは計画通りに進まない、いくらかはうまく行くが、多くは失敗する」(上院議員M. Jay Rector)
いや、これもう少し早く書けると思ったんだけど…。1周年の仕切り直しからそっちで書いた方法で頑張っていたのですが…。まず『Black Hammer』の次と、もう一つそれよりやや短いぐらいの見込みの物を同時進行的に始めたところ、そっちの方が思いのほか長くなりそうになり、とにかくある程度まで進めて、先に短いこれをと思ったところ、う~ん、これをちゃんと伝えるにはあーしてこーして…、とやってるうちにこの始末…。ほとんどのことは計画通りに進まないよな…。
何とか4月中のアップはできましたが、結局遅れてしまった『Black Hammer』は次回に。その他進行中のやつも5月中には一つか二つは。『The Invisibles』はまだもう少しかかるかと…。

The Nightly News

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