Black Hammer 第2回 / Jeff Lemire + Dean Ormston

Black Hammerの死の真相と、Rockwoodの謎!

先月からこっちの方で始めたJeff Lemire/Dean Ormstonによる『Black Hammer』の第2回です。前回のTPB第1巻『Vol.1 Secret Origins』に続き、今回はTPB第2巻『Vol.2 The Event』について紹介して行きます。

2016年より開始され、現在メインストーリーはTPB7巻、その他スピンオフ作品などがThe World of Black Hammerとして多数出版されている本シリーズ。本来ならもっと広く日本にも紹介されるべき、現代アメリカン・コミックの最重要作家のひとりであるJeff Lemireの代表作の一つとして、本来なら当然翻訳ぐらい出て然るべきシリーズなのですが、現状全くその可能性もないため、本来あんまりやるべきではないけど全面的にネタバレという形で紹介して行く第2回です。
他にも多数あるJeff Lemire作品についてもどんどんやってかなければならないので、とりあえずなるべく早くという感じで月一で進行の予定です。

Black Hammer 第2回

Vol.2 The Event

■キャラクター

前回から引き続きのキャラクター。先にサブタイトルでも出したけど、町の名前はRockwood。1巻で出てこなかったか、見落としたか?まだ全部ではないんだけど結構先まで読んでるんで、町に名前があるのは認識していたのだけど…。中途半端な後出しっぽくて申し訳ないが、町の名前はRockwoodです。あと保安官の名前は第1回でReddになっていたけどEarl Trueheart。なんかTammyがそう呼んでいたシーンがあったはずなのだけど…?とにかく修正です。ごめん。

農場(ヒーロー・チーム)
  • Black Hammer:
    最強のヒーロー。現在は死亡。

  • Abraham Slam:
    元筋肉系ヒーロー。対外的には農場の家長を装っている。

  • Gail:
    見た目は9歳の少女だが、実は…?

  • Barbalien:
    火星人。変身能力で普通の地球人を装う。

  • Colonel Wierd:
    あらゆる時空間にランダム不連続につながるパラゾーンの住人。

  • Talky-Walky:
    Colonel Wierdとチームを組んでいたロボット。性別は女性。

  • Madame Dragonfly:
    一応ヒーローチームの一員だが、色々謎の魔法使い。

  • Lucy Weber:
    Black Hammerの娘。Spiral Cityの新聞記者として、父の行方を捜していたが、農場に送られてくる。

Rockwoodの住民
  • Tammy Trueheart:
    町のダイナーの女主人。保安官Earlと離婚。Abrahamと関係を持つ。

  • Earl Trueheart:
    保安官。別れた元妻Tammyの関係でAbrahamを憎んでいる。

  • Quinn神父:
    町の教会に新しく赴任してきた神父。Barbalienが想いを寄せている。

■#7.Black Hammer Falls!

Joseph Weberは、Spiral Cityでソーシャルワーカーとして、ホームレス向けのシェルターで働いていた。
ある晩、Weberはその日の仕事を終わり、シェルターを閉めて帰宅しようとしたとき、路地から走り出てくる異様な風体の男たちに押しのけられる。
路地を覗いてみると、そこにはこちらも異様な黄色い全身スーツを着た男が倒れていた。その傍らには奇妙な大型ハンマー?
「おい、あんた大丈夫か?」
血まみれで重症の男は、虫の息の下からWeberに話す。
「”光”が危機に瀕している。ハンマーは失われてはならない…。」
「い、いや、何の話だか分からないんだが…?」
「誰かがハンマーを引き継がねばならない…。その価値があり純粋な心を持つ者…。君はそれにふさわしい者か…?」
そう告げて男は息を引き取る。
「死んだ…。だがこのハンマー…。俺を呼んでいるような…?」
Weberはハンマーに手を伸ばす。そしてそれを握った瞬間、全身に雷に打たれたような衝撃が走る!

次の瞬間、彼は見たこともない古代の神殿のような建物の中にいた。前には3人の奇妙な格好の男女と、犬。奥にある玉座と思しきものには金の鎧兜の逞しい老人が座り、背後には見たこともない宇宙空間のような星空が広がっている。「ここはどこだ?」
「ここはNew World。我はStarlok、The Lightridersの神である!」奥の玉座の老人が応える。
「The Lightriders?どんな類いのバカ話だ?」
「刮目せよ、Joseph Weber!刮目せよ、New Worldの秘密の歴史を!」

『Black Hammer Vol.2 The Event』より 画:Dean Ormston

この世の全ての始まりから、光の力と闇の力は相対し、拮抗しバランスを保って来た。
そして我-Starlok-と、我が闇の双子の兄弟である悪の具現、Anti-Godも双方に立ち闘い続けてきた。
だが、その永遠にわたる戦いを、我一人で闘い続けることはできない。我とともに闘う最強の戦士たち、それがThe Lightridersだ!

「そしてその最強の戦士がThe Black Hammerだ。彼を亡き者にせねばNew Worldを手にすることはできないと悟ったAnti-Godは、彼を奸計にかけ、The Black Hammerは命を落とした。」
「だが、その力は今、お主、Joe Weberへと引き継がれた!お主は我等が戦士、Black Hammerとなったのだ!」
「なんで俺が?俺はただのスラムのソーシャルワーカーなんだぞ?」
「選択の余地はない。Black Hammerなかりせば、New World、そして全宇宙が危機にさらされる。もちろん、お主の地球もだ。」
「わかったよ、その…Black Hammerってやつになるよ。だがこんなところに留まることはできない。俺は妻が待ってる自分の家から戦いに出るからな。」
「ここがお主の家だ。」
「いや、Spiral Cityのスラムが俺の家だ!」

次の瞬間、Joe WeberはSpiral Cityの元の路地に立っていた。自然に頭に浮かんできた知識で、ハンマーで地面を打ち、変身を解いて急ぎ帰宅する。帰宅したJoeを妻Lorreineが迎える。
「何処へ行っていたの、Joe?私もうあなたは死んでしまったのかと思っていた…。」
時間の流れが異なる新世界へ行っているうちに、あの晩から4か月が過ぎていた。
そして、その時初めて告げられた妊娠中だった妻の腹も、ずいぶん大きくなってきていた。
「私たちの赤ちゃんが生まれるわ!」

物語は現在、Lucy Weberが突如現れた森へ。先に彼女のもとへColonel Wierdとともに到着したMadame Dragonflyが、Lucyの記憶を魔法で消したことを我ら読者は知っているが、後に到着した残りのメンバーは知らない。
Lucyがここに来た方法がわかれば、脱出の手掛かりとなると思う彼らは、Lucyを問い詰めるが、彼女には全く記憶がない。
エキサイトし始めるGailをDragonflyがなだめようとするが、それはかえって二人の間での諍いへと方向転換し、それはBarbalienをも巻き込んで行く。
「もう沢山だ!やめろ!」Abrahamがその場を鎮める。
その時、Lucyはその場の違和感に気付く。
「待って。お父さんは何処なの…?」

過去。Spiral City。
怪人軍団と戦うBlack Hammer。すべてを制圧し、遅れて到着したGolden Gailに後を任せ、急いで帰宅するBlack Hammer。
今日はLucyの10歳の誕生日だ。
Black Hammerのコスチュームのまま、Lucyを抱き上げるJoe Weber。その時、空間にStarlokの姿が浮かび、彼に呼びかける。
「New WorldがAnti-Godの軍勢により危機にある!お主の力が必要だ!直ちにこちらへ向かえ、Black Hammer!」
「すまないが、家族はもっと俺を必要としているんだ。」
呼びかけを断り、Lucyの誕生日を祝うJoe Weber。

『Black Hammer Vol.2 The Event』より 画:Dean Ormston

現在。農場の家のキッチンに全員集まっている。
「お父さんが死んだなんて信じられない…。」涙を浮かべるLucy。
「我々はそこにいた。そして彼の遺体を埋めたんだ。すまない…。だが彼は亡くなったんだ。」
「結果的には彼が境界の存在を示してくれたことで、我々は助かったんだろう。」

「境界についてはTalky-Walkyがエネルギー探査で調べてくれた。東側が広く、Rockwoodという町まで行ける。」
「町ですって?他にも人がいるの?」
「最初は何かの罠で、住民はAnti-Godのエージェントだと思った。でも違った。ただの普通の田舎者よ。」
「なぜ彼らに自分たちの正体を話さなかったの?」
「町の人間は、我々のことも、あらゆるスーパーヒーローのことも聞いたことすらなかったんだ。」
「インターネットは?Rockwoodという町の場所を調べてみなかったの?」
10年間この田舎に閉じ込められていた彼らは、インターネットの存在すら知らなかった。

「君に外には世界がまだ存在していることを聞かせてもらい、私がどんなに安心しているかわからないだろう。」Abrahamは言う。
「Anti-Godを打ち倒した後、世界は白い光に包まれた。そして我々はここにいた。」
「もしかしたらあの時すべてが終わり、我々は天国かどこかにいるのではないかと思っていたんだ。」
「いいえ、世界はまだある。私が保証するわ。」
「君がその生きた証拠だな、Lucy。」
そしてLucyは言う。「お父さんが埋められているところを見せてもらいたいのだけど。」

過去。燃えるSpiral City。Anti-Godとの最後の闘い。
ビルの屋上で、怖れる幼いLucyを説得するBlack Hammer。必ず帰ると約束し、飛び立つ。
Anti-God目掛け、渾身の力を込めてハンマーを振り下ろすBlack Hammer。その瞬間、世界は白い光に包まれる。

『Black Hammer Vol.2 The Event』より 画:Dean Ormston

そして、次の瞬間、彼らは農場にいる。
「何が起こったの?ここはどこ?」
「Spiral Cityに戻らなければ!Anti-Godの死を確認する必要がある!」
「待って、Black Hammer。この農場の周辺に奇妙なエネルギーを感知した。多分ある種のフォースフィールド。罠かもしれない。」Talky-WalkyがBlack Hammerを制止する。
「フォースフィールドごときが俺を止められるものか!娘が待っている。俺は約束したんだ!」
そしてBlack Hammerは上空へ向かって飛び立つ。DragonflyとColonel Wierdが叫ぶ。
「いけない!」
「駄目だ…、やめてくれ!」
Black Hammerの身体は謎の力により引き裂かれ、遺体が地面に落下する。

『Black Hammer Vol.2 The Event』より 画:Dean Ormston

「お父さんは約束したのに…。生きて帰るって…。」
「彼にとっても、君の所へ帰ることが何よりも重要だったんだ。」
「そして私は、今ここにいる…。」
「残ったみんなと一緒に、帰る方法もわからないまま…。」

■#8.

過去。Spiral City。
Golden Gailは、50年前魔法使いと出会い自身が力を得た劇場を訪れる。
もはや廃墟となった劇場の中には、彼女が力を分け与えた彼女のヒーローチームGolden Familyの面々が待っていた。

『Black Hammer Vol.2 The Event』より 画:Dean Ormston

Golden Gailが今日この劇場に彼らを集めたのは、彼女の引退を表明するためだった。
突然の引退宣言に戸惑うGolden Familyを残し、「ZAFRAM」と唱え本来の59歳の姿に戻ったGailは、ひとり劇場を後にする。

現在。
農場からの脱出のための手掛かりを求め、LucyはRockwoodの図書館を訪れる。
まずこの町について調べようと、Rockwoodの歴史が書かれた本に手を伸ばすLucy。
だがLucyが手に取った本は、いずれも中身は白紙だった。図書館の司書の女性に尋ねてみても、「変ねえ。」と首をかしげるばかり。

教会のバザーに参加するBarbalien/Mark。
次第にQuinn神父との友好を深めて行く。

過去。Spiral City。
劇場を出たGailは、その足でかつての宿敵で、今は更生しその化学力を善行に使う元マッドサイエンティストのアンデッドグール、Sherlock Frankensteinが所有するビルへと向かう。
「過去を清算したのはあなただけじゃないわ。私もGolden Gailを引退した。」
そして、長い戦いの中で心が通じ合った二人は結ばれる。

現在。
「ZAFRAM!」
鏡に向かって叫ぶGail。鏡が雲の巣状に割れる。
だが、そこから見返してくるのは、変わらない9歳の見かけのGail。
Sherlock Frankensteinとの愛の日々が、Gailの心に去来する。
溢れる涙を止めることはできない。

『Black Hammer Vol.2 The Event』より 画:Dean Ormston

納屋で新たな探査機を作成するTalky-Walky。そこへLucyがやってくる。
建造中の探査機を見たLucyの頭に、かつて見た砂漠に墜落した同型の探査機の断片的な映像が浮かぶ。記憶を消された彼女には、それがどこで見たもので、どういう意味があったのかはわからない。
思いつくままに自分が来た時や、それが境界から出て行った時の状態のエネルギー探査を比較すれば、ここに閉じ込められていることの解明に役立つのではないかと提案する。
なぜそれを思いつかなかったのかと、喜ぶTalky-Walky。諦めかけていた探査機作成に向けて、再び熱がこもる。

Lucyが去った後、納屋にColonel Wierdが現れる。
「Colonel、来るとは思わなかったわ。」
「君たちの会話を聞いてしまった、Talky-Walky…。すまない…。」涙を浮かべるWierd。
「こんなことをしなくてはならなくて済まない。旧友よ。」
手に持った光線銃で、Talky-Walkyを撃つColonel Wierd。
「我々は決してここを去ることはできないのだ…、Talky…。」
動かなくなったTalky-Walkyの前で、うなだれるColonel Wierd。

『Black Hammer Vol.2 The Event』より 画:Dean Ormston

■#9.The Ballad of Talky-Walky

この話のみ作画がDavid Rubin。Talky-WalkyとColonel Wierdの出会いと別れが描かれる。

過去。
単独で宇宙を探査航行中のColonel Randall Wierdに、近隣の惑星から救難信号が発信されているという通信が入る。センサーによる探査では近くに知的生命体の存在する星はないはずだが…?
惑星の原野に着陸し、付近の偵察に出たRandall Wierd。通信機が突然のビームにより破壊され、ロボットの集団が襲い掛かってくる。
「この惑星では有機生命体の存在は認められていない。直ちに排除する!」
崖っぷちに追いつめられ、絶体絶命のRandallを救ったのは、飛行装置に乗ったロボットだった。
「急いで!奴らあなたを殺す気よ!」

『Black Hammer Vol.2 The Event』より 画:David Rubin

現在。農場の納屋で、Talky-Walkyを撃ったColonel Wierd。
「ナゼ?…ワタシヲ…ウッタ?…Colonel?…リカイ…デキナイ…」
「すまない、Talky-Walky…。他に方法がなかった…。さもなければ君を傷付けることなど決してしなかった…わかってくれ…。」
「君は私が出会った中で最高の、かけがえのない友だった…。」
ZAKT!Colonel WierdはTalky-Walkyの頭部を破壊する。
「さようなら、Talky…。」
Wierdはパラゾーンに消え、後に破壊されたTalky-Walkyが残る。

過去。
ロボットは、自身を「TLK-E WLK-E」と自己紹介する。Randallは自分に聞こえたまま、「Talky-Walky」と解釈。そして以後、彼女はTalky-Walkyと呼ばれることとなる。

ロボットのみが存在する大都市、New Technopolisで暮らしていたTalky-Walky。
自分たちの世界にしか関心のない他のロボットと違い、彼女だけが外の世界に何があるのか興味があった。
そして彼女は独自に探査機を作成し、宇宙に放つ。探査機が拾ったのは、地球のテレビ放送の電波。
その世界を実際に見てみたいと憧れた彼女は、かすかな望みを込めて宇宙に救難信号を発信した。
そして現れたのがRandall Wierdだったのだ。
Talky-Walkyの願いを聞き入れ、Randallは彼女とともに惑星を去り、地球に戻る。
こうしてColonel WierdとTalky-Walkyはチームを組むことになったのだった。

『Black Hammer Vol.2 The Event』より 画:David Rubin

ZAKT!Talky-Walkyが農場の納屋で機能を停止したとき、もはや見捨てられたような操縦室のコンソールのランプが赤く灯る。
「こんにちわ。Colonel?誰か?」
「誰か?誰かいませんか?」
「何処?ここは何処なの?」
宇宙空間に浮かぶ停止した宇宙船。それはColonel Wierdの宇宙船だった。

『Black Hammer Vol.2 The Event』より 画:David Rubin

■#10.

過去。Spiral City。
Abrahamは、夜、ヒーローコスチュームを専門に受注している工房へ足を運び、注文していた新装備を受け取る。
特殊能力がなく、悪との闘いに後れを取ることが多くなった彼が、自らを強化するために考案した装備だった。

現在。
早朝、家畜の世話を終えたAbrahamは、納屋に寄り破壊されたTalky-Walkyを発見し、衝撃を受けているLucyと出会う。
Lucyは前夜Talky-Walkyと話した時、新しい探索方法の提案に彼女が興奮していたことを話し、更に図書館の本が白紙であったことを話す。
「それはそんなに重要なことなのか?」
「この場所全体が異常だわ。あなたたち囚人はここから脱出する方法を考えることすらやめている。明らかな疑問さえ持とうとしていない。」
「我々は囚人ではないし、ここを監獄とも思っておらん。ここはいたって普通の場所だ。」この農場に最も不満を持っていないAbrahamは、Lucyに向け、怒りさえ感じられるような返答をする。
「失礼する。俺はColonelを見つけてTalky-Walkyについて聞いてみなきゃならん。」そう告げて、納屋から出て行くAbraham。

『Black Hammer Vol.2 The Event』より 画:Dean Ormston

Tammyのダイナー。
元夫である保安官がやってきて、Abrahamとの関係について問い詰める。
もうすでに離婚したあなたには関係ないと突っぱねるTammy。保安官の怒りはさらに膨れ上がる。

夜、Quinn神父の住居を訪れるBarbalien/Mark。
ワインでもてなされ、アプローチを試みるBarbalien。
だが、それは神父に拒まれる。
「私は君には友人が必要だと思ったんだ。友人としてだ。」

過去。Spiral City。
巨大な泥のモンスターが出現!新装備で立ち向かうAbraham。
だが、やはり歯が立たず、装備も持て余しかけているところで、特殊能力を持った若手のヒーローチームY-Forceが到着し、モンスターを易々と倒す。
またしても、己の力の限界に落胆するAbraham…。

『Black Hammer Vol.2 The Event』より 画:Dean Ormston

現在。
Tammyのダイナーへ行ったAbraham。だが、まだ早い時間にもかかわらず、店は閉められていた。
「Tammy、どうしたんだ?」
Tammyから昼間の保安官の経緯を聞かされ、怒るAbraham。
「あの野郎、ぶっ殺してやる。」思わず口走る。

保安官Earlは、独り暮らす自宅へと帰宅する。玄関のドアを開けると、そこにはMadame Dragonflyがいた。
「お、お前どこから入った?」
「私は何処でも望むところへ行ける。あなたはTammy Trueheartを脅すべきじゃなかった。」
「お前…、不法侵入で逮捕する!」
「違うわ、私じゃない。トラブルに陥っているのはあなたよ。あなたは自由意志を働かせすぎて、私がこの場所で許容できないものになってしまった。」
「それは、スーパーヴィラン。」
Dragonflyは保安官に魔法の力を使う。保安官は緑色に変わり、身体が溶けて行く。
「さようなら、Earl Trueheart。」

『Black Hammer Vol.2 The Event』より 画:Dean Ormston

■#11.

過去。Spiral City。
昼間は警官、そして夜は本来の姿に戻り様々に人助けに奔走するBarbalien。
だが、相棒との以前の出来事により(Black Hammer 第1回 #3参照)、署内には彼がゲイであるといううわさが広まっており、彼のロッカーには「オカマ野郎」の落書きが書かれる。
ロッカーの扉を拳でぶち抜くBarbalien。

『Black Hammer Vol.2 The Event』より 画:Dean Ormston

現在。
Barbalien/Markは教会へ行く。
「君はここに来るべきではない。」Barbalienを拒絶するQuinn神父。
あなたは本当の気持ちを隠している、と糾弾するBarbalien。
同性愛は罪だと言い続ける神父。話は平行線のままBarbalienは教会を去る。

Gailは、Barbalienの部屋に彼宛ての手紙を残し、家を出る。
Black Hammerの墓としてハンマーが置かれた場所を過ぎ、境界へ。
境界を手探りし、場所を確かめるGail。
「さようなら。」涙を浮かべ呟く。

『Black Hammer Vol.2 The Event』より 画:Dean Ormston

納屋で破壊されたTalky-Walkyを見つめ、ため息をつくAbraham。彼を呼ぶ声に外へ出てみると、そこにはパトカーが停められており、保安官補が待っていた。
「何かあったのかね、保安官補さん?」
「Trueheart保安官の失踪についてうかがいたい。」保安官補はそう告げる。

過去。Spiral City。
辞職を願い出るBarbalien。上司は彼を引き留めるが、彼は告げる。
「ここに私の居場所はありません。」
ビル群の上から街を見下ろすBarbalien。
「さようなら。」そっけなく告げ、飛び立つBarbalien。遥か高空。彼は地球から去る。

現在。
家に帰ったBarbalienは、自室でGailからの手紙を見つける。

ごめんなさい。
でもこれ以上は続けて行けません。
ここに私の居場所はありません。

境界へと踏み出そうとするGail。
「だめだ!」飛行してきたBarbalienが、彼女を抱きとめ、引き戻す。
「何をしているんだ!Gail!」
「私…、私はもう孤独に耐えられない…。」
「君は孤独なんかじゃない!私がいるだろう!君は私の最も大切な友人だ!」
「だから君は私を置いて行くことなどできない。私が君を必要としているんだ。」
抱き合う二人。

「さあ、家に帰ろう。」
「家?でも私たちはここに閉じ込められて、本当に家に帰ることなんてできないわ。」
「ああ、そうだろう。」
「だが少なくとも我々にはお互いがいる。」

『Black Hammer Vol.2 The Event』より 画:Dean Ormston

■#13.

過去。Spiral City。
来る日も来る日も、誰も来ないボクシングジムに座り続けるAbraham。
そしてまた一日。
ジムを閉めて家へ向かうAbraham。突然彼の身体に電光が走り、そして彼の姿は消える。

『Black Hammer Vol.2 The Event』より 画:Dean Ormston

現在。
警察署で二人の保安官補より取り調べを受けるAbraham。保安官の元妻Tammyとの関係により、保安官の失踪に最も動機を持つ人物として容疑を持たれている。
そこに、虚空からMadame Dragonflyが現れる。
Dragonflyは保安官補たちの精神を操作し、Abrahamを無罪放免させる。
「何をやっているんだ、Dragonfly?」
「何をって?あなたを解放してあげたのよ。」
「むやみやたらにそんなことをしてはいかんだろう。」
「私は何だろうと思ったことができるのよ。」
Dragonflyはそう言うと、煙のように消えて行く。

過去。Spiral City。
GailはSherlock Frankensteinのクルーザーで夜の海に出ていた。やっと掴んだ安らぎと愛。
だが、突然の電光が走り、Gailの姿はSherlockの前から消え去る。

『Black Hammer Vol.2 The Event』より 画:Dean Ormston

現在。
境界に囲まれた地域を調べるLucyは、Madame Dragonflyの小屋を訪ねる。
ノックに応答もなく、近くの窓から中を窺うと、巨大な目が見返してくる。
小屋から立ち去るLucy。

過去。Spiral City。
警官の職を辞し、地球からも立ち去ったBarbalien。
だが、宇宙空間を飛行中のBarbalienの身体に、突如電光が走り、その姿は消える。

『Black Hammer Vol.2 The Event』より 画:Dean Ormston

現在。
Tammyのダイナーへ行くAbraham。警察署に連れていかれたが、疑いは晴れて放免されたと話すAbraham。
だが、Tammyは保安官の失踪に何らかの形でAbrahamが関わっていると、不信の念を持ち続ける。
「私たちしばらく会わない方がいいわ。」

過去。
宇宙空間で姿を消したBarbalienは、New Worldへと召喚された。そこには既にAbraham Slam、Golden Gailも呼ばれており、更にはMadame Dragonfly、Colonel Wierdの姿もあった。
壇上にはStarlokとBlack Hammerが並んで立っている。
「こんな形で急に呼び立て、申し訳なく思っている。だが、もはや一刻の猶予もないのだ。Anti-Godが地球へと迫っている!」
「何故私たちが?あなたの軍勢、The Lightridersはどうしたの?」と、問うGolden Gail。
「そうだ、私もGolden Gailも、すでに引退した身だろう。」Abraham Slamも言う。
「The Lightridersは既に倒れた。Golden Family、Y-ForceもAnti-Godの手にかかった…。」
「残されたのはここにいる我々だけなのだ。」
そして、彼らは共に最後の戦いに臨むことを決意する。

『Black Hammer Vol.2 The Event』より 画:Dean Ormston

現在。
調査も行き詰まり、脱出のための手掛かりも見つからないLucyは、父Black Hammerの墓へと赴く。
自分は父の声に突き動かされて、この探索を続けていたのではないか?そしてその父の声は、この父の墓の上に置かれたハンマーから来ているのではないか?
Lucyは父の遺したハンマーへと手を伸ばす。

農場の家のキッチンでは、Abraham、Gail、Barbalienの3人がそれぞれの落胆と憂鬱の中、言葉を交わすこともなく座っている。
そこへColonel Wierdが現れる。
「どうやら時が来たようだ…。」
「時?何を言ってるんだ、Wierd?」
「事象の展開だ…。これまでに組み上げられてきたものが形となるときが来たのだ…。」
その時、晴れた空に大音響で稲妻が走る!KRA-KOOM!

全員が家から外に出る。
そこには、Black Hammerのコスチュームを纏い、その手にハンマーを握ったLucyが、宙に浮いていた。
「Lucy?」
「違うわ、私はBlack Hammer
「そして、全てを思い出した。」

『Black Hammer Vol.2 The Event』より 画:Dean Ormston

第3回へ続く。第3回『Vol.3 Age of Doom part1』では、遂にこの農場の真相、彼らは何故ここに閉じ込められていたのかが、明らかになる!えーと、大体1か月後、8月中旬~下旬ぐらいの予定。あっ、今ちょっと自信なくなって、「~下旬」書き足した。
結末を知ってる上で、読み直してまとめていると、改めてあっちこっちにヒントやら伏線が隠してあるのがわかり、SFミステリーとしても秀逸な作品だな、と思ったりする。
TPB2巻巻末には、Dean Ormston、David Rubinそれぞれの作画過程が紹介されており、結構ベテランで、旧ペンシラー/インカーシステムの経験の長いOrmstonの下書きが、ちょっと日本の基準から言っても描き込みすぎぐらいだったりする一方で、Rubinの方はデジタルで作成したネームも兼ねてるのだろうラフの上にそのまま重ねて作画しているような、それぞれ世代による違いみたいなもんも見れて、結構興味深いっすよ。

ところで、もしかしてちゃんとじっくり読んでいるような人がいたとしたら、既にお気づきかもしれないが、ここまで書いてきたやつ、#11の次が#13になっていて、#12が抜けている。いや、そのくらいよく間違える奴だという自覚はあるが、これは当方のミスではなく、TPBの掲載方法に従ったものである。
実は#12は、David Rubin作画によるちょっとサイドストーリー的なやつで、外して#13いった方が話の流れとしてわかりやすかろうという判断なのだろう。
で、この#12、どこに収録されてんのかな?と思って調べてみたのだが、よくわからん。オムニバス版とかにはこれを除外せず#1~#13と収録されているようなのだが…。
まあそんなわけで、これだけ書き損なうのも良くないんで、この後最後に単独で紹介します。物語はLucyを主人公として父Black Hammerが消えた後の10年間を描いたもので、Lucy自身がBlack Hammerとなる#13の前に置いて意味深いというようなストーリーである。

■#12.

10年前。
Spiral Cityに大きな被害を及ぼしたAnti-Godが、ヒーローたちによって倒され、そのヒーローたちも姿を消した直後、平和になったSpiral Cityでは亡くなったと思われるヒーローたちの追悼集会が行われていた。
かつては彼らとともに闘ったが、既に引退して戦いには参加できなかったDoctor StarことDr. Jamed Robinsonがヒーローを悼む演説を行う。
大勢の人々による献花の列が続く中、集会に参加していたBlack Hammerの妻Lorreineと娘のLucyは、Robinsonに呼び止められる。
Black Hammerの思い出、どんなに娘を愛していたかを語った後、「君も大きくなったらお父さんのようなヒーローになりたいかい?」と話すRobinson。
Lorreineは怒りを向け、Lucyの手を引きその場を去る。


『Black Hammer #12』より 画:David Rubin

8年前。
小学生になったLucy。学校では「私の家族」というテーマで、生徒たちが教壇に立ち発表を行っていた。
そしてLucyの番。
だが、父がBlack Hammerであったことを口外するのは、母から禁じられている。Lucyは、自分の父は既に亡くなっており、コックだったと話す。

帰宅し夕食の席で、父の正体を隠し続けなければならないことについて、母と口論になる。
父Black Hammerに恨みを持つ悪漢が、襲ってくるかもしれない、というような理由は、理屈としてはわかっても、父を想う気持ちから納得はできないLucy。

2年前。
公園でベンチに座り、ひとり空を見上げるLucy。
物陰から何者かが話しかけてくる。変質者の類だと思い、逃げようとするLucyを慌てて呼び止めたのは、追悼集会で会ったRobinsonだった。
「君はいつか彼らが帰ってくるのではないかと思って、空を見上げることが習慣になっているのだろう。私もそうだ。根拠は全くないが、私も彼らがどこかで生きていると思っている。」
そう語って、RobinsonはLucyに封筒を手渡す。
「これは君のお父さんから、もし自分に何かあった時、その後君が成長したら渡してほしいと託されていたものだ。」
封筒の中には、住所を記された一枚のカードと、鍵が入っていた。

Lucyはカードに記された住所に行ってみる。鍵を使って入ってみた建物の中は、荒れ果てた何もない廃墟だった。
その中で、壁に描かれたハンマーのマーク。何か意味があるのだろうかと思い、手を触れてみると、その部分がピンク色に光り、そこから発射されたレーザーがLucyの目を走査する。
「WeberのDNAを確認。防壁を解除します。」
音声とともに、その壁に隠されていた扉がスライドして開く。
その奥に隠されていたのは、Black Hammerの数々の闘いの記念品や、標本・資料などが多数貯蔵された、彼の秘密拠点だった。

『Black Hammer #12』より 画:David Rubin

Lucyが内部を見て回るうちに一つのボタンを押すと、スクリーンが現れ、Black Hammerが彼女に向かって語り掛ける。
「やあ、Lucy。お前がこれを見ているということは、私は既に死んでいるということなのだろう。すまない、Lucy。」
そして、彼は家族、Lucyをどんなに愛しているかを話し、最後にお前の手でここを破壊し、Black Hammerをこの世から完全に消してほしいと頼む。
そして、録画された映像は終わる。そしてLucyは父の頼みに大きく答える。
「NO!」

そしてLucyは新たな決意を胸に、父の秘密拠点をそのままに、後にする。
あなたはきっと生きている!あなたを必ず見つけに行く!

作者について

■David Rubin

1975年生まれ、スペイン出身。こちらはスペインでかなりキャリアを積んだアーティストの様で、スペイン語のみではあるけど、かなり詳細なWikiもあった。
グラフィックデザインを学んだ後、アニメーターとして働きつつ、コミック作品を発表し始める。2001年コミック作家集団Polaqiaを設立。様々な雑誌に作品を発表。2005年にデビュー長編作となる『El Circo del Desaliento』を出版。代表作としては『El Héroe』(2011-12)、『Beowulf』(2013 ストーリー:Santiago García)など。
英語圏での活動としては、Paul Popeの『Battling Boy』のスピンオフである2014年の『The Rise of Aurora West』から。『The Fiction』(2015 ストーリー:Curt Pires BOOM! Studios)などを経て、Dark HorseではMatt Kindtとの『Ether』(2017)から。The World of Black Hammerでは『Sherlock Frankenstein & the Legion of Evil』の作画も手掛けている。
現在も基盤はスペインであるようで、最新作はスペインAstiberriからの『El Fuego』(2022)。
こちらの作品では、カラー、文字も担当。アニメーターならではなのかもしれないユーモラスな動きを感じさせるタッチと、独特のカラーリング。母国スペインでの活動を含めて今後の活動を注目して行きたい作家/アーティストです。
ちなみに今回Dean Ormstonの作画の方は、『Vol.1』に引き続きカラーはDave Stewart。

Black Hammer

■Black Hammer: Streets of Spiral

■Black Hammer/Justice League: Hammer of Justice!

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