Satellite Sam / Matt Fraction + Howard Chaykin

1950年代、米テレビ業界の裏側を描く異色作!

今回はMatt Fraction/Howard Chaykinによる『Satellite Sam』。2013-15年にImage Comicsより全15話で発行され、TPB3巻にまとめられています。

1950年代、テレビドラマでも生放送が当たり前だった時代。全国ネットを狙うニューヨークのテレビ局LeMondeを舞台に、その看板番組「Satellite Sam」をめぐる様々な人間模様を通じ、アメリカテレビ放送黎明期の裏側を描く異色作。SEX! DEATH! LIVE TELEVISION!
鬼才Matt Fractionのストーリーに、80年代の『American Flagg!』で有名なレジェンドアーティストHoward Chaykinによる作画。こんな組み合わせでただで済むはずはない、ヤバい作品です。

Satellite Sam

まず最初に言っておくと、この作品、主に独特のスタイルによって描かれているという理由により、若干読みにくくわかりにくいです。
どういうスタイルかというと、1).基本的には大枠ではアメリカのテレビドラマの伝統的なスタイル。多くのキャラクターが登場し、複数の人物であったり事件などが、同じぐらいの比重で扱われ、それぞれに焦点を当てたそれほど長くないシーンが入れ替わる形で全体が構成される。
2).その時代のライブテレビ放送のスタイルを模した、全体の情景をカバーした固定カメラの前で登場人物が動く形の画面構成。全編を通じたスタイルではないが、かなり多用される。
1)、2)の組み合わせに、さらにそれらの場面で若干説明不足のまま、断片的な会話が交わされるという手法も加わり、シーンごとになるべくオリジナルに近い形で文章にして行くという従来の手法ではかなりわかりにくくなると思われるため、今回はその形を崩し、基本的には時系列的な流れは守りつつ、キャラクターや事件などに焦点を合わせる形で、話ごとに区切る形ではなく、大体TPB2巻半ば、半分ぐらいまでの話を説明して行きます。
んー、結構くどくど説明してこっちもわかりにくくなっているか?要するに少しオリジナルとは形の変わるあらすじ説明だよ、という話。

●キャラクター

とりあえずここでは、登場人物の顔と名前、仕事などがわかる程度で。重要なキャラクター、その時の立場は、話の展開に沿って再度説明を入れて行きますので、暗記までしないでいいです。
実はこの作品、各話の最初のページに、それぞれその時点でピックアップされた8人の人物紹介が入るという形で発行されていました。まあそのくらいにキャラクター多くて混乱しやすいし、その辺の把握が重要ということです。なるべくわかりやすいように頑張らんと。

  • Carlyle White:
    Satellite Samを演じる俳優。

  • Michael White:
    Carlyle Whiteの息子。LeMondeのエンジニア。

  • Dr. Joseph Ginzberg:
    LeMondeの社長。Dr.と呼ばれているが、医者ではない。

  • Kara Kelly:
    Satellite Samの共演女優。

  • Dick Danning:
    Satellite Samのプロデューサー兼ディレクター。

  • Libby Meyer:
    Satellite Samのアシスタントディレクター。

  • Guy Roth:
    Satellite Samのシナリオライター。

  • Maria Melato:
    Satellite Samの共演女優。イタリア出身。

  • Hamilton Stanhope:
    Satellite Samの共演俳優。

  • Clint Haygood:
    Satellite Samの共演俳優。

  • Maddie Ginsberg:
    Dr. Joseph Ginzbergの妻。

  • Reb Karnes:
    アメリカFCC(連邦通信委員会)のコミッショナー。上院議員を目指している。

  • Eugene Ford:
    LeMondeのエンジニア。自身の番組制作を目論む。

  • Eve Echol:
    ジャズ・シンガー。Eugeneに番組出演を懇願される。

●Story

■Satellite Samの死

ニューヨーク。1951年。
ローカルテレビ局LeMondeでは、局の人気プログラム、SFドラマ『Satellite Sam』のライブ収録が行われていた。
既に番組は始まっているが、主演Satellite Sam役のCarlyle Whiteが、いつまでたっても到着しない。
局への出資を募るDr. Ginzbergは、生放送中に見学者を案内し、スタジオは混乱を極める。
CMによる休止。アシスタント・ディレクターLibbyは、局の近くにCarlyleが借りている部屋に向かい走る。

『Satellite Sam Vol. 1』より 画:Howard Chaykin

スタジオではシナリオライターGuy Rothの提案により、一計を案じる。
スタジオ内でエンジニアとして作業していたCarlyleの息子、Michael Whiteを急遽代役として起用する。
衣装を着せられ、メイクを施され、カメラの前に立たされるMichael。
「到着したぞ。Satellite Samだ。そしてこの星に若返りの泉を発見した!」

『Satellite Sam Vol. 1』より 画:Howard Chaykin

一方、Carlyleの部屋に到着したLibbyは、そこで死亡したCarlyle Whiteを発見する。
なんとか放送を無事に終え、安心しているスタジオに、警官がやってくる。

『Satellite Sam Vol. 1』より 画:Howard Chaykin

■父の遺したもの

父Carlyleが死亡した部屋は、明らかに女性と密会し、関係を持つための場所だった。父がそういう人物であることは知っていたMichaelだったが、この場所については知らず、仕事の関係上Carlyleから個人的な雑用も多く頼まれていたアシスタント・ディレクターLibbyのみが知っていた。
途方に暮れ、とにかく部屋を片付け始めたMichaelは、ベッドの下に収められていた箱から、山のような父Carlyleが関係を持った女性を撮影した、扇情的な写真を発見する。

『Satellite Sam Vol. 1』より 画:Howard Chaykin

ここでこの物語について一つ注意しておきたいのは、Carlyle Whiteの死はこの時点で、殺人の可能性のある事故死ぐらいに見られていると思われるが、それについて警察の深い捜査などは行われない、または描かれないということだ。
Carlyleが死んだとき、女性が一緒にいたことは明白なのだが、それが何者であったかなどの捜査上の追及については一切描かれない。
例えば、有名俳優ゆえ大きなスキャンダルになることを避けた、というような事態は想像できるが、それを明確に説明するシーンなどはない。
別にこれは何か物語上の欠陥を指摘しているわけではなく、この作品はそう描かれているというだけの話である。なにか殊更そこのところを疑問に思い、引っ掛かる人がいるといけないと思っての一応の注意。

父の葬儀の後、MichaelはDr. Ginzbergから正式にSatellite Sam役を引き継ぐように請われ、それを承諾する。
一方、父の遺した大量の写真の前に困惑するばかりのMichaelだったが、次第にそれを手掛かりに父の死の真相を探索しようと思い始める。

Michael White:

Satellite Sam役のCarlyle Whiteの息子。元はLeMondeのエンジニアだったが、父の突然の死後、Satellite Sam役を引き継ぐことになる。
父が大量に遺した関係のあった女性の写真を手掛かりに、父の死の真相を探り始める。
飲酒に問題を抱える。

■Kara Kelly

Michaelは写真の中にSatellite Samに出演している女優Kara Kellyのものがあるのに気付き、彼女の住まいに押しかけ、問い詰める。

『Satellite Sam Vol. 1』より 画:Howard Chaykin

Kara Kellyはかつてアルコールに問題を抱えた荒んだ生活を送っていた。写真はその頃のものだと彼女は言う。
だが、メキシコで大量出血により瀕死となり、Carlyleに国境を越え連れ帰ってもらい一命を取り留めてからは、心を入れ替え信心深い生活を送っている。
ここでモノローグなどでははっきりと語られていないのだが、描写などから推測すると、Karaはメキシコに堕胎手術のために行き、失敗し緊急に米国内のまともな医療施設での処置救命が必要になったと思われる。駆け込んだ病院の待合室で、Carlyleが居合わせた人たちに口止め料を払うことを持ち掛けている描写もある。
Karaはこの後、Carlyleの死の真相究明のため、Michaelに協力するようになる。

Kara Kelly:

Satellite Samの共演女優。
かつてはアルコールに溺れた自堕落な生活を送っていたが、Carlyleの助けにより一命を取り留めた経験から、生活を改め、信心的な生活を送っている。
Michaelの父の死の真相を探る調査に協力するが…。

■Dr. Ginzbergの思惑

LeMondeの社長であるDr. Ginzbergは、物語の中で一貫して会社の拡大を目指して奔走する。
当時、アメリカFCC(連邦通信委員会)では、テレビ放送用のチャンネルを増やすかについての調査検討が行われており、そこで強い発言力を持つコミッショナーReb Karnesと強いパイプを維持するため、Karnesの上院議員に向けた選挙活動を支援している。
さらに、Karnesと妻Maddieとの関係も黙認しており、夕食にKarnes夫妻を招いた後、寝室に向かったKarnesとMaddieを、同様に夫の行動を黙認しているKarnesの妻と無言のまま待つ。

『Satellite Sam Vol. 1』より 画:Howard Chaykin

LeMondeはもちろん架空のテレビ局だが、当時アメリカ大都市周辺にはこのくらいの規模の地方ローカルテレビ局が多数あったのだろう。ざっと見たぐらいで詳しく調べてないのだが、アメリカFCCでは当時このような調査が行われていて、この物語が始まる翌年の1952年に調査報告・結論が出されたようだ(物語終盤で、その発表のシーンもある)。
Dr. Ginzbergパートでは、この辺の時代のテレビ局が何を考えていたかがよくわかるのだろうと思う。

Dr. Joseph Ginzberg:

ニューヨークのローカルテレビ局LeMondeの経営者。蝶ネクタイがトレードマークのファッション。
LeMondeを成長拡大し、全国チャンネルを得るべく奔走する。社長室に座っているよりはあちこち歩きまわって指示をするタイプの経営者。
妻を寝取られていることに若干倒錯的な興奮を覚えているふしもある。

■脚本家と助演男優陣

Satellite Samの助演男優であるHamilton StanhopeとClint Haygoodは、Carlyleの死後、全く経験のないMichaelが主演スターとして脚光を浴びるのが不満で、脚本家Guy Rothに自分達を番組の中でもっと目立たせるように交渉する。
生放送中に、しきりにカメラの前に出ようとする二人に、Michaelとの間に軋轢が生じ始める。

『Satellite Sam Vol. 1』より 画:Howard Chaykin

思い通りに事が進まないことに業を煮やしたStanhopeとHaygoodは、Rothがゲイであることを突き止め、Rothが深夜局内で若いスタッフとことに及んでいるところを盗撮し、その写真をネタに自分たちが前に出る脚本を書くようRothを脅迫し始める。

Hamilton Stanhope & Clint Haygood:

Satellite Samの助演男優。Carlyleの死後、Satellite Samの主導権を奪おうと画策する。
脚本家Guy Rothがホモセクシュアルであることを突き止め脅迫。
見た目通り、Stanhopeが親分格で動く。

Guy Roth:

Satellite Samの脚本家。Carlyleの不在を埋めるため、急遽Michaelを代役に立てる案を出す。
ホモセクシュアルであることが発覚し、脅迫される。
常にパイプをくわえて笑みを浮かべる優男風だが、たやすく屈することはできないしたたかな男で、Carlyleとは戦場で出会う。

■アシスタントディレクターLibby Meyer

Carlyleの死亡の発見者となってしまったアシスタントディレクターのLibby Meyer。
Carlyleの借りていた部屋を唯一知らされていたように、LibbyはCarlyleのLeMondeを通さない個人的な案件も多く任されていた。
その一つが、Satellite Samの撮影フィルムの受け取り。ライブ放送の当時のテレビでは、基本放送したものは保存されていなかったが、Carlyleはそれを個人的にフィルムとして撮影し保存していた。
Carlyleの死後、それらが現像所からLibbyのもとへ届けられるが、当のCarlyleがいなくなってしまった状況でどう処理すればいいのか見当もつかない。
Libbyは、ディレクターDick DanningやDr. Ginzbergに相談した後、それらが送られていた場所を突き止める。そこは人里離れた郊外の、戦時中軍の貯蔵施設として使われていた洞窟の中に構築された倉庫だった。
Libbyは現在引き継ぐべき相手であるMichaelを説得し、その洞窟へと彼を連れて行く。Michaelはそこに大量に積み上げられたSatellite Samの撮影フィルムを見る。

『Satellite Sam Vol. 2: Satellite Sam & Kinescope Snuff』より 画:Howard Chaykin

序盤から様々な短いエピソードの合間に挟まれる形で進行して行くLibbyとフィルムの件だが、大量に貯蔵された場所が明らかになるのは中盤。そしてその後、後半には重要なファクターとなってくる。

Libby Meyer:

Satellite Samのアシスタントディレクター。
忙しく駆け回るような仕事の中にCarlyleのフィルムの件を背負わされ、苦労する。
作中では、唯一、一切の淫行シーンのない女性。

■Maria MelatoとDick Danning

イタリア人女優Maria Melatoは、交際中の男性と口論となり、怪我を負わせ傷害事件で逮捕される。
プロデューサー兼ディレクターであるDick Danningは、収録を他のスタッフに任せ、警察に彼女を引き受けに行く。

『Satellite Sam Vol. 2: Satellite Sam & Kinescope Snuff』より 画:Howard Chaykin

外国籍であるMariaは、この事件により国外退去の危機に陥ることとなる。
前半あまり登場しないが、後半から重要キャラとなってくるMaria Melato。戦後間もなくの時期、敗戦国であるイタリア出身でアメリカ国籍のないところからの彼女の苦境が描かれて行く。
一方、体調不良を感じていたDick Danningは、病院で肺癌を宣告される。

『Satellite Sam Vol. 2: Satellite Sam & Kinescope Snuff』より 画:Howard Chaykin

Maria Melato:

Satellite Samの助演女優。
婚約中のアイルランド系男性が、出身国問題で婚約をうやむやにしようとしたことが原因で事件になる。
イタリア出身で、終戦時母国でCarlyleと会い、それがきっかけでアメリカに渡る経緯が後に描かれる。

Dick Danning:

Satellite Samのプロデューサー兼ディレクター。
序盤から最も頼れるリーダー的に番組制作に携わるが、後半病に倒れる。
まあやっぱ煙草吸い過ぎ…。

■Eugene Fordの野望

LeMondeのエンジニアであるEugene Fordは、自身による番組制作を目論み動き始める。
収録が行われていないスタジオで、カメラ操作を勉強し、Dr. Ginzbergに掛け合う。
通っているクラブのジャズシンガーEve Echolに番組出演を懇願し、一時はクラブに出入り禁止にまでなるが、その熱意に負けEveも承諾する。

『Satellite Sam Vol. 2: Satellite Sam & Kinescope Snuff』より 画:Howard Chaykin

Eugeneが思い描いていた自身による番組というのは、自分とEveが出演する様々なアイデアを凝らしたコメディバラエティ的なものだったのだろう。
放送も開始され順風満帆だと思っていたEugeneだったが、Eveのみに明かしていた自分が黒人の血を引いているという秘密が、二人での会話から漏れ聞こえ、姿の見えない差別主義者から脅迫を受けるようになる。

Eugene Ford:

LeMondeのエンジニア。
自ら出演する自身の思い描く番組制作のため奔走する。
実は母親が黒人であり、その秘密が漏れたことから脅迫を受け始める。

■Michaelの迷走と堕落

Kara Kellyの協力を得て父Carlyle Whiteの死の真相を探り始めたMichaelだったが、大量にある写真の女性を特定することすら難航を極める。
その一方で、急激に得た名声と、どうしても父の様には演じられないSatellite Samからのプレッシャー、現場でのストレスなどから、酒と女へと堕落して行く。
遂に父の死の真相を探ることさえ投げ出し、協力者であるKaraからも見放される。

『Satellite Sam Vol. 2: Satellite Sam & Kinescope Snuff』より 画:Howard Chaykin

そんな中、アシスタントディレクターLibbyにより、こちらもまた大量に父が貯め込んでいたSatellite Samのフィルムに出会う。
自室に一部を持ち帰り、そのフィルムを見ていたMichaelは、その中に父の死にも関係があるのかもしれない、ある衝撃的な映像を発見する…。

『Satellite Sam Vol. 2: Satellite Sam & Kinescope Snuff』より 画:Howard Chaykin

以上、全3巻の半分強ぐらいのところまで、キャラクターとそれぞれの動き中心にと言う感じで説明しました。かなりわかりやすくまとまっていると思うけど、作者チームからすると、ふざけんなよてめえこれじゃ台無しだろ!ってとこかもしれんけど…。
この作品はこんな感じで、話の本筋に関係あるのかないのかそれぞれの時点では不明の、多くのキャラクターそれぞれのストーリーが同時進行的に進んで行くスタイルで描かれている。

一応、Carlyle Whiteの死の真相というのが話のメインとはなっていて、容疑者的キャラクターもいっぱいいるわけだけど、最後に全員集めて、「犯人はこの中にいる!」とか「ササエルの中には誰もいない」とか言う展開にはならないから。Michaelくん黒縁眼鏡だけど、お父さんの死体座らせて喋ってるふりさせて柱の影から推理を延々話したりしないし、Dr. Ginzbergの蝶ネクタイにも変声機能ついてないから。あ、「ササエル」大変好きなので本店直近記事に続いてこちらにも登場です。
3巻巻末にはFraction-Chaykinの対談が掲載されており、そこではFractionがこの作品の制作過程に及ぶぐらいの期間、ひたすらこの時代の主にバイオグラフィー的な資料を山のように読み漁り、ミステリ的な構成よりもその時代や人物を再現することに注力したというようなことを語っている。
この作品全体を通じ、実際には最初の段階で死亡し、回想ぐらいにしか出てこないCarlyle Whiteという人物が、かなりの欠点や問題を抱えながらも圧倒的な魅力を持つ「スター」という存在で強く浮かび上がってくるのも、そういった方向での模索の結果なのだろう。

あと、最後になるけどそこんところはちゃんと書いといたほうがいいかと思うのだが、この作品、かなり強力なコンビによる作品であるのだけど、あんまり高くは評価されていない。フランス、ドイツあたり翻訳されそうに思えるんだが、今のところはそれもなかったり。なんか特別に批判されてるようなのが見つかるわけでもないのだけど、んーまあ、結局のところ、あんま人気なかったんやね。
何処がどうだからとか考えられないわけでもないだろうけど、そんな考察大して意味あるとも思えないしな。アメリカおよびその他諸国での評価がどうであろうと、個人的には、両作家の名に違わない大変魅力ある異色作だと思っているのですがね。まあそんな感じで、あっちでの評価が芳しくなかったりする場合は、その辺についてもちゃんと書いておかなければとは思うが、とりあえずそういうことにはあまり関係なく、今後も自身の評価による紹介すべき作品という方向で、なるべく多くの作品を紹介して行きたいと思いますので。

作者について

■Matt Fraction

1975年生まれ、アメリカ イリノイ州シカゴ・ハイツ出身。最初に買ったコミックは『Batman』だったけど『Crisis on Infinite Earths』あたりがなんかなあと言う感じで、DCからマーベルファンに鞍替え。子供の頃は『ピーナッツ』などの新聞マンガも好きだったそう。
1990年代にはコミック小売業界で働き、ウォーレン・エリス・フォーラムというのに参加したことがきっかけで、ストーリー・ライターとしてのキャリアを始める。初期作品としては『30 Days of Night』シリーズの続きや、『Metal Gear Solid』のコミカライズなど。
Image Comicsでの『The Five Fists of Science』(2006 作画:Steven Sanders)や『Casanova』(2006-12 作画:Gabriel Bá/Fábio Moon)が注目を集め、そのころからマーベルでも仕事が始まる。まあその辺についてはいつも通り他で調べてね、というとこなのだが、この時期日本でも翻訳が盛んでFraction作品多く翻訳されている。David Ajaとの『Hawkeye』とか本国でかなり話題になったり受賞歴も多いやつだけど、こういう時期じゃないとスルーされちゃいがちなのが全作翻訳されてるのは良かったっすね。あとFractionのマーベル初期のブルベイカーと共作の『The Immortal Iron Fist』もTPB1巻のみ翻訳されてるのだが、これシリーズ後半にはかのドゥエイン・スウィアジンスキーが交替してストーリーを担当していたり、Travel Foreman作画もあったりするので、いつか続きについて書ければいいかなとは思っているのだが。
マーベルではIcon Comicsで『Casanova』の続きを出していたが、2013年頃からは、またImage Comicsでオリジナル作品を発表。代表的なものはChip Zdarskyとの『Sex Criminals』(2013-20)や、注目のアーティストChristian Wardとの『ODY-C』など。『Satellite Sam』はあんまり代表してないみたい…。
Fractionオリジナル作品としては、次は『ODY-C』かなと思ってたのだけど、これ『オデュッセイア』が元になってるとかちょっと苦手ジャンルなので、やっぱ代表作中の代表作である『Casanova』取り掛かろうかと…。なんか今回の『Satellite Sam』にしてもこの辺の作品にしてもベースとしてかなりの読書家であったりしそうなFractionなのだが、いまいちその辺についての資料が無かったり。まだまだ正体不明の部分も多そうなMatt Fractionについては今後も注目して行きますです。

■Howard Chaykin

1950年生まれ、ニュージャージー出身。母親が離婚していて、血のつながっていない父親に育てられたけどそれを長いこと知らなかったりと、少し複雑な家庭で育ったらしい。ハイスクールを卒業後、出版社で働きながらコロンビア大に通い、19歳の頃有名なコミックアーティストGil Kaneに使い走り(本人による弁)として雇われ、多くの影響を受ける。
1970年代から多くのDC・マーベル作品を手掛ける。そして1983-86年First Comicsから出版されたオリジナルシリーズ『American Flagg!』がChaykinの名を知らしめる。政治風刺SFというこの作品、まあ必読だろな、と思ってたらこの前までDynamiteから出てた復刻版絶版になっとる…。まあなるべく早く読んで紹介だけでもするつもりですが…。
とにかく面の筋肉まで暑苦しい素晴らしいアメリカ人画。褒めてんだかけなしてるんだかわかんないく見えるけど、大変尊敬しています。アメリカンコミックのレジェンドアーティストのひとり。
近年の仕事としては、アメリカのコミックの歴史をパロディ的に描いた『Hey Kids! Comics!』。こちらは個人出版で出したようだけど、現在はImage Comicsから販売されている。その辺含め、Howard Chaykinについてもいずれもう少し詳しくやれればと思っています。

Satellite Sam

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