Mansonの街に忍び寄る暗黒!Rachelの運命は?!
今回はTerry Mooreの『Rachel Rising』の後編。第1巻『Rachel Rising Vol. 1: Shadow of Death』全6話の後半3話をやって行きます。
『Rachel Rising』は2011-16年にTerry MooreのAbstract Studioより、全42話で出版され、TPB全7巻にまとめられています。TPB版は、現在全巻Kindle Unlimitedで読むことができます。
魔女伝説の残る森の中、埋められていた土の中で目覚めるRachel。彼女は殺されかけたのか?それとも一旦死んで、蘇生したのか?
手掛かりを求め町へと向かうが、長く知っていたはずの人々はいずれも彼女をRachelと認識できない?
その一方で、町では謎の女性が動き始める。郊外に住む幼い少女Zoeは、謎の女性に触発されたように仲の悪い姉を殺害する。結婚を間近に控えた男は、謎の女性に婚約者への憎悪を植え付けられ、彼女を手にかける。
親友Jetの演奏するクラブで、謎の女性を見たRachelは、その姿を追い屋上に上るが、そこから5階下へと突き落とされる…。
えー、こういうのは次どうなるの?っていうのも作品の一部なんだよ、という私の思い付きにより前後編に分けられた、『Rachel Rising Vol. 1: Shadow of Death』後編です。
Rachel Rising Vol. 1: Shadow of Death
■キャラクター
-
Rachel:
主人公。何者かに埋められた森の中の地中で目覚める。 -
Jet:
Rachellの親友。 -
Johnny:
Rachellの叔母。葬儀場で働く。 -
謎の女性:
町に現れ、謎の行動をとり続ける女性。 -
Zoe:
郊外に住む少女。 -
Dr.Sieman:
Rachel達に協力する、独自の死生観を持つ医学博士。 -
Earl:
死体安置所の職員。
■Story
#4
死体安置所の廊下。並べられた椅子の一つにJetが俯いて座っている。泣いているJet。
横の出入り口からRachelの叔母Jonnyが入って来る。
「Jet…。なるべく急いできたのだけど。本当なの?Rachelが、本当に…」
「死んだわ、Johnny」「聞いたわ。あたしの意識は今夜ははっきりしてる。何があったの?」「Blue Noteの屋上から落ちたのよ」「なんてこと」
「あなたそこにいたの?彼女が落ちるの見たの?」「いいえ、でもあたし救急隊員が落ちた車の上からあの子を持ち上げて、それでバッグに入れるのを見てた。怖かったわ」
Johnnyは建物の中に続くドアのインターフォンを押しながら言う。「こんばんわ、開けてくれる。Johnny Woodallよ」
「警察はあたしに遺体の身元確認をしてほしいと言ってるんだけど、一人では行けなくて。あなたを待ってたの」Jetが言う。
「大丈夫よ、行きましょう」johnnyの前でドアのロックが解除される。
安置所の職員Earlが二人を迎える。
仕事上の知り合いでもあるEarlとJohnnyは挨拶を交わす。かなりひどい状態であるRachelとJohnnyを対面させることを心配するEarl。
「あなた見ても大丈夫?」JohnnyはJetを心配し、念を押す。「ええ」「後で見なかったことにはできないのよ」「分かってる」
Earlに続き、遺体が安置されている部屋に入る二人。
Johnnyは息を飲み、Jetの目から涙があふれる。
Rachelの遺体が寝かされたベッドに歩み寄って行くJohnnyとJet。
顔にかけられたシーツをめくる。
「彼女よ。神よ、我を助け給え。彼女です」沈鬱な表情で言うJohnny。「彼女今夜あたしのところに来たのよ。現実じゃないってわかってた」
「あの子はお別れを言いに来たんだわ」「あたしも彼女を見たわ」泣きながら抱き合うJohnnyとJet。
JohnnyはEarlに少し私たちだけにしてと頼む。
Rachelの遺体を見ながら話す二人。「見てあの子…、可哀そうに…。幽霊みたいに冷たく白くなって。こんなの間違ってる」「ガラスがいっぱい刺さってる。誰か取ってあげないと」
「それは私の仕事になるわね、多分。警察が検死解剖を求めない限り。犯罪の疑いがあるかどうかによるけど。ティッシュを持ってる?」「ええ」二人の後ろで目を開くRachelの遺体。
「Johnny叔母さん…」起き上がって言うRachel。二人は驚愕に叫び声を上げる。
「大丈夫かい…」Earlがドアを開け声を掛ける。そして起き上がっているRachelを見る。「どうしたんだ?」
口から謎の煙を吐き、再びベッドに倒れ込むRachel。
「ただの死体ガスよ、知ってるでしょう。かなり驚いただけ。でも大丈夫だから」JohnnyはEarlに向かって言う。「問題ないわ」
Earlは少し釈然としない顔をしながら、ドアを閉めて去って行く。
再び目を開き、起き上がるRachel。
「Johnny叔母さん、ここから連れ出して!」「あなたあたしに心臓発作起こさせるところだったのよ、お嬢ちゃん」「あんた死んだのよ!あたし連中があんたを調べるのを見たし、”バッグを、死亡している”って言ってたのも聞いた。あんた死んだのよ!」
「どう見たってあたし死んでないでしょ、Jet。見なさいよ」「あんた死んでるみたいに見える!」「大変な夜だったのよ、わかる?もう勘弁してよ。あんたホントにあたしをうんざりさせ始めてるのよ!」
「まあまあ、あなたどこに行くつもりなの?」Johnnyが言う。「叔母さんと一緒に。ここから出ましょうよ」Rachlが言う。
「あなたただ出てくってわけには行かないわよ。警察はあなたは死んだと思ってるし」「うん、死んでない。だから行こう」「あんた死んでるみたいに見える」「黙れJet」

『Rachel Rising Vol. 1: Shadow of Death』より 画:Terry Moore
「Rachel…、あんた5階建てのビルから落ちたのよ!」Jetが言う。
「落ちたんじゃないわ。押されたのよ」ガラスの破片を腕から払いながら言うRachel。「押されたですって?!」
「ええ、そういうこと。別の女がソーラーパネルをあたしのとことに滑り落ちてきて、一緒に落ちたってわけ」
「別の女って何?」「あたしと一緒に落ちた別の女、黒いドレスで、ネックレスの」
「他の誰かなんていなかったわよ」「そんなはずない、一緒に落ちたのよ」
「あたしは目撃者って感じでそこにいたけど、あんた以外の誰も見なかったわ」「でも…」
「理解できない。彼女どこへ行ったっていうの?」途方に暮れるRachel。
* * *
夜闇の中、ビルから落ちた女性Natalieの遺体を担いで運ぶ人影。それは彼女の婚約者Noahだった。
Noahは森の中の枯れ川の河床、Rachelが埋められていた場所に辿り着き、Natalieの遺体を降ろす。
荒く息をつき、その場に座り込み、遺体の横に穴を掘り始める。
異音。Noahが頭を上げると、Natalieの遺体の上を一匹の蛇が這っていた。
彼に向かって鎌首を上げて威嚇する蛇。
あっけにとられて見ているうちに、蛇はその頭をNatalieの口に近付け、そこから体内に潜り込んで行く。
絶叫し、Natalieの頭部を土の中に押し付けるNoah。
そして、Natalieの頭ごと蛇を窒息させるように、しばらくそのまま頭を押さえ続ける。
やがて、Natalieの全身を土の中に埋め、よろめくようにその場を去って行くNoah。
森を抜け、乗って来た車に戻るNoah。
そこにやっとで走っているようなあちこち壊れた車がやって来て、Noahの車にぶつかって止まる。
停まった車から、姉を殺し自宅を燃やした少女Zoeが降りて来る。
車の後部に歩き、呆然と見ていたNoahに声を掛けるZoe。「手伝ってくれる?」
トランクの中にはZoeの姉の死体。
「つまりね…、彼女自分では車から出られないのよ」姉の頭を持ち上げながら言うZoe。
Zoeに言われるまま、姉の遺体を運ぶのを手伝うNoah。
そして二人は森の奥へと進んで行く。

『Rachel Rising Vol. 1: Shadow of Death』より 画:Terry Moore
* * *
すぐに出て行かなければと強硬に主張するRachelの状態を、様々な方法で調べるJohnny。
「あなたは指に刺した安全ピンを感じなかった。落下の怪我を感じなかったのと同じ理由で。あなたの神経系統は静止状態にある。あなたの身体全体については、脈拍は1秒に6回ぐらいまで落ちていて、肌は冷たく、呼吸はほとんどわからないほど…。それであなたはこれらの変化を感じていないの?」
「いいえ、ただわけがわからないだけ」「じゃあ事実に注目してみましょう」
「あなたの肌は死体のように青白くなっているけど、まだピンク。それは何らかの形で極小の血液循環があることを示している」
「あなたの目の激しい点状出血は、窒息の外傷に伴う血管の破裂に起因するもの」
「ああいやだ…」「首を絞められたところからの」「やめて!」
「Rachel、あなたは既知の医学的常識から言って、生きているはずがないのよ。あなたの次の呼吸が最後のものになるかもしれない」
「憶えてるでしょ、ハイスクールの時先生があたしにおんなじこと言ったよ」Jetが口をはさむ。
「あれ?あたし3年生の時のことすら憶えてないなあ。でもあたしはここにいて…」Jetが続ける。「そうね、別の話だわ。気にしないで」
「ねえ、Rachel、あたしの提案としては…」「Johnny叔母さん…」
「思うんだけど…あたし…」Rachelの目が閉じて行く。
「あらら、あたしこの感じ知ってる!」Jetが駆け寄る。
Jetに抱き止められて眠ってしまうRachel。「そして寝ちゃう」「意識を失くしたの?」「そうね、叔母さんの寝る前のお話がいっぱいいっぱいだったみたい」
「生きてる相手との対話はあたしの専門分野じゃないのよ」「叔母さんったら、で、どうするの?」「助けになりそうなところに電話してみるわ」
* * *
森。枯れ川の河床のNatalieの遺体の傍に、Noahの手伝いを得て姉の遺体を埋めるZoe。
「助けてくれてありがとう。あたし帰らなくちゃ」Zoeは言うが、NoahはNatalieを埋めた場所を呆然と見ている。「おじさん?」
「あたし帰らなくちゃ」動かないNoah。
「なんてことを…。俺は何をしちまったんだ?」徐々に正気に戻り始めたNoahの目から涙があふれ始める。
その頭に叩きつけられる石。
倒れたNoahの上に、月を背にZoeが立ちはだかる。
Noahの頭にかがみこみ、口を開けさせ、そこに土を詰め込み窒息させるZoe。
森の上に大きく輝く月。

『Rachel Rising Vol. 1: Shadow of Death』より 画:Terry Moore
森から出て戻って行くZoe。
そこに声がかけられる。「あなたを誇らしく思うわ、Zoe」
Zoeの前に立っていたのは、彼女の家に現れた謎の女性。
「あなたは悪い人よ。あなたあたしに悪いことをさせた」Zoeは言う。
「あたしの前から消えて、決して戻ってこないで」「決して、は長い時間ねえ」「消えて」
「もしまたあなたが私を必要とする時が来たら?」「あなたが必要な時なんて来ない」
謎の含みを持った笑みを浮かべる女。
そしてZoeは野原の只中に、独りで立っていた。

『Rachel Rising Vol. 1: Shadow of Death』より 画:Terry Moore
#5
夜。暗い部屋のベッドでRachelは目覚める。Johnny叔母さんの家。
ベッドから降り、窓辺によりガラスに映った自分の姿を見る。首に絞められた痣。
「夢じゃないのね」呟くRachel。
家の中をJohnnyの名を呼びながら探すRachel。だが叔母の姿はない。
外から聞こえる犬の鳴き声。やがて勝手口から愛犬Priscillaを連れてJohnnyが入って来る。
「ああ、起きたのね!あなたをどうしようかと思い始めてたところよ」Johnnyは言う。
「あたしどのくらい眠ってたの?」Priscillaを抱き寄せながら言うRachel。
「昨日の午前中からだから、ほぼ36時間ね」Johnnyは答える。
「36時間ですって?!なんで起こしてくれなかったの?」「起こしたわよ、でも…」
「死人を起こそうとするみたいなものだったわ」
しばらくRachelの匂いを嗅いでいたPriscillaだったが、やがて顔を背け離れて行く。
黙ってその様子を見る二人。
「Johnny、あたしはどうなったの?」
「あなたは死んだわ」調理中の鍋を手にして言うJonny。「バターを取ってくれるかしら?」
「分かったわ、あたしは死んだっていったよね」「そうよ」
口を曲げて考え込むRachel。
「じゃあ…、あたし天国にいるの?」Rachelは言う。
「いいえ、あなたはキッチンにいるわ」振り返って言うJohnny。「冷蔵庫を見てくれる?バター…、ミルクかしら?」
冷蔵庫を開け、ミルクを手に戻るRachel。
「でも、あたしはモルグにいて、あなた泣いてたでしょう」「ディナーの時、全部説明するわ」調理を続けながら言うJohnny。
勝手口から外に出て、ステップに座りため息をつくRachel。
庭にあるJohnnyが置いたエルビスの墓石が目に入り、微笑む。
そこにJetがやって来る。
「Johnnyが電話してくれて、あんた起きたって聞いたんだけど。どんな感じ?」「大丈夫。混乱してるけど」「まあ、そうだろうね」
「あんたその格好で寒くないの?「いいえ」「寒いよ!今晩雪が降るかもって話よ」「歩いて来たの?車の音聞こえなかったけど」
「車じゃないわ、ポルシェよ」「失敬、ポルシェね」「新しい燃料ポンプが要るのよ」「あんた何やってるの?」
「あんたの目、相当いかれてるよ」「あたしの見たものを見ればわかるわよ」「あんた何を見たの?」「知らない方がいいわ」
「そっち詰めて」言ってJetはRachelの隣に腰を降ろす。
「よし、話して。何が起こってるの?」Jetは言う。
「分からない。この全てが理解不能…。それであたしはあんたをこれに巻き込みたくない」Rachelは言う。
「悪いことは言わないから…、帰りなよ」
「Rachel…、あんたがあたしにそんなことするの信じられないよ」Jetは手袋を外しながら言う。
小指を立てて出すJet。
笑顔になるRachel。
そして二人は小指を繋ぐ。
少女時代の思い出。公園の芝生に向かい合って座り、小指を繋ぐRachelとJet。
「最高の友達」「永遠に」「良い時も悪い時も」「何だろうと」「年を取り髪が白くなっても」「生涯の友達」
そして二人は声を合わせて言う。「墓と死後まで」
現在。並んで座って小指を繋ぐ二人。「それでどうなの?」Jetが言う。
「死後までの盟約を結ぶってどんな類いの子供よ?」「Mansonに住んでる子供だよ」
「わかった?あんたはあたしに話さなきゃいけないの。死んでようが生きてようが、あんたはあたしの最高の友達なんだから」
「正直に言って、Jet、あたしあんまり憶えてないのよ。憶えてるのはガレージにあんたに会いに行って、その晩出かける予定を立てたことまで」
「月曜ね」「そう」「それで?」
「次にあたしが憶えてるのは、土の中で目覚めたこと。動くことも息をすることもできなかった…。恐ろしかった。掘って外に出ようとしたとき、さらに深く沈んだ…。それで気付いたのよ…。あたしは仰向けに寝てるんじゃないって」
「あたしにはどっちが上かさえもわからなかった」
「本当に起こったこととは思えなかった」
「これは悪夢で、目覚めることができない」
「叫ぼうとした。でも、泥が喉に流れ込んできて、肺とお腹を満たして行った。あたしは周囲の全てがあたしを飲み込んで行くのを感じることができた。」
「まるであたしが何かに吸収されて行くように」
「なんてこと、Rachel。どうやって抜け出したの?」
「身体を持ち上げるための手掛かりを見つけた」「何?」
「他の死体」

『Rachel Rising Vol. 1: Shadow of Death』より 画:Terry Moore
「あんた他人の死体の上に寝てたってこと?」「そうよ」「うわっ、気持ちわるっ!」
「あたしだったら吐いちゃうよ!」「そんな余裕なかった。掘って外に出なきゃならなかった」「あたしなら掘って吐いて、掘って吐いたわ」「あたしもそうしてたのかもね」
そこで家の中からJonnyに呼ばれ、二人は中に入る。
「よし、食べ終わったら残りも話すのよ」Jetが言う。「わかった」
家の中では待っていた温厚そうな初老の男性が二人を迎えた。
「ディナーのお客様よ。Sieman先生は知ってるわよね」Johnnyが言う。挨拶するSieman。
「みんな席に座って」
RachelとJohnnyは小声で話す。
「あの人ここで何してるの?」「彼があなたを安置所から出す書類にサインしてくれたのよ。…でもあなたに会わせるって条件で」
「話しといて欲しかったわ」「そのつもりだったけど…、あなた”寝てた”からね」
ディナーの席に着いた四人。Siemanは笑顔でRachelを執拗に見つめる。
「Sieman先生…。ずっと見てますけど」Rachelは気まずそうに言う。
「申し訳ない、君に会うのが待ちきれなかったものだからね」
「でも先生はあたしのこと知ってますよね。これまでのあたしの人生を通じてぐらいに。あたしはRachel…、Rachel Beckですよ?」
「いいや…、君はRachelじゃない」
「君はMa Malai…。死の天使だ!」Siemanは言う。
* * *
家を失くしたZoeは、一時的に保護施設に連れて来られていた。
職員の女性がZoeに食事を持ってくる。「チキンナゲットがあったわ。マクドナルド程ではないけど、職員食堂にしては美味しい方よ。ソースもあるし」
Zoeは黙って俯き、食事には手を付けない。
そこへ別の職員が顔を出し、職員の女性Donnaに、里親夫婦が来たと告げる。
Donnaは、部屋から出て待合室のソファに座っていた中年の夫婦Boyle夫妻に会う。早期に援助要請にこたえてくれた礼を言い、夫妻に事情を説明するDonna。
「彼女の名前はZoe Mann。彼女の家は昨夜火災でなくなりました」「まあ」「彼女の行方について問い合わせもなく、おそらくは彼女の家族全員が亡くなってしまったと思われます」
「現場はまだ捜索が困難な状態で、Zoeには調査が完了するまで滞在する場所が必要となります。一日や二日ではすまないものでしょう」「問題ない」「Donna、Zoeは火事の現場にいたの?」
「いいえ、まだ消火活動が続いていた夜明け頃に、Zoeはナイトガウンのまま汚れて疲れ切って、歩いて戻って来ました。おそらくは彼女は目覚めて家が燃えているの意気付き、逃げ出したのだろと思われます」「可哀そうに」「うむむ」
「私があなた方に連絡したのは、これまで6年の間大変多くの子供たちを私どものためにお世話してくれたことによります。その経験はこのような事態に大変貴重なものです」
「Zoeは発見されてから一言も喋っていません。彼女の名前もご近所で教えてもらいました。彼女には私どもに今後の判断ができるようになるまで、親切な扱いが必要となります」「もちろんですわ」
DonnaはZoeのいる部屋に戻り、Boyle夫妻を紹介する。
「あなたは数日こちらのお宅でお世話になることになるわ、わかる?あなたのご家族が見つかるまでのほんの数日よ」
そしてDonnaはBoyle夫人と手続きのため別室に行くことを告げ、部屋には夫BoyleとZoeが残される。
「やあ、Zoe」ドア口でZoeに話しかけるBoyle。「君は可愛いねえ」
「君が私の家に来たいなら、ひとつわかっておいてもらいたいことがあるんだ」
「君は私が言うことは何でもその通りにする、そうすれば私たちはうまくやっていける、分かるね」Boyleは言う。
「私は君にとてもつらく当たることもできるし、とても優しくすることもできる。それは君次第だ。私に辛い扱いを受けたいかね?」
その時、Boyleの背後に、謎の女が現れる。
「それとも優しくされたいかね?どうする?」Zoeに近寄りかがみこんでくるBoyle。その背後には謎の女。
「Zoe?私が話しているときには、私を見るんだ。Zoe!」
ZoeはBoyleの背後の謎の女を見つめ続ける。
「どうしたというんだ、耳が聞こえないのか、馬鹿なのか?私に向かってゲームをするんじゃないぞ」Zoeの肩に手を掛け言うBoyle。
「あなたは悪い人だわ。子供を傷付ける」ZoeはBoyleに向かって言う。
「もう一度あたしに触ったら、ミスDonnaに話すわよ」
「わかったよ、俺たちは問題を抱えたようだな」BoyleはZoeに顔を近づけて言う。「俺は小娘が俺について嘘を言って回るのを放ってはおけん」
「そんなことをするなら俺はそいつを痛い目に遭わせる、本当に酷くな。お前本当に酷く痛めつけられたことはあるのか、Zoe?んん?」
凶悪な表情で顔を近づけ、Zoeに話すBoyle。「俺が話してるときには俺を見るんだ」
「おじさん、あたしにはあたしを見守ってる秘密の友達がいるの。あたしが彼女を見るときには、いつも誰かが死ぬのよ」「馬鹿々々しい。お前の友達は今どこにいるんだ、お利口さん?」
「あなたの真後ろよ」
次の瞬間、Boyleの身体は廊下の奥に向かって吹っ飛んで行く。

『Rachel Rising Vol. 1: Shadow of Death』より 画:Terry Moore
廊下の奥の壁に激突するBoyle。
その間にZoeは部屋から出て、別方向に走って行く。「おい!」起き上がって叫ぶBoyle。
「戻ってこい、クソガキ!戻りやがれ!」叫びながら廊下を走りZoeを追うBoyle。
「何なの?」騒ぎに別の部屋から外を覗くDonna。
「あいつの言うことを何も信じるんじゃないぞ!あいつは嘘つきだ!」Donnaの前を通り過ぎながら叫ぶBoyle。
エレベーターに駆け込むZoe。Boyleは再び謎の力でその前の壁に叩きつけられる。
エレベーターのドアを閉めるボタンを連打するZoe。
Boyleは床を這ってエレベーターに近寄って来る。「止まれ!動くな!エレベーターから出て来い!」
Boyleが手を伸ばし、Zoeが悲鳴を上げる中、エレベーターのドアが閉まり始める。
ドアが閉まり、首を挟まれるBpyle。
エレベーターの前にはDonnaとBoyle夫人が駆け付ける。「Zoe、ドアを開けなさい!」ドアを叩きながら言うDonna。
「助けてくれ!お前を捕まえたら…!」首を挟まれながら喚くBoyle。その時、Zoeの様子に気付く「な…?何だと?!」
人差し指を立てるZoe。
その指が1階のボタンを押す。
「やめろ!待て!止めろ!止めろ!」絶叫するBoyle。エレベーターは下がり始める。
潰れる音。飛び散る血しぶき。
1階。エレベーターが到着した音が鳴り、ランプが点く。
ドアが開く。中に一人立つZoe。床には血だまり。Boyleの千切れた頭が転がる。
血の足跡を残し、病院の外へ出て行くZoe。

『Rachel Rising Vol. 1: Shadow of Death』より 画:Terry Moore
#6
Johnnyの家。
「Sieman先生…」「Rachelの身体的状態は、間違いなく生と死の間の曖昧なラインにあると言える。でも…」
「あなたにはっきり言っておきたいのは、彼女は”死の天使”なんてものじゃないということ」
ディナーのテーブルを四人で囲んでいるが、食べているのはJetだけで、他の三人は話に没頭している。
「でも彼女はそうだ。私は確信してるよ!」Siemanは言う。
「Wesly、道理を無視しないで。Rachelの状態は生物学的なもの。答えは生物学的見地で出すべきよ」Johnnyは反論する。
「”死の天使”だって。あんたのひどい恋愛遍歴を説明してるわね」食べながら言うJet。「まあ面白い」とRachel。
「旧友Johnny、私たちはお互いに生物学では人間の魂を説明できないのを分かっているだろう。道徳は腺分泌物ではなく、悪はDNA由来のものではない」Siemanは言う。
「医学が終わった地点で、魂は始まる。この若い女性の状態に対する医学的説明はない」
「保冷措置による昏睡状態の患者への医学措置でさえ、彼女の低い生命活動レベルで生き延びることはできない」
「彼女は生より死に近いのだよ」
「では、何がミス・Rachelをこのテーブルに向かって支え、我々の定命の次元で動かしているのか?私が説明しよう」
「死そのものだ!」
「死がそれ自身の終わりのためにRachelを使っているのだよ!」
「私はあなたの理論にはついて行けないわ、Wesley。死というのは状態であって、決定を下す実体のあるものではないわ。20年の霊安室での経験が私に充分なほど教えてくれている」Johnnyは言う。
「Johnny、私は、生と死は存在の内と外で同居し番う、まさしく実態のあるものだと提起するよ」Siemanは言う。
「受動状態?いいや。生と死は我々の全てを支配し、我々をその意のままに動かすものたちを指す名詞だ」
「証明して見せて」「君の姪が私が必要とするすべての証拠だ。生物学では彼女を説明できない。形而上学なら可能なのだ」
「あなたたちは、自分たちが経験していない何かについて話してる」Rachelは言う。
「あたしが見たものを見てから、それについて話せばいい」
「頼むよ、それについて話してくれないかね、Rachel。君に何が起こったのか、大変興味があるんだ」Siemanは言う。
「多分また別のいつかに、Sieman先生。あなたにとっては哲学の類いなんだろうけど、これはあたしの人生…、そして死なんです」Rachelは席から立ち上がりながら言う。
「なぜ同時にこんなことが起こったのかは分からない。あたしはこれを止めたいだけ。それで、これで失礼させてもらいたいのだけど…」
「Johnny叔母さん、Blue Noteまで乗せて行ってもらえるかしら?あたしの車、まだそこにあると思うんだけど」RachelはJohnnyに言う。
「いいわよ、Wesleyはどうする?」「私には構わなくていいよ。皿を片付けて出て行くから。行きたまえ」
ガレージに向かうRachel、Jet、Jonny。
「あたしは自分が落ちた場所を見てみたいのよ。できれば一緒に落ちた人について何か見つからないかと思って」
「Johnnyとあたしは昨日見たわよ」「あたしたちには何も見つからなかったけど」
三人の乗った車は出て行く。玄関口で手を上げ、それを見送るSieman。
* * *
森の近くの道を泥だらけで、裸足で歩く女性。それは殺され、土に埋められたNatalieだった。
その横を通った車が止まり、中から男が出てくる。「乗って行くかい?」
「見たところ大変な目に遭ったようだね。大丈夫かい?」声を掛けてくる男にNatalieは掠れたような声で、家まで送って、と繰り返す。
「任せろ、どこに住んでるんだい?」「町…」「これから向かうところだよ。事故に遭ったのかい?」「ええ…」Natalieは車に乗り込む。
「軍では衛生兵だったんだ」男は言う。「事故に遭った人たちをチェックする方法は教わっているんだ。では、骨折がないか手早くチェックするよ」「いいえ」「信頼してくれ、私は実質的には医者なんだ」
「じっとして、痛かったら言ってくれよ」男はNatalieの身体を調べる。
「ここはどうかな?何か?」答えないNatalieの顔を見る男。
その時、Natalieの口が開き、蛇が飛び出してくる。
蛇に顔面を嚙みつかれ、背後に倒れて斜面を転がり落ちる男。
車から降りるNatalie。斜面の下に倒れている男は、もはや動かない。
蛇はNatalieの元へ戻り、足を伝って這い上って来る。
そして口から体内へ。
Natalieは先の草地の中に立つ看板を見つめる。
Welcome MANSON
* * *
Rachel、Jet、JohnnyはBlue Noteの前の事故現場へとやって来る。
「車を見て!」Rachelが言う。
「ええ、防水シートの上からでも、あんたが落ちてどうなったかわかるわ。ガラスがそこら中に飛び散ってた」「血も?」「んん、ええ、でも…」
車の横の地面を見ながら話すJetとRachel。「ここね…。漂白されてるところ…。これ全部血だった」「車は?」「憶えてないわ」
RachelとJohnnyは、潰れた車にかけられていた防水シートをめくる。
「血がない」「あなたはモルグでも出血の跡がなかったわ」Johnnyが言う。
「じゃあ、これ誰の血なの?」再び地面を見ながら言うRachel。
「あんた跳ね返ったんじゃないの?」Jetが言う。
「”跳ね返った”。ホントに?」「そうそう、あんたがおケツから落ちたなら、どうなるかわかるでしょう?」「Jet…」Johnnyがため息をつく。
「なんであたしあんたとつるんでるのかしら?」「あたし可愛いからねえ」「うーむむむ」
その時、路地のさらに奥のダストボックスの陰で音がする。
「何?」「多分猫よ」「あるいは鼠ね。この近辺で死んだホームレスが噛まれてた。感染性があるわ」
「うわ…、やあねえ」「ただの生の一面よ、Jet」JetとJohnnyが話す中、Rachelはダストボックスへ向かって行く。「ねえ?」
「Rachel、やめなよ。ホームレスだったら…」「小さい女の子よ。見えるわ」Rachelはそちらにかがみながら言う。「ハイ」
「出てきて大丈夫よ」
ダストボックスの陰から出てきたのはZoeだった。
「こんなところで何してるの?大丈夫?道に迷ったの?」RachelはZoeに話しかける。
「この子凍えてるわ。唇が紫色になってる」JohnnyがZoeの様子を見て言う。
「これ着なよ」Rachelはジャケットを脱ぎながら話す。「名前は?この辺に住んでるの?」
「ずいぶん怖がってるみたい」Jetが言う。
「怖いものなんてここにはないよ。何かがあなたを怖がらせてるの?」Zoeにジャケットを着せながら話すRachel。
「何?」Rachelは路地の先を見つめるZoeの視線を追い、そして気付く。
「あいつよ。あの女。あたしが落ちた時、別の屋上にいた」
だが、そこには何者の姿も見えない。「どの女?」「どこ?」JetとJohnnyは口々に言う?
「そこよ、路地の出口」「Rachel、そこには誰もいないよ」
「あいつが見えないの?あたしたちの前に立ってるじゃないの!」「路地しか見えないんだけど」
「でも、あなたにはあいつが見えるのね、そうでしょう?」RachelはZoeに向かって言う。「あいつから隠れてるのね?」
「わかったわ」
Rachelは路地の先へと歩いて行く。「ここで待ってて」「どこ行くの?」「あいつと話してくる」「Rachel…」
そこにはRachelとZoeにのみ姿が見えている謎の女が立っていた。
「あんた…。あんたあの夜屋上にいたわよね。あんたはあたしにぶつかって落とした女を見た。あんたはあたしたちが落ちるのを見ていた」歩み寄りながら言うRachel。
「あの女どうなったの?」
「彼女はどこ?」「あんた知ってるの?」「あたしの言ってることわかる?」黙って見つめ返す女に、立て続けに問いを投げかけるRachel。
「あなた、私のこと憶えてないのね?」謎の女は言う。
「屋上のことは憶えてる…。あんたのこと知ってたっけ?」Rachelは戸惑いながら言う。
「いつもはあなたはすべてを台無しにする何かを憶えていた。でも今度は…、何も?もう手遅れよ」Rachelを見つめ、言う女。
「今度?あんた何言ってるの?」
「生と死よ、もちろん。この墓場で他に話すことなんてあるのかしら?」
「Rachel…!あんた何してるの?ここずいぶん寒いんだけど!」路地の奥からJetが言う。
「車の中で待ってて」「何?」
「車の中で待ってて!」そちらを振りむき大声で言うRachel。
「車の中で待っててほしいみたい」「行きましょう」Zoeにも声を掛けるJohnny。
「あんた知ってるの…」振り向いて話し始めたRachelの言葉が途切れる。
目の前にいた女は、いつの間にかかなり古風な服装に変わっていた。ボンネットにマント?「…あの子…?」
「雪のことを憶えている、シスター?」空を見上げて女が話し始めた時、周囲には雪が舞い始めていた。
「シスター?」途方に暮れて聞き返すRachel。
「”そして彼らは雪のように降るだろう”」空を見上げたまま、謎の言葉を引用する女。
Rachelも雪の落ちてくる空を見上げる。
視線を戻したとき、目の前にいた女の姿はなかった。

『Rachel Rising Vol. 1: Shadow of Death』より 画:Terry Moore
「あの女はどこ行ったの?」途方に暮れ、車に乗り込もうとしているJet、Johnnyの元へ戻るRachel。
だが、謎の女が見えていないJet達からは、そんな女は見ていない、いなかったという返事が返って来るばかり。
JetとJohnnyは、Zoeを警察に届けるしかないか、と話しながら車に乗り込んで行く。
振り返り、路地の出口を見るRachel。そこに女の姿はない。
そして本格的に降り始めた雪、空を見上げる。
* * *
ホイルを掛けた皿を持って帰宅するSieman。妻に声を掛ける。「Sylvie…、帰ったよ」
「Johnnyが私たちの好物を作ってくれたぞ。スパゲッティだ!一皿持ち帰らせてもらったよ」話しながら妻がソファに座る居間へ入って来るSieman。
「いいニュースがあるぞ。大変素晴らしい報せだ」ジャケットを脱ぎながら話すSieman。「Johnnyの姪を憶えてるかい、Rachel?彼女について話したことはあったと思うが」
「彼女はディナーにやって来た。私は彼女と話し。彼女は私と話した。私たちは普通の会話を交わしたのだ!それにどういう意味があるかわかるかね?」
「昨日、彼女は死んだのだよ!」
「死の天使はあの娘の中にいる。私はそれを彼女の眼の中に見たんだ、Sylvie」
「Rachelは私たちの祈りに対する答えだ」Siemanは妻の横のスタンドのスイッチに手を伸ばす。
点いた灯りに照らされたのは、既にミイラになっている妻の遺体だった。
「もう間もなく、私たちが会話を交わせるよ、Sylvie。30年を経て、君の愛しい声を聴くことができる。古き日々のように、Sylvie。まさに古き日々のままに」
* * *
「あたしにこの古い役立たずのヒーター交換させてもらえればいいんだけど」「そうしたらこの車オリジナルじゃなくなっちゃうじゃない」
前でJetとJohnnyが、Johnnyの愛車について話す後ろに座るRachelとZoe。
「彼女、あなたに何話したの?」ZoeがRachelに問う。
「あの女が見えたのね、そうでしょう?」「ええ。あたしが彼女を見ると、いつも誰かが死ぬの」
「あなたいい人だわ。死んでほしくない」Zoeは言う。
「あたしについては心配する必要はないわ。でも、ありがとう」Rachelは言う。「それであなたは彼女から隠れてたの?」
「彼女から隠れることはできないわ。誰も」
「なぜ?」
「彼女は…魔女だから」
「危ない!」その時Jetが叫ぶ。
フロントガラスの向こうには、車線を越えて来た大型トラックの横腹が迫っていた。
街路に衝突音が響く。
無関心気に眺めていたカラスが飛び立って行く…。

『Rachel Rising Vol. 1: Shadow of Death』より 画:Terry Moore
「…Rachel…」
か細い呼び声に、意識を取り戻すRachel。
周囲にはトラックの積み荷だった太い鉄筋が散乱し、Rachelの腹にも一本が突き刺さっている。
Rachelを呼んでいたのはJetだった。
車から投げ出された後、横転したボディにもたれるように座り、身体の下には自らの出血による大きな血だまりができている。
Jetはか細い声で言う。「Johnnyを助けて…」
立ち上がろうとするRachel。その時、腹を貫通している鉄筋に気付く。
無造作に鉄筋を引き抜き、ふらつく足で同じく車から投げ出され、路上に倒れるJohnnyに駆け寄る。
「Johnny!」「駄目…」辛うじて意識があるJohnnyがか細い声で答える。
「あたしを動かさないで…。足の感覚がない…」「じっとしてて。サイレンが聞こえる。助けがすぐに来るよ」Rachelは倒れたJohnnyを励ます。
「Rachel、Jetを…。出血が多すぎる…」Johnnyに促され、改めてJetを見るRachel。
「Jet?!」
「Jet?」Jetの横に座り込むRachel。
「あたしを燃やさせないで、Rachel。お願い…、あたしを燃やさせないで…」涙を流しながら訴えるJet。
「誰もあなたを燃やさないわ。大丈夫、助かるよ」RachelはJetにかがみこみ言う。
「お願い…、誓って…」「誓うわ」
「Rachel…。誰もあたしを待っていてくれない…」Jetは虚ろな目で泣きながら言う。「なんで誰も待って…」
「Jet?」そしてJetは息絶える。
「ああ、Jet…」Jetの頭に顔を埋めるRachel。
そして、凄惨な事故現場に雪が降り続ける。
* * *
事故現場から遺体安置所へと運ばれたJetの遺体。
寝かされた身体の上に、検死関連の報告書が置かれている。
もはや目覚め、動くことのない遺体。
そして、その目が開かれる。

『Rachel Rising Vol. 1: Shadow of Death』より 画:Terry Moore
以上、『Rachel Rising Vol. 1: Shadow of Death』でした。最後やっぱり、ここからどうなんの?という感じで終わり、わざわざ前後編に分けた意味あるんだろうか?という気分になってしまったりするのだが…。
この第1巻で見えてきたあたりで少し先の話をすると、これは300年前にこの地で起きた魔女弾圧虐殺に端を発する話で、その怨恨を持って現代に甦った魔女たちが復讐のため現代のMansonを破壊しようと動き始める展開となって行く。
主人公Rachelは、同じく過去の弾圧で殺害された一人だが、その記憶をなくしたまま転生し、Mansonに引き起こされようとしている災厄を止めるべく戦いを始める。
そして現時点では謎の存在であるZoeだが、第2巻ではその正体も明らかとなり、その闘争の中でまた別のファクターとして行動して行く。
前編で話の流れから、うっかりJetの父(?)とか書いてしまった家の外に上半身裸で座っているおっさんLewisなんだが、2巻半ばで再登場し、「Jetのことは気の毒だったな」というようなことを言ってたりするので、家族といった関係ではないらしい。家もJetの住んでいるところというわけでもないようなので、さすがに混乱するかと思い修正した。あと、Rachelの名前もRachellと間違って書いているところが多かったので修正したけど、残ってたらごめん。
実は自分もまだ半分過ぎまでぐらいしか読んでなくて、結構時間をあけてぼちぼち読んできていたりするので、続きをいくらか説明するために2巻を読み返すまで気付かなかった。色々すみません。
どうも真冬でも裸で外に座って町で起こる様々なことを見ている存在らしいのだけど、半分ぐらいまで進んでもまだ説明されてない、とりあえず謎の人。
前編で書いたように作者Terry Mooreはチャールズ・M・シュルツから深く影響を受けており、言われてみればぐらいでそういった表現が随所に見られる。#4でRachelが生き返るあたりのドタバタは、まんまシュルツという感じもある。
また、Wikiなどで調べてもその辺の言及はないのだが、セリフのフキダシを話者に混乱が無いよう、丸いものと四角いものに分けるという手法は、おそらくはバンドデシネ由来のもので、線の使い方や構図などもメビウスなどバンドデシネ作家からの影響も強いのではないかと思われる。
一見セリフも多いように見えるのだが、わかりやすい自然な会話で、丁寧に書かれた人物などの動きによる構成も読みやすい。
日本のマンガの感覚からすると、やや淡々とという感じで描かれているように見えるが、この先も常に読者の予想を超えるというような意外な展開が続き、ストーリーを引っ張って行く。
現在全42話7巻がKindle Unlimitedで読める。これを読まないのはもったいないよ。ぜひこの続きも読んでください。
作者について
1954年生まれ、テキサス出身。米南部地方、アフリカ、イギリスなどで子供時代を過ごす。13歳からギターを始め、ミュージシャンとして働く。そこで結婚し、しばらくビデオ編集の仕事をした後、コミック作家に転身する。
1993年に自身のAbstract Studioを立ち上げ、デビュー作『Strangers in Paradise』シリーズの出版を開始する。この『Strangers in Paradise』は2007年までVol.1~3、100話以上で続き、こちらは現在全19巻中、途中抜けながら10冊ぐらいがKindle Unlimitedで読める。
その後2008年からは全30話TPB6巻のSF作品『Echo 』、そして2011年からの今回の『Rachel Rising』へと続く。
その後も全10話ぐらいのミニシリーズ的作品を連続して発表し続けている。ここのところ少し休んでいるようだけど。他にはコミックの描き方らしい『How to Draw』を2012年に出版。2018年には『Strangers in Paradise』25周年記念として、『Echo 』、『Rachel Rising』、その後の『Motor Girl』のキャラクターも登場する『Strangers in Paradise XXV』を発表している。その辺の詳細については以下の著作一覧などで。
自身のAbstract Studio以外のものとしては、マーベルの『Runaways』全9話が主なところか。個人出版という形ではあるが、コミック各賞で受賞歴も多いTerry Mooreの作品は、ヨーロッパ各国でも広く翻訳出版されている。
下の方でリストを作るため各作品をざっと見て行ったところ、Wikiに言及のあった『Strangers in Paradise XXV』以外にも過去作からのキャラクターが登場する作品は多数ある模様。「Terry Mooreバース」みたいなものなのかは不明だけど、この人についてはもっと深く追って行かなければと再認識しました。なんか忘れたぐらいの時に再登場もあるかもしれないが、とにかくTerry Mooreを読んでおくれよ。
■Terry Moore著作リスト
- Strangers in Paradise
- Strangers in Paradise vol.1 全3話 (1993-94)
- Strangers in Paradise vol.2 全13話 (1994-96)
- Strangers in Paradise vol.3 全90話 (1996-2007)
- Paradise, Too! 全14話 (2000-2003)
- Echo 全30話 (2008-2011)
- Rachel Rising 全42話 (2011-2016)
- How to Draw 全4話 (2012)
- SIP Kids 全4話 (2016)
- Motor Girl 全10話 (2016-2017)
- Strangers in Paradise XXV 全10話 (2018-2019)
- Five Years 全10話 (2019-2020)
- Ever: The Way Out (2020)
- Serial 全10話 (2021-2022)
- Parker Girls 全10話 (2022-2023)
Rachel Rising / Terry Moore
■Rachel Rising
■Strangers in Paradise
■Terry Moore’s Echo
■Terry Moore’s How To Draw
■SiP (Strangers in Paradise) Kids
■Motor Girl
■Strangers In Paradise XXV
■Ever: The Way Out
■Parker Girls
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