おとぎの国で皆殺し!スプラッター・カトゥーン・ファンタジー!
今回はSkottie Youngの『I Hate Fairyland』。Image Comicsにより2015年から2018年までに、全20話で出版され、TPB全4巻に収録。そしてその後、2022年からは新シリーズが、ストーリーSkottie Young、作画Brett Beanにより開始されています。
むむむ…。やっとこれまで来て改めて思うが、やっぱり遅すぎる…。例えば、まず今後何度も出てくるような作品数の多いあたりを、次々出せる基礎みたいな部分を作って、そこにこういう新しい才能的な部分を積み重ねて行きたい、みたいなのが最初の構想だったわけですが、まあこっち始める前からこういうのについても書かなきゃと思っていたSkottie Young、やっと出せた日にはもうやや中堅近くぐらいになっちゃってる始末。週4回更新したいとかできもしないことを言ってたのは、やっぱこういうもんが頭にあったわけなのですよね。まあへこんでても何も進まんし、とにかくここから一つでも多く書くことを目指すってことで、Skottie Young『I Hate Fairyland』始めます。
I Hate Fairyland
■キャラクター
-
Gertrude:
フェアリーランドに招待された女の子。 -
Larry:
Gertrudeのフェアリーランド探検のガイド役。 -
Queen Cloudia:
フェアリーランドの女王。 -
Happy:
新たにフェアリーランドに招待された女の子。
■Story
むかしむかし、あるところにGertrudeという女の子がいました。Gertrudeの願いは、驚きと不思議、笑いと喜びにあふれた素晴らしい世界に連れて行ってもらうこと。
小さなGertrudeにとって、とてもラッキーなことに、その願いは叶えられました!
彼女の前には、壮大な冒険が待ち受けています!
『I Hate Fairyland Vol. 1』より 画:Skottie Young
Gertrudeの部屋の床に、穴が開き、彼女はそこに吸い込まれて行く。
その穴は深く、深く…。どこまで行っても底がないような穴を延々と落ちて行き…。
そしてGertrudeは、遂にそこへたどり着く。
ようこそ、フェアリーランドへ!
『I Hate Fairyland Vol. 1』より 画:Skottie Young
「私はこのフェアリーランドの女王Cloudia!あなたがここでの冒険に参加してくれて嬉しいわ!」「あたし死んだの?」「死んでないわよ。」
女王は冒険について説明する。あなたがやらなければならないのは、元の世界に帰る鍵を見つけて、ドアを開けるだけ。ほんのボッグルジグふた振り(元の世界の一日程度)で終わるわ。
そして、フェアリーランドの案内役と冒険のお助けとして、Larryを紹介され、更にフェアリーランドの地図を手渡される。
さあ、Gertrudeの冒険の始まりだ!
…そして27年、Gertrudeはまだ鍵を見つけられずにフェアリーランドにいた…。
空飛ぶ帆船に乗り、次の目的地を目指す、GertrudeとLarry。
「Larry、ペパーミント・パイクを過ぎてもう4日になるわ。そろそろキャンディーのマフィン・ハギン岩に到着するはずなんだけど。」
「思うに、僕らは波の墓地の上で、ハメット脊椎の塵を振り撒かなきゃならなかったんだ。それで溺れる魂たちが秘密の道を開いたはずだ。」
「波の墓地?二日も前に通り過ぎたじゃない!なんでそんときに言わないのよ!」
「地図を持ってるのは、僕じゃなくて君だろう?」
外から見れば彼女はここに来てから一日も成長していません。でも、その中身は…。
彼女はこのフェアリーランドで毎分毎秒歳を取り続けているのです。
かつて純真な少女の中に満ちていた、希望や喜びは、憎しみと陰鬱に取って代わられ…。
嫌悪、暴虐、悲嘆、恐怖、腐敗、妄…。
「おい!お前!あたしに聞こえてるのわかってんだろ!」
彼女の近くの空に浮かび、ナレーションを続けていた顔のついた月に絡み始めるGertrude。
「ええ、私はこの語りがあなた方人間にどう作用しているかわかっていますよ。どのような形で受け止められているかも。実際のところ…。」
「そうそう、実際のところ、お前最悪なんだよ!これ以上一言でも喋ったら、その最悪面吹っ飛ばしてやるからな!」
「どうして私にそんな口の利き方をするのですか!私は神聖なナレーター協会の高位語り部ですよ!然るべき尊敬をもって応対すべきだ!」
「おう、その然るべきってやつを見せてやるよ!」
BOOOMM! GUSH!
Gertrudeは月に大砲をぶっ放す。
「ちょっとやり過ぎじゃない?」
「警告はしたわよ。」
「まあ仕方ないとして、ずいぶん目撃者もいるみたいだけど、大丈夫?」
驚愕の目で彼らを見る周りの星々。「リスクは放っとけないわね、運転代わって。」
Thunk Thunk Thunk Thunk Thunk 星に向かってガトリング砲を発射するGertrude。
『I Hate Fairyland Vol. 1』より 画:Skottie Young
次々と殺されて行く星たち。
「運動したらお腹すいちゃったわー。」
「ラス・ファンガスのビュッフェがここらじゃ評判だよ。」
「じゃあ、ご飯にギャンブルってことで。向かうわよキャプテンLarry!」
その頃、Queen Cloudiaはお城のテラスで小鳥のSir Chirpingtonとともに夜空を見上げていた。
「なんて美しい夜なの。こんなにたくさんの流れ星を見たのは初めてよ。」
その時、Gertrudeに殺された星の死骸が、Cloudiaの顔面に落下してくる。次々とテラスに散らばる死んだ星たち。
まだ息があるものを見つけ、問いかけるCloudia。「誰がこんなことをやったの?」
「あいつです…、緑色の髪の…。」それだけ告げると息絶える星。
「Gertrudeか!あいつ殺してやる!あのゲロ緑の…。」
「しかし女王様、掟があります。フェアリーランドへゲストとしてきた者には、王、女王、何人たりとも…」
「毛一筋たりとも傷つけてはならない!わかっているわ!」Chirpingtonを遮り、続けるCloudia。
「私自身が彼女に危害を加えることはできない。でも、それを”ほのめかす”ことについては何も書かれてはいないわ。」
「例えば、哀れなゲストに悲しむべき危害を加えることで、莫大な報酬が手に入るかもしれないというような…。」
そしてCloudiaは、フェアリーランドに住む乱暴者、Bruud The Brutalに電話をかける…。
その頃、ラス・ファンガスでは…。
「君は僕が一時間ショッピングで離れている間にカジノを強奪したのかい?」
「あたしのスタイルわかってんでしょ、Larry。心配しなくてもあんなチンコ頭に捕まったりしないわ!」
大金の詰まった袋をいくつも担ぎ、キノコ警官隊から逃走するGertrude。
「そんな堕落した差別言辞は聞き飽きとる!我々の頭に乗っているものは、いわゆる”チンコ”などではない!撃て!」
隊員の手にしたカエル銃から電撃キャプチャー舌が発射され、Gertrudeを捕縛する。
そしてGertrudeは、カジノの王Slug Lordの前に引っ立てられてくる。
なぞなぞ裁判の開廷。Slug Lordのなぞなぞに正解できなければ、Gertrudeにはウンコ鉱山かハリネズミの穴での強制労働が待っている。
そして、難解意味不明ななぞなぞを叫ぶSlug Lord!
『I Hate Fairyland Vol. 1』より 画:Skottie Young
少し考えた後、「分かった!」と声を上げるGertrude。
「答えを言うから、もっとこっちに顔を寄せて。」
Gertrudeに言われるまま、彼女に向かってかがみこむSlug Lord。Gertrudeは、すかさずSlug Lordが首から下げているペンダントを掴み、その鎖で首を締め上げる!
飛び掛かるキノコ警官たち。その頭を食いちぎりながら暴れまわるGertrude。
『I Hate Fairyland Vol. 1』より 画:Skottie Young
その頃、カジノの建物の外では、Larryが羽の生えた空飛ぶ豚と話していた。
「Larry、お前さんには借りがあるから、助けてやりたいところだが、あの子が逃げられるとは思えないんだが。」
「大丈夫さ、僕の予想するところでは、彼女は誰かの首を絞めて、キノコを1~2個食べて…」
そこに窓を突き破ってGertrudeが飛び出してくる。
「窓に向かってジャンプするってところだろうね。」
「君、あいつらを食べちゃったのかい?」
「ちょっとだけね。恐ろしげなバケモノさん。」
キノコの幻覚に冒され始めたGertrudeには、Larryが恐ろしげなモンスターに見えていた。
空飛ぶ豚に乗って逃げるGertrudeたち。キノコでトリップしたGertrudeは、その背で延々と意味不明なことを喋り続ける。
いい加減うんざりして海の上でGertrudeを落とす豚。
「ここは何処なの?」「あそこに見えるのはアイスクリーム島だね。」
アイスクリーム島に上陸したGertrudeたち。地図を出して、次の目的地を相談し始める。
そこにQueen Cloudiaの意を受けたBruud The Brutalが現れる…。
『I Hate Fairyland Vol. 1』より 画:Skottie Young
以上が『I Hate Fairyland』第1話。
凶悪なBruud The BrutalからGertrudeは逃げられるのか?という感じで第1話は終わるわけだが、第2話は、GertrudeがそのBruud The Brutalの首を横に置いてバーで飲んでいるというところから始まる。
ちなみに、第1話でナレーションを務めていた月がGertrudeに殺されたが、第2話ではネズミがこれまでのあらすじを話し終わったところで、Gertrudeが持ったマグに潰される。このように、おとぎ話的なナレーターが現れては毎回殺されるというのがパターン。
フェアリーランドの楽しい冒険に招待されたが、頭が悪すぎていつまでたっても帰れず、すっかりやさぐれきった見た目は幼女、中身は三十路女のGertrudeが、行く先々で暴虐無法を繰り広げる。それに怒るQueen Cloudiaが、あの手この手でGertrudeを亡き者としようとする、というのがこの『I Hate Fairyland』のストーリー。
そしてTPB1巻中盤では、Queen Cloudiaが一計を案じ、新たにフェアリーランドにHappyという女の子を招待する。
Happyが先に鍵を見つけ、ドアを開けてしまえば、Gertrudeは二度と元の世界に帰れなくなり、ゲストの資格も失い女王自らの手でいかようにも料理できる。
知力・能力共にGertrudeをはるかに上回るHappyが、鍵を見つけ出すのは時間の問題。
果たしてGertrudeは無事元の世界へ帰れるのか?
『I Hate Fairyland Vol. 1』より 画:Skottie Young
TPB全4巻なので、大抵は1巻分ぐらい紹介するところなのだが、この第1巻で意外な結末という感じで一旦話がまとまるとこもあり、そこまで書いちゃうのはちょっとなと思い、この辺で終わり。
このシリーズ、番外編として、えーと多分2017年のフリー・コミックブック・デイに出た『I Hate Fairyland: I Hate Image』というのがある。
現在は、加筆、新たなコンテンツを追加した『Special Edition』として販売中の他、後に出た合本版『I Hate Fairyland: Book Two』にも収録されている。
これを見て、まず連想されるのが、あのマーベルの『Punisher Kills the Marvel Universe』だろう。その後、Deadpool、Squirrel Girlと、マーベルのイレギュラー人気キャラクターが暴れるやつのImage版がこれなのか?あ、ちなみにりすガールはKillsじゃなくてBeat Up。
で、内容としては、GertrudeがImageワールド的なところに入り、『Saga』、『Walking Dead』、『Spawn』などの世界を渡り歩き、暴れまわるというもの。さすがにメインキャラクター達をぶち殺してまわるというところまでは行かないが、まあそもそも本家の『Punisher Kills the Marvel Universe』のガース・エニスという人が規格外すぎるからな。
個人的に好きなのは、『Chew』のTony Chuに、Gertrudeが自分で作ったケーキを食べさせるところ。『Paper Girls』の自転車に乗せてもらったりもする。まあ最後には色々ぶち殺して暴れたりもするしね。
最初に書いた通り、この作品は2015年から2018年までに全20話で出版され、一旦完結しているが、2022年から、Skottie Youngはストーリー担当のみになり、作画Brett Beanにより新シリーズ『I Hate Fairyland』(2022)が開始され、現在進行中。
その他に、先月、2023年7月より全5話予定のミニシリーズとして『Untold Tales of I Hate Fairyland』も出版開始。こちらは例えば今回ちょい役で出てきたBruud The Brutalの話というような、オリジナル本編のサイドストーリー、外伝的なもので、ストーリーSkottie Young、作画は複数のアーティストにより製作されるらしい。
作者について
1978年生まれ、イリノイ州出身。
2000年頃よりマーベルでアーティストとして活動し始める。マーベル マンガヴァースの『Spider-Man Legend of the Spider Clan』あたりが最初期なのかな?その後、いくつかの作品や、多くのヴァリアントカバーなどを経て、2009年よりEric Shanowerとともに『Oz』シリーズに携わり、その作画で注目されることとなる。
Eric Shanowerはそれ以前よりDark Horse、IDWからのオズシリーズなどで知られていた作家/アーティストで、2009年よりマーベルで開始された、ライマン・フランク・ボームのオリジナルの『Oz』シリーズのコミカライズでは、翻案シナリオに回り、Skottie Youngが作画を担当することとなる。マーベルのShanower/Youngによる『Oz』コミカライズは、ライマン・フランク・ボームの原作のうち、最初の6作が製作刊行されたが、残り8作については予定がないということらしい。
そしてその後、Imageで始まったオリジナル作品である今回の『I Hate Fairyland』により、作家としても注目されるところとなり、その後はImageのオリジナル作品、マーベルのキャラクター作品双方でストーリー担当として作品を発表する形となり、今日に至る。
現在新進から中堅に差し掛かったというところの、アメリカン・コミック注目の作家である。
今回はちょっと頑張って、著作リストも作成。やっぱこういうのあった方が自分でも全体把握しやすい。これからもこのくらいはやらなくては。今回のリストについては、『Oz』シリーズ以前の初期のマーベル作品、カバーなどは省略しました。
■Skottie Young著作リスト
発表年 | タイトル | ストーリー | 作画 | 話 | 出版社 |
---|---|---|---|---|---|
2009 | The Wonderful Wizard of Oz | Eric Shanower | Skottie Young | #1–8 | Marvel |
2010 | The Marvelous Land of Oz | Eric Shanower | Skottie Young | #1–8 | Marvel |
2011 | Ozma of Oz | Eric Shanower | Skottie Young | #1–8 | Marvel |
2011-12 | Dorothy and the Wizard in Oz | Eric Shanower | Skottie Young | #1–8 | Marvel |
2012 | The Road to Oz | Eric Shanower | Skottie Young | #1–6 | Marvel |
2013 | The Emerald City of Oz | Eric Shanower | Skottie Young | #1–5 | Marvel |
2014-15 | Rocket Raccoon | Skottie Young | Skottie Young | #1–11 | Marvel |
2015-18 | I Hate Fairyland | Skottie Young | Skottie Young | #1–20 | Image |
2018-19 | Deadpool | Skottie Young | Nic Klein、他 | #1–15 | Marvel |
2018-19 | Bully Wars | Skottie Young | Aaron Conley | #1–5 | Image |
2018-20 | Middlewest | Skottie Young | Mike Huddleston, Jorge Corona | #1–18 | Image |
2020-22 | Strange Academy | Skottie Young | Humberto Ramos | #1–18 | Marvel |
2021 | The Me You Love in the Dark | Skottie Young | Jorge Corona | #1–5 | Image |
2022 | Twig | Skottie Young | Kyle Strahm | #1–5 | Image |
2022-23 | Strange Academy: Finals | Skottie Young | Humberto Ramos | #1–6 | Marvel |
2022- | I Hate Fairyland(2022) | Skottie Young | Brett B Bean | #1– | Image |
2023- | Untold Tales of I Hate Fairyland | Skottie Young | Dean Rankine,他 | #1– | Image |
今回、冒頭でもっと頑張らねば、とか言った割には諸般の都合で結構遅れてしまった。夏風邪2日ダウンも含むのだけど、あー『ドリフターズ』7巻出たってマジ?もー『ファブル』8巻もまだ読めてないのにー、どっかで一日さぼってひたすらマンガ読もうかい?とか思っていたころで倒れ、後半回復期は起きるのはきついけどごろごろしてマンガは読めるぐらいの体調で一日過ごしていたので、「学校行きたくない病」と同系統の「マンガ読みたい病」だったのかも。
諸般の事情については、継続中で、次回あたりも若干遅れるかと思うけど、その後は現行以上にペースを上げてやって行きたいという所存でありますので。
I Hate Fairyland / Skottie Young
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