Slaine 第1回 【後編】 / Pat Mills

伝説のアウトロー・ファンタジー開幕!

英国の伝説ファンタジー・コミックシリーズ巨匠パット・ミルズによる『Slaine』を紹介して行くその第1回、第1巻『Slaine: Warrior’s Dawn』について前回書き始めたのですが、予想以上に長くなり終わらず、なし崩しに2回に分けた、今回はその後編です。

前回から言っているように、私かなりのファンタジー音痴で、こうやって説明を始めて引っ掛かって、改めて調べてみてようやく意味わかったり、果ては何処までが人名かすら混乱しながらという始末の底抜け珍道中モードで何とか進めているわけですが、これは何としてももっと広く日本にも紹介されねばならない作品。
そんなわけで、今回も混乱・欠落・勘違い等、多々あるとは思いますが、とりあえずは最後までお付き合いいただければと思うものです。自信ないととことん腰低くなるな、お前。

前回、Drunemetonの潜入に失敗し、ウィッカーマンに入れられ生贄にされそうになりながら、巫女を一応救い出したSlaineだったが、グールの毒に冒され、瀕死となり、仲間のUkkoとBlind Branの助けにより何とか回復したが…、というところからの続き。

Slaine: Warrior’s Dawn

Slaineの世界

『Slaine: Warrior’s Dawn』より

Slaineが元々属していた部族が、Tribe of The Earth Goddessというところで、追放中で放浪している今作の主な舞台となるのは、その南のTrieb of The Drune Lordsというあたりになる。

キャラクター

  • Slaine Mac Roth:
    実力を認められた戦士だったが、問題を起こし部族を追放されている。現在19歳。

  • Ukko:
    Slaineの相棒のドワーフ。何かと助けにはなるが、かなりの守銭奴。

■Heroes’s Blood 1983/Prog345-47 全3話 作画:Mike McMahon

キャラクター

  • Blind Bran:
    Slaine、Ukkoの昔の仲間。鉱山労働で視力を失う。

  • Damnall:
    ドワーフの武器鍛冶屋。

●Story

前回の最後に、Blind Branが新たに村で開業した武器鍛冶屋Damnallのせいで、石製の武器の需要が下がり、鉱山が閉鎖され仕事を失った、という話があり、続くこちらはその武器鍛冶屋の話となる。
物乞いから帰ってきたBlind Branに、まだ回復療養中のSlaineが、何か収穫はあったかと尋ねる。
めぼしいものはないが、UkkoがDamnallの武器鍛冶屋から出てきたところで会った、と話すBlind Bran。
Damnallというのは何者なんだ、と尋ねるSlaineに、Blind Branがその出自を話し始める。

かつてTitansと呼ばれる知能が高く、身体も大きい部族がAlbionを支配していた。
だが、あまりに強すぎ敵がいなくなってしまったため、彼らは闘いを辞め、次第に堕落し弱体化して行った。現在は力を増した周囲の部族に狩られ、その土地も部族も消滅している。
Titansは、強力な武器の製造法を秘密として知っており、かつてTitansで働いていた武器鍛冶職人の最後の生き残りが、ドワーフ族のDamnallだということ。

やがて戻って来たUkkoが、Slaineにお前の血を抜く時間だぞ、と告げる。
この週になって四回目だが、その知識によりSlaineの命を救ったドワーフUkkoが、彼の健康回復のためと言うのでそれに従ってきた。
だが今回は、その後休んで眠ったふりをしてやり過ごし、血の入った容器を持って出て行ったUkkoを尾行する。
Ukkoは近くの村にある、Damnallの鍛冶場へと入って行った。

Damnallの秘密の武器製造法とは、勇者・強者の血を加えながら武器を鍛造するという方法だった。
そのためにSlaineの血を抜き取ってはDamnallに渡していたUkkoだったが、Damnallがいつまでたっても約束した代金を払わないことに業を煮やし、口論となる。
そこにUkkoを尾行していたSlaineが現れる。事情を知ったSlaineはそこらの物を投げつけ、鍛冶場で暴れ始める。
Damnallは仕掛けを動かし、床にあった地下室への隠し扉を開く。中には人骨の山?
気を取られたSlaineは地下室に追い落とされ、頭を殴打され意識を失う。

気が付くとSlaineはUkkoと共に、地下室の中で逆さ吊りにされていた。
頭に血が下がったところで抜き取ろうという算段だ。Damnallは二人を残し、階上の鍛冶場へ戻って行く。
地下室に散らばる人骨の山を見て、SlaineとUkkoは、Damnallが血を集めるために多くの戦士を殺していたことを悟る。

『Slaine: Warrior’s Dawn』より 画:Mike McMahon

絶体絶命の彼らを救ったのは、Blind Bran。
鉱夫であった彼は、地中にトンネルを掘り、二人の救出のために現れた。

逆さ吊りから救われたSlaineだったが、そのトンネルからは逃げず、鍛冶場に上がり職人たちと戦い皆殺しにする。
Ukkoが恨みがましい目で見る中、SlaineはDamnallが貯めこんでいた金を、全てBlind Branに渡す。鉱山閉鎖の賠償金だ。
そしてSlaineとUkkoは、マンモスに乗りSlaineの部族へと帰る旅に戻る。

マンモスに乗って人気のない道を行くSlaineとUkkoは、数人の男女を繋いで進む奴隷商人と行き交う。
「こんなところで人間に会えるのは嬉しいことだな」と言う奴隷商人。
どいうことだと聞き返すと、奴隷商人はこの辺りは獣に変身する人間-Shoggey Beastが出没するのだと答える。

Drune達がカルナックに奇妙な岩を並べているのを知っているか?と話し出す奴隷商人。
「その手の物なら見たことがある。あの岩は大地の力を吸い出し、枯れて汚れた土地に変える」大地の神を信仰する部族出身のSlaineは苦々しく応える。
その儀式が時間を歪め、それに巻き込まれた人間が恐ろしいモンスター、Shoggey Beastに変わるのだという。

ここで出てきたDruneが儀式のために並べているカルナックの奇妙な岩が、現在も残るフランス ブルターニュ地方のカルナック列石。
いや、さも知ってるように書いたけど、もちろん今調べて知ったんだけど。

★ケルト神話 豆知識★

カルナック列石:

カルナック列石は、ブルターニュ地方最大の巨石遺構で、巨大なメンヒルが総延長およそ4kmにわたり数列に並んでいる三つの列石群からなる。紀元前5000年あるいは、紀元前3000年から紀元前2000年頃に造られたとされるが、その目的は精霊や巨人が建てたとする伝説の他、戦士の墓、種族の記念碑、天文学上の目的等、あるいは生命の起源と関連付けたようなオカルト系学説など諸説があり、はっきりしていない。

「メネク列石群」ウィキペディアより

ウィキペディア 「カルナック列石」より

前に出てきて説明さぼったアルビオンの巨人伝説と地上絵など、色々と英国周辺の古代の謎みたいなのが仕込まれてんだな、とここで初めてちゃんと調べて気付く。
この辺のくだりは、続く話「The Shoggey Beast」の前振り。Shoggey Beastに関しては、調べてもこれ以外出てこなかったんで、巨匠ミルズのここでの創作だと思うんだけど…。

■The Shoggey Beast 1983-84/Prog348-51 全4話 作画:Mike McMahon

キャラクター

  • Shoggey Beast:
    Druneの儀式の影響で人間から変化したモンスター。

  • Gort:
    奴隷商人が連れていた奴隷の一人。

  • Medrawd:
    母親とともに荒野の一軒家に住む男。

●Story

深夜、Slaine達とは離れて野宿をしていた奴隷商人の所から悲鳴が上がる。駆けつけてみると、猪のような頭を持つ二足歩行のモンスター、Shoggey Beastが奴隷を襲っている。奴隷商人は彼らを見捨てて逃げ出したが、繋がれた奴隷たちは逃げることができない。
モンスターは、”Brain-Bitter”を構えながら駆け寄ってくるSlaineを見て、攻撃の矛先をそちらに変える。

『Slaine: Warrior’s Dawn』より 画:Mike McMahon

“Brain-Bitter”を咥え取られ、素手になりながら後ろから組み付き、SlaineはShoggey Beastと共に崖を転がり落ちる。
途中の岩に叩きつけられ、人間の姿に戻るShoggey Beast。そのまま落下するが、Slaineは岩にしがみつき、崖上に這い上がる。
崖下では再び姿を変えたShoggey Beastが吠えるが、さしものモンスターも切り立った崖を上ることはできない。

奴隷商人が逃げ出したことで主を失った奴隷たちは、彼らの命を救ったSlaineに忠誠を誓う。
自由にしてやれと言うSlaineだったが、Ukkoは一度奴隷商売で稼いでみたかったと言い、奴隷を引き継ぐ。
「やるのはお前の勝手だが、ろくな結果にならんぞ」とSlaine。

陽が落ちて再び野営となったSlaine達。奴隷たちはUkkoを甘く見て、不平を並べ始める。
遠くに松明を掲げて夜を進む一群を見つけるSlaine。まだ明るいときに見たSkull Swordsの進軍か?あれは俺達を追っている?
もう奴らは俺達のことなんて忘れてるさ、と気楽に言うUkko。

奴隷の一人Gortという男とサイコロ賭博をするUkko。序盤の連勝に気を大きくしたUkkoは、Gortの口車に乗せられ、彼の奴隷からの自由を賭けた勝負に大敗した上に、逆に自身がGortの奴隷にされてしまう。
「こんな愉快な話は聞いたことないぜ!」と爆笑するSlaine。
翌朝になり、助けてくれとSlaineに縋るUkko。そろそろ頭も冷えたかと、助け船を出してやるSlaine。彼はGortに新しいギャンブルを持ち掛ける。
「20歩離れて槍を投げ合う。横に避けるのは無しだ。お前から投げていいぜ」
「お前が俺を殺せば、奴隷はお前のもんだ。俺がお前を殺せば、ドワーフを頂く」Gortはこのギャンブルを受ける。

勝利を確信して槍を投げるGort。だが、Slaineはその場で高々とジャンプし、槍はその足元を通過する。
「おい、ジャンプはありなんて聞いてねえぞ!」「お前もやりゃあいいだろ」
そしてGortは、Slaineが投げると同時にジャンプする。だが、Slaineはあらかじめその高さを狙って投げており、槍はGortの腹に突き刺さる。
「へまをしちまった…、俺は死ぬのか…」「そうだな」そしてGortは息絶える。
「奴隷商売なんてやったってろくなことにならねえって言っただろう。わかったか、ドワーフ」そして残った奴隷は全員解放される。

そしてまた二人になったSlaineとUkkoは、マンモスに乗り進む。
途中、大きな爪に引き裂かれた遺体を見つける。Shoggey Beastの仕業だ!
その跡を追ってみると、一軒の小屋にたどり着く。同時に空からは雨が降り始める。
「よし、ここに泊まろうぜ。こんな雨の中外で寝るわけにもいかねえ」
「正気か、Slaine?Shoggey Beastの塒かもしれないんだぞ…」
構わずドアを叩くSlaine。

髭をたくわえた痩せた男がドアを開ける。
一晩泊めてくれないか、と頼むSlaineだったが、男は断る。重ねて頼んでも頑として断る男を押しのけ、Slaineは家に押し入る。
「俺の部族じゃ、困ってる奴がいれば誰でも助けるぜ」
母が具合が悪いんだ、という男。それに応えるように階上から大きな物音がする。「大丈夫だ、母さん。すぐに粥を持って行くよ」と上に声を掛ける男。
「こんな辺鄙なところに母親と二人で暮らしてるのか?どうも怪しいな」とSlaine。
「私と母はここで平和に暮らしてるんだ。みんなからは、静かなMedrawdと呼ばれている」男は言う。
「ちょっとおっ母さんに挨拶してくるか」と階上への梯子を上ろうとするSlaineを、Medrawdは押しとどめる。「すぐに粥を用意するから座っててくれ」
粥を食べ、Medrawdと共に床に就くSlaineとUkko。

深夜。雨の降りしきる中、Druneの謎の軍団は行軍を続ける。
付近にあった儀式用の石群が、それに反応し大地からの力を発散し始める。
その力に触発され、MedrawdはShoggey Beastに姿を変える!

『Slaine: Warrior’s Dawn』より 画:Mike McMahon

横に寝ていたMedrawdが、突如Shoggey Beastに変身したことに驚いたSlaineだが、直ちに戦闘を始める。
圧倒的な力のShoggey Beastとの格闘に苦戦するSlaineだったが、最後には腹に槍を突き立て、モンスターを倒す。
物音を不審に思っていた階上に登ってみると、そこにはMedrawdの母親が、鎖で椅子に縛られていた。拘束を解かれ階下に降りた母親は、変わり果てたMedrawdの姿に泣き崩れる。
Druneの設置した石群に触れて、Shoggey Beastと化したMedrawd。その発覚を恐れた母子は、村を離れ荒地に住むようになり、夜にはMedrawdを鎖に繋いでいたが、Shoggey Beastの力を抑えきれなくなり、遂には逆に母親の方が鎖で縛られる状態となってしまっていた。
泣き続ける母を残し、小屋を去るSlaineとUkko。

翌日、母子の小屋を通りがかったDruneの謎の軍団は、母親から前夜SlaineとUkkoがここにいたことを知る…。

■Sky Chariots 1984/Prog352-60 全9話 作画:Mike McMahon

キャラクター

  • Caw Sheaf-Hair:
    Gavra村の牧童の少年。

  • Maddog Stag-Shanks:
    Gavra村の新しい村長。Cawの父。

  • Slough Throt:
    Slough FegからSlaine追跡を命じられたDruneの魔術師。

●Story

元の部族への旅を続けるSlaineとUkko。通り過ぎた村の女の話などしながら、マンモスの背に揺られて。
「やかましいな。頭痛がするんだ、その鐘の音を止めろ」「俺じゃねえよ。あっちの方から聞こえてくるな」
「ありゃあ…弔いの鐘だ」

『Slaine: Warrior’s Dawn』より 画:Mike McMahon

この「Sky Chariots」でMike McMahonの画が大きく変わり、ヤバいぐらいのもんを次々と出してくる。直前に引用したものと比べれば違いは明らかなんだが、前の「The Shoggey Beast」とこの「Sky Chariots」の間に連載のブランクなどがあったわけではない。「The Shoggey Beast」がProg351で終わり、「Sky Chariots」は、Prog352から始まっている。
この謎のヒントとしては、「The Shoggey Beast」の時点で、1983年から84年に年が変わってること。2000ADは、多分当時もそうだったのだろうと思うが、年末12月の頭にクリスマス特大号が出て、そこから年明けまで3週間休みになる。多分このクリスマス休み3週間の間に、線の使い方やら、ここで見られるような大きな画を描き、周りに小さいコマを配置するような見せ方などいろいろ研究したということなんだろうけど。
作者・アーティストに関しては後で詳しく紹介するが、少し調べてみたところ、McMahonはこの作品以前に81~83年の2年間ブランクがあり、戻ってきたときにはこの『Slaine』に見られる感じにかなり大きく絵柄が変わっていたような人なので、そういうこともありうるんだろうな、と思う。

村の外で、牧童の少年Cawもその弔いの鐘を聞く。村長のMorgantが埋葬されたようだ。
「死ねるなんて幸運な方だ」Cawは思う。
かつての牧草地は徐々に痩せた不快な地へと変わりつつある。やがては自然の法によりこの土地の時間と空間はねじれ始め、残された人々は死ぬこともできないハーフ・デッドになりこの地を彷徨うことになるだろう。羊たちも食べられるものがなく次々と倒れ、このGavra村も冬を越すことができるかどうか…。
「あのドルメンが作られてからだ」Cawは目の前にそびえる、積み上げられた石群を見上げ、思う。

村に戻ったCaw。次の村長は彼の父親のMaddog。だが、彼にもこれから村の人々に食料を確保する方法が見つからない。
奇跡を祈るしかない、と思いながら外に出たMaddogは、村に入ってきたSlaine達の乗るマンモスを目にする。

村に入ったSlaineとUkkoは、黙って彼らを見つめる村人たちの目と出会う。
「なんだ?こいつら何を見てるんだ?」戸惑うUkko。
「俺達のマンモスだ。こいつらは飢えて死にかけている」
Slaineはマンモスから降り、それを村人たちに与える。

ここで、少し前に出てきたドルメンについて。日本的には支石墓という言い方が一般的らしい。
その名が示す通り、大抵は墓なのだが、巨匠ミルズはこの作品では前に出てきたカルナック列石の別バージョンの、大地から力を吸い取る儀式的ポータルの石組という解釈で使っている。
ちなみに前章後半で引用した画の中にも同様のものが描かれているが、そこではドルメンと呼んでなかったので。

★ケルト神話 豆知識★

ドルメン(支石墓):

「プールナブローン・ドルメン」ウィキペディアより

支石墓(しせきぼ)は、ドルメンともいい、新石器時代から初期金属器時代にかけて、世界各地で見られる巨石墓の一種である。基礎となる支石を数個、埋葬地を囲うように並べ、その上に巨大な天井石を載せる形態をとる。
支石墓という形態がもっとも早く発祥したのは、おそらく西ヨーロッパだったと考えられる。しかし、西ヨーロッパの支石墓が世界各地へ伝播したのではなく、それぞれの社会発展状況に応じて、全く別個に世界の各地域で支石墓が発祥したとする見方が非常に有力となっている。

ウィキペディア 「支石墓」より

Slaineのマンモスにより救われた村では、饗宴が開かれる。
もっと蜂蜜酒を持ってくるように言われ、外に出たCaw。そこにはSlough FegよりSlaine抹殺を命じられたSlough Throt率いるSkull Swordsの軍団が到着していた。
Slough Throtは、この村は飢えて死にかけているはずなのに、Cawが元気なのは禁止されているTime Monsterを殺して食べたからに違いないとして、彼を問い詰める。
村を通りかかった旅人がマンモスをくれたからだ、と答えるCawだったが、信じ難い話だとしてその場で殺される。

『Slaine: Warrior’s Dawn』より 画:Mike McMahon

ここでDruneの軍団の異相についての説明が入る。
彼らの高位の魔術師はSlough(壊死)の称号で呼ばれているが、これは儀式により大地の力を体に取り入れ特別な力を手に入れるが、その代償として身体が腐食してしまうことから来ている。
彼らの兵士Skull Swordsは、その腐臭に耐えるため、異様なマスクを着けている。また今回登場のSlough Throtは、自分の身体をそのマスクと同じ素材の服で全身を覆っている。
また、ここで第1話に登場した「Time Monster」の名が出てくるが、ここまでではその詳細については説明はないのだが、Druneの石群による大地の力を引き出す儀式から周辺の土地の時空間が歪められていることについて、前章「The Shoggey Beast」から語られているので、そこに関連する現象なのかもしれない。

村の饗宴の場に、Cawの遺体を抱えたSlough ThrotとSkull Swordsが現れる。
「お主の息子を連れてきたぞ、Maddogよ。お主等が禁断の肉を食しておると疑ったが、どうやら間違いであったようだな」
息子の無残な姿を見て、剣を手に襲い掛かるMaddog。Skull Swordsのボウガンに撃たれ、倒れる。
村の男たちが次々と剣を手に立ち上がる中、Slaineも目の前のテーブルを武器にSkull Swords軍団に向かって行く。
「Ukko、Brain-Biterをよこせ!」愛用の石斧を手に暴れまわるSlaine。
多数のSkull Swordsを相手に、Warp-Spasmへと移行しようとするが、まだ以前の傷から完全に回復していないため、全ての力を引き出すことができず、身体の変形にまで至ることができない。

『Slaine: Warrior’s Dawn』より 画:Mike McMahon

Slaineの勇猛な戦いぶりを見て、Slough Throtは考える。
あれがSlough Fegが殺すように命じたSlaine Mac Rothか。あの力は殺してしまうには惜しい。我には別の使い道がある。
そしてSlough Throtは、Skull SwordsにSlaineを生かして捕らえるよう合図を出す。
まだ力が完全ではないSlaineは、背後からの一撃で意識を失う。

Warp-Spasmの熱を冷ますため、水をかけられ、意識を取り戻すSlaine。
「まだ生かされてるってことは、なんか理由があるんだろうな」
「いかにも。我はこれよりSky Chariotにて北へ向かう。そのために強力な私兵を必要としておる」
即座に断るSlaine。「その臭いには耐えられそうもねえな」
「お主には莫大な報酬が支払われ、この村には冬を越すだけの充分な食料が供される」
「断れば?」
「村は跡形もなく焼き尽くされ、お主とドワーフには更に過酷な死が訪れる」

こうして不本意ながらSlough Throtの軍団に加えられたSlaineとUkkoは、Sky Chariotに空を飛ばせるための儀式が用意された地へと向かう。
そこには、広大な土地の中に、巨大なドルメンを中心に、数多くの石組と列石が配置されていた。

『Slaine: Warrior’s Dawn』より 画:Mike McMahon

Slaine達が乗る船は、”Cloud Curragh”という名の巨大な商船。Slough Throtの軍団だけではなく、多くの荷が積み込まれ、商人や乗客なども乗り込んで行く。
船首に設置された魔法の石にオガム印を結ぶSlough Throt。やがて巨大なドルメンから”蛇”と呼ばれるエネルギーが注ぎ込まれ、”Cloud Curragh”は宙に浮かび、北へ向けて進路を取る。

『Slaine: Warrior’s Dawn』より 画:Mike McMahon

Made Ogham Signs Over The Stoneというところを、「石にオガム印を結ぶ」と解釈してみたのだが…。
Oghamで調べるとオガム文字というのが出てきて、主に5~7世紀に使われた古アイルランドの表記文字ということなんだが、このOgham Signs後にも出てきて、その時も明らかに実際に文字的なものを書いているようには見えなかったので、なんか印を結ぶ的なもんではないかと推測し、そういうことにしといた。実際にオガム文字がある程度体系化されるより更に昔の設定でもあるので、魔術師のみが使う秘文字的な扱いということではないかと思うんだが、色々間違ってたらごめん。

浮上した船内を見て回るSlaineは、船倉の一角に商人が取引のために檻に入れ運んでいるハーフデッドの軍団を見つける。
その中に、かつての戦友たちを見つけ衝撃を受けるSlaine。だが、既にハーフデッドとなった彼らは、Slaineの呼びかけに応えることはない。

甲板にて、転がってきた樽が危うくSlough Throtに衝突しかけ、Throtは「彼」に雇われた暗殺者の仕業として、樽を管理していた男をマストに縛り付ける。
Slough Throtがオガム印を結ぶと、無数のカラスが飛来し、縛られた男の体を覆い尽くす。
Slough ThrotがSlaineを私的な護衛として雇うほど怖れる、「彼」とはいったい何者なのか?

やがて、空は黒雲に覆われ、船はその中で嵐に襲われる。航行が不安定になり、徐々に降下し始めて行く。
「石の力が弱まり始めておる!生贄が必要だ!」Slough Throtが言う。
船上には生贄用の牛が用意されていたが、嵐に怯え、囲いを壊して暴れ始める。
「俺にはあんたが何に追われているか分かったぜ、魔術師。Druneの魔術師に怖れるものなんてない。他のDruneを除いてな!」混乱する船の上でUkkoが言う。
「お前のドワーフは正しい。我はSlough Fegに抗うために北へ向かって居る。」とSlough Throt。
「俺達は魔法使いの闘争に巻き込まれちまった、てわけか」
その時、一頭の牛がSlough Throtに向かって暴走して来る。Slaineはその怪力で牛を押さえ込み、祭壇に引き摺って行き首を切り落とす。
生贄の牛の血により、船は安定を取り戻し、眼前に迫った岩山との衝突を躱し、黒雲を抜ける。

「我はSlough Fegに打ち勝ったぞ!我の魔法が彼のものを凌いだのだ!」と歓喜するSlough Throt。
だがSlaineはそんなThrotに向かって言う。「お前は俺を雇うときにお前が親分のFegと切れてることを黙ってたな。このままじゃ、お前が死ぬまでFegに追われ続けることになるわけだ」
そしてSlaineはさらに続ける。「いっそここで俺が奴の厄介事を解決してやった方がいいのかもな」
「だがお前は我を守ることに同意した。それは戦士の言葉ではないのか?」
「Drune相手じゃそいつを破るのも苦にならんがね」
「なんでFegがお前を殺したがってるのか言え。さもなきゃお前さんの腹に鳥が通り抜けられるくらいの穴が開くぜ」
だがその時、マスト上から警告が発せられる。空を飛ぶ戦闘用の船、Skybladesの一群が接近中だ!

名うてのならず者たちが多く乗り込むSkyblades。その一艘が近付き、ロープを渡し次々とならず者たちが乗り込んでくる。
Brain-Biterを振り、次々と敵を打ち倒して行くSlaine。だが続くSkybladesも接近してくる。
「次が来たらこの船も真っ二つになっちまうぞ!」「ハーフデッドの檻を出せ!」叫ぶSlaine。

『Slaine: Warrior’s Dawn』より 画:Mike McMahon

船倉から甲板へと引き上げられたハーフデッドの檻。
下方から接近してくるSkyblades目掛け、ハーフデッドを檻ごと落とす。
壊れた檻からSkybladesの甲板にハーフデッドが溢れ出す。船はコントロールを失い、岩山に激突する。

SlaineはBrain-Biterを振るい、甲板上に次々と死体の山を築いて行く。だが、ならず者たちの進入はやまない。
Slough Throtは部下たちに指示を出す。「船を救うためにやらねばならないことはわかっておるな」
「素早く行動せよ!Slaineが気付き制止される前に!」


『Slaine: Warrior’s Dawn』より 画:Mike McMahon

Slough Throtの許に部下の神官が乗客の一人の少女を連れてくる。そしてその少女は魔法の石の生贄として捧げられる。
異変に気付き、Slough Throtに近付くSlaine達。
「やむを得ない犠牲だった。Skybladesを打ち倒すためには魔法の石の全ての力を引き出さねばならなかった」
「下を見よ。奴等の破滅のための道具は揃った」
空を飛ぶ船は、頂上より煙をたなびかせる火山、Mor-Alltachの上空に差し掛かったところだった。

Slough Throtは魔法の石の上でオガム印を結ぶ。
彼らの船が通り過ぎ、追っ手のSkybladesが上空に差し掛かった時、Mor-Alltachは噴火し、追撃者たちはそれに呑み込まれて行く。

『Slaine: Warrior’s Dawn』より 画:Mike McMahon

だが、大規模な火山噴火はSlaine達の乗る船にも襲い掛かる。
次々と飛来する火山岩に船は破壊され始め、Slaineは必死に舵を操作し、燃え盛る船を山中に軟着陸させる。
生き残ったのはSlaine、Ukko、Slough Throtと商人のひとりの、わずか四人だけだった。

Mor-Alltachは、ケルト神話の英雄ディルムッド・オディナが持つ剣と同じ名前(意味は大なる激情)なんだが、そう呼ばれる火山なり地名があったのかまではわからず…。遊戯王のカードになってることはよくわかりましたが。

森の中を進む四人。進むにつれ、SlaineとUkkoは森の異変を察知し始める。静かすぎる…。
突如、森から走り出てきた猪がSlough Throtに襲い掛かる!
SlaineはBrain-Biterを猪に投げつけ、彼に向かってきた野獣を岩で殴り殺す。
「Slough Fegは獣の神ケルヌンノスを召喚し、味方につけたようだ。さらに多くの獣が我等に向かって来る」猪の死体を調べていたSlough Throtは、こう結論付ける。
Throtは彼らの周囲に、魔法による結界円を描き、次第に森の中から集まってきた動物たちがそれに沿って彼らを取り囲む。

『Slaine: Warrior’s Dawn』より 画:Mike McMahon

「獣の神ケルヌンノス」については、画像内に見えるように「Carnun」と書かれていて、これで調べるとファンタジー系ゲームのキャラクターが僅かと、アイルランド出身のメタルバンドぐらいしか出てこない。まあおそらくは双方とも無関係ではないんだろうが。色々調べてみた結果多分これだろうと思うんだが、イマイチ確信がない。違ってたらごめん。
Slaineが「The Horned God… Lord Of The Beasts!」と呟いているんで、もしかすると前編の最初に言及したシリーズ屈指の名作と言われる、第4巻『Slaine: The Horned God』とも関係あるのかも。

★ケルト神話 豆知識★

ケルヌンノス:

ケルヌンノス(Cernunnos または Kernunnos)は、ケルト神話の狩猟の神にして冥府神。獣王・動物王であったと推定されている。また、多産と豊作に関係があったと考えられている。
碑文や絵画、像といった考古学的資料によると、ケルヌンノスはガリア、北イタリア(Gallia Cisalpina)、ブリテンの南の沿岸地方で崇拝されていた。イタリアのヴァル・カモニカ(Val Camonica)で発見されたものが最古の描写と思われ、これは紀元前4世紀のものである。

ウィキペディア 「ケルヌンノス」より

ここで、改めてSlough Throtに、何故Slough Fegは彼を殺そうとしているのかを問うSlaine。
「それは我が彼奴のラグナロク計画書を盗み出したからだ。ここには彼奴が如何にしてThe Land ofthe Youngを破壊すべく謀っておるかが克明に書かれておる」
「奴の王国も含めてなのか?」
「もちろんだ。彼奴の主人たるクロム・クルアハ-The Worm Godは、破壊を賛美する神なればこそ」

彼奴の計画では、まず苛烈なる戦争を起こす。
そして北の山々より呼び寄せた雪嵐による長き冬。
最終的には、大洪水がThe Land of the Youngを呑み込む。
「だが彼奴は、高山にある彼の洞窟、The Cave of Beastsでその災害から安全に逃れる。彼奴の計画を止めねばならん!」

えーと、ここでまた注釈なのだが、まあみんなお馴染み北欧神話の世界における終末の日「ラグナロク」なんだが、ここでは”ragnarok”ではなく”ragnorak”と書かれている。グーグルに散々お前それ”ragnorak”じゃなくて”ragnarok”やろ!と言われながらしつこく調べてみたところ、”ragnorak”というのはノルウェー語で「世界の終わりへと進む混沌としたカオス」ということらしい。大体同じ意味だろと思い「ラグナロク」としたけど、ファンタジー界隈ではそれ全然別物!ごっちゃにしちゃダメ!ということだったら申し訳ない。

周囲を取り囲む動物たちに怯えた商人が、うっかり結界円を超えてしまい、たちまち集まった動物たちに引き出され食い殺される。残るは彼ら3人…。
「我の目的は北へ行き、その地のドルイドにこの計画を見せることだ」話を続けるSlough Throt。その足元の地面より蠕虫が這い出してきているが、気付かない。
「グラストンベリーの大ドルイド達ならFegの狂気の所業を止められるはずだ!」
その時、Slough Throtは地面から湧き出た無数の蠕虫が身体を覆い始めているのに気付く。「助けてくれ!」だが、Slaineもそれに対してはなす術もない。
Throtの魔法結界円は動物達からの攻撃は防げたが、別の神-The Worm Godからの怒りに抗うことはできなかった…。

『Slaine: Warrior’s Dawn』より 画:Mike McMahon

Slough Throtが蠕虫に食い尽くされ、骨となると、動物たちも我に返り、Slaine達に興味を示すこともなく去って行く。
そして、SlaineとUkkoも、元の北を目指す旅へと戻って行く。
「よくわからねえのは、なんで俺達は逃げられたんだ?」Ukkoが言う。
「おそらく誰かが俺達を助けたんだろうな」
誰が?そして何のために…?

『Slaine: Time Killer』へつづく。

作者について

■Pat Mills

1949年生まれ。1970年代より、ジャッジ・ドレッドのメイン・ストーリー・ライターとして広く知られるJohn Wagnerらとともに英国少年漫画の新生・活性化に努め、英国コミックのゴッドファーザーと呼ばれている。
英国の出版社DC Thomsonにて編集助手としてキャリアを始め、そこでJohn Wagnerと出会い、1971年に両社揃って退社。IPCにて少女向けやユーモア・コミックのスクリプトを書く。IPCは少年向けコミックの出版をする意図はなかったが、Wagnerらとともに密かに計画を進め、1975年に『Battle Picture Weekly』誌を立ち上げ、成功に導く。彼自身は早期に編集から退くが、最初期の代表作として知られる、第一次大戦の戦争コミック『Charley’s War』(作画:Joe Colquhoun)を手掛ける。
その後、続いて1976年に少年向けに『Action』誌を立ち上げるが、こちらは暴力的過ぎるなどの批判に会い、短命に終わる。
そして続いて1977年に立ち上げられたのが2000AD。初代編集長を務めたミルズだったが、ある程度同誌が軌道に乗った1977年のうちに編集からは離れる。その後もストーリー・ライターとして活躍する一方で、様々な雑誌の立ち上げにかかわって行く。
英国を代表するコミックである『ジャッジ・ドレッド』の誕生に関わったことでも広く知られる他、代表作としては『ABC Warriors』、『Slaine』、『Nemesis the Warlock』などかなりの多数にのぼる。
米国メジャー、ビッグ2での活躍が少ないことが日本での知名度の低さにもつながってはいるのだが、彼自身の長年の夢はヨーロッパ・コミック、バンドデシネへの進出にあり、1995年『Sha』(作画:Olivier Ledroit)でそれを果たす。その後も2000年からの『Requiem Chevalier Vampire』シリーズ(作画:Olivier Ledroit)などへと続いている。こちらの英語版は一時期Heavy Metalから出版されていたが、現在は彼自身の出版社であるMillsverseより出版されている。

Millsverseからはコミック出版業界を舞台としたミルズによる犯罪小説シリーズが2冊出版されており、そちらも何とか早く読まねばというところなのだが、2021年にはまさにこの『Slaine』についての彼自身による回顧録『KISS MY AXE!: SLAINE THE WARPED WARRIOR: THE SECRET HISTORY』も出版されている。今後『Slaine』の紹介を進めて行く上では是非読んでおかなくては、というところで、ついさっき買ったんで次までには最低それが出版されるとこぐらいまでは読んどきますんで。ミルズの2000AD関連回顧録では、先に2017年に出た『Be Pure! Be Vigilant! Behave!: 2000AD & Judge Dredd: The Secret History』も早く読まなければなんだよなあ…。

■Massimo Belardinelli

1938年生まれ、2007年に68歳で亡くなる。イタリア出身のアーティスト。1960年代にアニメーションの世界に入り、主に背景画などに活躍。その後、アニメーションと行ったり来たりという感じでコミックアーティストのキャリアを始める。イタリア、ドイツ、イギリス、アメリカなどで様々な形で作品を発表したようだが、結局イギリスのコミックに腰を落ち着けることとなる。前述のミルズの『Battle Picture Weekly』、『Action』誌にも登場し、2000AD立ち上げの際には、とりあえず無給でもいいからぐらいの意気込みで、英国コミックの50年代からの人気シリーズ『Dan Dare』の作画を勝ち取る。
その後、ミルズの『Flesh』などを経て、1981年頃より代表作となるJohn WagnerとAlan Grantのストーリーになる宇宙の運送屋コメディ『Ace Trucking Co.』を手掛け、同時期に『Slaine』を描く。
実はBelardinelliによる『Slaine』は、あまり評判がよくなかったらしく、90年代ごろTitanによりシリーズが単行本化された時には収録されず、2005年に2000ADの現在の版元Rebellionにより完全版として刊行されたこの版が初収録ということらしい。80年代ぐらいの画の水準としては下手とは思わないが、なんか暑苦しいとか重いとかが当時のコミックファンの好みに合わなかったんかね。

■Mike McMahon

1954年生まれ。ちょっとそれ以前の経歴とかわからなかったんだが、とりあえずはまずジャッジ・ドレッドから。ジャッジ・ドレッド誕生の経緯については、1回だけやって中断してる「Judge Dredd伝」の最初でやや詳しく書いたのだが、1977年2000AD立ち上げの際に同誌の目玉として、パット・ミルズ、John Wagner、スペイン出身の英国コミックのレジェンダリー・アーティストCarlos Ezquerraの三者により構想されたのだが、作品の方向性について意見の対立があり、Wagner、Ezquerraが企画段階で降りてしまう。そこでストーリーについては急遽依頼したPeter Harrisとミルズの共作、そして作画を若きアーティストMike McMahonを起用するという形で、創刊号には間に合わず、2号からという形でジャッジ・ドレッドは開始されることになる。
この時、ミルズがMcMahonを起用した理由というのが、彼がドレッドのキャラクターデザインまでは完成させたEzquerraから深く影響を受けたアーティストだったから、というもの。コミック-マンガにおいて、画は常に単なるストーリーの説明といったものより遥かに重要で、作られたキャラクターがどう動くか、どう話すかといった総ては作画によって決定されると言っても過言ではない。McMahonの初期の作画は、確かにEzquerraからの影響が非常に大きく、Ezquerraを模倣し、彼によってデザインされたキャラクターを動かしたという部分も大きくはあるだろう。しかし、それでも最初にジャッジ・ドレッドに生きたコミックキャラクターとして生命を与えたのはMcMahonであり、その後Brian Bollandを始めとする多くの優れたアーティスト達が登場しても、最初に彼を動かしたMcMahonのものをベースとしてドレッドを動かして行くことになる。そういう意味ではMcMahonは先の三者に続く、第4のジャッジ・ドレッドの創作者ともいえるだろう。
その後、McMahonはミルズの『ABC Warriors』で、ムーアの『The League of Extraordinary Gentlemen』などでも知られるKevin O’Neillからも影響を受け、作画を進化させて行くのだが、1981年頃から約2年間ブランクが空く。このブランクについてはちょっとよくわからないのだが、そこから復帰した作品がこの『Slaine』ということになる。前述の通り、そこでまた大きく画風が変わり読者を驚かせたわけだが、今回見てもらったように、そこから更にその画風をある種の完成までに高めている。
というところなんだが、ここでMcMahonを不幸が襲う。この『Slaine』の後、McMahonは病気により休業し、コミック・シーンに再び登場するのは1991年となる。そこでまた画風が変わったりするようなのだが、申し訳ないんだがちょっとその辺はまだチェックできていない。その後の代表的作品には、John Wagner/Alan Grantとの『The Last American』や、『Tank Girl: Carioca』(2012)などがある。
単純に英国コミックレジェンドとは言っていたが、よく調べてみるとかなり波乱万丈な感じだったMike McMahon。その中で何度も画風を変えて行くなど、今後も『Slaine』以前、以後に渡りよく見て行かなければならないアーティストだと再認識した。

というわけで、2回にわたり、かなり長くなってしまったが、英国名作コミック『Slaine』、何とか始められた。今回から続く話としては、明らかになったSlough Fegの恐るべき計画は、今後Slaineとどう関わってくるのか、またFegの陰謀により送られたMedbは、Slaineの故郷の部族をどうするのか、といったところか。第2回『Slaine: Time Killer』も、なるべく早くやるつもりなんで、ご期待ください。
しかし英国コミックについてもホントにやらなきゃなんないこと山積みで、ドレッドもやんなきゃなんないし、もっと最近のものもちゃんと伝えてかなきゃなんないし、ミルズに関しても未来史の続きやんなきゃとか、まあうっかりするとまた全然進まないへこみモードになりそうなんだが、一応形だけでも前向きにのろのろと進めて行くものでありんす。
それにしても、ファンタジー音痴ゆえ、色々見落とし勘違い多々あるのではと心配なのだが、うーん、これでファンタジーレベル少しでも上がったかね?レベル0が1になったとか?それともレベルマイナス5ぐらいが4.9ぐらいになったとか?まあ今回かなりいろいろ調べたしな、覚えたこととしては、…あれボイン川って出てこなかったっけ?

Slaine / Pat Mills

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