Judge Dredd伝 第1回 その2

見切り発車で始めたところ、概要までで終わってしまったその1に続き、Judge Dredd伝 第1回 その2です。今回はちゃんと本編から始めます。

Judge Dredd The Complete Case Files 01

現在はフルカラーで発行されている2000ADだが、当初は日本のマンガ誌と同様基本白黒。だんだんカラーページが増えてという段階を経て、フルカラーになったのは90年代ぐらい(どっかで見たはずなんだけど、今正確なところがわかりません。ごめん。)。この第1巻に収録されている最初期のものは、もしかしたら原稿が無くなって雑誌のページ直で複写したのかな、と思われる印刷の荒いところもあったりします。

今の2000ADでは、どの作品にもストーリー/作画/レタラーのクレジットがあるのだけど、特に初期のやつではほとんど書いてなかったり。まあこの時期は明らかに枠ぐらいまでは作画担当が手描きしていたのだろうから、なかなか統一もできなかったろうしな。大体わかったり資料のあるものについては書いて行くけど、色々曖昧になっちゃうところはご勘弁ください。

■最初期

未来都市のビルの間を縫うように走る超高架ハイウェイ。疾走する大型バイクにはジャッジの制服をまとった男がまたがっている。もはや道路と同じ高さになったエンパイアステートビルの廃墟から、その男に向け銃弾が放たれる。

「やったぞ!ジャッジ・ドレッドを殺したぞ!」

「いや、待て。こいつはドレッドじゃない。バッジを見ろ。Alvinって名前だ。」

「ちぇっ、まあいいか、次はドレッドの番だ。」

狙撃者はジャッジの死体から取り上げたヘルメットを自らかぶる。

「どうだ!俺はJudge Whitey様だ!」

その後、ドレッドが待機するジャスティス・ヘッドクオーターには、屍となったJudge Alvinを乗せたバイクが、自動操縦で帰還する。Alvinの死体にはこんなメモが添えられていた。

 -次は誰が俺を捕まえに来るんだい? Judge Whiteyより-

大部隊を送って制圧しようという上層部の意見を抑え、こんなチンピラに大袈裟にことを構えれば法の威信が揺らぐ、とドレッドはただ一人で事件現場へ向かう。

ジャッジの接近を察知し、待ち構えるWhitey一味。だが、彼らの前を通り過ぎたのは自動操縦で走行する無人のバイクだった?

虚を突き背後から現れたドレッドは、一味を制圧、Whiteyを捕縛する。そしてWhiteyは、Devil’s Islandと呼ばれる監獄へ送られる。24時間絶え間なくコンピューター制御で走行する物資輸送車両用の道路に何重にも囲まれた陸の孤島からは何者も逃亡することはできない。

以上が全5ページの『Judge Dredd』第1話。ストーリーはPeter Harrisという人が書いて、パット・ミルズが加筆修正したものということ。Peter Harrisは一時的に依頼した外部の作家らしく、巻末著者紹介でも特に詳しいことは書かれておらず、2000AD的に特に活躍した人ではなかったようだ。

作画は当時はまだ新人だったが、後に2000AD/Judge Dreddを代表するぐらいのアーティストになって行くMike McMahon。初期はCarlos Ezquerraからの影響が強く、あまり見分けがつかないような画風なのだが、やがて線が整理され、何か筋肉を岩石のように描くような一目でわかるぐらいの独特のタッチを身に付けて行く。1954年生まれでもう引退状態のようだが、2010年代後半ゲスト的に登場したときには、フォークロアアートを思わせるような独特の画風にも進化していたり。

null

『Judge Dredd』第1話 画:Mike McMahon

第4話ではCarlos Ezquerraが作画に復帰。Ezquerraの方はそれほどもめてなかったのかな?自宅アパートでのドレッドの休日が描かれる。休日でリラックスしようと言ってるがジャッジの制服のままでヘルメットも脱がず、読んでいるのは法律書。ドレッドの自宅のお掃除おばさんMariaが初登場。ドレッドさん、アンタまだ若いんだからもっと若者らしく楽しみなさい、など何かと小言を言ってくる。コメディリリーフとして今後もたびたび登場。

ジャッジ・ドレッドというのは、絶対に笑わないし、一切冗談も通じない人物である。しかし、ユーモア好きの英国人にとっては、そもそもこういう存在自体がギャグだったりするので、ジャッジ・ドレッドという物語には隙あらばコメディがぶち込まれてくるのだ。

第7話、ストーリーCharles Herring、作画Massimo Belardinelli。ここで私的に朗報。結構昔、どこかの偉人が作成してくれた『Judge Dredd』全話のデータをリスト化したPDFファイルをどこかのリンクで見つけてダウンロードしていたのを思い出した!これでクレジットなしでも大丈夫!ただどこで見つけたかもはや全然思い出せなくて…、もうないのかもしれんし。なんか思い出したりわかったらまた報告します。

で、その第7話で、ドレッドは待ち伏せていた悪漢どもにヘルメットに不透明のプラスティックコーティング液をぶっかけられ、視界をふさがれヘルメットを脱ぐ!顔にはCENSOREDってバナーが張り付けてあって見えないんだけど…。悪漢どもはその顔を見てあまりの恐ろしさに慄き、「こんな恐ろしい顔のやつは生かしちゃおけねえ!」と襲い掛かってくるが、みんなやられちゃうという話。ドレッドが絶対にヘルメットを脱がないという設定は、当初からあったと思うのだが、そこのところを明確に示したのがこの回。

■Robot Wars

最初の大きな話になるのが、この9~16話に亘るRobot Wars。

だが、その前の第8話でJohn Wagnerが復帰し、そのプロローグ的なエピソードを書いている。ロボット車椅子に乗った男が犯罪を起こし、ドレッドはその様々な機能を駆使した攻撃に苦戦する。ロボットが意思を持って犯罪を起こしたら大変なことになる、というドレッドの呟きで終わる。この後もいくつかの話を手掛ける作画Ron Turnerは、すっきりした線とコントラストのある陰影で悪くないアーティストなのだが、時々ジャッジのヘルメットやユニフォームを変な解釈で描いたりする。巻末紹介を見ると、2000ADではあまり活躍しなかった様子。

続く第9話からがRobot Warsとなる。ストーリーはすべてJohn Wagner。作画は第1回がCarlos Ezquerraで、あとはMike McMahon、Ron TurnerとIan Gibsonが交代で担当。Ian Gibsonという人、よく知らなかったのだけど、巻末の紹介を読んでみると、あのアラン・ムーアの2000AD時代の代表作『The Ballad of Halo Jones』の作画を担当した人。このドレッドでの作画を見ると、結構黒いEzquerraや初期McMahonと比べてもさらに黒い印象のあるタッチなのだが。この人については『Halo Jones』なるべく早く読んでそっちの方で書くので、とりあえずこっちでは保留。

最初はロボットに装備されている従属回路が故障したロボットが暴走する序章プロローグ的な話。そして続く第10話では、ある高名な科学者が超高性能なロボットCall-Me-Kennethを作り上げたが、最後にミスで従属回路を破壊してしまう。こうして人間に一切服従の意思がない超高性能なロボットが誕生する。Call-Me-Kennethは自らを作った博士の処刑をテレビ中継し、その電波に乗せてMaga-City One中のロボットの従属回路を停止させる信号を送る。こうしてCall-Me-Kennethがリーダーとなり、シティ中のロボットが人間に反抗し攻撃を始める大事件が勃発。

null

Robot Wars 画:Ron Turner

この危機を救ったのはロボットWalter。元々はジャスティス・ヘッドクオーターで給仕ロボットとして働いていたのだが、この騒動の中にあっても唯一ぐらいに従属回路を維持していた。一旦は危険なロボットの仲間と誤解され、破壊されそうになっていたところをドレッドに救われ、ドレッドに協力しロボットの基地に潜入、従属回路を復旧する信号を発信し、シティのロボットたちの暴動を止める。

null
みんな大好きWalter

この功績により、Walterは史上初の「自由ロボット」となり、給仕ロボットの任も解かれる。が、もともと人間に奉仕する目的で作られたロボットゆえ、自由になってもすることもなく、ドレッドの自宅に押しかけ勝手に彼専属のロボットとなる。

以降マスコットキャラとして頻繁に登場することとなるWalter。先に登場していたお掃除おばさんMariaとは仲が悪く、度々言い争うコメディ展開が背景で繰り広げられる。「R」が発音できず、セリフの中ではRがWになり、Wobot、Judge Dweddなどと話す。英語的な舌足らずな話し方なんだろうと思うのだが。読者からの人気も高く、『Walter the Wobot -Fwiend of Dwedd-』という1ページのシリーズも作られ、この『Judge Dredd The Complete Case Files 01』の巻末にも収録されている。

意志を持ったロボットの反乱というと、日本ではかの『鉄腕アトム』を思い浮かべる人も多いと思う。2000ADには巨匠パット・ミルズによる『ABC Warriors』というシリーズもあり、その辺も含めて比較考察してみるべきかとは思うのだが…、えーと、確かその辺も読んだと思うのだが、あいにく家には『アトム』もちゃんとそろっておらずという次第でちょっとここではすみませんというところ…。それをやるには『アトム』全巻を揃えてきちんと読んで、それなりに自分の考えを持つぐらいにならないとぐらいで、若干敷居が高いのだが、『ABC』のこともあるんでいつかはやらんといかんと思ってる。しかし、まずその全巻を置く場所が…。と言いつつ先日本屋に行って『ジャイアントお嬢様』(肉村Q/小学館)という作品の新刊を見つけ、私のマンガ読みとしての面白いマンガを見つけ出す直感、もしくは特殊性癖的なものにピンとくるところがあり、ついつい購入してしまってたりするのだが…。もう置く場所ないのに。先週買った『戦車椅子』もまだ読んでないのに…。

■20~28話

最初期の『Judge Dredd』ではまだそれほど長いストーリーはなく、大抵は1話完結もしくは前後編。Robot Warに続く20~28話もそんな感じで単発のストーリーが続く。Robot Warで復帰したJohn Wagnerがこの辺ではほとんどのストーリーを担当している。

26、27話はドレッドがジャッジ養成所であるアカデミーに行く話。ストーリーはJohn Wagnerで、作画はIan GibsonとMike McMahon。ドレッドはアカデミーで、優秀なジャッジである父親を持つ候補生Giantと出会う。後にドレッドの最も信頼する部下となるJudge Giant初登場の回である。と、もっともらしくゆうとるが実はすっかり忘れていた…。いや、ドレッドの部下でGiantというのは本当によく出てくるのだけど、初登場の回があることすら忘れてたよ。ごめん。

Judge Dredd伝 第1回 その2はここまで。続くその3は、映画化もされたRico Dreddの話からになります。うむ、なんとか3回でちゃんとまとまりそう。それから『鉄腕アトム』!アマゾンに画像探しに行って、当たり前なんだが電子版買えばいいやん、というのに気付いた…。まあ部屋の中で物理的に圧力となるプリント版に比べ、電子書籍は後回しにされ読むのが遅れるとか、既に電子書籍本棚が馬鹿多すぎなどの問題はあるのだが。自身もよりグレードアップして、より深く海外コミックについても語れるように努力致しマッスル。さて『ジャイアントお嬢様』読もうっと。

Judge Dredd The Complete Case Files 16~30

‘Cat Eat Cat’はamazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました