Tank Girl / Alan C. Martin + Jamie Hewlett

英国の伝説アナーキー・カルト・コミック!

今回はAlan C. Martin/Jamie Hewlettによる『Tank Girl』。1988-95年英国のコミック誌『Deadline』に連載され、その後Vertigo、IDW Publishingなどからも出版され、現在は英国Titan Comicsが版権を持ち、旧シリーズ、新シリーズを出版しています。

1995年に映画化されたり、ゴリラズ関連で、日本的にも微妙に知名度はあるんだけど、あんまり知られていなそうな実際の作品内容について、現在発行されている『Tank Girl Classic』の第1集を紹介し、その後や現在も続いているシリーズなどについてもできる限り、あまり知られていないと思われる『Tank Girl』の全貌について迫って行きます。
なんか歯切れ悪っ。いや、実際どのくらい認知度あるんだかいまいち分かんなかったり。映画しばらく前から観てみようと探してるんだが、なんかDVDとか中古しかない割りに微妙に高いし、配信やってるとこもなさそうだし。色々調べてるうちに90年代頃、コミック本編も一度翻訳出たらしいというのもみつけたんだけど、もうほぼ入手不可みたいだし。
ゴリラズも結構前だろと思ってたら、調べてみたらまだやってんだね。今年発売のアルバムもあったり。あっ、ゴリラズ目当てでうっかり検索に引っかかっちゃった人には悪いんだけど、ゴリラズ言及ここで終わりであとないので。

『Tank Girl』がどんなマンガかというなら、近未来のオーストラリアの荒野で戦車をねぐらとしているかなりイカレたねーちゃんが、あんまり脈絡なくその場のノリぐらいで暴れまわるというようなもので、とりあえずオリジナルではシリーズを通した一貫したストーリーなどというものはない。
時々どっちに行ったらいいかわからなくなる出鱈目な画面構成に、読みにくい字で妄言レベルのセリフやナレーションが、これでもかぐらいに詰め込まれていて、読んでどっと疲れたりすることもしばしばなのだが、なんか思い出してまた読みたくなる、というような奇妙な魅力かなんかトラウマレベルの何かに満ちた作品である。
とかく日本で中途半端に認知度があると、イメージ、アート、ファッションあたり止まりで、場合によってはその先に進むのを拒むような空気か壁かインビジブルバリア的なものにあたることも多いんだが、そこを突破し、コミック作品としての『Tank Girl』について伝えて行きたいと思うものであります。

Tank Girl Classic

概要

Alan C. MartinとJamie Hewlettは1980年代半ば、ウェスト・サセックス・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザイン(The West Sussex College of Art and Design=WSCD)で、出会う。
当時Hewlettはカレッジ内で、後に『Tank Girl』の作画にも関わるPhilip Bondらとバンドを組んでいて、Bondがフラれた女の子と『Love and Rockets』のイメージを組み合わせた「Rocket Girl」という曲もあり、この辺もある程度元ネタ的な部分もあるらしい。
この辺の年代のアート系カレッジの学生にとって『Love and Rockets』とか一般教養部類だったんだろう。イメージを持ってきたのはJaimeのLocasの方だろうと思われる。と言ってみたが、どんくらい伝わってるのか?『Love and Rockets』、日本語のウィキもあってそこに不満があるわけじゃないんだけど、やっぱ画像使った具体的なのをこっちでやって見ようかとは思ってる。ともかくルーツ探るとその辺も入ってくるよという話。
MartinとHewlettは組んで同人誌『Atomtan』を作り始める。仲間の一人が第2次大戦の戦車兵のものを基にしたヘッドフォンのデザインに関わっており、スタジオに散らばっていた写真を見て思い付きでHewlettが描き『Atomtan』に掲載した、戦車の前に汚い女の子(grotty girl)が立っている「Tank Girl」というタイトルのイラストが元となり、『Deadline』でコミックの連載が始まる。

『Deadline』は『Bad Company』で知られるBrett Ewinsと、『Hellblazer』や『Preacher』のSteve Dillonによって立ち上げられ、1995年まで発行された英国の月刊コミック誌。それ以前に発行されたEwinsと後に映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』にも関わるBrendan McCarthy、Peter Milliganらによるアンソロジー『Strange Days』が母体となっており、成人読者を対象としたコミック誌として、英国のコミックのみにとどまらないカルチャーに大きく影響を与えた。
いや、現物はおろか掲載作品すらろくに把握してないのだけど。英国コミックではレジェンダリーぐらいの名前が並んでるのだが、日本的にはイマイチというかかなり認知度が低すぎる。何とか頑張ってMilligan/Ewinsの『Bad Company』ぐらいは早くちゃんと紹介せねばと思う今日この頃です。

『Tank Girl』は登場間もなくカウンターカルチャーの世界で大きく人気を広げ、パンクカルチャーの中で力を伸ばす女性たちを映し出す象徴ともなる。ポスターやTシャツなどファッション方面にも広がりを見せ、特に80年代末から90年代にかけてのサッチャー政権の反LGBTQ法と言われるSection 28への抗議デモには『Tank Girl』が多くみられたらしい。

Tank Girl Classic #1

というところで具体的にその内容の方を紹介してみようと思うのだが、まず最初に注意しておきたいのは、これ『#1』となっているけど、そもそもこの状態で出ていたものではない。前述の通り『Tank Girl』は『Deadline』というコミック誌に連載されていたもので、英国のコミック誌というものは、日本のマンガ誌ほどのページ数はなく大体50ページから100ページの間ぐらい。先ほどインターネットアーカイブに保存されていたComic Book Database.comで見たところ、『Deadline』1号は『Tank Girl』の他に6作品が掲載されており、それぞれが5~7ページぐらいだったと推測される。(現在も発行されている英2000ADも大体そのくらいが標準。)
で、この『#1』、米国のコミックのフォーマットに合わせ、26ページだが、多分3号分3話の『Tank Girl』が収録されている(第1話:5ページ、第2話:5ページ、第3話:11ページ)。
ちなみに『Tank Girl Classic』は、近年着色されたフルカラー版が出版されているが、自分持ってるのオリジナル白黒版なのでそっちの画像を使用しています。

■第1話:(タイトルなし)

双眼鏡から見た荒野を、砂煙を上げ何かが走ってくる。
カンガルーどもだ!
岩陰に立ちそれを見ていた人影が呟く。
「こりゃ楽勝仕事のようだね。」

さあ!ちょいバイオレンスの始まりだ!辺境最強のカンガルーRocky Deadheadを紹介しよう!今日奴は配下のギャングBrain Deathsを率い、招かれざるブラッディンガッツなBar-B-Qパーティーに突撃するところだ!

疾走するカンガルーたち。
「行くぞ、野郎ども!ビールは奴らの奢りだ!」「誰のパーティーだか誰か知ってるか?」「知ったことか!どうせ着いたらすぐに全員殺しちまうんだから!」「おう、構うもんか。」「俺たちゃカンガルーだからな!」

我らがヒロインTank Girlは、この口汚い有袋類どもの首にかかった賞金を狙っている。

『Tank Girl Classic #1』より 画:Jamie Hewlett

クロコダイル・ダンディーがショアハム=バイ=シーに引っ越してから、辺境の状況は様変わりした!カンガルーは作物荒らしから農家襲撃へ転業し、彼らの子供を焼き始めた!
オーストラリアの大草原は、もはや働き者のレッドネックにとっての安全地帯じゃない!

「なあRocky、パーティーの連中、銃持ってると思うかい?」
「マジで言ってんのか?奴らが持ってんのはホットドッグとビールっ腹だけだ!俺が10万ドルの賞金首だってわかってんだろうが!誰が俺達にちょっかい出すってんだ?」
岩陰でニタリと笑うTank Girl。

次の丘を越えたところでは、ローカルポップスターどものバーベキューパーティーが最高潮を迎えていた!

「おい、Shirley、このアホタレが!どうしたんだ、このホットドック!まるで火炎放射器で焼いたみてえじゃねえか!」「うるさいよ、ヌケ作!あたしにゃアンタのフニャチンホットドッグを見張ってるより重要な仕事があんだよ!」「おいおい、お前らまだもめてんのか?明るく楽しもうぜ!いつロクでもないことが起こるかわからねえんだからさ!」

結局のところ、焦げたホットドッグなんぞ殺し屋カンガルーに比べれば、半分にも満たない災難だった…。

「ビールをいただき、ビッチどもは姦っちまって、デブ公どもは焼いちまいな!」「俺たちゃ汚くて臭えぞ!」「逃げ回れ、デブ野郎!俺たちゃみんなチョコレートバーを頭に詰め込んでるからな!」「誰がこいつら呼んだんだ…?」

カンガルー…、ハッ!なんてジョークだ!

「あたしの通常業務じゃないが、このデタラメ、奴にデカい賞金上乗せしそうじゃないの。」
崖から飛び出す戦車!
「さあ、パーティーに参加するよ!」

「飾りつけはクソ、ビールは生温い、食いもんは丸焦げ、このビキニが一番見映えよさそうか!」「先週蒔いたばっかのハッパの種踏み荒らさないでよ!」「これが俺たちの欲しいもん!ビール!爆弾!悪徳!」「目に入ったもんは全部ぶっ壊せ!ヤアアアアアア!」

ブラッディンガッツバーベキューが最高潮のその時…

「おい、何だこのガチャガチャうるせえのは?」

辺境のバッドヘッド参上!

襲い掛かる戦車!
♪ Shake Your Funky Tank Thang ♪

絶体絶命の運命の谺が響く。「誰が俺達にちょっかい出すってんだ?」

「誰だ、ありゃあ!?」
蹂躙する戦車。「ギャアア潰れるっ!」「知ったこっちゃねえ!逃げろ!」

『Tank Girl Classic #1』より 画:Jamie Hewlett

レイザーヘッドに気をつけろ!

「ギャアアグシャるっ!」「お、俺の足が…!」
♪ It’s The Bicentenary of Crocodile Dundee ♪
「潰れるっ!」「ハッパの種を踏まないでぎゃあああっ!」「なんて大虐殺だ!」

運転中は大音響で音楽を楽しんでるTank Girlの耳には、君の悲鳴は届かない!
…そして数分後。

「この場所で会ってるよねえ!」
戦車から出てくるTank Girl。
「あらら、あたしが来たの誰も知らないみたい。みんな飲み過ぎて寝ちゃったのカナ?」

無謀極まりない運転にもかかわらず、Tank Girlは老人を一人轢き損ねていた。

「寝とるんじゃない、死んどるんじゃ!…お前さん全員殺しちまったんだぞ!…だが奴らのリーダー一人だけミスったな。…奴はそっちへ逃げてったぞ。」
「そりゃご親切にありがと、ダンナ!アンタが楽しみと笑いに溢れる日々を送れますように!」
Tank Girlは直ちに戦車に乗り込み発進!
「アンタにいい日でありますよ~に!」
「ぎゃあああああっ!潰れっ…」
行き掛かりに最後の一人を轢き殺す。

追跡は、長く、鈍重に、ティータイムにまで続き、二人は黒い岩山に到達する。

「あれに登れば戦車じゃ上ってこれねえはずだ…。ハア…ハア…。」
「その通りね!戦車から降りて足で追っかけなきゃ!やれやれ、何でアイツの言ってることが全部聞こえてんのよ?多分コミックその他の与太のお陰ってとこね!」

二人は上り続ける、永遠とも思える岩の連なりを…。

「ハアッ」「ゲホッ」「ベッ」「グジャッ」

そして二人は、同時に両サイドから岩山の頂に到達する。
「もう…これ以上逃げる力もねえ…、ハアッ」「ハアッ」

頂上の地べたに倒れ込むRockyとTank Girl。そして蒼空を見上げると、死と殺しへの思いは滑り落ち、奇妙なことが起きる。

「ヒヒヒ…ヒヒッ…アハハハハ」「ハッハハハ。何がそんなにおかしいんだよ?」

やがて笑いが収まると、事態は更に奇妙な方向へ…。

二人はキスし、そして…。

しばらくの後…。

「ワオ!全くお笑い種だったねえ。」
「全くだぜ、ベイビー!じゃ、これで俺は自由の身ってことだよな?」
「んなわけねえだろ、アヘアへ野郎!アンタは死体袋に入ってあたしと一緒に来るんだよ!」
ダダダダダダダダダッ
「ギャアアアアアッ!」

「あたしから一つ助言。アンタがタンクパイロットならプロフェッショナリズムに徹すること。欲をかくな、そして誰の首の賞金でも取れ。とりわけカンガルー。ちょいとことがザクザクしてくると、ハニーデビルにゃトリガーを引きにくくなるからね。」

『Tank Girl Classic #1』より 画:Jamie Hewlett

以上、第1話…なのだが、とにかくこの狂騒をなるべく再現したくかなり細かく書いたのだが、やはり長すぎるんで2話、3話はもっとざっくり省略しながら行きます。

■第2話:(タイトルなし)

Tank Girlはオーストラリア辺境のどこかの荒野で、ひどい二日酔いで目覚める。上を見上げると、仕事道具兼ねぐらの戦車は天地逆さまになって岩の間に挟まってる。なんだい、ずいぶんと洒落た駐車だねえ。目覚めの一服を点けたところで、ハッチからぶら下がった通信機が声を上げる。

「Tank Girl、聞こえるか?こちらSmall Unit軍曹、本部より通信しとる!お前に重要な任務がある!」
「あたしゃ今生理なんで無理す。」「お前にやった戦車がどうかしたのか?!」「いったい何が起こったんすか?」

「本日午後4:30、シドニー港で、Hogan大統領が主賓を務める、世界経済の要人が集まる大パーティーが開催される!」
「先週92歳の誕生日を迎えた大統領だが、かなり深刻な腸の問題を抱えておる!」
「お前の任務は、大統領に依頼品の人工肛門バッグを届けることである!」
背景で爆笑するTank Girl。HAHAHAHAHAHA

任務に向けて戦車を発信させるTank Girl。だが、その途上には大変な脅威が待ち受けていた。
ドレッドヘッドの全裸の巨漢。彼は攫われた最愛の女性Janeを救出すべく急いでいる!、と本人は語っている。

Tank Girlの進路上にある、岩の間に渡された丸太橋の上に立つドレッドヘッド。
下を通過する戦車めがけてジャンプ!「Jane!」
Tank Girlの背後に降り立つドレッドヘッド。「Janeはどこだ、パグ面!」「なんだお前?」
Tank Girlは戦車から放り出される。WOOOOOOARGH!

『Tank Girl Classic #1』より 画:Jamie Hewlett

「誰だろうが、あたしに目を付けた時点でお前死体だぞっ!」
戦車が横転。Tank Girlの家財道具がまき散らされる。
「TV!」その中からポータブルテレビを見つけたドレッドヘッド。スイッチを入れテレビと話し始める。
「野郎!腕と足を引きちぎってお前の××××に詰め込んでやる!」
背後から襲い掛かるTank Girlを殴り飛ばすドレッドヘッド。
怒りに燃え、手近にあったものを掴みドレッドヘッドの脳天めがけて投げつけるTank Girl。それは小型のミサイル弾頭!
大爆発!!!!!…

またしても吹っ飛ばされたTank Girl。今度は完全に意識を失う。
そして翌日…。

行きつけの店に顔を出したTank Girl。「ひでえ目に遭ってここ二日ぐらいの記憶が飛んでんだよ。」
「するとお前、自分の写真がどの新聞にも載ってるのも知らないんだろ?」「あたし有名人なの?」
新聞には大統領の公式の場でのウンコ漏らし事件の原因として、Tank Girlが写真入りで非難されていた。
「どうやらあたしらどっちもやっちまったみたいだね…。」

『Tank Girl Classic #1』より 画:Jamie Hewlett

■第3話:Big Mouth Strikes Again !

前の2話はそれぞれ5ページだったが、第3話は11ページ。日本的に言えば大増ページという感じだろう。
この話では、前話から微妙につながる感じで、大統領の事件が原因でTank Girlがお尋ね者となり、賞金稼ぎに追われる身となっている。

闇討ち専門のローライフ賞金稼ぎVex Godgloveは、辺境の地で事故を装い、壊れた戦車の前に座り込みTank Girlを待ち伏せていた。
油断して近付いてきたところを、相手の足を折り、動けなくしたところで切り刻むのが奴の手だ。

そしてTank Girlがやってくる。
ホッケーマスクを被り、ライフルを構えて…。

「こいつはハイパワード・フルオートマチック・スキンリヴァーシング・ライフルだ。ちょっとでも動いたらてめえをディープなピザパイに変えちまうからな!」

『Tank Girl Classic #1』より 画:Jamie Hewlett

「あたしはお尋ね者で、国中から追われてるんだよ!」
と、Vexの思惑通りにはなかなか警戒を解いてくれないTank Girlだったが…。

「よっしゃ、まあそれはそれでいいか。あたしが持ってるデカくてバイオレンスなウェポンを見せてやるよ。」と戦車に戻って行く。
「マヌケなビッチめ。俺の言ったとおりになったろう。」と密かに後を追うVex。
その上に開いた戦車の後部ハッチが降りて来る。「ウワアアッ!」
「アンタきっとコレ気に入るぜ!チンコを1万パーセントデカくしたしシロモノだ!」グシャッ
「発射音もサイコー!」VOOPVOOPVOOP

「んー?お前そんなとこで何やってんだ?バカタレ!シャキッとしろ!もっとスゲーバイオレンスなヤツ持ってんだぞ!」
「ウウウウ…」フロアに這い上がるVex。Tank Girlは武器あさりに夢中。
「ワオ!こいつはスゲエぞ!見つけた!これ!」
その後ろで銃を構えるVex。「てめえは死んだ!ビッチがあっ!」
その時、Tank Girlの足が引っ掛かり、ハンドブレーキを解除する。
ギャリギャリギャリギャリギャリ!「ぎゃあああああっ!」
戦車はVexを轢きながら後退する。

『Tank Girl Classic #1』より 画:Jamie Hewlett

「おーい、大丈夫か?」
Vexは血まみれで腕も千切れ、瀕死。
「なんか死にかけてるみたいに見えるけど、心臓発作か何か?気の毒にねえ。」

「よく考えてみりゃ、アイツあたしのことバカにしようとしてたみたいだし、まあいいか。」と、通りがかったコアラを捕まえからかい始めるTank Girl。
その時…。

「ん?こりゃジェット機が操縦不能になった音か?」
次の瞬間、Tank Girlの後ろに小型ジェットが墜落してくる。

『Tank Girl Classic #1』より 画:Jamie Hewlett

墜落した残骸から、二人の奇妙な神様関連衣装を着たやつらが降りて来る。

「スゲーじゃん!アンタらこれ商売でやってんの?」
「違いますぞ!これは悪魔の仕業だ!」
「ここまで順調に飛行してきたのですが、突如としてパイロットの睾丸が巨大に膨れ上がり。」
「ケケッ」
「およそ1万パーセント!あまりの大きさに操縦桿に手が届かなくなり。」
「これは明らかに悪魔による我らの聖なる探求を妨害するための動きです!」
「聖なる探求?」
「ああ、いえいえ、ちょっとしたクリスマスパーティーに行くところでして。」
「パーティー?いいねえ!あたしも数週間パーティーにゃご無沙汰してんだ!ならあたしが乗っけてってやるよ!」

そしてTank Girlは、数年使ってないという戦車のランブル・シートに二人を座らせて発進!
崖も平気で飛び降りる暴走運転に二人は悲鳴を上げるが、Tank Girlは止まらない。

『Tank Girl Classic #1』より 画:Jamie Hewlett

そして、またしても崖から真っ逆さまに飛び出して行く戦車。
そこに雪が降り始める。
「おう!雪が降ってきたぞ!こりゃ神秘的だね!」
そして崖下にあった家の屋根に、雪とともに着地する戦車。

家の中では、新生児の誕生が祝われていた。
「イカスパーティー!どこで盛り上がってんの?」
「アンタ何やったかわかってんのか?」
「イカレビッチめ!」
赤ん坊をのぞき込むTank Girl。「んで?このブサイクなチビ助誰なの?」
「我らの神だ!」

「つまりそゆこと!すったもんだのキリスト再臨とボトル持ってくんの忘れちゃいましたのお話!クリスマスのホントの意味もう忘れちゃってる人いるよねえ!」
「パーティーに行くときゃ、ボトル持参!忘れんなよ!」

『Tank Girl Classic #1』より 画:Jamie Hewlett

以上、『Tank Girl Classic #1』収録の第1~3話でした。第3話の、前半の賞金稼ぎVex Godgloveとの対決(?)から、後半クリスマス話へと全く脈絡なしに切り替わるあたりの出鱈目さが『Tank Girl』の本領ってとこだろう。2話のドレッドヘッドとか、まともに考えても意味不明の極みだし。
あと、ミリタリー知識若干弱いんで、戦車の後部ハッチ?と思って調べてみたんだが、よくわかんなかった。まあ画的にはそういう感じで開いているんで、そう書くしかないのだが…。色々間違っていても、根本的にフィクション戦車ということで勘弁してください。
大変そうだなと思っていたけど、やって見ると意外と楽しく、もったいないけど省略したようなとこもあったり。2集以降もできたらこんな感じでやって見たい気分もあるけど、やっぱ結構時間かかる…。

その後のTank Girl

Dark Horse~Vertigo

オリジナルの『Tank Girl』は、1995年の掲載紙である『Deadline』の休刊に伴い終了するので、正確には「その後」ではないのだが、90年代の米国での展開から続いて行くものなので、そこから始めます。

米国での『Tank Girl』の版権は、90年代初頭にまずDark Horse Comicsが取得する。この辺は結構熾烈な争奪戦だったらしい。Dark Horseでは、オリジナルの米国版の販売にとどまり、新たなシリーズは出版されなかった。
その後、DC ComicsのインプリントであるVertigoへ版権が移り、米国オリジナルの『Tank Girl: The Odyssey』(1995:Peter Milligan)、『Tank Girl: Apocalypse』(1995~96:Alan Grant)の2シリーズが発行される。米国オリジナルと言っても、結局Milligan、Grantという英国作家によるものになってるわけだが。
この時期、1995年には、米制作で映画も作られる。えーと、これについてはいつか観るから…。
この辺で映画のコミカライズ版がPeter Milligan/Andy PritchettでPenguin Booksから出てるんだが、そちらは再版されていない。

■Tank Girl: The Odyssey : 1995

Peter Milligan / Jamie Hewlett
作画はオリジナルのHewlettだが、ストーリーを英国コミックの鬼才Peter Milliganが担当。
Vertigoより全4話で発行された後、TPBにまとめられた。
現在はTitanより再版されているが、2009年のプリント版のみしかなく、結構入手困難。

■Tank Girl: Apocalypse : 1995-96

Alan Grant / Andy Pritchett / Philip Bond
ストーリーはJudge Dredd、Judge Andersonなどで知られる英国作家Alan Grant。作画にHewlettの昔のバンド仲間Philip Bond。Andy Pritchett資料見つからず…。
Vertigoより全4話で発行された後、TPBにまとめられた。
現在はTitanよりこちらもプリント版のみ再販で、今のところやや手に入りやすそう。

IDW Publishing

そこからしばらく出版は途絶え、再開されるのは2007年IDW Publishingから。全4話の『Tank Girl: The Gifting』が、ストーリーAlan Martin、作画Ashley Woodで2007年に発行。2008年には『Tank Girl: Visions of Booga』がこちらも全4話で作画Rufus Daygloで。更に2011年には『Tank Girl: The Royal Escape』が同じく全4話作画Rufus Daygloで出版されている。
こちらのIDW時代3作品は、後にTitanより『The Power of Tank Girl』として合本でまとめられている。

■Tank Girl: The Gifting : 2007

Alan Martin / Ashley Wood
ストーリーにオリジナルのAlan Martinが復帰。作画はオーストラリアのアーティストAshley Wood。
IDWより全4話で発行された後、TPBにまとめられた。

■Tank Girl: Visions of Booga : 2008

Alan Martin / Rufus Dayglo
ストーリーはAlan Martin。作画は英国アーティストRufus Dayglo。
IDWより全4話で発行された後、TPBにまとめられた。

■Tank Girl: The Royal Escape : 2011

Alan Martin / Rufus Dayglo
ストーリーはAlan Martin。作画は英国アーティストRufus Dayglo。
IDWより全4話で発行された後、TPBにまとめられた。

■The Power of Tank Girl : 2014

IDW時代の3シリーズ、『Tank Girl: The Gifting』、『Tank Girl: Visions of Booga』、『Tank Girl: The Royal Escape』の合本。

その他

その後ぐらいのところで、現行のTitan Comicsの前に2つ動きがあった。一つは英2000AD姉妹誌の月刊コミック誌「Judge Dredd Megazine」での全12回連載『Tank Girl: Skidmarks』。こちらはTitan Comicsよりアメコミサイズの25ページぐらいのやつ全4話で出版された後、同タイトルのTPBとして2010年に発行された。
それから、一時期米国での版権をImage Comicsが持ってたということなんだろうけど、3作のワンショット「Dark Nuggets」、「Dirty Helmets」、「Hairy Heroes」が出版された後、2011年に『We Hate Tank Girl』としてまとめられた。こちらは今のところImageからのプリント版しかない模様。
両作とも、IDWから引き続きのAlan Martin/Rufus Daygloチーム。

■Tank Girl: Skidmarks : 2010

Alan Martin / Rufus Dayglo
ストーリーはAlan Martin。作画は英国アーティストRufus Dayglo。
「Judge Dredd Megazine」での全12回連載の後、Titan Comicsから出版。オムニバス『Total Tank Girl』(2017)にも収録。

■We Hate Tank Girl : 2011

Alan Martin / Rufus Dayglo
ストーリーはAlan Martin。作画は英国アーティストRufus Dayglo。
Image Comicsからの「Dark Nuggets」、「Dirty Helmets」、「Hairy Heroes」の3作のワンショットをまとめたもの。TPBはImage Comicsプリント版のみ。

Titan Comics

その後は、現行のTitan Comicsとなるわけだが、それに先立ちコミック部門ではないTitan Booksからコミック以外の動きが少しあった。
ひとつはAlan Martinによる小説作品『Tank Girl: Armadillo and a Bushel of Other Stories』。『Other Stories』となってるから短篇集なのかな?2008年にJamie Hewlettのカバーで出版。
もうひとつは、同じく2008年出版の『The Cream of Tank Girl』。Tank Girl20周年のアートブックということなんだが、内容不明。なんか日本から買ってる人もいるんじゃないかと思ったけど、今んとこ日本からのレビューもなかった。

■Tank Girl: Armadillo and a Bushel of Other Stories : 2008

Alan Martin
オリジナルのAlan Martinによる小説作品。カバー画はJamie Hewlett。

■The Cream of Tank Girl : 2008

Alan Martin / Jamie Hewlett
Tank Girl20周年を記念したアートブック。ハードカバー版のみ。

そして2012年からTitan Comics版のオリジナルシリーズが始まる。ストーリーは基本的にはAlan Martinが担当。作画はしばらく色々なアーティストと交代した後、現在はBrett Parsonが担当。

■Tank Girl: Bad Wind Rising : 2012

Alan Martin / Rufus Dayglo
引き続き、ストーリーAlan Martin、作画はRufus Daygloのチーム。
全4話で発行された後、HC、TPBにまとめられた。現在単話はデジタル版があるが、単行本はプリント版のみ。オムニバス『Total Tank Girl』(2017)にも収録。

■Tank Girl: Carioca : 2012

Alan Martin / Mike McMahon
ストーリーAlan Martin、作画は英国コミックレジェンドのMike McMahon。
全6話で発行された後、HC、TPBにまとめられた。現在単話はデジタル版があるが、単行本はプリント版のみ。オムニバス『Dirty Old Tank Girl』(2019)にも収録。

■Tank Girl: Everybody Loves Tank Girl : 2013

Alan Martin / Jim Mahfood
ストーリーAlan Martin、作画は米国アーティストJim Mahfood。
全3話で発行された後、ハードカバー版で発行。現在販売はプリント版のみ。オムニバス『Total Tank Girl』(2017)にも収録。

■Tank Girl: Solid State Tank Girl : 2014

Alan Martin / Warwick Johnson Cadwell
ストーリーAlan Martin、作画はマイク・ミニョーラとの『Falconspeare』(2022)などでも注目の集まる個性派アーティストWarwick Johnson Cadwell。
全4話で発行された後、ハードカバー版で発行。電子書籍版もあり。オムニバス『Total Tank Girl』(2017)にも収録。

■21st Century Tank Girl : 2015

Alan Martin / Jamie Hewlett 他
元はAlan Martinの2014年のKickstarterでの個人出版。その後Titanより全3話で出版の後、ハードカバー版で出版。電子書籍版もあり。
参加アーティスト:Jamie Hewlett、Brett Parson、Craig Knowles、Jim Mahfood、Jonathan Edwards、Philip Bond、Warwick Johnson-Cadwell

■Tank Girl: Two Girls, One Tank : 2016

Alan Martin / Brett Parson
ストーリーAlan Martin、作画はここから英国出身のアーティストBrett Parsonが担当。
新Tank Girl三部作の第1部。
全4話で発行された後、TPBにまとめられた。。電子書籍版もあり。オムニバス『The Legend of Tank Girl』(2018)にも収録。

■Tank Girl: Gold : 2017

Alan Martin / Brett Parson
ストーリーAlan Martin、作画はBrett Parson。
新Tank Girl三部作の第2部。
全4話で発行された後、TPBにまとめられた。電子書籍版もあり。オムニバス『The Legend of Tank Girl』(2018)にも収録。

■Tank Girl: World War Tank Girl : 2017

Alan Martin / Brett Parson
ストーリーAlan Martin、作画はBrett Parson。
新Tank Girl三部作の第3部。
全4話で発行された後、TPBにまとめられた。電子書籍版もあり。オムニバス『The Legend of Tank Girl』(2018)にも収録。

■The Wonderful World of Tank Girl : 2018

Alan Martin / Brett Parson
ストーリーAlan Martin、作画はBrett Parson。
全4話のシリーズだが、続き物ではなくそれぞれ独立した話。「Tank Girl Strikes Again」、「The Man From Tank Girl」、「The Importance of Being Tank Girl」、「Tank Girl Takes a Trip」の4ストーリーを収録。電子書籍版もあり。

■Tank Girl All Stars : 2018

Alan Martin / Brett Parson 他
ストーリーAlan Martin、作画はBrett Parson。
Tank Girl30周年記念。全4話のシリーズで、Jamie Hewlett、Brett Parsonを始めとする歴代や仲間のアーティストが作画を担当。
参加アーティスト:Jamie Hewlett、Brett Parson、Jim Mahfood、Jonathan Edwards、Philip Bond、Warwick Johnson-Cadwell、Greg Staples、Ashley Wood、Chris Wahl。電子書籍版もあり。

■Tank Girl: Action Alley : 2019

Alan Martin / Brett Parson
ストーリーAlan Martin、作画はBrett Parson。
現在進行中のシリーズの最初の4話ということ。第1章ぐらいなのかな?電子書籍版もあり。

■Tank Girl Forever : 2020

Alan Martin / Brett Parson
ストーリーAlan Martin、作画はBrett Parson。
『Tank Girl: Action Alley』に続く、現在進行中のシリーズの4話。TPBのタイトルは『Tank Girl Vol. 2: Forever』になってる。電子書籍版もあり。

■’King Tank Girl : 2022

Alan Martin / Brett Parson
ストーリーAlan Martin、作画はBrett Parson。
2020-21年に『The Goon』で知られるEric PowellのAlbatross Funnybooksから全5話で出版された単独シリーズ。TPBは電子書籍版も含めTitanより出版。

その他、アートブックとオムニバス版。

■The Way of Tank Girl : 2018

Alan Martin / Jamie Hewlett / Brett Parson / Ashley Wood
一応、アートブックということらしいのだけど、あんまり詳しい内容はわからない。電子書籍版もあり。

■Total Tank Girl : 2017

『Tank Girl: Bad Wind Rising』、『Tank Girl: Everybody Loves Tank Girl』、『Tank Girl: Solid State Tank Girl』の3シリーズの合本。電子書籍版もあり。

■The Legend of Tank Girl : 2018

Titanの新Tank Girl三部作『Tank Girl: Two Girls, One Tank』、『Tank Girl: Gold』、『World War Tank Girl』の合本。電子書籍版もあり。

■Dirty Old Tank Girl : 2019

『Tank Girl: Skidmarks』、『Tank Girl: Carioca』の2シリーズの合本。電子書籍版もあり。

以上、現在まで出ているTank Girlのシリーズ、一通り並べました。思ったより量があって大変だった…。とりあえず『Tank Girl Classic』については、また出来たら、というぐらいですが、その後のシリーズについては手に入るものからその内容を詳しくやって行くつもりです。それぞれの作者紹介についてはその時にということで。

Tank Girl

すべてのシリーズを並べるつもりだったけど、さすがに大変なので、今回は後にカラーリングされたフラカラー版を含めた『Tank Girl Classic』のみで。

■Tank Girl Color Classics Book

■Tank Girl Classic

‘Cat Eat Cat’はamazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました